政治 経済

2009年11月24日 (火)

機械の回る音が聞こえない大田区の工場街

【仕事がない!】

 リーマンショック以降仕事がなくなったということを中小企業経営者の方から時々聞いていました。私は「あーそうですか、大変ですね。」という程度の反応しかしていませんでした。
 11月19日午後5時前に大田区矢口を地元とする区会議員の野呂恵子氏の案内で矢口周辺の工場街を歩きました。このあたりの工場は家族経営の小さな工場がほとんどとのことですが、驚いたことにどの工場からも機械の回る音が全く聞こえませんでした。どの会社も仕事がいつ入るかいつ入るかと電話が鳴るのを心待ちにしていますが電話の鳴らない日が続いているとのことです。2人だけでやっているある工場経営者の方に聞きました。そこではたまに仕事が入ることがあるけれど、そんなときは機械を回すのが他の工場の方にかえって気兼ねになるとのことでした。それほどどの工場も仕事がありません。工場の大家さんに会いましたが、今年の1月から家賃も払えない会社が多いとのことでした。大家さんも現状を目のあたりにしているので半分あきらめていて、仕事が来て機械が回る日を一緒に待ってくれている状態でした。
 仕事がないことについて私の予想をはるかに超えていて、私も大変ショックを受けました。工場街を歩くときに私も大声を出すのをためらうほどの静寂さでした。

【大田区と工業】

 [位置] 東京都の南東部に位置し、東京都23区内では最南部に位置する。東部には羽田空港がある。
 [面積] 59.46k㎡(東京23区総面積の9.6%を占める最も大きな区)
 [人口] 683,860人(09年10月1日推計。23区の中で世田谷区、練馬区についで3番目に多い)
 [人口密度] 11,190人/1平方km(23区で19番目の低人口密度)
 [職住近接] 54%が区域内で勤務

 [工業] wikipediaより

 大田区は大森に東京ガスが20世紀初頭に工場を設けて以来、東京都内で最大の工場集積地を形成し、川崎市、横浜市と共に京浜工業地帯の中核をなしている。平成17年工業統計調査(平成17年12月31日現在)によると、区域は4,778の工場、37,641の従業者、761,087百万の製造品出荷額があり、何れも東京23区最大である。部門別では一般機械機器製造業が1,630工場、金属製品製造業が1,014工場と多い。特に大田区は多数の中小企業(平成16年事業所統計調査によると、製造業6,173事業所の内、従業員9名以下が4,883事業所)が事業を行っており、その多くは得意分野に特化している。それらが補完的に相互利用することでひとつの工場として機能している。しかし、近年は生産拠点の海外移転、後継者不在等により工場減少が続いている。このため、大田区では大田区産業プラザの建設、財団法人大田区産業振興協会設立等による中小企業支援を行い、東京都も東京都立産業技術研究センター城南支所、中小企業振興公社城南支社を設置している。

【大田区の中小企業者と弁護士が語る会】

 前回のブログで紹介しましたが、19日の午後6時半から矢口文化会館にて野呂恵子氏の司会で中小企業者と弁護士が語る会をもちました。矢口は下丸子、多摩川とともに多摩川沿いに計器やネジなどの精密機械の工場が多く集っている地域です。しかし、最近では閉鎖される工場が多く、その跡地に大きなマンションが建つようになり住・工混在の地域となってきています。
 弁護士としては原田敬三氏、脇田康司氏と私の3名が参加しました。中小企業者の方が30名以上が出席し、準備した資料が足りなくなるほどでした。それぞれの経営者から厳しい現実を伺いました。8時半に終了の予定が9時過ぎまで続きました。貸しはがしの問題であれば、まだ私たち弁護士としてサポートできる余地がありますが、発注があるないの問題では弁護士として出る幕がなく無力感を感じました。
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【弁護士としてできることは何か】

 弁護士としてできることは何だろうと考えてみました。矢口の小さな工場を直撃しているのは派遣切り・期間工切りと全く同じ現象で、大手企業による下請・孫請切りです。しかし、小さいとはいえ独立した企業体であり、労働法上の保護は大手企業一社への専属度がよほど強い場合を除き無理です。
 明らかなことは、中小企業切捨ては小泉純一郎内閣以来国の断固とした方針として時の政府が推し進めた結果だということです。日本政府は大企業や富裕層の税負担を著しく軽減し、手厚く保護しました。竹中平蔵金融担当相(当時)は、金融機関に不良債権処理という名目で中小企業からの債権回収(貸しはがし)を徹底的に行わせました。その結果、中堅の中小企業は工場を売り、社屋を売り、最後は自宅までを売らされて、つぎつぎとなぎ倒されていきました。企業経営を続けるかぎり一定の借入金は当然のことですが、竹中氏は過剰な負債と決めつけました。金融機関と相談しながら借り入れをし、返済をしていた中小企業にお上による突然のルール変更が通告されなぎ倒されていきました。本来であれば政府はこの中堅層を守って日本のものづくりを多層に構築するべきでしたが、金融機関保護の名目のもと中堅層の中小企業を切捨てる国策を徹底的に行いました。
 私が訪問した家族経営主体の小さな企業は自社工場も自社社屋ももたない企業群なので、もともと民間の金融機関からの借入金もほとんどありません。したがって当時不良債権処理の対象となりませんでした。しかし巨大な大手企業と小さな企業群では鼻から勝負になりません。不況が来ると大手企業は発注をやめ、内製化し、下請けに出していたものを自社でつくることにして発注数を少なくしました。発注する場合も単価は大手企業の意のままです。下請法下請代金支払遅延等防止法:参照公正取引委員会ホームページ)がありますが、これに抵触するのは余程の場合です。小さな企業は大手企業にとって派遣労働者や期間工よりももっと安全・確実に切ることのできる景気の調整弁に位置づけられています。
 今弁護士としてできることは国策によってつくり出されたこの不公正な実態を世に問うことだろうと思います。中小企業経営者を含むさまざまな人と力をあわせて実態調査をし、世に明らかにすることで、そのためにはマスコミの協力が不可欠です。民主党・社民党・国民新党は三党合意で中小企業の保護をうたっていますが十分ではありません。冒頭でも述べましたが私自身の認識もいい加減なものでした。
 学生時代を含めると私は大田区に35年間住んでいることになります。人生の大半は大田区民です。中小企業を守るなんて途轍もないことはできませんが、大田区に縁のある弁護士として私たちにできることから始めていきたいと思います。

【~JR不採用問題&派遣法~ 11.30南部集会の案内】

 ◆日時 2009年11月30日(月) 午後6時半~8時半
 ◆場所 大田区消費者生活センター 2階・大集会室 地図
       JR蒲田駅東口から大田区役所方面徒歩5分
        (区役所から100mほど先)
 ◆内容 話「今こそJR不採用問題解決・派遣法改正」
        清水建夫(鉄建公団訴訟弁護士)
       闘争団からの報告
       派遣法抜本改正のとりくみ報告
       行動提起
 ◆主催 1047名解雇撤回南部実行委員会
   協賛 全国一般労組東京南部

 詳細は案内チラシをご参照ください。
  → ■案内:「~JR不採用問題&派遣法~ 11.30南部集会の案内]
            
 この機会に大田区の工場街のことにも触れたいと思います。ご都合のつく方はご参加ください。

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2009年11月15日 (日)

大田区の中小企業者と弁護士が語る会

【問われる ものづくりのまち】

◆日時 2009年11月19日(木) 午後6時半~8時半
◆場所 矢口文化会館(新田神社内) 地図
       大田区矢口1-21-22 
       東急多摩川線 武蔵新田駅下車5分
◆参加弁護士(大田区在住)
     原田敬三(南北法律事務所
     脇田康司(脇田康司法律事務所)
     清水建夫(銀座通り法律事務所

詳細は案内をご覧ください。
 → ■案内:「大田区の中小企業者と弁護士が語る会]
            

【大田区の中小企業の現状】

 かつては1万社を超えていた大田区の中小企業は今では4000社になり、やがて2000社になると言われています。ほとんどの中小企業経営者は仕事がないことに悲鳴をあげています。リーマンショック以降世界的大不況と言われましたが、日本の上場企業は早々と業績が回復し、金融機関も黒字決算で余裕を取り戻しています。しかし、中小企業には明るい展望が全く見えません。工場の家賃も支払えない中小企業も少なくありません。中小企業の工場経営の悪化は商業にも影響し飲食店の来客者が激減しています。客を呼び込むために生ビールを半額にしても客足は増えないのが現状です。

【貸し渋り・貸しはがし防止法案】

 亀井静香金融相が提唱した「モラトリアム法案」の具体策として、中小企業向け融資や個人向け住宅ローンの返済猶予を盛り込んだ「中小企業等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(参照:金融庁-第173回国会における金融庁関連法律案)の最終案が10月20日、金融庁の政策会議で公表され、同月30日に閣議決定され国会に提出されました。法案は、金融機関に強制的に返済を猶予させる「モラトリアム」のイメージが薄れ、11年3月までの時限立法として金融機関が企業の要請になるべく応じるよう要請する「努力規定」に近い内容となりました。
 返済猶予に応じるかどうかの判断を金融機関に「丸投げ」したかたちにもなっており、実際に貸し渋り・貸しはがし防止に効果があるかどうか、疑問です。

 小泉内閣時代、竹中平蔵氏は金融機関の中小企業に対する債権をほとんど不良債権に色分けし、金融機関にその処理を徹底的に行うよう指示しました。その結果多くの中小企業が倒産し、自殺した中小企業経営者も少なくありませんでした。亀井静香金融相の「モラトリアム法案」は亀井氏の小泉・竹中両氏に対する憤りの発露と思われますが、残念ながら法案はきわめて不十分です。それに時遅しの感を否めません。小泉・竹中の構造改革のおかげで日本のメガバンクや大手企業は保護されて一段と強くなりましたが、他方中小企業や労働者(中小企業に勤務する労働者のみならず大企業に勤務する労働者も)を犠牲にしてきました。今生き残っている中小企業のほとんどが息絶え絶えというのが私が感じる率直なところです。リーマンショック以降大企業は中小企業への発注を減らし、自製化し、業績を回復させています。中小企業は仕事がなくなって、今頃になって金融の円滑化を図ってもこの程度ではなすすべがありません。

【中小企業のための総合支援ネットワーク】

 私は小泉・竹中による中小企業潰しが過熱していた2002年に、弁護士、公認会計士、税理士等の専門家と中小企業経営者と一緒に中小企業のための総合支援ネットワークをつくりました。残念ながら金融機関による徹底的な貸しはがしに有効な手立てを打つことができませんでした。
 今は中小企業のための総合支援ネットワークは開店休業の状況でリンクからはずしていましたが、また復活させることにしました。今後は専門家チームによる支援ということではなく、中小企業経営者主体のネットワークに衣替えをできればと思っています。大田区での11月19日の集まりはその第一歩です。

【企業再生の方策について】

 私は2003年当時「過剰債務からの脱出-企業再生の方策について-」と題して、次の項目で業績に苦しむ中小企業の経営者にメッセージを送りました。
 
 ・ 資金繰りが気になって夜中に目が覚める
 ・ 生き残る道は必ずある
 ・ 銀行も取引先債権者も倒産を望んでいない
 ・ すみやかに頭を切り換える
 ・ 自身で実行可能な返済計画を立てる
 ・ 特定調停制度の利用
 ・ 民事再生手続の利用
 ・ 早めに専門家と相談を

 今でも通用する部分が多いと思いますのでご覧いただければ幸いです(リンク先はこちら )。
 新会社法の会社分割を利用すれば、会社が傷むことなく生き残れる余地があり、とにかくさまざまな手法を駆使して中小企業をサポートしたいと思います。

【経済活動の決定過程と果実の享受の民主化】

 金融機関の貸しはがしの時代は中小企業の仕事はまだありました。今は大企業の一人勝ちで大企業の都合次第で中小企業の側には仕事そのものがなくなります。中小企業が生き残れる基盤が根底から崩されてしまっています。大企業がグローバル競争で勝ちぬくために日本政府は大企業優遇政策を徹底的にとりました。日本の企業では、労働者の意見を代弁できる組織はなく労働組合はほとんど御用組織です。日本の企業では社長のツルの一声がすべてを決めます。その結果、日本の社会は大企業のトップ経営者が経済活動のすべてを決める社会になり下がってしまいました。かつては中小企業が裾野広く存在し、たくさんの人々の知恵と工夫で日本の製造業のクオリティをを高めてきました。小泉内閣・安倍内閣の時代に、大企業の経営者が政治に深く関与し、自社利益を優先させる構造ができあがってしまいました。わが国の社会がこのような社会であっていいのかどうか、今日本の社会のあり方の根本が問われています。政治体制の民主主義は経済における民主主義がなければ絵に描いた餅です。日本の経済活動の決定課程においても、経済活動の果実の享受においても、国民一人ひとりの声が届き、公平・公正に反映する社会をつくる必要があります。そのためには小さなところから粘り強く一歩ずつ積みあげていかなければならないというのが、私が強く感じるところです。

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2009年11月 2日 (月)

寒々雇用の受け皿と心細い鳩山首相の腕力

【鳩山首相の所信表明演説と腕力】

 鳩山首相が10月26日におこなった所信表明演説は次の項目からなっています。

一、はじめに
二、いのちを守り、国民生活を第一とした政治
三、「居場所と出番」のある社会、「支え合って生きていく日本」
四、人間のための経済へ
五、「架け橋」としての日本
六、むすび

 友愛政治を展開した所信表明演説は社民党の福島みずほ党首が述べてもおかしくない内容で私としても全面的に賛成です。安定多数をバックに日本の首相がこのような美しい演説をおこなったことはこれまでにありませんでした。この内容をであれば私たち国民も私たちの政府の方針として世界に胸を張って言えます。これを実現するためには鳩山首相の強い腕力が必要です。

【コンクリートから人へ】

 鳩山首相は所信表明演説で次のように述べています。

 公共事業依存型の産業構造を「コンクリートから人へ」という基本方針に基づき、転換してまいります。暮らしの安心を支える医療や介護、未来への投資である子育てや教育、地域を支える農業、林業、観光などの分野で、しっかりとした産業を育て、新しい雇用と需要を生み出してまいります。

 しかし、新しい雇用と需要を生みだすのは並大抵なことではなく、きわめて厳しい現実があります(次の朝日新聞参照)。厳しい現実を発足まもない鳩山内閣の責任とは言いません。しかし、日本の産業構造を変えるのには既存の経済界等の強い抵抗が予想されます。首相に強力なリーダーシップがないと友愛政治は単なるユートピア(理想郷)で終わってしまいます。

【寒々雇用の受け皿】
                  (10月31日 朝日新聞 より)

 30日に発表された9月の完全失業率(季節調整値)は5.3%、有効求人倍率(同)は0.43倍で、いずれも前月より改善した。だが、失業者は前年同月より92万人増えるなど雇用情勢は依然として厳しい。政府は失業した人を、人手不足の介護や後継者難の農林分野などに振り向けることで雇用創出をめざす。ただ、処遇の低さや求職者と求人側とのミスマッチなどの課題もあり、雇用の受け皿になるのは容易ではない。(小林浩幸、前田育穂、諸麦美紀)

<製造業→介護 続く人手不足、職業訓練拡充 低賃金>

 政府が雇用創出策の中心に位置付けるのが、人手不足の続く介護分野だ。介護施設には、製造業などで職を失った人たちからの問い合わせが増えており、9月の求職者数は前年同月比5割増しの7万1千人。政府は介護ヘルパーなどの資格を無償で取れる職業訓練制度を拡充して支援する。
 岐阜県の雇用促進住宅に住む男性(52)は、せっかく取った資格が生かせなかった。自動車部品工場で働いていたが昨年11月末に「派遣切り」に。「長続きする仕事がしたい」と、県が受講料を全額負担する制度を使い、ヘルパー2級の資格を3月に取った。
 20以上の事業者を回ったが、「年齢が高い」「未経験者に仕事を教える余裕がない」と断られた。就職が決まらず9月末には失業給付も切れた。10月28日に生活保護を申請した。介護施設の入所者は女性の高齢者が多く、中高年の男性は採用されにくい。
 「資格を取っても就職できないなら、何のために国が旗をふっているのでしょうか」
 採用されても、待遇の悪さから、介護現場に定着しない人も多い。製造業などで働いてきた静岡市の男性(40)は今夏、介護ヘルパー2級の資格を取得し、9月から介護施設で働いたが、1か月ほどで辞めた。週3日の勤務で時給は800円。「仕事がきついのにコンビニのバイトと変わらない。将来が見通せず、働き続ける自信がなくなった」
 不況下でも、介護産業の離職率は年間2割近くあり、08年の全産業平均(14.6%)を上回る。厚生労働省の調査では、介護施設費の年間平均給与は309万円と、全産業平均の6割しかない。
       (中略)
 淑徳大の結城康博准教授は「育成や処遇改善への本格的な議論を欠いたまま介護職に誘導しても、高景気に転じれば、他の業界に人材が流れてしまう。介護を『雇用の調整弁』として位置づける発想から抜け出すべきだ」と話す。

<建設業→農林業 増える耕作放棄地を活用 低い収益、赤字続き>

 農林分野も期待を集める。経営が厳しい建設会社が、高齢化で増加する耕作放棄地を活用すれば、雇用維持と農業再生を実現でき、地域も活力を取り戻せるからだ。
       (中略)
 農林水産省によると、04年以降、09年8月までに349社農地リース方式で農業に参入。うち建設業が125社で、大半は赤字とみられる。
 90年代には、運輸業や農林業の雇用が縮む中、建設業が受け皿となった。01年の景気後退期には、農業への誘導策を打ち出す自治体もあったが、専門知識も身につけずに就業した人には、景気回復後、比較的賃金の高い製造業へ移るケースが目立った。
 建設業や製造業では就業者の減少が続いており、景気回復後も変わらないという見方が強い。
 三菱総合研究所の渋谷住男・主任研究員は「農業の付加価値を高めることが安定した雇用の創出につながる。加工や流通のノウハウを持つ企業の参入を促す制度設計を急ぐべきだ」と注文を付ける。

【「小沢色」染まる民主 集団指導からトップダウン型に】
                    (11月2日 朝日新聞 より)

 民主党の小沢一郎幹事長が独自の党内統治システムを築き上げている。トップダウンで迅速な意思決定ができるように幹事長に権力を集中。政策論議を重視してきた「党内民主主義」も一変させた。ただ、このまま小沢氏への権力集中が進めば、鳩山由紀夫首相の求心力はますます低下し、内閣よりも与党の方が強いという力関係が固定化する可能性がある。   (園田耕司、林尚行、本田修一)

<政府離れ党内権力集中>

 毎週月曜日の夕方に開かれる党役員会は、党の運営方針を決める事実上の最高会議だ。定員枠には代表を務める鳩山首相ら13人が入るが、首相は出席せず、司会・進行役は事実上のトップである小沢幹事長が務める。
 出席者によると、会議では活発な議論はなく、粛々と議事が進む。これまで3回開かれたが、いずれも30分足らずで終了。「効率」を好む小沢氏らしい議事進行ぶりだ。
      (中略)
 さらに、政府と党の運営を切り離すことで、仮にスキャンダルなどで内閣が倒れても、「小沢民主党」が受ける打撃を少なくできる。
 なぜ、巨大化したのに新しい統治システムにすんなり移行できたのか。
 民主党には小沢執行部に対抗できる強力な勢力が存在しない。かつての自民党に比べ党内グループのまとまりは弱く、主なリーダーは鳩山内閣発足で政府に移った。首相にしても、4年越しのマニフェスト(政権公約)実行を約束することで自らの解散権を縛ることになり、影響力には限度がある。

【私の意見】Up63

 小沢一郎氏は壊し屋との異名をもつほど造っては壊してきました。国民から期待されて登場した細川内閣も短命で終わりました。鳩山内閣も同じ運命をたどるリスクが多分にあります。その時は強力な保守新党に変身しているかも知れません。私たち国民には、友愛政治を説く鳩山首相の美しい言葉に酔いしれている暇はないことを肝に命じるべきだと思います。

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2009年9月14日 (月)

3党連立合意 EU型社会民主主義政治へ

【はじめに】

 9月9日、民主党・社民党・国民新党が交わした連立合意文書はこれまで日本の政府がとってきた競争至上主義の経済政策にピリオドを打ち、国民一人ひとりのセーフティーネットを充実させようとするものです。この合意が文書のとおり実行されるとすれば日本の政治の大転換であり、私は素直に喜びたいと思います。米国型の市場原理主義政治からEU型の社会民主主義政治への大転換です。このとおり実現すれば、私が弁護士としていつも歯ぎしりをしてきた不公平・不公正なことのかなりの部分がなくなり歯ぎしりをしなくてすみます。本当にこのとおり実行すするのだろうか?という疑問はありますが、実現は私たち国民一人ひとりの責任でもあります。国民の一人としてこの実現に積極的に関わっていくことこそが大切だと思います。

【民社国、連立に合意】
                     (9月10日 朝日新聞 より)

<福島・亀井氏、入閣へ 地位協定「改定を提起」>

 民主党の鳩山代表、社民党の福島党首、国民新党の亀井代表は9日、国会内で会談し、3党による連立政権を樹立することで正式合意した。最後まで調整が難航した安全保障政策は、日米地位協定改定の「提起」と在日米軍基地のあり方を見直す文言を加えることで決着し、計10項目の合意文書をまとめた。福島、亀井両氏が、それぞれ党を代表して入閣する。

<3党連立政権合意(骨子)>

・消費税率の据え置き
・ゆうちょ銀行などの株式売却凍結法を速やかに
 成立。郵政改革基本法案を速やかに作成
・子ども手当を創設。生活保護の母子加算を復活。
 高校教育を実質無償化
・後期高齢者医療制度を廃止
・日雇い派遣を禁止、製造業派遣も原則的に禁止
・国と地方の協議を法制化
・農家への戸別所得補償制度を実施
・温暖化対策の中期目標を見直し基本法を速やか
 に制定
・緊密で対等な日米関係をつくる。沖縄県民の負
 担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提
 起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方につい
 ても見直しの方向で臨む
・東アジア共同体の構築
・アフガニスタンの実態を踏まえた支援策を検討
・憲法の三原則を遵守(じゅんしゅ)を確認し、国民
 の生活再建に全力

【小泉純一郎よさらばじゃ!】

 3党連立合意は前文冒頭で小泉内閣が主導した競争至上主義の経済政策との決別を宣言し、国民各層のセーフティーネットの充実を図るとしています。

 小泉内閣が主導した競争至上主義の経済政策をはじめとした相次ぐ自公政権の失政によって、国民生活、地域経済は疲弊し、雇用不安が増大し、社会保障・教育のセーフティーネットはほころびを露呈している。
 国民からの負託は、税金のムダづかいを一掃し、国民生活を支援することを通じ、我が国の経済社会の安定と成長を促す政策の実施にある。
 連立政権は、家計に対する支援を最重点と位置づけ、国民の可処分所得を増やし、消費の拡大につなげる。また中小企業、農業など地域を支える経済基盤を強化し、年金・医療・介護など社会保障制度や雇用制度を信頼できる、持続可能な制度へと組み替えていく。さらに地球温暖化対策として、低炭素社会構築のための社会制度の改革、新産業の育成等を進め、雇用の確保を図る。こうした施策を展開することによって、日本経済を内需主導の経済へと転換を図り、安定した経済成長を実現し、国民生活の立て直しを図っていく。

【「障害者自立支援法」を廃止し応益負担を原則とする総合的な制度をつくる】

 3党連立合意は10の項目を掲げて実施に全力を傾注していくことを確認するとしています。私は私の弁護士としての仕事の関連で5,6,7に強い関心をもっています。

5 年金・医療・介護など社会保障制度の充実
 ▽「社会保障費の自然増を年2200億円抑制
  する」との「経済財政運営の基本方針」(骨太
  の方針)は廃止する
 ▽「消えた年金」「消された年金」問題の解決に
  集中的に取り組みつつ、国民が信頼できる、
  一元的で公平な年金制度を確立する。「所得
  比例年金」「最低保障年金」を組み合わせる
  ことで、低年金、無年金問題を解決し、転職に
  も対応できる制度とする
 ▽後期高齢者医療制度は廃止し、医療制度に対
  する国民の信頼を高め、国民皆保険を守る。
  廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援
  する。医療費(GDP比)の先進国(OECD)並
  みの確保を目指す
 ▽介護労働者の待遇改善で人材を確保し、
  安心できる介護制度を確立する
 ▽「障害者自立支援法」は廃止し、「制度の谷
  間」がなく、利用者の応能負担を基本とする総
  合的な制度をつくる

 この中で私に最も関係が深いのは、「『障害者自立支援法』は廃止し、『制度の谷間』がなく、利用者の応能負担を基本とする総合的な制度をつくる」という点です。障害者自立支援法は小泉内閣がつくったものでペテンにみちたネーミングとは全く逆の障害者の自立を阻害する天下の悪法です(私著「ノーマライゼーションに逆行する障害者自立支援法」参照)。この悪法のために日本でも少しずつ前進していた障害のある人の完全参加と平等の流れが大きく逆流しました。この悪法が政権交代でこうも簡単に廃止されるものかと喜びとともに驚きです。鳩山由紀夫氏も含め民主党は一貫して「障害者の自立を阻害する法律」とうい認識を示していました。今後を見守っていきたいと思います。

【登録型派遣・製造業派遣の原則禁止。雇用保険のすべての労働者への適用。男・女、正規・非正規間の均等待遇の実現】

 6 雇用対策の強化-労働者派遣法の抜本改正
 ▽「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止のみなら
  ず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇
  用とする。製造業派遣も原則的に禁止する。
  違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」の
  創設、マージン率の情報公開など、「派遣業
  法」から「派遣労働者保護法」にあらためる
 ▽職業訓練期間中に手当を支給する「求職者支
  援制度」を創設する
 ▽雇用保険のすべての労働者への適用、最低
  賃金の引き上げを進める
 ▽男・女、正規・非正規間の均等待遇の実現を
  図る

 「男・女、正規・非正規間の均等待遇」が実現すれば労働者の側から選ぶ「多様な働き方」が現実のものとなります。ところが現状は非正規=低賃金・首切り自由のメニューしか経営者が用意せず、多くの労働者は明日のパンを買うために不利な非正規雇用を受け入れてきました。障害者は厚生労働省による事業主に甘い法運用のため非正規雇用が圧倒的ですが、障害をもった労働者についても障害のない正規労働者と均等待遇を実現し、一個の労働者としての尊厳を回復すべきです。

【中小企業に対する支援を強化。「貸し渋り・貸しはがし防止法」を成立させる】

7 地域の活性化
 ▽国と地方の協議を法制化し、地方の声、現場
  の声を聞きながら、国と地方の役割を見直し、
  地方に権限を大幅に移譲する
 ▽地方が自由に使えるお金を増やし、自治体が
  地域のニーズに適切に応えられるようにする
 ▽生産に要する費用と販売価格との差額を基本
  とする戸別所得補償制度を販売農業者に対し
  て実施し、農業を再生させる
 ▽中小企業に対する支援を強化し、大企業によ
  る下請けいじめなど不公正な取引を禁止する
  ための法整備、政府系金融機関による貸付
  制度や信用保証制度の拡充を図る
 ▽中小企業に対する「貸し渋り・貸しはがし防止
  法(仮称)」を成立させ、貸付債務の返済期限
  の延長、貸し付けの条件の変更を可能とする
  。個人の住宅ローンに関しても、返済期限の
  延長、貸付条件の変更を可能とする

 日本のすぐれた製品やサービスは裾野の広い中小企業群の創意・工夫によって生み出されていました。中小企業は2006年時点で2,784万人に雇用の場を提供しており、非一次産業(公務を除く)の就業の場の約7割を担っています(2009年版「中小企業白書」172頁)。多くの国民が中小企業で働き日本経済を支えてきました。

【竹中平蔵「竹中教授のみんなの経済学」2000.12幻冬舎】

 経済学の基本のき
 1990年代を象徴するキーワード「リストラ」。日本の企業にとって、いま必要なリストラとは、バブル時につくった過剰な債務・過剰な設備・過剰な雇用の削減です。
 これを先送りにしてきたことが、日本の経済成長を抑制した原因となっています。3つの過剰が解消されれば、日本経済は本来可能であると見られる2%程度の成長ができることになります。

 小泉内閣の司令塔を自認した竹中平蔵氏は、その軸足をメガバンクと大企業の株主(経営)の立場にしか置きませんでした。その結果日本政府の経済財政政策・金融を担当とする長(大臣)としてのバランス感覚を著しく失っていました。竹中氏の3つの過剰のうち2つは明らかに偽りの表現です。「過剰な債務」は貸し手である銀行にとって「過剰な債権」であって、過剰な債務の削減は借り手の中小企業からみると突然の貸しはがしです。貸しはがしは新規融資のストップではなく、既存融資の回収を意味します。ほとんどの中小企業は銀行から借りたお金を一度に返す力はありません。多くの中小企業は工場を売り、自宅を売却しましたがそれでも返済できず破綻していきました。
 「過剰な雇用」は労働者が選択したものではなく経営者目線からの「過剰」です。しかしこれも中小企業経営者の目線ではなく、メガバンク・大企業の株主(経営)側にのみ軸足を置く金融・財政大臣の目線でしかありません。

「守りのリストラ」から「攻めのリストラ」にいち早く進んだ企業は過去最高益を上げている
 成長率を取り戻すために、過大な債務、つまり腐った部分を切り取るリストラが必要であるのはすでに述べてきた通りです。
 ただし、これは切り取るという点で受け身のリストラといえます。リストラが「再構築」だという本来的な意味を考えると、リストラにはもう一つ、「攻めのリストラ」というものもあります。 (中略)
 ここ数年、同じ業種でも「勝ち組」と「負け組」という二極化が起きているといわれます。不況だ、不況だといわれながらも、8社に1社は過去最高益を上げているという現実がある一方で、連続赤字となっている会社もあります。日本の企業がこれだけ大きく二極化した理由はここにあるのです。

 確かにメガバンクと一部の大手企業は勝ち組として残りました。しかしそのために切り捨てられたたくさんの労働者と中小企業者が生活の糧を奪われました。従来の職を失ったあと、「勝ち組」の大企業が突きつける非正規雇用を受け入れ不安定な生活を余儀なくされています。国内ではあいかわらず毎年3万人を超える人が自ら命を絶っています。また、日本のメガバンクや大手企業がグローバル競争(世界競争)で仮に勝ったとしても、外国の負け組企業で働く人々やその国の経済を破綻に導きます。「勝ち組」「負け組」理論はほんの一にぎりの人の勝利のために圧倒的多数の人々の不幸を招くものです。

【竹中平蔵著「構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌」(2006年12月日本経済新聞出版)】

 序章 改革の日々が始まった
 2001年4月26日、総理官邸

 それはまるで、日本最大のお祭りのようだった。テレビで何度も見た光景ではあるが、実際にその場に立つと、子供のときに胸をときめかしたお祭りのような華やかな喧騒と、興奮に溢れていた。第一次小泉内閣の組閣である。
 官邸の前庭には報道各社が陣取り、玄関の車寄せで人の動きがあるたびに、ものすごい数のフラッシュがたかれる。その閃光で目がくらむ中、私自身どのような顔をしていいのか--つまり少しはにこやかにすべきなのかそれとも神妙な面持ちがよいのか、よくわからないままに総理官邸へ入っていった。これがまさに小泉内閣5年5か月の始まりであった。そしてその後展開されるすさまじい構造改革への号砲、抵抗勢力との戦闘開始の瞬間だった。
 その数日前、内々に小泉総理(正確には首班指名の前であるから総理内定者ということになる)から、組閣の行われる26日の午後3時頃、ホテルオークラの近くにある総理の知人のオフィスで待機しているように言われていた。バブル崩壊後の疲弊した社会状況の中で、日本国民は小泉純一郎という異色のリーダーを待望した。社会全体が、小泉内閣の発足に沸いていたのである。
 通常の政治状況なら自民党の総裁つまりは日本国の総理大臣にはならないような強いリーダーが、いままさに誕生しようとしていた。国民の期待はとてつもなく大きいものがあったが、私もまた、小泉総理という奇跡の総理が誕生することを国民の一人として素直に喜んでいた。その総理から、直後「これからすさまじい戦いになる。大臣として内閣に入り一緒に戦ってくれ」と言われていたのだ。
              (中略)
 その間小泉内閣は、不良債権の処理を進め、失われた10年といわれた経済停滞を終焉させるべく全力で取り組んだ。また、反対する勢力と戦いながら、郵政民営化や道路公団民営化といった大制度改革に挑んだ。明確な総理主導で、官僚主体の政策プロセスを変えながら、様々な構造改革を進めたのである。政治的にもこの間、2度の衆院選挙と2度の参院選挙があった。また「郵政解散」という歴史的な出来事も経験することになったが、いずれの選挙でも小泉内閣は国民の信任を得続けた。内閣支持率は、この間平均50%(朝日新聞)を維持した。これは--中曽根内閣などを上回り細川内閣に次ぐものであるが、細川内閣が8カ月の短期政権であったことを考えると、実質的に支持率の最も高い内閣となった。

 悲しいかな人は己れを冷静に見つめることはできないし、自己の成功物語は強調しても、失敗は認めたくありません。最近テレビで見る竹中平蔵氏はその典型だと思います。「構造改革」の「功」と「罪」は横に置いて、ともかく新政権が3党合意のとおり米国型の市場原理至上主義政策からEU型社会民主主義政策に大転換することを祈るとともに、国民の一人としてその大転換の実現に関わっていきたいと思います。

【国会方針決定 民主「首脳会議」を新設 代表・幹事長ら新5役参加】
                  (9月13日 日本経済新聞 より)

 民主党は12日、新政権発足後の国会運営の最高意思決定機関として、鳩山由紀夫代表や小沢一郎次期幹事長ら「新5役」で構成する「党首脳会議」(仮称)を新設する方針を固めた。党政調会長が兼務する国家戦略局担当相が5役として首脳会議メンバーに入ることで政府と与党の一元化を目指す狙いがあるが、法案処理などを通じて党側の意向が強まる可能性もある。
 民主党は現在、鳩山代表と小沢、菅直人、輿石東3氏が務める代表代行と岡田克也幹事長の5人による「三役懇談会」が党運営の事実上の最高決定機関となっている。新たな党首脳会議は、政府側は鳩山氏と国家戦略局担当相に内定している菅氏、党側は小沢氏、輿石参院議員会長と国会対策委員長が参加する。外相に内定している岡田氏はメンバーから外れることになる。
 16日にも発足する鳩山新政権は、政策決定の「内閣一元化」を掲げ、官房長官は国会や党との調整役となる。5役による「首脳会議」は政策実行に必要な国会での法案処理の優先度をつけたり、成立に向けた対応を担うとみられる。国会対応で主導権を握る党側の意向が政策決定にも強く反映される可能性もある。

【私のコメント】

 岡田克也氏がはずれ小沢一郎氏の存在が大きくなることは気がかりです。鳩山由紀夫氏の「友愛」が小沢チルドレンをたばねる小沢一郎氏の数の「剛腕」にねじふせられなければよいのですが・・・

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2009年9月 7日 (月)

政権交代と財界と日経赤字・産経記者反乱

【日本経団連会長 御手洗氏に聞く】
                      (9月3日 朝日新聞 より)

 日本経団連は2日、正副会長による臨時会議を開き、政権につく民主党との対話を深める方針を確認した。自民党と二人三脚だった経団連の政策要望は「企業本位」と見られてきた。「国民生活第一」を掲げる民主党との距離は埋まるのか。
 「企業エゴととられるなら誤解だ。国民ベースの議論のために労を惜しまず努力する」。日本経団連の御手洗冨士夫会長は、2日の朝日新聞などとのインタビューでこう述べた。
 御手洗氏が掲げる経団連の理想像は、どの政党とも政策本位で付き合う「政策集団」だ。ただ、これまでは自民党政権が長かったこともあり、「事実上、自民党のシンクタンク」(経団連関係者)と言われてきた。政策要望の中身も、企業が豊かになることで従業員が豊かになるとの立場から、企業の競争力強化を目的としたものが多かった。
 だが、国民の賛同を得てきたとは言い切れない。昨秋からの雇用危機では、派遣労働の規制緩和を推進してきた企業への批判が高まった。民主党の大勝は、そんな批判をすくいとった側面もある。
 経団連も手をこまねいていたわけではない。90年には平岩外四会長(当時)が企業と消費者・生活者との共生を唱え、「国民と共に歩む」姿勢を打ち出している。この日の会議後、ある副会長は「308議席を得て国民の負託を受けた民主党とは十分に話し合う」と述べた。まずは民主党との議論を深めることが「国民ベース」の政策を展開する起点となる。

<御手洗会長とのやりとり>

 --民主党政権にどう対応しますか。
「政治も経済も国民生活の向上という共通目標がある。政策本位で付き合う姿勢は、自公政権時代と変わらない。対立構造ではない」
 --民主党の政策をどうみますか。
「需要を刺激して景気回復を図る考え方だが、少子高齢化で労働力が減る中、内需だけでは限界がある。内外需のバランスの取れた経済運営を望みたい」
 (中略)
 --民主党は企業献金の将来の廃止を主張しています。
「考え方を同じくする政党政治家を『民』が支えるのが民主主義の原点だ。民とは個人であり法人でもある。社会的貢献の一つとして、当面続けていけばよいと思う」

【私のコメント】

 この2週間リアリティを欠いた2つの小説(「終の住処」と「鷺と雪」)を読んだあとだけに、目を新聞に転じると生臭いリアリティが次々と飛び込んできます。御手洗経団連は発足早々から安倍晋三のお先棒をかついで経済団体としての節度を越えて憲法改正にまで足を踏み入れました。
 言わく、

憲法改正 
 ◇国民投票法の制定
 ◇国民的な議論を喚起し憲法改正に関する合意を形成
 ◇安全保障に関する基本法を整備、国際平和協力に関する一般法を整備、安全保障会議を強化
     (「希望の国、日本 ビジョン2007」141頁)

 昔、経団連会長は財界総理と言われ国民の立場から政権党に注文をつけることもありました。ところが御手洗氏は時の政界総理に迎合し、国の基本法を軽んじ、財界トップとしての節も踏みはずしたと思います。しかもキャノンは偽装請負や派遣切りでも、非人道的企業としての評価が定着してしまいました。御手洗氏の言動につき「ハケンの敵」「老害」「偽善者」などの批判もあります(wikipedia「御手洗冨士夫」)。これに加えて、本年2月にはキャノンの工場建設に伴い数十億円の裏金をつくり、脱税容疑で逮捕・起訴された大賀規久(大光グループ社長)と御手洗氏との癒着した関係が問題とされています。「希望の国」実現のため潔く退陣してもらいたいと思います。経済界も経済界で自らの会長を批判する浄化力に欠けています。もっとも政権遂行能力を喪失して政権を放り投げた安倍晋三を大差で当選させた山口県民(4区)、小泉純一郎の二世(小泉家では四世)を当選させた神奈川県民(11区)と、まあわが国民の浄化力も誇れたものではありませんが・・・。

【富を生む主役は企業 編集委員西條都夫】
                   (9月5日 日本経済新聞 より)

<内需拡大に限界>

 新たに発足する鳩山政権の課題は、日本経済が自律的に成長できる環境を一日も早くつくることだ。民主党は選挙中「内需主導の経済に転換して成長を実現する」としてきたが、人口が減少する中での内需拡大には限界もある。「外需と内需の双発エンジン」(今年の経済財政白書)こそ成長戦略の王道である。
 実は日本経済の輸出依存度はそれほど高くない。日本のGDPのうち輸出は2005~08年の平均で15%。米国の11%よりは高いが、英独仏の欧州諸国や韓国は20%を大きく超えている。それでも、昨年来の金融危機による輸出減で日本の打撃が大きかったのは、輸出品目が自動車や家電など一部の耐久消費財に偏っていたからだ。
 今後はすそ野の広い、強じんな産業構造をつくりグローバルの波に乗るしかない。工業製品だけではない。日本産のブランド米や果物はアジア各地で人気が高い。環境などでも世界に先行する技術が日本には多い。
 国内に閉じこもってきた電力、交通などインフラ産業にも世界展開のチャンスが広がる。地球温暖化対策を各国が進める中で、脚光を浴びるのが高速・安全に優れる日本の鉄道システムだ。
 ベトナム国鉄は国土縦断鉄道に日本の新幹線技術を導入する方針を固めた。日本初の技術がグローバル化すれば、車両やレール、信号システムなど日本製品が世界に普及するだろう。
 鉄道に限らずインフラの売り込みには、企業の自販努力だけでなく、ときに政府の支援も必要だ。新政権は新たな成長の芽を育ててほしい。
 自制すべきこともある。筆頭は民間経済への過剰な介入だ。民主党はマニフェストで全国共通の最低賃金の導入をうたい、その水準として時給800円を想定している。「まじめに働いた人が生計を立てられるように」という狙いは美しいが、逆効果にならないか。

<政府依存を転換>

 たとえば青森県の今の最低賃金は630円。800円に上がれば、不況のさなかに一気に最大26%の賃上げとなる。厚生労働省によると、同県で自給800円未満の人は2万人以上。全員に賃上げの恩恵が及ぶとは限らず、人員縮小や廃業を迫られる職場もあるだろう。
 民主党は労働者派遣法の見直しを掲げる。分配の原資が限られる中で、最低賃金を引き上げ、派遣労働者の正社員化を進めるなら、正社員一人当たりの取り分は減る。労働組合を支持基盤の一つとする同党は正社員の既得権益にメスを入れる覚悟があるだろうか。
 民主党と経済界の間には緊張感も漂うが、悪いことではない。昨年来の世界不況で経済界は政府依存度を強めた。親密な関係にあった自民党の下野をきっかけに、各企業は自立の気概を取り戻してほしい。
 一方で新政権も企業を敵視するような政策は取るべきではない。民主党は家計への直接的な財政支援を掲げるが、経済を活性化して家計を支える富を生みだす主役は、やはり企業である。

【私のコメント】

 「富を生みだす主役は企業である」という日経解説記事はもう読みあきました。前記朝日新聞が指摘のとおり企業が豊かになっても従業員は豊かにならず、他の国民も豊かになりませんでした。日経にすぐれた記者もたくさんいるのに社説や編集委員の解説は大企業に偏向していることを私は常々指摘してきました。

【止まらぬ広告不況】
                      (9月2日 朝日新聞 より)

<「効果」重視し絞り込み進む>

 広告市場の落ち込みに歯止めがかからない。不況で業績が悪化した企業が広告費を減らすだけでなく、広告の「費用対効果」にも厳しい目を向け始めたからだ。大手広告会社は効果を測る新サービスを開発し、「広告主」のつなぎ留めに懸命だが、底打ちの兆しは見えない。

<日経新聞赤字に 6月中間決算>

 日本経済新聞社が1日発表した09年6月中間連結決算は、本業のもうけを示す営業損益が8億5千万円の赤字(前年同期は130億円の黒字)、純損益は55億円の赤字(前年同期は59億円の黒字)となり、連結決算の公表を始めた00年以降では初の赤字となった。新聞や雑誌の広告収入に加え、インターネットの情報サービス収入も落ち込んだことが響いた。売上高は前年同期比14.7%減の1586億円だった。

【私のコメント】

 “ヘェーッ!日本経済新聞社が赤字なんだ!”と正直なところびっくりしました。しかも、経常損益ではなく営業損益の段階で赤字ということですから、経営を続ければ続けるほど損が増え続ける会社ということです。企業経営の視点からはさっさと廃業した方が良いという大変厳しい業績と言えます。
 日本経済新聞社が営業赤字に陥った最大の理由は、法の定める大企業の公告の制度が変わったことが大きいと思われます。会社法は株主や社債権者に対し一定の事項を知らせるため会社に公告(注・「広告」ではない)を義務づけています。 
 これが2004年までは官報か時事に関する日刊紙のいずれかに掲載することを求めていました(2004年改正前の商法166条3項)。これを受け大企業のほとんどは日経新聞に公告を掲載していました。ところが2005年よりインターネットを利用した電子公告でもよいように変わりました。2006年5月1日から会社法が施行され、また同年6月の証券取取引法の改正により証券取引法が順次金融商品取引法に改編され、公開企業の適時開示事項が一挙に増大しました。日刊紙を利用してこれら多岐にわたる事項の適時開示は物理的に不可能に近く、公開企業は電子公告の採用に切り替えました。これを最大の原因とし日本経済新聞社の安定収入が一挙に落ち込み営業赤字に陥ったと思います。客観的で公正な記事を出したくとも最大の顧客である大企業の要望にそった記事を書かないと広告主たる大企業にそっぽを向かれるというのが日経新聞社の泣き所です。でも現状はそれでも巨額の赤字が発生し続けているということです。日経新聞社は今正に存亡の危機にあると言えます。記者の削減ということもありうると思われます。
 大企業の御用新聞としての宿命をもたざるを得ない日経新聞に目くじらを立てることは、私はもうやめようと思います。そのかわり記事を最初から割引いて読むことにします。真面目で優秀・特に数字には強い日経新聞の記者の方々大変ですががんばって下さい。

【産経新聞社会部 ネット書き込み】
                      (9月2日 朝日新聞 より)

<民主党さんの思うとおりにはさせないぜ>

 「ツイッター」と呼ばれるインターネットの投稿サイトに産経新聞が開設した専用ページに、同社社会部の選挙取材班が「民主党さんの思うとおりにはさせないぜ」「産経新聞が初めて下野」などと書き込んでいたことが分かった。
 書き込みには批判が多数寄せられたといい、同社は同じサイト上で「軽率な発言だった」と謝罪。「新政権を担う民主党に対し、これまで自民党政権に対してもそうであったように、社会部として是是非々の立場でのぞみたいという意思表示のつもりでした」と説明した。
 同社広報部によると、専用ページは参院選公示日の8月18日に開設。書き込みは投開票日の30日以降にあったという。同社広報部は「不偏不党を社是としており、特定の政党を支持しているわけではありません」とコメントした。

【私のコメント】

 産経新聞は日刊紙の中でも右寄りと言われています。「不偏不党」な新聞とはほとんどの人が思っていないのではないでしょうか。その記者たちが民主党に挑戦状を投げつけた形となりました。しかし、民主党は今や野党ではなく圧倒的多数の政権党。本社はあわてて「不偏不党を社是としており」というコメントを発表せざるを得なくなりました。政権党としての自民党に寄りそって記事を書くことに慣れてきた記者たちの脇の甘さが今回のネット書き込みという形で露呈したと言えます。

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2009年8月 4日 (火)

上場企業早くもリストラ効果、黒字に転換

【早期黒字転換は予定された結果】

 世界同時不況を理由にしゃにむにリストラに走った日本の大手企業は早くも黒字に転換しました(後記 8月2日 日本経済新聞 記事参照)。これは予定された結果であり、当り前の結果です。日本の上場企業は日本政府の厚い保護のもと昨年度まで6期連続の増収増益を謳歌しました。しかしその果実は多くの国民(被雇用者と家族)に分配されず、内部留保と株主への配当が優先されました。その結果大手企業には現預金などの流動性資産が積み上がり、個人では富裕層はどんどん豊かになっていきました。一方、日本の中間層を構成していた中小企業や自営業者はどんどん落ちて(落とされて)いきました。

【労働者を切り捨てる経営者と国民を切り捨てる政府】

 売り上げが減れば労働者のクビを切る経営は誰でもできます。それをしないのが日本の経営者でした(2007年4月1日清水ブログ「ソニー創業者盛田昭夫の信念・情熱・夢」)。ところが小泉内閣時代の奥田経団連、安倍内閣時代に発足した御手洗経団連は、労働政策にしろ、減税政策にしろ、大手企業保護政策を日本政府に貪欲に要求し続けてきました。経済界のご意向(!)を最優先する愚かなわが国の為政者たちは経済界の要求をほとんど無条件に受け入れました。国民には日本の大手企業がグローバル戦争に勝ち抜くことは国民に幸福をもたらすと説明してきました。確かに日本の大手企業は世界市場で強くなりました。しかし、政府が約束したように、国民に幸せがもたらされたでしょうか?失業者が増え、再就職もままならない。正規雇用の労働者すら強気の経営者の前に過酷な労働条件を呑まされうつ病や過労死に追い込まれています。金融機関保護のために多くの中小企業が不良債権処理という名目でなぎ倒されていきました。やっと生き残った中小企業や自営業者も常に倒産の危機を感じています。長年コツコツと真面目に働いてきた人々が報われない社会となってしまいました。日本は今や分断国家、分裂国家となり、人々が互いを思いやれない荒涼とした風景が広がっています。今年の自殺者は政府や自治体の自殺防止対策にもかかわらず過去最高レベルに達しつつあります。

【政権交替と国民の選択】

 自民党政権から民主党政権への交替が確実視されています。私も経済界の要求を丸呑みし続けた自民党政権はこのあたりでピリオドを打つべきと思います。しかし、民主党の小沢前党首は田中角栄の秘蔵っ子であり、鳩山現党首は安倍、麻生氏と同じ3代目。民主党はさまざまな人によって構成されており、いつ分裂して自民党と合体し、強固な新保守党ができあがるかわからない危険があります。「構造改革」という名の小泉・竹中の悪政を支持し、舞い上がったのは他ならぬ私たち国民でした。今回政権交替が実現すればいくらかの変化はあるでしょうが、私たち国民は甘美な言葉にまどわされない冷静な選択を断固として行っていかなければなりません。戦後64年間脳天気に政治をショーの如くながめてきた私たち国民に否が応でも政治的、社会的成熟が求められる時代に入ったと言えます。
 以下に、日本経済新聞記事を引用します。

【上場企業黒字に転換 本社集計】
                  (8月2日 日本経済新聞より)

<4~6月経常損益 製造業、合理化進む>

 上場企業の収益が改善に向かっている。日本経済新聞社が2009年4~6月期決算を集計したところ、世界的な不況で1~3月期に赤字に陥った全産業の連結経常損益は黒字に転換した。売上高の減少傾向が続くなか、自動車や電機を中心に合理化が進展。新興国需要も下支えして製造業の赤字が縮小した。前年同期比の全産業の連結経常利益は78%減と低水準だが、企業業績は1~3月期を底に最悪期を脱したとの見方も出てきた。

 集計は7月31日までに決算発表を終えた3月期決算企業616社(金融・新興3市場を除く)が対象。対象銘柄は時価総額ベースで全体の68%、利益規模では56%に相当する。米国会計基準の場合は税引き前利益を経常利益とみなした。
 4~6月期の全産業の連結経常損益は9783億円の黒字で、1~3月期(1兆4952億円の赤字)から急回復した。全産業の売上高は1~3月期に続き4~6月期もそれぞれ前年同期比24%減った。それでも経常黒字化した主因は製造業の合理化効果だ。世界同時不況による需要急減に直面した輸出企業は工場再編や人員整理に踏み切り、製造業の赤字は2552億円と1~3月期の約9分の1に縮小。非製造業の経常利益も1兆2336億円と38%増えた。
 改善が目立つのは自動車と電機。まだ決算を発表していないトヨタ自動車を除く自動車5社の経常損益合計は1~3月期からの改善額が5700億円に達する。54億円の黒字だったホンダは改善幅の6割の約2000億円をコスト削減で捻出(ねんしゅつ)。エコカー減税などの景気刺激策を支えに国内販売にも「下げ止まりの兆しが出てきた」(近藤広一副社長)。
 東芝は4~6月期で人件費など870億円の固定費を削減。「年間3300億円減らす」(村岡富美雄副社長)方針。
 中国など新興国の需要も支援材料だ。日産自動車は新興国で販売が回復し、4~6月期の経常赤字が1~3月期の10分の1に縮小した。
 中国政府が家電買い替えを支援する景気刺激策を打ち出し、液晶テレビや携帯電話の販売が復調した波及効果もある。シャープは6月の月間の連結営業損益がプラスに転換。村田製作所は電子部品の需要が上向いて経常赤字が縮小した。
 北米不振で苦戦していたコマツも、アジアの建機需要と合理化効果で経常黒字に転換した。
 ただ、日本企業の海外収益の源泉だった欧米経済はなお不安定だ。海運3社は欧米向け航路が不振で、4~6月期は経常赤字。10年3月期通期の見通しも下方修正した。
 欧米など先進国市場が収縮したままでは収益の本格回復は望みにくい。ドイツ証券の神山直樹チーフエクイティストラテジストは「経済危機が日本企業の収益を直撃した原因は低い利益率。03年以降の構造調整をしのぐ再編や、生産性向上を通じた体質改善を続ける必要がある」と指摘する。

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2009年6月 7日 (日)

民主党年金改革案と自民党世襲制限先送り

-自民終わりの始まり-

【年金改革案 民主「最低保障月7万円」 制度一元化、財源は消費税】
                  (6月7日 日本経済新聞 より)

 民主党は次期衆院選マニフェスト(政権公約)に盛り込む年金制度改革案を固めた。職種によって異なる年金制度を一元化し、支払った保険料に応じて給付額が決まる「所得比例年金」と消費税を財源とする満額月7万円の「最低保障年金」の2本柱とする。2007年の参院選マニフェストを引き継ぎ、消費税率引き上げの時期とも絡む新制度への移行完了に必要な期間は明記しない。
 鳩山由紀夫代表、菅直人代表代行、岡田克也幹事長ら幹部が4日会談し、基本方針を確認した。国民の年金制度や年金行政への不信感が強いとみており、制度改革を衆院選の争点に据える。
 政権獲得後に詳細な制度設計をして4年以内の法律改正をめざす。全額税方式の最低保障年金を創設するのは、安定的な財源を確保して老後の生活保障を充実させる狙いだ。現行25年の受給資格期間は廃止し、所得比例年金の保険料(15%の労使折半)を納めれば、最低でも月7万円受給できる仕組みとする。最低保障年金は所得比例年金を一定額以上受給する人は減額する。
 新制度には十分な移行期間を設ける方向だが、詳細な制度設計は先送りする。すでに年金を受け取っている人は将来にわたり現行制度に基づき受給し、現役世代は当面は現行制度と新制度が混在した形となる見込みだ。新制度への移行が完了するまでに消費税率の引き上げが必要となるが、増税幅や時期には言及しない方向だ。
 年金行政の見直しでは、税と保険料の一体徴収や、共通番号制度の導入も明記する。

【「抜本改革」の是非争点 民主の年金案 財源、詳細は先送り】
                   (6月7日 日本経済新聞 より)

 民主党が次期衆院選で提案する年金制度改革案は、現行制度の抜本改正に力点を置き、消費税論議を含む詳細な制度設計は政権獲得後に先送りする。年金記録問題などで高まる年金不信を踏まえ、まずは制度改革の是非を争点にしたい考えだが、財源にはあいまいな点も残している。

 現在の年金制度は職種によって制度が異なるなど複雑で世代間の負担格差も指摘されている。民主党案は分かりやすさと公平性を重視し、自営業者も含め収入に応じた保険料を納め、支払った保険料に見合う年金を受給する仕組みに統一する。現行制度に比べ負担と給付がどう変化するのかさらに分かりやすく示す必要があるほか、効率的な保険料徴収や低所得者対策なども課題ととなる。
 政府がすでに約束した将来の年金支払いに対する積立金不足(過去債務)をどう解消するかなど移行期間中の財源の手当て策はあいまいだ。民主党の岡田克也幹事長は先の党代表選で270兆円の過去債務を新制度と切り離した別会計とする案を示したが、マニフェストには記載を見送る方向だ。
 政府・与党内でも年金制度改革を議論する動きが出ているが、方向性に乏しい。政府の社会保障国民会議は昨年11月、基礎年金の税方式化の試算を含む最終報告を発表。4月に議論を始めた安心社会実現会議は非正規労働者の厚生年金の加入要件の緩和などを議論している。

【親バカ承知!小泉4代目“襲名劇場”】
    (Sponichi Annexニュース 2008年9月28日記事 より)

 小泉純一郎元首相が27日、地元の神奈川県横須賀市での講演会で「次の総選挙に出馬しない」と述べ、引退を正式に表明した。後継に指名した次男進次郎氏(27)も同席し、同選挙区から次期衆院選に「立候補する決意を固めました」と述べた。実質最後となる“小泉劇場”に、1000人以上の地元支援者が駆けつけた。

 (小泉純一郎元首相は、) 進次郎氏については「親バカと言われるでしょうが、私が27歳のときよりはしっかりしいてる」と紹介。その後「じゃあ進次郎、あいさつしよう」と呼び込むと、進次郎氏が登壇。「よっ、4代目!」と掛け声が飛ぶ中、父と同じ赤いネクタイをつけた進次郎氏は「ここ横須賀と三浦(神奈川11区)から立候補する決意を固めました」と表明。「こいつは何かやってくれそうだ、そんな政治家になれるよう一生懸命努力します」と力を込めた。

【自民世襲制限先送り 小泉氏次男ら「例外」】
                     (6月 5日 朝日新聞 より)

 自民党の武部勤・党改革実行本部長は4日、同本部の拡大幹部会で、国会議員の世襲制限を次の総選挙から行うとした当初の案を撤回し、実施時期を明記しない修正案を示した。自民党の世襲制度に対する取り組みは大きく後退しそうだ。
 武部氏は5月21日、国会議員の親族が同じ選挙区から続けて立候補する場合、次の総選挙から公認しない、とする案を示していた。現職は含まれず、対象となるのは小泉元首相の次男進次郎氏(神奈川11区)と白井日出男元法相の長男正一氏(千葉1区)の新顔2人だった。
 しかし、無所属で当選した後に追加公認するなどの「抜け穴」が批判されたほか、自民党の世襲議員からは早急な制限への異論が噴出した。
 武部氏は5日の党改革実行本部総会で修正案の了承を取り付け、麻生首相に報告す予定。実施時期については、党執行部に委ねる考えだ。
 これを受け、世襲制限を唱えてきた菅義偉・選挙対策副委員長は、小泉氏の次男などすでに公認が内定している2人は例外的に公認することとし、今後政界引退を表明した国会議員の親族は次の総選挙から公認しない方向で調整を進めている。
 しかし、自民党はほとんどの選挙区ですでに公認を内定しており、次の総選挙で新たな対象者が現れる可能性は少ない。菅氏は世襲制限を政権公約に掲げることを目指しているが、事実上、「次の次の総選挙」に向けた検討課題にとどまる可能性もある。
 民主党は次の総選挙から、3親等以内の親族が同じ選挙区から続けて立候補することを認めないと決めている。同党が総選挙に向け、世襲問題を自民党への攻撃材料にするのは確実だ。

【私の意見】Up63

 世界各国と比べて、経済面では日本はとび抜けて豊かですが、国民のほとんどは自分の将来に不安をいだいています。
 民主党の年金改革案は国民にひろくセーフティーネットを張るための第一歩として評価できます。財源として消費税率のアップだけでなく、法人税・所得税の見なおしをあわせて検討する必要があります。財源がどこであれ、最終的に一人ひとりのセーフティーネットがしっかり張られているかどうかが重要です。私は2009年5月12日のブログ「あきらめずに総中流社会をめざそう!」の中でセーフティーネットのレベルは日本における生活保護レベルではなくヨーロッパ諸国や米国の国民の中位のレベルに置くべきであると述べました。
 年金改革にしろ政治家の世襲制限にしろ、民主党には現状から少しでもより良いものに改めようという機運を感じますが、自民党にはそれが感じられません。何も変えなくとも選挙では当然のごとく当選するという時代は終わりつつあるというのに危機感が感じられません。自民支配の時代の終わりが確実に始まったと言えます。

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2009年5月25日 (月)

盧氏の自殺とサルコジ ベルルスコーニ 麻生

【盧前大統領の死 隣国の政治の悲劇を思う】
                 
(5月24日 朝日新聞社説 より)

 思いもかけない、何とも悲痛な結末である。1年あまり前まで韓国の大統領だった盧武鉉氏が亡くなった。
 きのう早朝、自宅の裏山に警護員とともに登り、岩場から落ちた。
 家族あての短い遺書を盧前大統領は残していた、と側近の弁護士が明らかにした。自殺と見られている。
 盧氏は在任中の収賄の容疑者として検察の聴取を受けた。会社を経営する後援者が盧氏の妻や親族に640万ドル(約6億1千万円)の資金を渡したが、絶大な権力が集まる大統領制のもと、大統領への賄賂として問うべきではないか、との判断からだ。
 「退任後に知った」などと盧氏は容疑を否認していたが、身内が受け取ったことは認め、自分のホームページで「民主主義や正義という言葉を述べる資格は失った」と記していた。出頭時も「面目ない」と国民にわびた。
 検察が盧氏の法的処分をどうするかを決める最終段階での死である。
 今回の盧氏周辺の資金疑惑は、韓国の国民に対して、これまで以上に政治への深い失望を与えてきた。
 地盤や血縁、学歴が幅を利かす。日本もそうだが、政治とカネが切り離せない。そんな社会を変えてほしい。盧政権は、国民のその熱い期待にこたえるべく登場したはずだった。
 全斗換、盧泰愚の両大統領は自信が腐敗問われ、続く金泳三、金大中元大統領はいずれも子息が不正資金の受け取りで断罪された。
 それもあって盧武鉉氏は裏取引のない透明な政治を唱えた。人権派弁護士として活躍し、対立する野党からもカネに清潔と見られる庶民派だった。
 かつて政権と検察の癒着が激しかったが、盧氏は検察の独立を保証し、陪審制度導入を含む司法制度改革を支えた。過去の権力犯罪の解明にも切り込んだ。
 そういう盧氏も旧弊は断ち切れなかったということか。「歴史の清算」を目指したのにできず、司法の裁きに耐えかねたのだろうか。
 韓国では早速、捜査が強引だったとの批判が噴き出している。政界対立の火種にもなりかねない。だが、今回の悲劇をそうさせるべきではない。
 世界は未曽有の経済危機にある。輸出に頼る韓国経済もまた、たいへんに苦しい状況だ。ここで政治も対立を深めてしまってはよくない。
 朝鮮半島の安定を望む日本にとっても、まず韓国が安定してほしいし、存在感を高めてもらいたい。
 曲折はあっても、韓国には独裁から民主への一貫した流れがある。そしてこの20年あまり、民主主義を深めて市民社会を成熟させ、経済の発展という輝かしい成果をあげてきた。
 こうした実績を踏まえ、政治の安定に歩みを進めてほしい。それが、盧氏の死を無にしない道ではないか。

<盧前大統領の「遺書」>
               
(5月24日 日本経済新聞 より)

 とても多くの人々に迷惑をかけた。
 私のせいで、いろいろな人が受けた苦痛はとても大きい。
 今後、受けるだろう苦痛も推し量ることはできない。
 余生も他人の足手まといになるしかない。
 健康がよくなく、何もすることができない。
 本を読むことも、文章を書くこともできない。
 あまり悲しむな。
 生と死はすべて自然の一かけらではないのか。
 すまないと言うな。
 誰も恨むな。
 運命だ。
 火葬してくれ。
 そして、家の近くに、とても小さな石碑を一つだけ残してくれ。
 昔から考えていたことだ。

【“恋愛キング”サルコジ大統領の結婚力】

<離婚後3カ月で、サルコジ大統領が再々婚!?>
               
All About2008年01月18日 より)

 2007年10月にセシリア夫人と離婚したばかりのフランス大統領サルコジ氏が、2008年1月10日にパリの大統領府において、噂の恋人である元スーパーモデルで14歳年下のカーラ・ブルーニさん(38歳)と結婚式を挙げたらしいと、フランスの地方紙が報道。
フランス人といえば「恋愛至上主義」で有名なお国柄。公人である大統領だって、例外ではない・・・

  [→詳細は(All About2008年01月18日 ガイド:二松まゆみ記事)]

<サルコジ大統領夫人 買い物袋に全裸で登場>
           
 (Sponichi Annex2008年12月14日 より)

 2008年米ニューヨークで行われた競売で900万円以上の値が付き世界を騒がせた、サルコジ仏大統領夫人で歌手のカーラ・ブルーニさん(40)のモデル時代に撮影されたヌード写真が、今度は夏物衣料メーカーパルドンの買い物袋に購買欲を刺激するような思わせぶりなせりふも付記されプリントされた。カーラさんは、この買い物袋の流通禁止を求め提訴。ヌード写真をめぐり再び騒がしくなりそうだ・・・

  [→詳細は(Sponichi Annex “社会”2008年12月14日)]

【ベルルスコーニ伊首相が誕生日に駆けつけ、離婚騒動の原因になった18歳女性】
               
 (msn産経ニュース 2009.5.5 より)

 イタリアのベルルスコーニ首相が、ナポリ在住で雑誌グラビアにも登場したノエミ・レティジアさんの18歳の誕生日に駆けつけたとの報道を受け、ベロニカ夫人が激怒し、離婚の意志を正式に表明、奔放な女性関係に端を発したイタリアのベルルスコーニ首相(72)とベロニカ夫人(52)の離婚問題が注目されている・・・

  [→詳細は(msn産経ニュース)]

【私の意見】Up63

 盧武鉉前韓国大統領の死はとても残念です。人権派弁護士の大統領として、モタモタする日本とは対照的に障害者差別禁止法を韓国でいち早く成立させました。
 地盤、血縁、学閥、カネと政治の切り離しを期待されて登場した盧武鉉氏がカネの疑惑で逮捕寸前の事態に陥ったのは残念です。盧氏はおそらく賄賂については知らなかったと私は思います。そう信じたいですね。なぜなら賄賂を認識して受け取ることは盧氏の築いてきたすべてを自ら破壊することになるからです。
 盧氏は韓国をとりまく環境が大変厳しい時期に大統領となりました。不運でもありました。外交面ではアメリカ合衆国はブッシュ二世、日本は小泉純一郎といずれも右翼・保守政権でした。北朝鮮との対話路線を進展させる上で金大中元大統領よりはるかに厳しい環境下にありました。経済も低迷し、国民の苛立ちの原因となりました。それにしても自殺という決着を選んだのはとても残念です。盧氏が私の身内であれば死ななくってもいいんじゃないかと言いたくなります。よしんば収賄に関係していたとしても有罪判決を受けて服役すればいいじゃないか、命までとられることはないんだから・・と言いたいです。
 サルコジフランス大統領とベルルスコーニイタリア首相の華やかでセクシュアルな記事はこれと対照的です。私はサルコジ氏がフランス大統領に就任する前後の動静について批判的な記事「仏バスチーユ広場のデモと戦後レジーム」「癒着サルコジ氏と完全無欠の小泉前首相」を書きました。でも今では私生活と政治家としての資質は別だと思うようになってきました。
 フランス人もイタリア人も「彼(サルコジやベルルスコーニ)に政治の舵取りを頼んだのであって、それさえしっかりやってくれれば私生活は関係がない」と考えているのでしょうね。
 麻生首相が夜は日本の旧御三家ホテルでブランデーを飲んですごすことをマスコミが問題視しましたが、フランス人やイタリア人の目から見れば、それは彼(麻生)の自由であって、マスコミが問題にすることが理解できないかもしれません。私の目線もフランス人やイタリア人に近くなってきました。
 韓国人の自殺が増加しています。女優の自殺が続きましたから、今回の前大統領の自殺は韓国の人々の心に一層重くのしかかっていることと思います。韓国の自殺率は日本と変わらないほど高い割合を占めています。儒教的考え方が日本人以上に強く残っています。日本人も韓国人もこれからはフランス人やイタリア人のように仕事と私生活は別、と割り切った方がよいかもしれません。盧武鉉氏という真面目な政治家を失って私が感じたことです。

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2009年5月17日 (日)

欧米企業「性別の壁」取り払い競争力強化

                  (5月17日 日本経済新聞 より)

【多様性(ダイバーシティ)競争力の源に】

 企業の競争力を強めるには組織の「多様性(ダイバーシティ)」を高める必要があるとの考え方が欧米を中心に広がり始めた。これまでのように格差是正を目的として女性や有色人種らマイノリティー(少数派)を義務的に登用するのではなく、組織の多様性を柔軟な発想や着実な経営につなげ、企業活動の原動力にするという流れだ。

<欧米では女性の管理職が増えている>

欧米では女性の管理職が増えている

【最高多様性責任者(CDO?)】

 多様性が企業業績を左右するとの見方から、専任ポストである最高多様性責任者(CDO?)を置く企業が増えている。
 電機大手の独シーメンスは3月、約150人の女性管理職を対象にした世界的な社内組織を立ち上げた。女性社員の教育や訓練、育児休業からの復帰などを積極的に支援するためだ。旗を振ったのはCDOのリー氏。「多様性こそがシーメンスの長期的成功の必要条件だ」と話す。
 シーメンスではCDOと女性社員が直接連絡を取れる体制も整え、若い女性社員のやる気を引き出す。2011年までに世界中の法人で管理職の多様性を大幅に高めるのが目標だ。
 数年前には一般にはほとんど知られていなかった役職がCDO。シーメンスに加え、ナイキなどの欧米企業が相次いでポストを創設。幅広い人材の登用が進んでいるか、マイノリティー社員の昇格に障害はないかなどに目を光らせる。欧米企業が多様性を重視するのはそれが業績に影響を与えるためだ。
 女性の社会進出などを支援する非営利組織(NPO)「カタリスト」が主要な520社を対象に07年に行った調査によると、女性役員の比率が高い企業群では収益力を示す自己資本利益率(ROE)が、役員比率が低い企業群より約5割高い。売上高利益率でみでも同様に4割ほど上回るという。
 組織の多様性が確保された企業として4段階の分類の最上位グループに入るのは、ウォルト・ディズニーやゼロックス、エクソンモービルなど。これとは反対に金融危機で実質破綻したベアー・スターンズ、経営再建中のゼネラル・モーターズ(GM)は最下位グループに区分される。

<CDO>

 英語のチーフ・ダイバーシティ・オフィサーの略。企業トップである最高経営責任者(CEO)から直接の指示を受けるポストという位置づけで、広範囲にわたる権限を与えられているケースが多い。
 CDOは多数派とは人種や性別が異なる人材の登用を促進し、組織の多様性を拡大する役割を担う。少数派の社員が差別を受けていないかどうかについても監視する。人材争奪戦の激化や経済のグローバル化を背景に、欧米を中心にCDOポストを創設する企業が増えている。

【大胆な発想に期待】

 差別是正措置が社会的な要請を背景とするのに対して、多様性の重視は企業からの自発的な動き。コンサルティング会社のマッキンゼーの調査によると、経営陣に3人以上の女性がいる企業は「職場環境」や「経営戦略」「調整力」で優位に立つ。男性ばかりが経営陣だと企業の能力を超えて目標を追求する傾向があるが、女性が入ると経営がより現実的になるという事例も報告されている。
 マッキンゼー日本法人の本田桂子ディレクターは「多様な人材の登用に積極的な企業は大胆な発想が多く、それが好業績につながる」と話す。性別や人種にこだわらず、自然に優秀な人材を使うことが競争力を強化するというわけだ。
 「多様性」重視が進んでいるのは産業界だけではない。北欧フィンランドでは閣僚20人のうち12人が女性。議会でも女性の比率は全体の4割以上を占める。2000年には初めての女性大統領が誕生した。
 欧州が深刻な金融危機に直面した昨秋、欧州連合(EU)の共通対策をまとめたのはフランスの女性閣僚であるラガルド経済・財務相だ。ドイツのメルケル首相をはじめ、欧米では主要な閣僚ポストを女性が握るケースは少なくない。
 日本でも丸紅が4月に専門チームを立ち上げるなど、多様性重視の動きが出始めた。丸紅人事部の鹿島浩二企画課長は「少子化で人材不足が懸念される日本では多様性を重視した戦略が特に重要だ」と訴える。だが、国際労働機関(ILO)の調査によると、日本全体でみれば、管理職に占める女性の割合はわずか9%。欧米の30~40%台に遠く及ばない。

 激戦となった昨年の米民主党予備選。米大統領候補の座を最後まで争ったのは黒人であるオバマ上院議員と女性のクリントン上院議員だった。白人男性の指定席とも考えられていた大統領のポストが性別や人種の壁を越えて争われるようになったことが多様性が重視される社会への変化を物語っている。(ロンドン=岐部秀光、国際部 宮下奈緒子)

【私の意見】Up63

 若い社員や女性社員がのびのびと働いている企業は伸びるというのが私が日々感じていることです。日本の企業社会は長い間男性中心社会でした。女性はお茶汲み、電話番、コピー担当という位置づけで、結婚すれば寿(ことぶき)退社、やれやれめでたしめでたし・・・・・。
 その日本企業も女性の登用の必要性にやっと気づきはじめたというところでしょうか。
 人口減社会は労働力減社会であり、人口減社会は消費者減社会です。労働力の面からも消費者の目線でみる面からもオジサンだけでは力不足なのは誰の目にも明らかです。女性が力を発揮しているか否かはその企業の将来性を図る上での重要な物差しと言えます。

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2008年12月29日 (月)

品川正治氏談 人間見ようとしない経営

【人間見ようとしない経営 品川正治さん(経済同友会終身幹事)】
                    
(12月28日 朝日新聞 より)

 品川 正治(しながわ・まさじ) 24年生まれ。旧年日本火災海上社長を経て93~97年経済同友会専務理事。現在は国際開発センター会長。

 職を失う非正規労働者が今年10月から来年3月までに8万5千人に達すると厚生労働省が発表した。来春採用の内定を取り消された大学生や高校生も800人近くいるという。異常な数字である。
 米国発の金融危機が欧州や新興国を巻き込み、実体経済に波及した。それが日本では雇用という経済社会の基本を揺るがす問題として浮かび上がっている。「構造改革なくして成長なし」という成長至上主義の呪縛にとらわれた米国型改革で派遣労働が緩和された結果、労働者が最大の犠牲を強いられている。
 これまで日本の資本主義には、果実は国民が分けるという実質があった。それが修正主義と批判され、果実は株主や資本家のものという考えが幅を利かせた。いったんは回復した景気の実感さえ得られないまま、リストラという名目で労働者への分配は減らされ、浮いた利益を配当に回すことで経営者の報酬を増す。そういう米国型の経営手法が当然とされてきた。
 非正規労働者を調整のための「物」とみなす風潮の横行に今年、労働者の危機感は高まった。小林多喜二の小説「蟹工船」が若い人たちの間で話題となり、「搾取」という古い言葉が議論に欠かせなくなった。労働者の危機感は現実となり、いまや「路頭に迷わせるな」というこれまた古い言葉が、切実さをもって復活している。
 話が飛ぶようだが、私は憲法9条を行動の指針としている。復員の船の中で初めて読んだ条文の根底に、国家ではなく、人間の目で戦争をとらえる確かな視線を感じたからだ。経済も人間の目でとらえることができるか。経営者として私は自ら問うてきた。
 現状はどうか。人間の目どころか国家の目でもとらえられないものに、経済は変質した。国際金融資本や多国籍企業の視線に、国家も国民も振り回されている。痛みは大きいが、米国型金融資本主義が崩壊したことに安心さえ覚える。あと5年も米国化が進行していたら、経済の変容は行き着くとことまで行き、労働者も今以上に商品化されていたことだろう。
 米国では80年代から進んだグローバル化も、日本で本格的に進んだのは00年以降のことた。日本企業はまだ米国型に100%染まってはいない。役員会で労働者を切って配当を確保しようとする財務担当者に対して、雇用を守ろうと必死に主張する人事担当者がいると信じたい。
 雇用の確保が成長を遅らせるという反論に対する答えはノーだ。家も借りられず結婚もできない若い労働者は、内需のマーケットから完全に除外されている。彼らの生活の再生産と将来設計を可能にする雇用の保障は、長い目でみて外需頼みから内需への転換を促す要素になるはずだ。
 経営者は本来、資本家のためだけではなく、従業員や代理店などすべての利害関係者のために仕事をするものだ。いま、職と家を失った非正規労働者の受け皿を、他の企業や自治体が用意する動きが急速に広がっている。彼らは人間の目で、人間を見ている。あなたには見えますかと、経営者に聞くとよい。  (聞き手・今田幸伸)

【私の意見】Up63

 12月28日の朝日新聞「耕論 雇用危機の姿」という欄に、品川正治さん(経済同友会終身幹事)、鴨桃代さん(全国ユニオン会長)、生田武志さん(野宿者ネットワーク代表)の談話が掲載されていました。そのうち品川さんのお話を紹介しました。
 品川さんは「日本企業はまだ米国型に100%染まってはいない。役員会で労働者を切って配当を確保しようとする財務担当者に対して、雇用を守ろうと必死に主張する人事担当者がいると信じたい」と言っています。しかし、今の日本の会社の取締役会は社長(会長)のツルの一声ですべてが決まっていきます。財務担当者がAを主張し、人事担当者がBを主張し、民主的議論の結果Bに落ちつくというシナリオはほとんどないのではないでしょうか。当の社長の多くが自分が在任中の目先の業績しか考えておらず、その結果売上げが減少すればためらうことなく人減らしという選択肢をとります。
 12月に発表された日本経団連の来春闘方針は「雇用の安定が最優先」とした当初案から「安定に努力する」に後退しました。
 品川さんの講演を伺ったことがあります。経営者の進むべき王道を力説されているのに感銘しました。しかし今の日本の経済界では一人の昔気質の老御意見番という程度の位置づけで、残念なことに品川さんの意見を真摯に受け入れようとする現職の経営者は数少ないのが現実です。

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