2008年5月25日 (日)

福田外交 アジア・アフリカと共に歩む

【私の意見】Up63

 福田康夫首相の外交政策を中心に関連記事を並べました。記事の数が多いので最初に私の意見を述べます。興味のない記事はとばしてください。
1は、5月22日第14回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞主催)での晩餐会で福田首相が行った演説の記事です。
2は、この演説を「その言やよし」とした朝日新聞の社説です。
3は、5月23日に「アジアの未来」で高村外相が講演した内容です。
4は、同じ時に竹中平蔵元金融相が講演した内容です。
5は、日本政府がアフリカにコメ約2万トンの食糧援助を決めたことに関するものです。
6は、南アフリカの反アパルトヘイト活動で84年にノーベル平和賞を受賞したデズモンド・ツツ名誉大主教の「アフリカ支援 感染症対策日本が先導を」という意見記事です。
7は、日本の対外純資産が250兆円を越え過去最高を更新したこと、17年連続で世界最大の債権国になったことの記事です。
8は、日本の平和指数は140カ国・地域の中で世界5位という高い位置にあるとするロンドンからの記事です。
 
 小泉元首相の対外援助削限ケチケチ外交と靖国神社参拝強行外交、安倍前首相の従軍慰安婦否定発言と軍事大国化推進外交で、アジアの国や人々に日本政府や日本人への不信と軽蔑と警戒感が広がりました。福田首相は支持率が20%を割り、国民の人気はあまりありませんが、私は福田首相の考えや政策がアジアやアフリカの人々の信頼を回復する上で大きな役割を果たしていると思います。
 3の高村外相の「日メコン外相会議」も納得できます。「日本企業にとっても必ず良い効果が見込める」とも言っていますが、福田・高村外交は利権外交(利権のための海外援助)とは趣が違うと思います。4の竹中平蔵氏の講演は日本の競争力を高めるという視点で一貫していて論理矛盾はないのですが、“日本だけ強くなって他の国はどうでもいいの?”という疑問が相変わらず残ります。法人税率を下げても最後に人々の手にわたるときに平等であれば問題はないのですが、小泉・竹中改革は大企業を強化し富裕層を優遇するばかりで、多くの人々をワーキングプア化し、障がいのある人や老人を追いつめる政策を徹底的にとりました。後期高齢者医療も小泉・竹中改革で決めたことであって、福田さんはこの負の遺産の処理に追われています。
 次は民主党政権に変わるかもしれません。福田さんはそのことを覚悟しながらも、淡々と小泉・安倍の負の遺産を処理しているように思います。ねじれ国会で苦労をしながら日本の外交を日本の国際的地位にふさわしいものに改めようとする福田外交に私は賛辞を送ります(あまり福田さんをほめると9条の会の仲間の人たちからは“自衛隊を海外派遣できる恒久法を福田さんが作ろうとしているのではないか”と怒られますが・・・)

1【アジア 共に歩む】
                     (5月23日 朝日新聞 より)

<福田首相外交政策 防災協力訴える>

 福田首相は22日、東京都内でのシンポジウムで演説し、首相就任後初の包括的なアジア外交政策を発表した。太平洋を人や物資が行きかう「内海」に見立て、経済連携の強化を提唱。相次いだ自然災害を受けて防災協力に意欲を見せるなど「共に歩む」絆づくりを訴えた。30年後までを見通した日本のアジア外交の基本に位置づけたい考えだ。

 「太平洋が『内海』となる日へ」と題した演説は、首相の父の故福田赳夫元首相が1977年に発表した、東南アジア外交に関する基本原則「福田ドクトリン」を踏襲。日本とアジアのあるべき姿を「良いことを分かち合い、問題には共同で当る同僚同士のような関係」と表現した。
 首相は交通の発達で「太平洋は今や地中海のサイズに縮まってきており、これからさらに小さくなる」と強調。「開放」をキーワードに、「日本自身が開かれた多様性に生きることを原点」とすると述べた。
 アジアで日本が果たすべき具体的な行動として「5つの約束」を表明。①ASEAN(東南アジア諸国連合)共同体実現の断固支持②日米同盟の強化③平和協力国家としての尽力④知的・世代的交流の強化⑤気候変動問題への取り組み-を挙げた。
 ASEANは東アジア・太平洋の「地域協力の要」として「日本、中国、韓国に協力と統合のメッセージを発し続けた」と指摘。日本として将来的にASEAN担当大使やASEAN代表部を設置する考えを示した。今後30年間を「アジア格差解消の30年」と宣言。メコン地域などへの支援強化を打ち出した。
 日米同盟を「アジア・太平洋の安定装置」と位置づける一方、日本が「平和協力国家」として「苦労を惜しまず汗をかいていく」と表明。インド洋での給油活動などテロとの戦いを続けるとした。
 ミャンマーでのサイクロン被害や中国での四川大地震などを受け、「防災協力外交」の追求にも言及。アジア各国の緊急援助隊同士をネットワークで結び、鳥インフルエンザへの対応でも連携する「アジア防災・防疫ネットワーク」の構築を呼びかけた。
 さらに、アジア地域が「世界最大の温室効果ガス排出センターとなるのがほぼ確実」として、ポスト京都議定書の枠組み合意などを通した低炭素社会の実現など、気候変動分野での協力も訴えた。

<「対等に利益追求」を意識>

 福田首相が太平洋を「内海」とする国々の連携を呼びかけたのは、「日米同盟の強化とアジア外交の共鳴」を目指す自らの外交方針を、より具体的なイメージに発展させる狙いがある。

 さらに、首相は地域での連携を「学びあい、触発しあう関係」と位置づけた。アジア各国の経済成長は著しく、世界全体のGDPのうち太平洋地域は約6割を占め、域内の貿易額も5割近くに達する。地球温暖化や格差、防災・防疫など、国境を越えた連携が必要な問題も増える一方だ。
 「共に歩む」姿勢を鮮明にした演説は、日本がアジアで唯一の経済大国として地域を引っ張った時代から、対等な関係でお互いの利益を増進し合う時代に移ったことを強く意識した内容になっている。

2【アジア演説 福田さん、その言や良し】
                  (5月24日 朝日新聞 社説 より)

 アジアは世界史の主役に躍り出た。この地域のネットワークをさらに勢いあるものとするため、日本は他のアジア諸国や米国と一緒になって汗をかいていく-。
 福田首相がアジア太平洋地域の政治家や有識者を前に、都内でこんな演説をした。今後のアジア外交の基本について、考えをまとめたものだ。

 この演説からは、近年の日本外交が犯した二つの失敗の反省がうかがえる。ひとつは小泉首相時代の「日米さえよければ」という対米一辺倒から抜け出したことだ。中国との関係改善を軌道に乗せた自信がその背景にある。
 もうひとつの失敗は、安倍前首相や麻生元外相の「価値観外交」である。自由や民主主義という言葉を前面に押し立てるあまり、アジアなどの反発や疑心を招いた。
 演説では、北朝鮮の核や中国、ミャンマーの人権問題に対しては静かな語り口に終始した。抑制的すぎるとの批判もあるかもしれないが、強い言葉が必ずしも外交上の効果を生まないことも、首相が学んだ教訓なのだろう。
 首相は、日本の目指す将来像として「困った時に頼ってもらえる国、一緒に協力しようと思ってもらえる国でありたい」と語った。世界やアジアの平和のために、苦労を惜しまず汗をかく「平和協力国家」として自らを鍛えていくとも述べた。
 30余年前と比べると、日本の国際的地位も大きく変化し、担うべき役割や責任も様変わりだ。それを果たすには大変な覚悟がいる。だが、まずはこの福田演説、その言やよしである。

3【外相高村正彦氏 ASEANとの経済関係を強化】
                  (5月24日 日本経済新聞 より)

 1月にカンボジア、ラオス、ベトナムなどのメコン地域の外相を招いて「日メコン外相会議」を初めて開催した。日本はメコン地域を「希望と発展の流域」にする目標を立てており、経済協力の重点対象として政府開発援助(ODA)を注いでいく。
 日本企業にとっても貿易や投資などの面で必ず良い効果が見込めるはずだ、ちなみに(この地域の開発に力をいれている)中国とは政策対話を開き、政策の擦り合わせや情報の共有を図ろうとしている。
 ミャンマーは今月上旬にサイクロンが上陸し大きな被害を受けた。日本は緊急の物資とお金について計13億円を支援している。さらに人的支援の受け入れを決断することを期待する。
 2009年は「日メコン交流年」であり、人の交流は「信頼」を醸し出す。その上に「発展」を目指すため、民間投資を含んだオールジャパンの支援体制にしていきたい。日本企業がメコンのフロンティアで活躍できるようにする。
 メコンとの取り組みは「日本・メコン地域パートナーシップ・プログラム」と称し、3つの柱で構成される。民主主義や法の支配といった基本的価値をもり立てること、地域経済の統合と連携の促進、日本とメコン地域間の貿易・投資の拡大だ。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)にとって後発のメコン地域を伸ばすことはASEAN全体の利益であり、わが国自身の利益ともなる。
 ASEANが力を入れているのは域内格差の是正だ。日本は今後ともASEAN統合の支援、重層的な経済連携協定(EPA)による経済関係強化を通じ、ASEANにとってパートナーであり続けたい。

4【日本経済研究センター特別顧問竹中平蔵氏 誘致庁設立、投資呼び込め】
                  (5月24日 日本経済新聞 より)

 アジア各国では1997年の通貨危機を経て貯蓄率が上昇し、経常黒字と外貨準備の拡大が進んだ、その結果、アジアから米国への投資が進み、現在のサブプライム問題を招く要因にもなった。
 アジアが潜在的に抱えるリスクは4つある。「スタグフレーション(景気停滞下の物価上昇)危機」「短期資金の流入増による市場の脆弱(ぜいじゃく)化」「人口が多い国での非効率性の温存」「人口減少による市場の縮小」だ。
 日本はアジアで健全な競争が進むように自らの改革に取り組むべきだろう。4つ提案したい。
 まず、羽田空港の能力倍増を実現すること。羽田を24時間稼動させれば、東京はアジアのハブとなり、金融センターとしての地位も高まる。国内他地域の結び付きも強まり、国内経済の活性化にも役立つ。
 次に低率の法人税を適用する「スーパー特区」を設けること。日本の法人税は高く、企業競争力を阻害している。第3に投資誘致庁の設立だ。先進主要国でこうした組織がないのは日本だけ。アジアの政府系ファンドの資金を呼び込み、国内経済を強くすべきだ。
 最後に東大民営化。世界の大学トップテンに名を連ねるのは私立大学ばかりだ。強い経済に強い大学は不可欠。優秀な研究機関である東大を政府の制約から解き放ち組織を活性化すべきだ。

5【対アフリカ コメ2万トン援助】
                  (5月22日 日本経済新聞 より)

<政府方針 緊急食糧支援 第1弾>

 政府はアフリカ諸国などに5000万ドルを投じ、日本が保有するコメ約2万トンを中心に食糧援助する方針を固めた。23日に閣議決定する。4月に発表した1億ドル(約100億円)の緊急食糧支援の第1弾で、原則として世界食糧計画(WFP)を通じて援助する。28日からのアフリカ開発会議(TICAD)を控え、支援策を具体化する。
 支援対象はスーダンやケニア、コンゴ共和国などアフリカ諸国を中心にアフガニスタンとパレスチナを含めた12の国と地域。支援先の要望に応じ、コメや小麦を援助する。コメはケニアなど5カ国向けに2万トン程度。国際貿易のルールで日本が義務的に輸入している「ニミマムアクセス米」や、有事に備えて備蓄しているコメを使う。
 穀物の国際価格が高騰し、世界的な食料不足問題が表面化。政府は洞爺湖サミットの議長国として食糧問題の議論を主導したい考え。

6【デズモンド・ツツ名誉大主教◆アフリカ支援 感染症対策 日本が先導を】
                     (5月22日 朝日新聞 より)

 アフリカは今も、植民地政策の遺産、人種差別と不平等に苦しみ、多くの人々が極端に不安定な生活を強いられ、経済成長の可能性も損なわれている。このことを私は常に世界の人々に訴えてきた。相互依存が深まる世界においては、アフリカの不安定化は、全世界を弱体化させ、また、危機を招くことを意味する。この点からも、日本が推進する「人間の安全保障」とうい理念が、この上ない価値を持つことは明らかだ。
 日本はG8サミットに向けて指導力を発揮し、「アフリカ開発」議題の根底的な理念として「人間の安全保障」を堅持すべきである。90年代の日本の対外援助政策が世界に誇っていた誠実さと活力を取り戻し、「人間の安全保障」の一層の推進を実行に移すべきだ。

 世界基金は、結核及びマラリア対策の援助資金全体の3分の2強を拠出し、エイズ対策においても主要な財源となっている。残念ながら、日本の世界基金への拠出額は第6位にまで低下した。世界基金は既存のプログラムを継続して実施し、3大感染症の解決に向けて目標を達成するために、日本と世界からの支援を必要としている。
 G8サミットの主要議題に国際保健を掲げる決断をした福田首相に、心からの感謝を表明したい。日本は世界基金への支援を倍増し、新たに10億ドル(約1千億円)の拠出を誓約することで、大国としてのリーダーシップを確立すべきである。日本がこれまでの約束を果たし、国際保健問題の諸課題の解決に向けて指導力を発揮することを、世界の人々は待ち望んでいる。

7【対外純資産250兆円】
                 (5月23日 日本経済新聞 より)

 日本の政府や企業、個人が海外にもつ資産から負債を引いた対外純資産残高は2007年末時点で、前年末比16.3%増の250兆2210億円となり、過去最高を更新した。増加は2年連続。外国債券への投資が増えたほか、保有する外国株式の価格上昇で評価額が膨らんだ。国際通貨基金(INF)資料によると、17年連続で世界最大の債権国となった。

 対外資産と対外負債ともとも過去最高を更新したが、資産残高の伸びが上回ったため、差し引きの純資産残高が増えた。
 対外資産残高は前年末比9.4%増の610兆4920億円。日本の低金利を背景に、金利が高い中長期の外債への投資が拡大した。邦銀による海外への貸し付けなどが増加したこともあり、初めて600兆円の大台を超えた。

8【平和指数 日本は世界5位】
                    (5月22日 朝日新聞 より)

 <米97位 最下位イラク 英社調査>

 世界の中で、日本は5番目に平和な国-。英国の調査会社がまとめた世界平和指数(GPI)で、日本は140カ国・地域の中でかなり高い評価を得て、G8の中で唯一ベスト10入りした。
 1位はアイスランド、中国67位、米国97位で、最下位はイラクだった。
 英誌エコノミストと同じグループのエコノミスト・インテリジェンス・ユニットが20日に発表した。軍事費や近隣国との関係、人権状況など、単に戦争をしているかどうかだけではなく、平和な社会の実現に必要な24分野の指標を設定して割り出したという。昨年、121カ国を対象にしたのが最初で今年は2回目。
 日本は犯罪やテロの懸念、人権尊重など多くの分野で最高の評価だったが、近隣国との関係や軍事能力の高さなどが平和度にはマイナスと見られたようだ。
 ランキング高位には北欧諸国が目立つ。G8の中ではロシアが最下位とされた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月 3日 (日)

急減速の米経済とEU・中国・日本の経済

【私の意見】Up63

 今回も世界経済と日本経済についてとりあげました。日本株が下落し続けていることから、マスコミは福田内閣による「改革」後退、経済無策が日本丸の沈没を招いているとの論調を強めています。ほんとうにそうなのでしょうか。
 サブプライム問題に端を発した米経済の急減速は、バブル崩壊後の日本の比ではありません。破綻の規模が巨大であり、破綻の深さもまるで泥沼に足が吸い込まれていくような不気味さを感じます。1月31日から2月2日までの経済記事を並べてみました。12月までは日本経済も日本の大手企業も堅調に推移していることが伺えます。この中で銀行と証券会社の減益はありますが、米金融大手10社が07年後半だけで1千億ドルの損失を出したのと比べると日本の主要4行で6000億円(56億ドル)は桁が2つ以上違います。今年は日本経済も日本企業も米経済の急減速により大きな影響を受けることは避けられません。しかし日本企業はかつての米国一辺倒から、アジア・EUと幅広い国々にシフトしており、総体的に見れば日本経済も日本企業も足腰がしっかりしていると思います。ですから株価だけから日本丸が沈没するというマスコミの論調は皮相的で大げさすぎるというのが私の意見です。
 以下新聞記事をご覧の上、私と一緒に考えていただければ幸いです。

【自宅失い 配給の列に 
       サブプライム震源地 雇用減少も追い討ち】

                     (1月31日 朝日新聞 より)

 殺風景で人影が少ない商店や工場が立ち並ぶ一帯を抜けると、空のダンボール箱や大きな入れ物を持った人たちが長い列をつくっていた。米カリフォルニア州の都市ストックトン(人口約29万人)。困窮者に無料で食料を配る「緊急フードバンク」には、24日朝も配給が始まる30分前から、60~70人が寒い小雨のなか、無言で待つ。ぐずる赤ちゃんを抱いた20歳代の母親もいた。
 一抱えのパンや牛乳、缶詰やクッキーなどをもらいに来るのは1日最大約260人。低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題の深刻化とともに、昨年秋から急に増え始め、前年より3割ほど多い。失業中などの新顔が3分の1を占める。
 「4年半ここにいるが、最悪の事態だ。食と職に困った人が押し寄せてくる感じだ」と、総括のティム・バイアルさん。昨年のクリスマスには午前5時ごろから列ができ、長さは100メートルほどに達したという。
 失業中のジョン・ラッセルさん(32)は、サブプライム住宅ローンを返済できず、友人宅に身を寄せる。月収2000~2500ドルのうち、金利上昇でローン負担が約5割増え、1200ドル余りに膨らんだ上に、住宅不況で失業。返済が滞り、差し押さえられた家を立ち退き、子供3人と妻は州南部の実家に戻った。

 ストックトンは「サブプライム震源地」といわれる。州都サクラメント近郊としても住宅開発が急成長。同時多発テロがあった01年の景気後退を受け、03年までに政策金利が約46年ぶりに低い年1%に下がったことが強力な刺激となっていた。
 昨年から本格化したサブプライムローン金利の上昇が直撃。差し押さえ手続き中の住宅の割合は99世帯に1件と全米平均の6倍強で主要都市圏のトップだ。

私のコメント:日本では住宅金融専門会社(住専)、不動産会社、ゴルフ場経営企業、金融機関の破綻はあっても、国民が家を失い、配給に列をつくったということはほとんどありませんでした。

<サブプライム問題>

 低所得者層を主な対象にした高金利の融資が「サブプライム(準優良)ローン」。米住宅ローン総額約10.4兆ドル(約1100兆円)のうち11.5%の1.2兆ドル(約130兆円)を占める。
 2~3年ぐらい前までのカネ余りでローン会社の競争が激化。借り手の収入額を実際以上に膨らませ、融資額を増やしたケースも少なくない。サブプライム住宅ローンの約4割を占めるのが変動金利型。契約当初は客寄せで6~8%の金利が2~3年後には11~12%に上昇する例もあり、途端に返済できなくなる利用者は多い。
 全米の延滞率は07年7~9月期が過去最高の16.3%に上昇、同年には約129万件が差し押さえ対象になった。ピークの08~09年には約170万件(約3670億ドル)の金利が上昇し、約140万件が延滞・差し押さえに直面する懸念も出ている。

<米金融大手10社が1千億ドル超の損失>

 住宅不況は米経済を大きく揺さぶっている。サブプライム問題で、米金融大手10社は07年後半だけで1千億ドル超の損失を出し、企業倒産も急増。米国市場を震源とする株安は日本や欧州、世界景気を支えてきた中国など新興国にも連鎖した。
 30日発表された米国の昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)の伸び率は急減速し、米景気後退(リセッション)への強い懸念を反映した。
 ストックトンにある困窮者が無料で宿泊できる非営利団体(NPO)「ホームレスのためのシェルター」に身を寄せる家族数は、この1年間で前年同期より約15%多い計約450世帯。運営者のジョン・レイノルズさん(56)は「ホームレスは今後も増え、ひどい時期を迎えそうだ」と警戒している。

 サブプライム住宅ローン問題の危機の広がりは予想を超え、さらに深刻化している。米経済は急ピッチで減速し、新興国や日本も不安の連鎖に巻き込む。

【米国「貸し渋り」老舗倒産 大型開発も中止危機】
                      (2月1日 朝日新聞 より)

<老舗倒産>

 「昨年10月から銀行団に融資の借り換えをお願いしてきたが、受け入れてもらえなかった」
 米住宅関連メーカーで創業100年を超える老舗プロベックス社のマック・プリジャー副社長は振り返る。融資継続の望みが絶たれた同社は1月18日、連邦破産法11条に基づく会社更生法手続を申請し、倒産に追い込まれた。

<大型開発中止>

 全米屈指の観光地ラスベガス。巨大ホテルやカジノが並ぶメーンストリートに面した一角で、新たな大型施設「コスモポリタン・リゾート・アンド・カジノ」の建設工事が進んでいる。
 ところが、開発を進めてきた米著名デベロッパーのイアン・ブルース・アイクナー氏のもとに1月16日、大手銀行から融資の継続ができない、との通知が届いた。
 短期の資金繰りに行き詰ったとみられ、「最近の金融市場や不動産市場の厳しい状況は我々の制御不能だ」とアイクナー氏。新たな融資銀行などが見つからなければ、開発は宙に浮く恐れがある。09年に開業予定の2棟の52階建て「ツインタワー」は、まだ地上5階ぐらいまでの鉄骨をさらしたままだ。
 地元の調査会社は、4年後には複数の新設ホテルの開業で約4万室増える見込みと言うが、「完成が危ぶまれている施設は他にもある」との声も広がっている。

<金融保証会社の信用不安>

 一方、サブプライム問題で、今年に入り、新たに「モノライン」と呼ばれる金融保証会社の経営不安が浮上。米当局が救済策に乗り出したが、失敗すれば「世界の銀行が最大1430億ドルの追加増資を迫られる」(英バークレーズ・キャピタル)との試算も出てきた。米金融大手10社は07年後半だけで1千億ドルの損失を出し、資本増強に追われたが、さらに資本が毀損する恐れが出てきた。
 金融機関は損失が拡大した昨秋以降、資本増強だけでは自己資本比率を健全な水準に保つのが難しいため、分母にあたる資産の圧縮を急いでいる。

<リセッション>

 空前の好決算が相次いだ米企業の業績も昨年後半に失速。頼みの個人消費も07年の年末商戦は、百貨店など小売り大手の売上高が5年ぶりの低水準にとどまるなど振るわない。消費の減速は明らかで、企業業績や設備投資には暗雲が漂う。
 サブプライム問題をきっかけにした「貸し渋り」の拡大。企業経営者たちは「リセッション(景気後退)」の足音に耳をそばだてながら、金融機関の動向に神経をとがらせている。

私のコメント:05年末の日本の対外純資産は180兆6990億円で過去最高水準です。15年連続で世界最大の債権国です(イミダス2007版より)。国民は1400兆円の貯金がありました。今は株とあわせて1500兆円の金融資産があります。「失われた10年」と言われ、日本では悲観的な見方が支配的でしたが世界の中で日本経済をみつめると何も失っていなかったのです。今も同じだと思います。

【負のらせん EU懸念 新興国に影響じわり】
                      (2月1日 朝日新聞 より)

<EU>

 ドイツ政府は08年の成長率について、昨春時点の2.4%を秋に2.0%に引き下げ、1月に入って1.7%に再び下方修正した。
 低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題が最初に飛び火した欧州。金融機関は巨額の損失を出し、金融市場の動揺が続く中、1月下旬、創業140年を超す英国靴売り大手「ドルシス」が経営破綻した。景気の先行き不安を感じ取った消費者は財布のひもを固くし、売上不振に拍車がかかった。
 景気後退とインフレが同時に進む(スタグフレーション)最悪のシナリオに対する懸念も台頭し始めた。
 欧州連合(EU)統計局は1月31日、ユーロ圏の消費者物価の上昇率が3.2%(1月分の速報値)だと発表。99年にユーロが導入されて以来、最大の上昇幅となった。
 「物価がスパイラルのように上がっていく事態を受け入れることはできない」。欧州中央銀行のトリシェ総裁は時に、らせん状に指を動かしながら、物価上昇が次々と波及していく事態への懸念を強調する。

<新興国>

 一方、世界景気を支えてきた新興国。ソファ、テーブル、タンス・・・。中国南部の広東省は、家具生産で全国の3分の1を占める輸出拠点だが、地元業界団体には工場経営者から不安の声が寄せられている。中国からの家具輸出222億ドル(07年)の半分前後を占める米国で住宅販売が低迷し続けると、「我々にも必ず影響が出る」(中国家具協会の朱長嶺副理事)という。
 家具に限った話ではない。中国全体の対米輸出は07年に前年比14.4%伸びたとはいえ、12月だけ見れば伸び率は6.8%に急減速した。
 株価の動きがそれを映し出す。1月22日の世界同時株安では上海、深圳での上場銘柄の過半がストップ安に。上海株は、このところ5%を超す急落を重ねている。
 アジア諸国も同じだ。

<日本>

 そして日本。6大金融・銀行グループの07年度のサブプライム住宅ローン関連の損失が、6000億円を超える見通しとなった。昨年11月時点から2倍になった。さらに国内では住宅着工件数の低迷が続き、関連産業にも影響が広がっている。石油製品や食品の値上がりも加わり、消費者心理は急速に冷え込みつつある。
 不安の連鎖が広がる中、主要7カ国財務省・中央銀行総裁会議(G7)が9日、東京で開催され、新興国の代表も参加する。国際協調でどんな対策を打ち出すのか、世界が注視している。

【日本経済の現状】

 1月31日~2月2日までの日本経済新聞と朝日新聞の日本経済に関する記事を並べてみました。

<実質1.5%成長予測 10-12月GDP年率 外需頼み、先行き不安 民間15機関平均>
                       (2月2日 日本経済新聞

 内閣府が14日発表する2007年10-12月期の国内総生産(GDP)速報値について民間調査機関15社の予測が出そろった。予測平均は物価変動影響を除いた実質で前期比0.4%増、年率換算で1.5%増の伸び。2・4半期連続で潜在成長率(1%台半ばから後半)並みの成長を確保するとはいえ、中身は前期に続く外需頼み。先行きの不安を残す。

私のコメント:労働コストを下げるだけで、賃金をおさえているばかりでは内需の起こりようがありません。外需頼みは国策の結果です。

<上場企業、経常益10.7%増 昨年4-12月 新興国けん引 米景気の減速警戒 本社集計>
                      (2月2日 日本経済新聞

 企業収益の拡大が続いている。日本経済新聞社が1日発表分までの2007年4-12月期連結業績を集計したところ、連結経常利益は前年同期と比べ10.7%増えた。経済成長の続く新興国で事業展開する建設機械や自動車、海運などがけん引した。ただ米景気の変調や円高進行などで足元では減速感が強まっており、全体の8割の企業が08年3月期通気の予想を据え置いた。年明け以降の連鎖株安など収益環境の悪化から経営者は慎重姿勢を強めている。

<キャノンが最高益 07年12月期連結 デジカメなど好調>
                         (1月31日 朝日新聞

<ホンダ売上高増 前年同期比11.9%>
                         (1月31日 朝日新聞
 07年4~12月期連結 売上高・営業利益のいずれも過去最高を更新

<車の輸出割合 56.5% 過去最高>
                         (1月31日 朝日新聞
 国内市場縮み、新興国需要拡大

<商社5社が過去最高益>
                          (2月1日 朝日新聞
 資源高騰などから

<ソニー・松下 純利益最高>
                       (2月1日日本経済新聞
 10-12月期 欧州・アジア好調
 米は先行き不透明

<8大銀 45%減益>
                       (2月1日日本経済新聞
 4-12月 サブプライム重しに
 みずほ関連損  3950億円  通期

<サブプライム 主要4行 損失6000億円超>
                          (2月1日 朝日新聞
 3月期見通し 信用不安広がる

<証券12社 減益・赤字に>
                        (2月1日日本経済新聞
 株安影響 法人部門が苦戦
 準大手・中堅の健闘目立つ 新興国シフト実る

<日産、営業益9%増 4-12月 米国向け販売堅調>
                       (2月2日 日本経済新聞

<トヨタ 中国新工場>
                       (2月2日 日本経済新聞
 吉林省に建設検討、年産100万台体制へ

<シャープ 10-12月 営業益6%増>
                       (2月2日 日本経済新聞
 液晶パネル、利益 5割稼ぐ

 
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月21日 (月)

福田首相の施政方針演説と株価暴落

 2008年1月18日第169回通常国会が招集され、福田首相は同日午後施政方針演説を行いました。森、小泉、安倍と3代続けて知性と分別を欠く首相が続いたあとだけに、私には福田首相の演説は久々の分別ある政治家の施政方針演説としてほっとした気持ちで受けとめました。補給支援特措法を衆議院の再決議で成立させるなど福田首相について納得できない点はありますが、これまでの3人の首相と比べると生活者の目線で国民とまっすぐに向きあおうとする姿勢を感じました。ただし、福田首相の施政方針演説は自民党の振り子の法則によって、右に寄りすぎたのを一時的に左に寄せただけで、生産者、供給者の側に立つという自民党の本質はいささかも変わるものではありません。
 その上、すぐに短絡的思考に走りがちな日本のマスコミは福田内閣の経済無策が株価暴落・日本丸沈没をもたらしていると合唱をはじめました。

【基本方針】

 福田首相は5つの基本方針を掲げています。

 第1に、生活者・消費者が主役となる社会を実現する「国民本位の行財政への転換」
 第2に、国民が安心して生活できる「社会保障制度の確立と安全の確保」
 第3に、国民が豊かさを実感できる「活力ある経済社会の構築」
 第4に、地球規模の課題の解決に積極的に取り組む「平和協力国家日本の実現」
 第5に、地球温暖化対策と経済成長を同時に実現する「低炭素社会への転換」
 以上5つの基本方針に基づき、私は、国政に取り組んでまいります。

【国民本位の行財政への転換】

 基本方針の第1について次のように述べています。

 国民に新たな活力を与え、生活の質を高めるために、これまでの生産者・供給者の立場から作られた法律、制度、さらには行政や政治を、国民本位のものに改めなければなりません。国民の安全と福利のために置かれた役所や公の機関が、時としてむしろ国民の害となっている例が続発しております。私はこのような姿を本来の形に戻すことに全力を傾注したいと思います。
 今年を「生活者や消費者が主役となる社会」へ向けたスタートの年と位置付け、あらゆる制度を見直していきます。

 首相が既存のものを「生産者・供給者の立場から作られた法律、制度、行政、政治」と言い切ったのには驚きました。社民党の福島瑞穂氏や消費者側の弁護士の発言とあまり変わりがありません。

<国民の信頼を取り戻す行財政改革>

 高齢化の進展に伴い、年金や医療など社会保障に要する費用は増加せざるを得ません。地球温暖化問題など新たな時代の課題への対応も必要となってきます。行政に対する信頼を回復するとともに、国民生活に真に必要な分野の財源を確保するため、徹底した行財政改革を断行します。

 「国民生活に真に必要な分野の財源を確保するため」に行財政改革を行うのだと言い、何のための行財政改革かを保守党の首相が明言したことも驚きです。

【社会保障制度の確立と安全の確保】

 基本方針の第2については次のように述べています。

<給付を受ける側に立った社会保障制度の再構築>

 国民生活の基盤を支える医療、年金、介護、福祉などの社会保障制度については、少子高齢化の進展などにより、制度の持続可能性が問われています。これまで、給付やサービスを受ける方々の立場に立った行政を本当に行ってきたのか、反省すべき点が多いと思います。今こそ、国民の皆様の立場に立って発想を切り替え、自立と共生の理念に基づき、将来にわたり持続可能で、皆が安心できるよう、社会保障制度を立て直さなければなりません。

 ここでも給付サービスを受ける側の立場に立った行政を強調しています。

【活力ある経済社会の構築】

 基本方針の第3については次のように述べています。

<中小企業や農業の活力を引き出し、すべての人が成長を実感できる全員参加の経済>

 第3は、雇用拡大と生産性向上を同時に実現し、すべての人が成長を実感できるようにする「全員参加の経済戦略」の展開です。意欲ある人が皆働けるように、女性と60代の方の労働参加率の引上げやフリーターの減少について、少なくとも政労使の合意に基づく数値目標を達成しなければなりません。また、労働分配率の向上に向けて、正規・非正規雇用の格差の是正や、日雇い派遣の適正化等労働者派遣制度の見直しなどを行います。各分野で高い能力、知識を持つ専門家の育成に力を入れるとともに、特に女性の参画が進んでいない分野に重点を置いて、女性の働く意欲を引き出すことができるよう、「男女共同参画社会」の実現に向け戦略的に取り組んでまいります。
 我が国経済の活力を支えるのは中小企業の底力です。日本の強みである「つながり力」を更に強化し、地域経済の活力の復活と中小企業の生産性の向上を実現するため、地域連携拠点を全国に200から300か所整備します。

 活力ある経済社会は女性、高齢者、フリーター、非正規雇用労働者、中小企業、農業従事者など日本の社会から置き去りにされてきた人々を含めて全員参加で実現すべきことを述べています。強者や大企業中心に活力ある経済社会をめざした小泉、安倍路線の軌道修正が汲みとれます。

【世界の平和と発展に協力する外交の推進】

 基本方針の第4について次のように述べています。

<「平和協力国家日本」>

 平和協力は狭義の安全保障の分野には限りません。貧困の解消、保健衛生状況の改善などは、人道上の要請であるとともに、すべての人々に「希望と機会」を与え、平和と安定への道を用意するものです。本年我が国で開催されるアフリカ開発会議やサミットなどにおいて、こうした「人間の安全保障」面での課題解決に向け、G8各国やEUとも協力してまいります。また、自然災害の多発する我が国が蓄積したノウハウを海外の防災に役立たせるよう、国際協力を進めます。

 平和で安定した国際社会は、日本にとってかけがえのない財産であり、日本ができるだけの協力を行う必要があります。日米同盟と国際協調を基本に、これらの地球規模の課題の解決に積極的に取り組み、世界の平和と発展に貢献する「平和協力国家」として、国際社会において責任ある役割を果たします。地域や世界の共通利益のために汗をかく、魅力に満ち、志のある国を目指したいと思います。

 平和協力は狭義の安全保障の分野には限らないとし、人道支援を視野において述べています。施政方針演説で日本の首相がアフリカについて触れたのは少しうれしくなりました。

【「低炭素社会」への転換】

 基本方針の第5について次のように述べています。

 地球環境問題は21世紀の人類にとって最も深刻な課題です。一刻も早く、国際社会の協力の下に、全地球的規模で、温室効果ガスの削減に取り組んでいかなければなりません。我が国は、これまで、徹底的に省エネ技術の開発や導入を進め、世界最高のエネルギー効率を実現しました。こうした「環境力」を最大限に活用して、世界の先例となる「低炭素社会」への転換を進め、国際社会を先導してまいります。

【憲法に関する議論の深化】

 安倍前首相が熱い思いで成立させたばかりの国民投票法について改正の議論を呼びかけたのにはびっくりしました。

 国の基本を定める憲法に関する議論につきましては、昨年の通常国会で関係各位のご努力により、国民投票法が成立しました。もとより国会が決めるべきことではありますが、今後は国会のしかるべき場において、国民投票法の審議過程で積み残された諸課題や、改正するとすればどのような内容かなど、すべての政党の参加の下で、幅広い合意を求めて、真摯な議論が行われることを強く期待しております。

 数は力なりと強行採決した安倍前首相を批判しているのに等しい発言です。

【日本経済新聞 論評 「株安、危機感乏しく」】
                    (1月18日 日本経済新聞 より)

 日経新聞は「株安、危機感乏しく」という見出しで福田首相の施政方針演説を次のように批判しています。

 福田康夫首相が施政方針演説で消費者行政の一元化などを打ち出すのは、生活密着型の「福田カラー」によって内閣支持率の低迷にあえぐ現状打開のきっかけをつかむ狙いがある。だた、日本経済を揺さぶる最近の急激な株安を食い止めるだけの具体的なメッセージには乏しく、危機感も伝わってこない。

 演説の柱の一つとして経済成長戦略の加速を掲げるのは、世界経済に占める日本の急速なシェア低下を受け、国際競争力の行方に不安を募らせているためだ。
 最近の株価下落や原油高への対応にもひとまず触れている。とはいえ市場で「経済無策」との声も漏れるなか、福田政権として打ち出す効果的な対応策は見当たらない。
 
 国民は明確なビジョンと実行力を求めている。政策の混迷や閉塞(へいそく)感は果たして国会のねじれだけによるものなのか、福田政権の体質にも原因があるのではないか。こんな声も漏れている。

【朝日新聞 社説 「では『改革』はどうする」】
                      (1月19日 朝日新聞 より)

 トーンは日経新聞とは違いますが、朝日新聞の社説は「では『改革』はどうする」という見出しで次のように述べています。

 米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き問題から、世界経済には暗雲が広がっている。そのなかでも日本市場の低迷ぶりが際立っている。財政再建など改革への取り組みがスピードダウンしていると見られていることが、その原因のひとつと指摘される。
 そうした大波に抗して、この国をどう引っ張っていくつもりなのか。国民への目配りを重視する首相の思いは理解できるが、内向きばかりに目を奪われて日本丸が沈み始めては元も子もない。
 癒しの政治も、経済の安定なしには立ち行かない。福田流の「改革」をもっと明確に語ることだ。それなしに国民本位と言われても、説得力がない。

【日本の経済の実態】

 マスコミは福田内閣の「改革」軽視、バラマキによる経済無策が世界で日本だけが株安、円安に低迷し、経済を失速状態にしたとの合唱をはじめようとしています。
 私は日本の実態経済はそんなに悲観するほどやわなものとは思いません。次の2つの記事をご覧下さい。

<株安、欧米・アジアで加速 下落率日本と並ぶ 米景気減速懸念強まる>
                   (1月20日 日本経済新聞 より)

 欧米やアジア市場でここへ来て株価の下落が加速し、下げの大きさが際立っていた日経平均株価に並んできた。米景気が本格的に減速し始めたとの見方から世界的に経済の先行き懸念が高まったことが背景にある。
 1月第2週時点(11日まで)の日経平均の年初来下落率は7.8%で3-4%前後の各国指数に比べて下げが大きかった。しかし第3週時点(18日まで)ではほぼ横並び。日経平均は9.4%と以前下げ幅が大きいが、香港が9.4%、フランスやドイツも9.3%など、下げ幅が並んできている。米英も9%近い下げになった。

<金融機関08年、本社調べ 日本でファンド融資拡大>
                   (1月20日 日本経済新聞 より)

 国内外の金融機関が日本で買収ファンド向けの融資を拡大させる。日本経済新聞が実施した調査によると、2008年の計画を示した大手銀行や外国証券など14社は合計で2兆円超の買収融資を用意、07年実績の3倍強に増やす。欧米では信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の影響で金融機関が融資を手控えており、大型のM&A(合併・買収)は事実上ストップ。影響が軽微な日本市場で攻勢をかける。
 
 欧米では昨年8月以降、サブプライム問題の余波で金融機関が融資に慎重になり、M&Aの件数や金額が急減。融資を実行した後、債権を別の投資家へ転売するのを前提にしているが、この株価も下落しており、損失も膨らんでいる。
 ところが、日本では巨額の損失を計上した欧米の一部金融機関を除き、積極的な融資姿勢を維持している。
 ある外国証券会社によると、世界的な大手買収ファンドは欧米市場で融資がつかないため、日本やアジア市場に目を向けているという。

 日本株だけが株安でないこと、日本の企業は健全なため世界の資金が日本に集まりつつあるということが伺われます。

【私の感想】Up63

 私はバブル崩壊直後の企業再建で再建途上の企業の代理人としてたくさんの金融機関を回り協力を要請しました。その頃は日本の金融危機は本格的にははじまっていませんでした。訪ねた金融機関の支店長が「株価も下がるし銀行としても大変です」と言ったのを聞き、株に疎い私は“なぜ、銀行が株のことを気にするのなかな?融資先企業の財務体質のことを考えればいいのに・・・”という疑問を持ちました。銀行の資産の相当割合を株式が占めていることを当時の私は思っていなかったのです。小泉・竹中改革が“貯蓄から投資へ”の流れを国策としてつくったため、株安は銀行のみならず国民一人一人の金融資産の下落を意味するようになりました。馬券を買って一喜一憂する程度ならまだいいですが、かなりの日本人の生活が株価の動向に左右される社会が活力ある健全な社会とは私は思いません。株価に一喜一憂することなく、国民一人一人が社会にささやかなものであってもプラスを生み出そうとする志をもてる国づくりをめざしたいものです。

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2007年12月30日 (日)

日中首脳会談 福田首相北京大学で講演

                     (12月29日 朝日新聞 より)

【福田首相 北京大学講演要旨】

 訪中の目的は、昨年秋以来、力強い足取りで発展しつつある日中関係の基盤をより強く踏み固め、新しい段階に引き上げることにある。
 歴史上、日中両国が共に、今ほどアジアや世界の安定と発展に貢献できる力を持ったことはない。中国の皆さんに伝えたいのは「日中両国は、アジア、世界の良き未来を築き上げていく創造的パートナーたるべし」という私の強い信念だ。
 長い歴史の中で不幸な時期があっても、しっかりと直視して、子孫に伝えていくことがわれわれの責務だ。戦後、わが国は一貫して平和国家としての道を歩み、国際社会に協力してきたことを誇りに思っているが、自らの過ちに対する反省と、被害者の気持ちを慮(おもんぱか)る謙虚さを伴なったものでなくてはならない。過去をきちんと見据え、反省すべき点は反省する勇気と知恵があって、はじめて将来に誤りなきを期すことが可能になる。同時に、日中の歴史を俯瞰(ふかん)する時、長い、実り多い豊かな交流があったことを忘れてはならない。
 両国は互いの友好のみに安住する国であってはならない。互いの政治的、経済的重要性を真正面から見据え、地域や国際社会における諸課題解決のために、いかに協力できるかを議論すべき時だ。
 両国間には克服すべき課題も存在する。日中という大国同士で、すべての問題で考え方や立場が一致することはあり得ない。相違点を冷静に議論し、共に対応していくことが不可欠だ。相互理解や相互信頼がまだまだ足りない。日中関係の歴史や様々な経緯、国際情勢の流れに思いをいたさない大局観の欠如、折々の感情に流されて、ことを進める危険性も指摘しておかなければならない。
 近い国同士だからこそ、互いになぜ相手は自分のことをよく分かってくれないのかといういら立ちが生じがちだ。互いをいかに理解すべきかという基本的な認識が揺らいでいる。極めて短期間に大きな発展を遂げた中国、巨大な存在として出現した隣人に対して、日本側では、どのようにお付き合いすべきなのか心の準備ができていない面がある。中国側でも、日本が国際社会でより大きな政治的役割を求めていることに、複雑な感情があるように見受けられる。
 私たちは、改めて相互理解を深める努力が必要だ。私は三つの交流、①青少年交流②知的交流③安全保障分野での交流-を強化していくことが、対話・理解・信頼の好循環を生み出す最善策であると考えている。
 日中は互いの文化や伝統を共有し、その中で互いによって立つ基盤を共有してきた。人権、法治、民主主義といった普遍的価値を共に追求することも重要だ。
 中国の偉大な作家、魯迅はその作品『故郷』で次のように書いている。
 「思うに希望とは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」。共に歩き、共に道を造り、共に私たちの未来をつくりあげていこう。

【共同記者会見要旨】

<歴史認識、台湾問題>
福田氏  わが国の立場は日中共同声明にある通りで、何ら変更していない。台湾の独立も支持していない。心から平和解決を望み、対話の早期再開を強く希望する。一方的な現状変更の試みは支持できない。台湾の住民投票をめぐって緊張が高まることは望んでいない。一方的な現状変更につながっていくのであれば(住民投票は)支持できない。
温氏   歴史問題と台湾問題に正しく対処することは中日関係の政治的基盤を強化するうえで極めて重要だ。福田首相が台湾の国連加盟の賛否を問う住民投票を支持しない立場を表明したことを評価したい。

【住民投票問題 首相「不支持」
               台湾、「支え」なくし衝撃】

 日中首脳会談で福田首相が台湾名義の国連加盟の是非を問う住民投票に対し、「一方的な台湾海峡の現状変更につながるのであれば、支持できない」と発言したことに対し、総統選と同日の3月22日の住民投票を推進する陳水扁政権に強い衝撃が走った。米国や中国から台湾への圧力が強まるなか、日本が反対を表明していなかったことが台湾の「支え」だったからだ。
 台湾外交部(外務省)は28日、「住民投票は台湾海峡の現状を変えるものではなく、日本や国際社会は台湾人の知恵を信じてほしい」との声明を出し、衝撃を和らげるのに躍起になった。
 日本側の台湾窓口、交流協会台北事務所の池田維代表も同日、台湾の黄志芳外交部長らと面会。「現状変更があればという前提つきで、根本的な立場の変更ではない」と説明したという。
 台湾の住民投票に対してはライス米国務長官が「挑発的行動」と批判。フランスのサルコジ大統領も「正当化できない」と述べるなど、包囲網は狭まる一方。その中で日本は「台湾の国連加盟は支持しないが、住民投票は台湾住民の民主的権利」としていた。
 野党国民党からの批判をかわすうえでも日本の姿勢はありがたく、民進党の総統候補の謝長廷氏は今月の訪日時、「もし日本が住民投票に反対すれば民進党には打撃だ」と漏らしていた。
 小泉、安倍政権のもとでは、台湾観光客のビザ免除や運転免許の相互承認など日台関係が地道に強化されてきた。台湾側は「72年の断交以来、最高の日台関係」と評価していた。
 だが福田政権になって日本の姿勢が変わる可能性を台湾も察知。福田首相訪中前に日本の国会議員など様々なパイプを通じ、中国に譲歩しないよう水面下の働きかけをしていた。
 この日、陳総統の外交政策ブレーンは「事前の情報では福田首相はあそこまで踏み込むという話しではなかった」とこぼした。

【私の感想】Up63

<講演にはガッカリ>
 北京大学における福田首相の講演「自らの過ちに対する反省と、被害者の気持ちを慮(おもんばか)る謙虚さを伴ったものでなくてはならない。過去をきちんと見据え、反省すべき点は反省する勇気と知恵があって、初めて将来に誤りなきを期すことが可能になる」は、加害当事国の首相の発言ではない。第三者的立場の学者の評論のようで、福田さんにガッカリ。自民党内のタカ派や日本国民に高まりつつある愛国主義を意識してこんな中途半端な講演になったと思いますが、自民党内で主流になりつつある右翼的政治家が福田さんの後継を狙っていることを思うと、ここはもっと村山談話を継承し、さらに発展させる講演をしてほしかったと思います。「日中という大国同士」という決めつけも、尊大で福田さんらしくありません。アジアの他の国は小国と言っているようなものです。

<中国と台湾>
 中国との友好関係を重視する立場から、台湾の独立に反対するというのが欧米諸国の基本的スタンスです。
 私個人の見解としては台湾の将来は台湾に住む人たちが決めるのが正しいと思います。台湾が中国の主権に属すると言っても、歴史をさかのぼると台湾は生まれながらに中国と一体の国とは言えません。第二次大戦で蒋介石が逃げてきて中華民国を樹立したのですが、台湾の住民にとっては蒋介石もよそ者。戦後62年がたち台湾に住む人々の住民自治を認めるべきだと思います。ただし、この点については中国との信頼関係を確立できていない微妙な立場にある日本の首相としては「台湾の住民投票支持」と踏み込むことができなかった事情はわからないでもありません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年12月25日 (火)

政府途上国開発援助と改革と国家の品格

【途上国援助 じり貧を食い止めよう】
                     (12月23日 朝日新聞 より)

 かつて世界一の座にあった日本の政府途上国援助(ODA)が、3年後には世界6位に転落する。経済協力開発機構(OECD)がこんな推計を発表した。
 06年時点の実績値では米国、英国に次ぐ3位だった。これからは独仏に抜かれ、イタリアにも追いつかれる。
 日本は91年から10年連続、ODA世界一だった。信じられないような凋落ぶりである。国連機関への拠出額も軒並み、順位を下げている。
 来年度の予算原案では、技術協力や無債資金協力に使われるODA予算は約7千億円。今年度より4%少なくなる。昨年決めた「骨太の方針」は、ODA予算を11年度まで毎年2~4%ずつ削るとしている。
 これだけ長期にわたる削減が、国際社会での日本の存在感、発言力をどれだけ損なうことか。真剣に考えるべき時だ。
 欧米諸国は近年、ODA増額へ大きくかじを切っている。00年に国会で合意されたミレニアム開発目標の達成を目指し、多くの先進国は途上国支援に本腰を入れているのだ。
 そのなかで、日本は逆に一貫して援助を削減してきた。いまやODA予算が一般拠出に占める割合は、今年度1.6%にすぎない。国民1人あたりのODA負担額は1万円強。先進22カ国中で17位という低さである。
 このじり貧状態を放置してはならない。少なくとも従来の機械的な削減には終止符をうち、中期的な増額に向けて青写真を描くべきだ。国家予算を考えるうえで、途上国支援の優先順位があまりにも低すぎる。
 厳しい財政事情のもとで、人を助ける余裕はない、ということかもしれない。だが、途上国支援は単なる人助けではない。日本が国際社会で発言力を持ち、尊敬され、頼りにされる国であるための国家戦略の重要な手立てなのだ。
 私たちは今年5月、日本が今後とるべき戦略として「地球貢献国家」をめざすべきだという提言社説を発表した。
 貧困や紛争などの解決や地球環境のため、いわば世界の世話役として積極的な役割を果たしていく。平和憲法を持つ国として非軍事の手法を重視し、民生の分野で貢献していこうという提言である。
 ODAはそのための大事な手段だ。なのにこの10年でODA予算は4割も減り、一方、防衛予算は毎年ほぼ同じ規模を保っている。海外から見れば、日本はどんな国を目指すつもりなのか、首をかしげたくなるのではないか。
 来年には洞爺湖サミットが開かれる。地球温暖化防止をめぐる合意づくりが大きな課題となる見込みだが、世界の貧困対策もそれと並ぶ重要性を持つ議題だ。
 この面で日本はどのような役割を果たすつもりなのか、福田首相には明確なメッセージを発してもらいたいと思う。ODA予算の削減を続けるばかりでは、話にならない。

【一段と戦略問われるODA】
                  (12月23日 日本経済新聞 より)

 発展途上国を支援する政府開発援助(ODA)は、日本外交の重要は手段の一つである。ところが、財政の制約からその額が年々減り続けている。2007年版ODA白書は、円借款の返済分を差し引いた支出純額で見た昨年のODA実績が前年比15%減となり、米英に次ぎ第3位に転落したことを再確認した。
 援助での日本の地位低下は残念だが、やむを得ない面もある。白書も指摘するように今後はコストを減らし、対象プロジェクトを厳選しながら援助の量を確保するという難しい課題に挑まなければならない。
 経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)の予測では、日本は今後も地位を下げ、10年にはドイツ、フランス、イタリアにも抜かれて、第6位に転落する可能性がある。
 日本政府は昨年7月に経済財政運営に関する「骨太の方針2006」を決定し、その中にODA予算を07年度から11年度までの5年間に毎年2-4%減らすことを盛り込んだ。08年度のODA予算もこの方針に沿って策定し、財務省原案は今年度比4%減とした。
 世界第6位への転落は決して現実味のない話ではない。ほかの先進国が対外援助の増額へ向け努力する中で、日本の立場は苦しい。
 とはいえ、いま財政再建の旗を降ろすわけにはいかない。11年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する政府目標は堅持しなければならない。財政の立て直しが進んでこそ、援助対策も安定的に進めることができる。
 ODA予算を再び増やせる日がくるよう期待したいが、当面は額の制約が続く。したがって日本は、これまで以上に援助を戦略的に進めなければならない。白書は官民の連携強化を促し、資源・エネルギーの確保、地球温暖化への対応など、対外援助での重要分野に言及している。
 日本は来年、アフリカ開発会議(TACAD)と主要8カ国(G8)首脳会議を主催する。アフリカ支援は対中円借款の新規供与を今年度で打ち切る中で、今後の重点項目となる。2つとも援助問題における日本の手腕が問われる大きな会議であり、成功を期待したい。

【改革が根付かない国】
                  (12月24日 日本経済新聞 より)

 [日本経済新聞コラムニスト:土谷英夫] 今日決まる08年度予算案と、先週決まった07年度補正予算案から透けて見えるのは、近づく総選挙へのおびえだ。東京都など大都市の法人事業税を一部召し上げ地方に配る。農家への補助金は上積み。高齢者医療費の負担増を凍結し、医師の診療報酬(本体)は8年ぶりに引き上げる。
 政府部門の改革の成績は財政収支に表れる。埋蔵金(特別会計の余剰金)取り崩しなどで新規国債発行を前年度より抑える粉飾をほどこしても、5年ぶりの基礎的財政収支(プライマリーバランス)の悪化は隠しようがない。バラマキ復活の動かぬ証拠だ。独立行政法人の改革も官の壁を崩せず小粒に終わった。
 だれが改革を損ねたか。国会の「ねじれ」後にカジを託された福田康夫首相よりも、郵政選挙での衆院3分の2超の与党議席と、いざなぎ超え景気という小泉政権の遺産を引き継ぎながら、改革のバトンをつなげなかった安倍晋三前首相の責任が重いだろう。広報担当の首相補佐官だった世耕弘成参院議員に聞いた。
 安倍政権は、市場志向の「小泉改革の継承者」と、憲法や教育基本法の改正を目指した「保守主義者」の2つの顔があった。その失敗を突き詰めると、推進者も、支持層も異なる2つの流れを融合できず「また裂き」にあったことだろう。改革も保守主義も後退し、あぶはち取らずだった。
 もっとも、野党政権なら改革が進むとも思えない。民主党参院選公約のバラマキ農政や絵に描いたモチの財政案は改革から遠い。改革のひずみと「格差」を責め立ててきたし、参院で野党を束ね郵政民営化見直し法案を通してもいる。ひょう変できるだろうか。
 なぜ改革が大切なのか。世界が一つの市場に統合されつつあるグローバル化-その波にうまく乗った国は栄え、乗り損ねた国は廃れる。波乗り競争に勝てる体制づくりが第一。第二に少子高齢化という人口構造の変化に応じて社会保障制度などを持続可能な仕組みに改修することだ。
 来年は総選挙があるはずだ。どんな組み合わせの政権でも、この改革を果たさないと、未来は開けない。

【私の感想】Up63

<世界の勝ち組>
 日経新聞のコラムニストは「なぜ改革が大切なのか。世界が一つの市場に統合されつつあるグローバル化-その波にうまく乗った国は栄え、乗り損ねた国は廃れる。波乗り競争に勝てる体制づくりが第一。」と力説しています。しかし、日本はグローバル化時代の経済競争では世界で最も波乗りに成功している国です。国内でリストラを敢行し、非正規雇用を増やして労働コストを削減しながら海外の最も低賃金の国々に工場を移し安い労働力を使い日本の企業は海外企業の追随を許さない地位を占めつつあります。これは小泉・竹中改革のおかげではありません。小泉・竹中改革の以前から日本は潜在的に強い経済力をもっており、資産的にも富んだ国でした。小泉・竹中改革は毎年3万人を超える自殺者、30代のうつ病、中高生の意欲と学力の低下という負の部分を増大させただけです。

<資本家国家日本>
 日本の貿易収支は年々黒字を積み重ねていますが、今では資本収支の黒字高の方が貿易収支の黒字高を超えています。前にも述べましたが、日本は世界に冠たる資本家国家となり、日本人総体は世界に冠たる資本家集団となりました。日本人全体が現在世界から稼いでいる利益は正直者へのごほうび、働き者へのごほうびの域をはるかに超えています。今の日本の繁栄は海外の資源を原材料として思う存分に使い、海外の労働者を低賃金で雇うことにより成り立っています。いくら弁明しても日本人の今の繁栄は、日本人がもともともっている資源と日本人自身の労働力を超えています。

<いつまでも最貧国の発想から抜け出せない>
 日本は第二次大戦後廃墟の中から出発しました。資本家国家となった今もなお戦後の成功物語を金科玉条に日本人と日本政府のありようを説くのはまちがっています。戦後の日本の成功物語は気のいいアメリカ政府と寛大な当時の中国政府の対日政策のおかげによる部分が多いと思います。いつまでも最貧国の発想から抜け出せない日本政府や経済人やマスコミにはうんざりする思いです。ノブレス・オブリージュ(富者の義務)は国家にも適用されることです。日本政府の財政赤字といっても海外に借金しているわけではなく、日本政府が日本国民から国債という形で借りているだけで、あくまでも国内問題です。途上国と言われているアフリカや南アジアの国々の悲惨な現状からするとお話にならない国内問題で、コップの中の嵐にも該当しません。国のありようについて、経済競争に勝つことだけでなく、もっと広い視点で考えていかないと、日本と日本人はエコノミックアニマルとしていつまでも世界から軽蔑され続けることでしょう。いつまでも自国は貧しい国であるという発想から抜け出せず、単純思考がマスコミの紙面で幅をきかす我が国の言論界のレベルの低さにはただただあきれるばかりです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年12月21日 (金)

福田内閣支持 急落31%

                     (12月21日 朝日新聞 より)

【本社世論調査 衆院比例投票先 民38% 自23%】

 朝日新聞社が19、20の両日実施した全国世論調査(電話)によると、福田内閣の支持率は31%と今月1、2日の前回調査の44%から急落し、不支持率は48%(前回36%)と半数近くに増えた。福田内閣で不支持が支持を上回るのは初めて。「いま総選挙の投票をするとしたら」として聞いた比例区の投票先は民主が38%(同32%)で、自民の23%(32%)に大差をつけた。これほどの差は安倍内閣当時もない。年金記録問題への対応などで政府や自民党への逆風が強まっている。臨時国会の焦点である補給支援特措法案についても参院での再議決で成立をめざすことに否定的な見方が増えた。

 福田内閣の支持率は発足当初は53%で、歴代内閣でも比較的高い水準だった。その後も4割台を維持していたが、発足3ヶ月で安倍内閣末期の水準にまで落ちた。不支持の理由では「政策の面」が57%と際立って高い。
 年金記録問題では、宙に浮いた5千万件のうち照合困難な記録が約2千万件にのぼることが明らかになった。このことについて「公約違反だと思う」は60%で、「そうは思わない」の30%を大きく上回った。年金記録問題への福田内閣の取り組みを「評価する」は36%にとどまり、「評価しない」は46%。福田内閣のもとで国民の年金への不信が解消に向かうと期待できるか、と聞くと、「期待できない」が72%に達し、「期待できる」は17%にすぎない。
 発足当初の調査では、福田内閣の年金問題への取り組みに「期待する」は67%と高かったが、内閣の実行力に疑問符をつけているといえそうだ。
 こうした状況で、総選挙の時期などをめぐる見方にも変化が出ている。「早く実施すべきだ」は39%(前回34%)とやや増え、「急ぐ必要はない」は48%(同55%)だった。民主支持層は「早く実施すべきだ」が69%、自民支持層は「急ぐ必要がない」が71%と対照的だった。望ましい政権の形は「民主中心」が41%(同36%)に増え、「自民中心」は28%(同37%)に減った。
 政党支持率は自民27%(同31%)に対し、民主25%(同23%)。そのほかの政党は公明3%、共産2%、社民1%など。

【政権求心力 低下は必至】

《解説》
 福田内閣の支持率が急落し、政権運営上の危険水域とされる30%に迫った。参院で野党に多数派を握られ、ただでさえ綱渡りの国会運営を強いられているだけに、世論の「福田離れ」で政権を取り巻く環境はさらに厳しいものとなりそうだ。
 「正直言って、いいことないですね。ここんとこね。まあ、やむを得ないかなと思っています」。福田首相は20日夜、内閣支持率の下落について、首相官邸で記者団にこう語った。ただ、「間違ったことをしているとは思っておりません」とも付け加えた。
 63%で始まった安倍前内閣の支持率は9ヵ月後の07年6月、年金記録問題や松岡農水相(当時)の自殺などが響いて30%にまで下落。参院選までこの水準から復調できず、自民党惨敗につながった。町村官房長官が「何とか4割台を維持できれば」としてきたラインを一気に割り込んだことで、首相の求心力の低下は避けられそうにない。

【私の意見】Up63

 私は自民党支持者ではありませんが、福田康夫首相は歴代の自民党の首相の中では上等な方だと思っています。特に、森、小泉、安倍と続いた国粋主義的、右翼的首相のために赤っ恥をかき続けたことを思うと、今は少しほっとしています。中国や韓国、北朝鮮の人々を苦しめたことに福田さんは心を痛めている人物だと思います。小沢民主党党首はアフガンであれば国連の安全保障理事会の決議があるので自衛隊をアフガンに派遣して武力行使をしてもよいと言っていますが、憲法9条の解釈については福田首相は小沢一郎氏より、拡大して解釈することに厳格な立場をとると思われます。その意味ではかつての自民党のハト派政治家の良い部分多く持っている政治家だと思います。それにもかかわらず、国民の支持が低下している理由は何なのでしょうか。私は、①日本国民は深くものを考えずあきっぽい、②年金など、目先のことには敏感に反応するが大きい視野で国家のありようを考える力を備えていないことに最大の理由があると思っています。そのように言うと福田さんに甘いと言われるかもしれません。ただ福田さんは背水の陣内閣を自認し地道に行動していますが、その分思い切ったことをやってくれそうにもなく、その点では私にとっても物足りないものがあります。やはり本質的には保守政治家です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月29日 (月)

NOVA 社長解任と会社更生の申立

                  (10月27日 日本経済新聞 より)

【NOVA破綻 迷走の4ヵ月 3取締役が幕引き】

 派手な宣伝戦略で知られた英会話学校最大手、NOVAの取締役らが社長を解任して会社更生法の適用申請に踏み切った。30万人の受講者や4千900人の講師・スタッフを巻き込んでの経営破綻。6月の経済産業省の行政処分から4ヶ月の迷走を追った。
 25日午後10時30分ごろ。東京新宿の新宿NSビル23階のNOVA東京本部で臨時取締役会が始まった。4人の取締役のうち参加したのは吉里仁見、アンダース・ルンドクヴィスト、渡辺勝一の3人。代表権を持つ猿橋望はそこにはいない。議題は「猿橋代表の解任決議」。発行済み株式数の72%(2007年3月時点)を実質的に所有していたワンマン経営者がその地位から滑り落ちる瞬間だった。
 猿橋本人はその30分ほど前、同じ東京本部のオフィスに入った。しかし、猿橋は携帯電話を片手にオフィスを歩き回り、3人の取締役が集まる別室に入ることはなかった。
 猿橋抜きで社長解任を決め、そろって代表取締役に就任した吉里ら3人は即座に会社更生法の適用申請を決議。申請書は日の出を待たず午前5時ごろに大阪地裁の窓口に届けられた。

<迫る「教室崩壊」背中押す>
 “準備”はその数日前から始まっていた。「スポンサー探しやつなぎ融資でご協力をお願いしたい」。NOVAの役員ら数人が極秘に取引銀行を回り頭を下げたという。
 「財務内容も分からないのに追加融資には応じられませんよ」。金融機関の多くは慎重な姿勢を崩さなかった。それでもNOVA取締役らは行動を起こさないわけにはいかなかった。
 21日の夜7時。東京・港のJR新橋駅近くにある全国一般労働組合東京南部の事務所にNOVAで働く約20人の外国人講師らが集まった。
 「これでは家賃が払えない」「雇用保険はもらえるのか」 -。参加者らは口々に窮状を訴えた。15日に振り込まれるはずの給与は支払われないまま。集会のまとめ役で、NOVA講師のロバート・テンシーも「先月結婚したばかりなのに」と浮かぬ表情を見せた。結局、この日は16日に続く2度目の組合員全員によるストを翌日に実施することを決めて散会した。
 「スト」はこれだけにとどまらない。「きょうは講師がいないので休みです」。給料がもらえないならと自主的に“休業”する講師が増え、予約受付で受講者がこんな応対を受ける例も目立っていた。
 家賃滞納が続き、閉鎖を余儀なくされる教室も続出。26日午後、記者会見した保全管理人によると、現時点でレッスン提供が可能な教室数は今年3月末から3割弱減少し670程度になっているもようという。
 「更生法申請はぎりぎり、土壇場のタイミング」(保全管理人の高橋典明)。ひたひたと迫る“教室崩壊”が3人の取締役の背中を押す形となった。その賭けが事業継続という「実」を結ぶかどうかは今後、支援先企業がみつかるかどうかにかかっている。

【ワンマン経営 空回り 提携立ち消え 人心は離反】
                  (10月28日 日本経済新聞 より)

 細かな営業方針にも指示を出し、社員に自らを「本部長」と呼ばせていたワンマン経営者の猿橋。海外留学から帰国後、1981年に創業した英会話事業を業界トップに育てた成功体験にこだわる猿橋が他社との提携で接点を見いだすのは難しく、その後も候補が浮かんでは消えていった。
 加速する顧客離れに歯止めをかけ、資金的な後ろ盾を得るための提携策がいっこうに実現しないまま、7月下旬からは日本人社員への給与の遅配や教室家賃の支払い滞納などが表面化する。
 それでも「絶対ポジティブ」という社是を地でいくように猿橋は強気の姿勢を崩さない。「秋の上昇波動に乗るまでキャッシュアウト(現金の支出)はできる限り絞り込んでいます。社員と生徒を守るために全力を尽くしています」。7月に続き、8月も給与の遅配に陥った際には記者の質問にこう答えていた。
 だが社内の人心は離反。エリアマネージャーなど幹部級の社員が給与支払いと社長退陣を求める嘆願書をとりまとめるなどの動きも出始めた。経産省の処分後に発足した経営改革委員会のメンバーである弁護士の佐藤明夫も9月4日、猿橋以外の3人の取締役に「すぐにでも社長を解任すべきだ」と進言した。
 資金繰りに追われる当の猿橋は社外の人間と行動をともにするようになり、幹部社員も携帯やメールでしか連絡がとれないような状況になる。
 「もはや企業の体をなしていない」と非常勤監査役の戸島利夫は10月初旬、辞表を提出。ほかの2人の監査役もほぼ同時期に足並みをそろえた。経理や総務など管理業務を担当する社員が櫛(くし)の歯が欠けるように職場を去り、資金の流れをつかむことさえできない状態になっていた。
 10月13日。経産省の担当課長と会い、経営の行方を聞かれた猿はそんな状況の中でも「引き続き頑張ります」と答えるだけだったという。
 「(更生法申請が)もっと早ければより有利な形でのスポンサー選定と事業譲渡ができたはず」。猿橋を解任したNOVAの取締役らが会社更生法の適用を申請した26日。記者会見で同社の手元資金が尽きたことを明らかにした保全管理人の高橋典明と東畠敏明は、いたずらに再建への時間が浪費されたことを悔やんだ。

【私の意見】Up63

1、 英会話学校のほとんどはNOVAのように株式会社が経営しています。多くの英会話学校の経営基盤はぜい弱で、受講生が唯一の資産という経営を余儀なくされているところが少なくありません。NOVAは駅前留学とか充実した外国人講師陣をうたい文句に大々的に広告宣伝を行ってきましたが、NOVAと外国人講師とのトラブルが絶えませんでした。

2、 NOVAの会社更生手続開始申立事件で、私は会社更生法手続きの申立代理人や更生管財人を経験した立場から注目する点があります。それは会社更生法の活用という角度からです。会社の再建に利用される法的手続きとしては、民事再生法にもとづく再生手続開始申立事件と会社更生法にもとづく会社更生手続開始申立事件の2つがあります。再生手続はもともと中小企業の再建手続として考えられていましたが、この手続のもとではそれまでの経営者が引き続き経営に携わることができます。一方会社更生手続の場合には経営陣の総入れ替えが原則でした。そのため中小企業に限らず大企業でも会社更生手続ではなく再生手続を選択することが少なくありません。NOVAも猿橋社長が申立てをしていればおそらく民事再生手続の方を選んだでしょう。たまたま今回は取締役が3対1で猿橋社長を解任しましたが、発行済み株式の72%を実質所有している猿橋社長は臨時株式総会を開いて逆に3人を解任することができた筈です。ところが臨時株主総会を開くためには2週間以上の日数が必要でその隙間をぬって今回の社長解任劇が成立しました。

3、 会社更生手続開始申立事件は東京地裁でも大阪地裁でも減っています。会社更生事件はかつては日本中を驚かすビッグな事件が中心でしたが、昨今は小さなゴルフ場の会社更生申立なども受理する傾向にあります。NOVAの事例を教訓に少数株主・少数取締役・一般債権者・労働債権者という弱い立場の者にも利用しやすいよう法制度を整備し、公正・衡平な再建手続の一層の充実を図る必要があると思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年10月18日 (木)

アフガン部隊参加 野党に不協和音

                   (10月12日 日本経済新聞 より)

 民主党の小沢一郎代表が打ち出したアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊の参加という「持論」を巡って、党内外に不協和音が生じている。ISAF参加は政権を取った後の戦略とはいえ、武力行使を伴いかねず「憲法違反」との受け止めがある。

【小沢氏持論、抵抗強く】

 小沢氏の主張の根幹は、国連安全保障理事会の決議に基づく活動は「国連の発動」である自衛権を超えたもので、仮に武力行使を伴っても憲法9条には違反しないというもの。給油活動の継続に反対するのも直接的な国連決議がないとみるからだ。
 党内の旧社会党系や中堅・若手議員の一部には海外での武力行使への抵抗感が強い。11日の参院民主幹部らの会合では「政局の潮目の変化につながりかねない。政治家は得意分野で失敗しやすい」などの声があがった。
 同党幹部は一斉に不安の打ち消しに走っている。山岡賢次国会対策委員長は同日の記者会見で、小沢氏が持論に関して「嫌なら離党する以外にない」と発言したことについて「一般論を言っただけで、小沢氏の考えに賛成できなければ党にいられない、と言ったわけではない」と指摘した。
 ISAF参加論は、次期衆院選に向けて共闘を強めようとしている野党内でも反発が出ている。
 共産党の志位和夫委員長は記者会見で「新法に反対する一点では協力していく」と力説したが、ISAFへの参加は「憲法は国連決議があろうと、なかろうと海外での武力行使、威嚇を禁止している。憲法違反だ」と強調。社民党の福島瑞穂党首も連合大会で、小沢氏の退席後のあいさつで「ISAFへの参加は明確な憲法違反であり、認められない」と訴えた。

【公開書簡 「今こそ国際安全保障の原則確立を」
         自衛隊洋上給油活動 どう考えるべきか
      川端清隆氏への手紙  小沢一郎(民主党代表)】

                      (世界2007年11月号 より)

 自民党政府(内閣法制局)は今も、国連の活動も日本の集団的自衛権の行使に当たると解釈し、したがって国連憲章第7章第42条に基づく武力の行使(PKO、国連の認める多国籍軍等を含む)に参加することは憲法第9条に違反する、という解釈を続けています。では、それならなぜ、アフガンで「不朽の自由作戦」を主導する米軍を自衛隊が支援できるのでしょうか?集団的自衛権の行使を、ほぼ無制限に認めない限り、日本が支援できるはずがないのです。実際、カナダ、オーストラリアなどもその作戦に参加していますけれども、日本以外の参加国はほとんど集団的自衛権の行使として米軍に協力しています。
 ところが、日本政府は今も、集団的自衛権の行使は憲法上できないと主張しています。貴方も思い起こして下さい。湾岸戦争の時、自民党幹事長だった私は、戦闘部隊を送る必要はないけれども、せめて後方の野戦病院や、あるいは補給艦による物資などの輸送などはできるのではないか、と強く主張しましたが、内閣法制局も各省の当局者も反対しました。その時の憲法解釈は、国連活動の後方支援であっても、武力の行使と一体のものだ、だから、それに参加することは憲法第9条に抵触する、という論理でした。

 私は、日本国憲法の考え方からいって、米国であれどの国であれ、その国の自衛権の行使に日本が軍を派遣して協力することは許されないと解釈しています。同時に、国連の活動に積極的に参加することは、たとえそれが結果的に武力の行使を含むものであっても、何ら憲法に抵触しない、むしろ憲法の理論に合致するという考えに立っています。

 つまり、個々の国家が行使する自衛権と、国際社会全体で平和、治安を守るための国連の活動とは、全く異質のものであり、次元が異なるのです。国連の平和活動は国家の主権である自衛権を超えたものです。したがって、国連の平和活動は、たとえそれが武力の行使を含むものであっても、日本国憲法に抵触しない、というのが私の憲法解釈です。
 ちなみに、そのことについて、明確に述べている憲法学者がいます。横田喜三郎さんという東大教授で、のちに最高裁判所長官を務めた方です。横田さんの著書をお読みいただけば、より明確に理解していただけると思います。
 それから貴方は、私がアフガンのISAF(国際治安支援部隊)への参加の可能性を示唆していると書いていますが、私の主張はそんなあいまいな話ではありません。国連の決議でオーソライズされた国連の平和活動に日本が参加することは、ISAFであれ何であれ、何ら憲法に抵触しないと言っているのです。もちろん、具体的にどんな分野にどんな形でどれだけ参加するかは、その時の政府が政治判断をして決めることです。しかし、日本政府はこれまで、全て日本国憲法を盾に国連活動への参加を拒否してきました。私は、まずその姿勢を改めるべきだと、繰り返し主張しているのです。

 もちろん、今日のアフガンについては、私が政権を取って外交・安保政策を決定する立場になれば、ISAFへの参加を実現したいと思っています。また、スーダン(ダルフール)については、パン・ギムン国連事務総長がかつてない最大規模のPKO部隊を派遣したいと言っていますが、PKOは完全な形での国連活動ですから、当然、それにも参加すべきだと考えています。

 繰り返しますが、日本の国際社会への貢献、特に侵略あるいはテロに対する強制力の行使について、日本はこれまで、憲法を盾にとって一貫して消極姿勢をとってきました。私は、それは大きな過ちだと考えています。しかし同時に、日本国憲法の理念と第9条の考え方は、変える必要がない、むしろ忠実に実現すべきだと思っています。したがって、憲法の理念に従って、あらゆる分野で国際貢献を積極的にしていかなければならない、というのが私の結論です。

【私の意見】Up63

 安倍晋三という右翼的政治家に反対していたときは、小沢一郎氏は平和の旗手のようにうつりがちでしたが、小沢一郎という人物は、まあこの程度の人でしょう。憲法9条に対する忠実度においても、集団的自衛権の抑制においても、小沢一郎氏よりも福田康夫現首相の方がまだ信頼できるといえます。小沢氏が「もちろん、今日のアフガンについては、私が政権を取って外交・安保政策を決定する立場になれば、ISAFへの参加を実現したいと思っています」と断定している点については安倍晋三氏と共通した軍事行使を正義とする思想が根底に流れていて恐くなりました。小沢氏は長い間政治家をやっているわけですから国連決議が大国の駆け引きでいかようにも変わることを十分知っている筈です。国連決議があれば自衛隊は海外で武力行使をできるというのは子どもじみた論理です。そのうえ、米軍、カナダ軍、オーストラリア軍が武力行使をすることによってアフガンの人々は幸せになっているのでしょうか。これに日本軍が加われば更に幸せになると小沢氏は本気で思っているのでしょうか。米軍の介入をきっかけに国民相互の殺傷がイラクだけでなくアフガン、パキスタンにひろがっている実態をどのように受け止めているのでしょうか。ねじれ国会はひとりひとりの政治家の真価が問われます。同時に日本国民も真価を問われる重大な岐路に立っているといえます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月 2日 (火)

高村外相 障害者権利条約に署名

                  (9月29日 朝日新聞夕刊 より)

【障害者権利条約に署名 政府、締結へ法整備検討】

 高村外相は28日午後(日本時間29日未明)、国連本部で障害者への差別撤廃と社会参加の促進を求める人権条約「障害者の権利条約」に署名した。同条約の最初の署名式は今年3月に行われ、80カ国以上が署名したが、日本政府は「国内法の整備が整っていない」として見送った経緯がある。
 日本は外務省や法務省、警察庁など9省庁で構成する「障害者権利条約にかかわる対応推進チーム」をすでに発足させている。今後、同チームを中心に、関連する法律の改正などを検討し、早期の締結(批准)をめざす考えだ。
 同条約は、締約国に対し、交通、教育、雇用などの面で障害者の立場改善のための立法・行政措置を要求、障害者を差別する国内法や習慣の廃止を義務づけている。06年12月の国連総会で全会一致で採択された。
 条約に署名済みの国は9月27日時点で、113カ国と欧州共同体(EC)。必要な法整備をして条約を締結している国はクロアチアやキューバなど5カ国。条約が発効するには、20カ国以上の締結が必要となる。 (佐藤武嗣)

【温暖化対策「政治決断を」 
               高村外相 国連で積極関与訴え】

 高村外相は28日夜(日本時間29日午前)、国連総会で演説した。気候変動問題について「世界の指導者たちは拡大する課題に対処するため、思い切った新たな政治決断をする責任を有している」と述べ、すべての主要な温室効果ガス排出国の参加を念頭に、「ポスト京都議定書」に向けた新たな枠組みづくりに積極的に関与する必要があるとの考えを強調した。

 高村氏はさらに、「来年の北海道洞爺湖サミットを通じて、国際的な合意づくりに貢献し、その成果を国連プロセスの中に反映させていく」との決意を表明した。

<アフリカの平和なくして、世界の平和と繁栄はあり得ない>
 また、来年5月に横浜で開催される第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)を前に「アフリカの平和なくして、世界の平和と繁栄はあり得ない。我が国は、アフリカにおける平和と安定の定着に向けた貢献を一層拡充していく」と語った。
 テロ対策措置法に基づくインド洋での海上自衛隊による給油活動については、11月1日の期限切れで活動の中断が避けられない状況だが、「責任ある国際社会の一員として、引き続き活動の継続が可能となるよう努力していく考えだ」と語った。

<北朝鮮との対話>
 北朝鮮問題に関しては「国際社会が拉致問題の一刻も早い解決を求める力強いメッセージを発出することが不可欠」としながらも、「拉致問題の解決とともに『不幸な過去』の清算にも取り組む」と表明。北朝鮮に対話を促した。
 05年当時の小泉首相が国連総会で決意を表明した日本の「常任理事国入り」について、今回の演説では直接言及せず、国連安保理改革に関して国連総会の会期中に「具体的な成果」をあげるよう促すにとどめた。昨年の国連総会では、自民党総裁選のために首相や外相は演説できなかった。 (佐藤武嗣)

【私の意見】Up63_2

 安倍政権が「国内法の整備が整っていない」という変な理屈をつけて署名しなかった「障害者権利条約」に福田政権に変わったとたんに当然のごとく署名しました。世界でもビリの方での署名ですが、障害者の人権侵害事件に携わっている私にとってはとてもうれしいことです。小泉元首相は障害者を苦しめる「障害者自立支援法」という名称と実体が違ういい加減な法律を作り、障