労働問題

2009年8月 9日 (日)

退職勧奨・退職強要の横行と弁護士交渉

【横行する退職勧奨・退職強要】

 私が代表をつとめる銀座通り法律事務所の相談事例の中で、最近退職勧奨や退職強要に関する相談が増えています。退職勧奨というのは文字通りの意味としては使用者が社員に退職を勧めるということです。「勧める」という言葉の本来的意味は勧められる人の立場に立ち、その人にとってのより良き選択を助言するということにあります。ところが使用者による退職勧奨は当該社員の立場に立っての助言ではありません。当該社員をやめさせたいという考えが基底にあり、正面から解雇をすると後で争われるリスクがあるので退職を勧奨し、当該社員の意思で退職届を出させようとするものです。その場合には後で争われる余地がない(少なくなる)との判断からです。退職勧奨が勧奨の程度を超えて強圧的になされるのが退職強要ですが、退職勧奨にしろ、退職強要にしろ社員の側から退職届けを提出させるという目的は同じです。これを社員の立場から見ると退職届けを出した以上後で争うのはむずかしいという意味では大きな差はあまりありません(多少の差はありますが)。

【退職勧奨を受けた人の心理】

 退職勧奨を受けると誰しも大きなショックを受けます。自分では会社のために一生懸命働いてきたつもりなのに、ある日突然“君はいらない”と宣告されるわけですから、当然のことです。次第に家族のことが気になります。同僚や部下の目も気になってきます。日本の労働者は“闘い”を経験したことが皆無に近いですから、言われると不本意とは思いながらも退職を受け入れるケースが少なくありません。退職勧奨のときは使用者は一方で労働者の欠点をあげつらい、他方で退職金の上乗せを提案します。アメとムチによる追い出し作戦です。しかし、かつては年収の2年間分以上の上積みを提案するケースが少なくありませんでした。最近では給与1年分にも足りないケチな提案が目立っています。転職先の見通しもあって、かつ上乗せ額も満足のいくものであれば、退職勧奨を受け入れるか否かはそれこそご本人の選択の問題で、退職勧奨を受け入れ転職して転職先で重用されハッピーな展開になった人も過去にはありました。しかし今はハッピーな展開になることはほとんど期待できません。転職市場もかつてと比べて格段に狭くなっています。「おれ(私)をいらないという会社はこちらからごめんこうむりたい。」という一時の義憤から退職届を出すのはやめましょう。使用者が解雇をせず退職勧奨という手段をとるのはあなたを法的に解雇できないという弱味があると思った方がよいと思います。

【使用者は正当な事由がなければ労働者を解雇できない】

 使用者は労働者を自由に解雇することができません。貸家契約の場合に貸主が賃貸借契約を一方的に解約するには余程のことがないとできません。借家人保護のために借地借家法は正当な事由がない解約は無効としています。労働契約もこれと同じで、使用者が労働者を解雇するにあたっては正当な事由が求められ、それがない場合の解雇は無効です。このことは法律で次の通り明記されています。「解雇は、客観的に合理的な理由欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)。要は使用者が一方的に解雇するためには、①客観的な合理的理由と ②社会的相当性 の2つの要件をクリアする必要がありますが、判例は余程のことがないかぎり2要件の充足を認めません。解雇事件の多くは労働者が勝訴しています。

【退職勧奨を受けたときは労働組合と弁護士にすぐに相談することを勧めます】

<さまざまな人と相談しよう>

 退職勧奨を受けるとほとんど全員がパニックになります。平気でおれるのは長年労働組合運動をやってきた人位です。あわてて結論を出さないで、さまざまな人に相談することを勧めます。

<行政の労働相談>

 労働基準監督署や行政が主宰する労働相談所に相談するのも一つで法的・中立的なアドバイスをしてくれます。ただ例えば労働基準監督署は賃金不払いや偽装請負のような法律違反が明らかな場合は主体的に動いてくれますが、解雇に関しては主体的に動いてもらうことはあまり期待できません。このように行政への相談は一定の限界がありますが、中立的立場から客観的な意見を述べてくれるという意味では相談してみる価値はあります。

<企業内組合への相談>

 日本の労働組合は企業内組合がほとんどで、しかも組織率も18%しかありません。ヨーロッパや韓国の労働組合は企業や政府と断固とした姿勢で闘っていますが、日本の労働組合は闘わない労働組合です。闘わない労働組合ではありますが、就業規則・退職金規定などの社内規定や、その会社における過去の解雇・退職事例等について一定の情報をつかんでいます。企業内組合でも親身になって相談に乗ってくれる人もいます。自分が組合員でなくとも遠慮なく相談してみることをお勧めします。相談した後で組合に加盟することも可能です。ただ企業内組合に相談すると時には、あなたが相談したことが会社に伝わる可能性があることを頭において相談してください。

<個人加盟の地域ユニオンへの相談>

 企業内労働組合が全く闘わないため最近では個人加盟の労働組合が○○ユニオンとしてあちこちにできています。これらは職場に根ざした労働組合ではありませんが、労働組合法上の正当な労働組合であり、あなたの会社と団体交渉をする権利があります。団体交渉でらちがあかなければ都道府県の労働委員会に救済申し立てをすることができます。それぞれのユニオンには労働組合運動の経験を積んだ執行委員がいて、どこを攻めればあなたに有利に展開できるかをそれなりに真剣に考えてくれます。○○ユニオンは相談の価値があります。各ユニオンは快く相談を受け入れてくれますので、ご自分に合いそうなユニオンに相談することをお勧めします。

<弁護士への相談>

 私は企業内組合や地域ユニオンとともに弁護士への相談も同時にすることをお勧めします。最後は裁判で勝てるかどうかは、あなたが最終決断をする上で重要なポイントです。法的な裏付けがあれば、使用者が強硬であっても一歩も引く必要はありません。
 これまで弁護士の役割は会社に退職勧奨をやめるよう内容証明郵便を送ったり、解雇された場合は仮処分や労働審判や訴訟をおこすという形態のものが主流でした。弁護士が直接会社と交渉するということはあまりしませんでした。しかし、本人まかせにすると会社の組織力といやがらせに負けて本人は退職してしまうケースが多いのが現実です。退職届けを出した後で争うのは法的には大変困難です。そうしたことから銀座通り法律事務所では退職勧奨を受けたときから弁護士による代理交渉を積極的に行うことを心掛けています。弁護士がつくと会社は一時的にカチンとくることは確かですが、会社主導の流れが一変することも確かです。私は本人交渉で解決できる場合には本人にまかせますが、それではらちがあかないときは本人と相談の上、弁護士が代理人として会社と直接話し合いをします。その結果、退職勧奨を撤回したり、退職条件を有利に決着させることができたケースが少なくありません。代理人による交渉をするのが良いのかどうかも含めて弁護士に相談することをお勧めします。
 弁護士との相談料は、30分以内5,250円、60分以内10,500円です。
なお、銀座通り法律事務所に相談を希望される方は、働く市民の弁護団相談メールをご利用ください

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2009年7月 6日 (月)

連合の「雇用における障害差別禁止法」案

【連合の「雇用における障害差別禁止法」(仮称)制定について】

 連合は第20回中央執行委員会(2009.5.21)で確認の上、連合の「雇用における障害差別禁止法」(仮称)制定についてを発表しました。その内容はこちら(連合ホームページhttp://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/seido/shougaisya_koyou/data/20090521.pdf)をご覧下さい。内容についていくつか検討すべき点があることはありますが、大筋では連合がこのような案を発表したことは大変意義深く、障害をもって働く労働者にとっては大変心強いことだと前向きに評価したいと思います。

【連合主催によるシンポジウム「雇用における差別禁止法」をつくろう開催】

◆日時 2009年6月29日(月)14:00~17:00
◆場所 全電通労働会館2F「全電通ホール」
◆主催 日本労働組合総連合会(連合)
◆参加対象 構成組織・地方連合会、障害者団体、一般、マスコミなど 150人程度
◆開催内容
*主催者代表挨拶
 古賀 伸明  連合事務局長

*基調講演「国連の障害者権利条約について」
 長谷川 珠子 成蹊大学法学部講師

*厚生労働省「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」中間整理について
 吉永 和生  厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課長

*連合の「雇用における障害差別禁止法」(仮称)について
 長谷川 裕子 連合総合労働局長

*障害者関連団体、労働組合からのコメント
 西村 正樹 (自治労障害労働者全国連絡会代表幹事)
 土師 修司 (社会福祉法人電機神奈川福祉センター理事長)
 下堂園 保 (NPO法人タートル理事長)
 尾上 浩二 (DPI日本会議事務局長)
 長谷川 裕子(連合総合労働局長)

*閉会

 私は、全国働く障害者ユニオンの組合員や障害児・者人権ネットワーク会員とともに一聴衆として参加しました。

【厚生労働省「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」中間整理について】

 これについては、吉永和生 厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課長から発表がありました。その内容はこちらをご参照ください(厚生労働省ホームページ〔労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会(第11回)議事次第 資料〕)
 私はこの中間整理は次のとおり現行の障害者雇用率制度を無批判のまま積極的差別是正措置として高く評価していることに危惧しています。

【障害者雇用率制度の位置付け】
○ 差別禁止の枠組みと、現行の障害者雇用率制度との関係については、実際問題として雇用率制度は障害者の雇用の促進に有効であり、差別禁止の枠組みと矛盾しない、積極的差別是正措置(ポジティブアクション)に当たるとの意見が大勢であった。

 私がこれまでも述べてきましたように現行の障害者雇用率制度は厚生労働省の企業に甘い運用の結果、障害者は契約社員・嘱託社員などの非正規雇用に固定化されつつあります。この点の改革なしには現行の障害者雇用率制度が積極的差別是正措置と言えず、むしろ差別固定化措置と言った方が的確です。
 シンポジウムで私は連合に現状の雇用率制度の改革に取り組んでほしい旨述べました。これについ長谷川裕子連合総合労働局長より連合の労働契約の基本はすべて「期間の定めのない契約」と考えており、障害者雇用についても、同一姿勢で取り組んでいきたいと回答がありました。

【働く障害者の弁護団の今後の取り組み】

 法定雇用率制度で採用されている障害者の雇用形態について今後独自に調査を進めていきたいと考えています。また、実態調査のため「障がい者非正規雇用110番」なども検討したいと思います。ただ、障害者団体も弁護士もいろんな課題に追われているため十分な取り組みができるか一寸心配な面があります。とはいえ政局が流動化する中で、国連の障害者権利条約を大きな後ろ盾として、今こそ障害者の権利に根ざしたしっかりとした国内法をつくるベストチャンスだと思います。多くの人と力をあわせてその実現に向け取り組んでまいりたいと考えます。

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2009年6月29日 (月)

障害者の正社員扱いを求める訴訟を検討

【訴訟に向けてご意見をお寄せ下さい!】

 6月21日のブログで私の論文「裁判に見る日本の障害者雇用の現状」を紹介させていただきました。その同じ日に朝日新聞が「進まぬ障害者雇用」という記事を掲載していました。この中で18年間「一般嘱託」という非正規社員のため18年間で月給はわずか2千円しか上がらず、住宅手当も家族手当もない加賀沢志のぶさん(50)のことが紹介されていました。私は論文の中で障害者の雇用の促進等に関する法律は「常時雇用する労働者」のみを法定雇用率の対象とする労働者としており、これは正規雇用労働者を指します。それにもかかわらず国(厚生労働省)は非正規雇用でも常時雇用する労働者としてカウントするという企業に甘い運用をしていることを指摘しました。加賀沢さんは国による障害者差別の容認の犠牲者と言えます。加賀沢さんにかぎらず多くの障害者が非正規雇用のため不安定な地位にあり解雇(雇い止め)をされても争えない弱い立場にあります。働く障害者の弁護団はこれら非正規雇用の障害者の方を原告、国と企業を被告とする訴訟提起を検討したいと思います。訴訟提起が可能かどうか、可能としてどのような訴訟になるか、まだ検討の段階ですが、関心をお持ちの方は是非働く障害者の弁護団にご意見をお寄せ下さい。
 以下、朝日新聞の記事「進まぬ障害者雇用」を紹介します。

【現状は、企業の過半、法定義務下回る】
                     (6月21日 朝日新聞 より)

 東京都港区のオフィスビルの一室。障害者7人がパソコンの操作やビジネスマナーを学ぶ。NPOが企画した障害者向けの就職支援プログラムだ。
 参加者の男性(40)は元イラストレーター。交通事故で手に障害が残り、4年前から派遣社員として自動車関連の工場で働いていた。不況を理由に今年1月に「雇い止め」された。再就職先はまだ見つからない。
 景気の低迷で、08年度に解雇された障害者は、前年度の1.8倍の2774人に上る。ハローワークを通じて求職のあった11万9765件のうち、就職できたのは4万4463件で、就職率は37.1%と前年度より5ポイント余り下がった。
 日本で障害者の働く場は、一般の企業と、作業所などの福祉施設に大別される。知的障害者が通う作業所で公園清掃などをしてきた参加者の女性(26)は、企業への就職を目指す。「作業所の工賃は安い。企業で働いて、生活費を親に渡したい」と話す。
 企業には、障害者雇用促進法で、全従業員数の1.8%分の障害者を雇うことが義務づけられている。だが、実際の平均雇用率は1.59%で、過半数の企業が未達成だ。
 たとえ雇用されても差別を受けるケースも少なくない。
 大手損害保険会社で保険金の支払い業務を担当する前橋市の加賀沢志のぶさん(50)は、両足に障害がある。入社してから18年間、正社員と同じように働いてきた。
 しかし、18年間で月給はわずか2千円しか上がっていない。正社員に支給される住宅手当や家族手当もない。この企業が、主に障害者雇用のために設けている「一般嘱託」という非正社員での採用だからだ。
 加賀沢さんは、個人で加入できる労働組合に入り、待遇改善を求めて会社と団体交渉を続ける。「正社員並みの仕事をさせながら、障害を理由に低い待遇に抑える差別は許せない」と訴える。

【私のコメント】Up63

 個々の企業には待遇改善を求めるとともに国の運用の誤りを正す必要があります。

【欧州は、働く場を確保、差別禁じる法】
                     (6月21日 朝日新聞 より)

 欧州では伝統的に障害者の雇用を促す手厚い政策がとられてきた。これはもともと障害者雇用が第1次世界大戦後の戦傷者らの雇用保障政策から出発したためだ。国家補償の理念に基づき福祉に重点を置いた制度がつ作られ、一般の障害者にも適用が広がった。
 障害者の働く場を確保することが重視され、日本と同じ割り当て雇用制度を持つドイツ、フランスの法定雇用率は、日本より高い5%、6%だ。国や自治体が費用を補助して自活できる賃金を保障する制度も広く普及している。
 90年代の経済停滞の中で、欧州各国は福祉政策の見直しに着手した。障害のある人もない人も共に暮らす「ノーマライゼーション」の理念も広がるにつれて、障害者の「働く権利」を保障し、個々の障害に応じた就労を支援し、労働市場に受け入れることを重視するようになった。
 95年に制定された英国の障害差別禁止法では、障害を理由に採用や昇進などで差別することは違法と定める。欧州連合(EU)は00年、雇用均等指令を出し、障害にかかわりなく雇用について均等に待遇するよう加盟国に求めた。
 これを受けて、欧州ではほとんどの国に障害による差別を禁止する法制がある。この中には、使用者に過度の負担とならない限り個々の障害者の特性に合わせて労働条件や環境を調整する「合理的配慮」の義務づけも含まれる。施設のバリアフリー化や通院のための休暇、手話通訳を置くことなどが求められる。国連は06年、合理的配慮を義務づけた障害者権利条約を採択し、日本も批准に向けて対応を迫られている。
 引馬(ひくま)知子・田園調布学園大学准教授は「欧州は割り当て雇用に加え合理的配慮を含む均等法を定め、多様な施策で障害のある人とない人の間の壁を低める努力を続ける。割り当て雇用に重点を置く日本も、差別禁止法制を検討する時期に来ている」と話す。

【私のコメント】Up63

 欧州のみならず、韓国でもしっかりとした障害者差別禁止法が制定されました。日本も80年代までは政府の側もノーマライゼーションの理念を広げる動きがありましたが、90年代の経済停滞の時期に欧州とは逆にノーマライゼーションの流れを30年以上逆戻りさせました。その最たるものが小泉内閣が2005年に成立させた障害者自立支援法です。

【課題は、訓練から労働へ 後押し必要】
                   
(6月21日 朝日新聞 より)

 日本企業では、義務づけられた法定雇用率の未達成が続く。このため昨年、障害者雇用促進法を改正し、これまで制度の対象外だった従業員300人以下の中小企業にも段階的に適用する。未達成の場合は、不足分1人当たり月4万~5万円の納付金を国に納めなければならない。だが、「障害者を雇うよりも、納付金を払った方が安い」と判断する企業も多い。
 これまで多くの障害者の受け皿となってきたのは授産施設や作業所といった福祉施設だ。こうした施設は「訓練」の場と位置づけられ、最低賃金など労働法の対象外だった。障害者が受け取る工賃は平均で月約1万2千円と、生活を支えるにはほど遠い。
 このため、06年に施行された障害者自立支援法は「福祉から雇用への橋渡しの強化」を目指す。企業への就職を目指す障害者がビジネスマナー講習などを受けられる「就労移行支援事業」を新設。福祉施設で働く障害者についても、訓練型に加え、雇用契約を結ぶ雇用型が導入され、最低賃金の保証や社会保険の加入も義務づけられた。
 これまで福祉施設から企業に就職する障害者は年間約2千人。政府は11年度までに年間9千人の移行を目指す。
 だが、福祉と雇用のはざまで矛盾も残る。同じ障害者でも、公共の職業訓練施設で受講すると無料で、手当が出ることもある一方、福祉施設では応益負担として原則、利用料を支払う必要がある。
 日本障害者協議会の勝又和夫代表は、こう訴える。「障害者だからといって『訓練』で一生を終えるのはおかしい。基本的には『労働』と位置づけ、労働法を適用すべきだ。障害の程度により働く能力には差がある。企業や施設に、国が賃金の補填をすることで、雇用を後押しする必要がある」 (山根祐作。松浦祐子)

【私のコメント】Up63

 障害者権利条約は締約国に障害者が働きやすい職場環境等の改善を義務づけていますが、日本の国内法(障害者基本法と障害者の雇用の促進等に関する法律)は健常者に近づけるための障害者の改造(訓練)を重視しています。障害者権利条約と日本の国内法は法思想が全く異なります。しかも、天下の悪法障害者自立支援法は訓練について応益負担と称して障害者から利用料をとることにしています。国の財政再建のために経済的弱者からお金をむしりとろうとするもので、後期高齢者に医療費の負担を求めるのと共通するものです。

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2009年2月22日 (日)

障害者にも解雇の嵐 実習訓練さえ中止

         (2月15日 朝日新聞大阪本社版「時時刻刻」 より)

【私の意見】Up63

<私も取材を受けました>

 朝日新聞の2月15日の大阪本社版の時時刻刻の欄に「障害者にも解雇の嵐」という見出しで、かなりの紙面を割いた記事が掲載されました。私も取材を受け、私のコメントが紹介されています。

<常用労働者で有期契約>

 日本では民間企業が障害者を雇用しなければならない割合(法定雇用率)を1.8%と定めています。法律はこの法定雇用率にカウントできる障害をもった労働者は「常用労働者」でなければならないとしています。「常用労働者」を素直に解釈すれば法律は正規労働者としての雇用を求めていることが明らかですが、厚生労働省は一般労働市場で非正規労働がほとんどない時代から、障害者雇用は日々の契約(1日契約)でも1か月契約でもよい、とにかく1年以上雇用することを前提としてさえいればすべて「常用労働者」にカウントするという、企業にきわめてゆるい、やさしい指針を出しました。ですから障害をもって働く人の多くは早くから非正規雇用(有期雇用)です。

<万国の女性労働者立ち上がれ!>

 政府は昨年12月法律を改正し障害者をパート(短時間労働)で雇用した場合は0.5人分の雇用として法定雇用率にカウントするとしました。パートはこれまで主として女性が主婦としての生活との両立のなかで選択した雇用形態でした。これ自体とても低賃金で日本の経済界は女性労働者を搾取し続けていると私は思っています。いつか女性労働者がゼネストをしてくれれば、日本の労使関係はずいぶん変わるのになと時々思います。万国の女性労働者立ち上がれ!そこまで発展しないのは男子(夫)の労働の補完として巧妙に位置づけられているからだろうと思います。

<障害をもって働けるだけマシ>

 さて障害者雇用に話をもどしますが、障害をもった労働者のパート労働は配偶者の労働補完ではありません。国は障害のある労働者が自らの稼ぎで食べていける制度を確立するべきです。ところが今日本政府の進めようとする障害者施策は障害をもった労働者を低収入に固定化するものです。“福祉から労働へ”という考え方に異論はありませんが、これを推進する政府や地方自治体の側に“障害をもって働けるだけマシ”という障害のある人の尊厳を否定する考え方が基底にあるように思えてなりません。

 朝日の記事は一寸長いですが全文紹介します。

【実習訓練さえ中止】

 障害者の雇用が世界的な不況に揺らいでいる。国の調査では昨年末から解雇者が倍増しているが、数字に表れない非正規雇用の「雇い止め」などを含めると、実態ははるかに深刻、との指摘もある。賃金カットや実習受け入れ中止も相次ぐ現場で、社会的自立は担保されるのか。なりふり構わぬ障害者リストラの拡大に、明日への不安が募る。(高島靖賢、山内深沙子、滝川卓史)

 「もう仕事がない。申し訳ないが、今月で辞めて欲しい」。岡山県内の電子部品工場。1月下旬、ここで働いていた知的障害者の男性(38)が事務所に呼ばれ、解雇を言い渡された。
 社員20人ほどの小さな工場で組み立て作業を担当していた。状況が一変したのは昨年11月だ。受注激減で勤務時間が半分になり、月10万円あった手取り収入は半分以下に落ち込んだ。12月には1日3時間勤務に。年明けから仕事は工場の掃除だけになった。
 会社には10年以上勤めた。職場の上下関係がすぐのみ込めないなどコミュニケーションに課題はあったが、覚えた仕事をコツコツとこなしてきた。同僚も障害を理解して優しく接してくれた。月給と障害基礎年金をあわせ、アパートで1人暮らしもできた。
 以前働いていた会社でも解雇された経験がある。失業が1年以上続き、福祉施設の職員がつてを頼りにやっと見つけてくれたのが、この工場だった。
 人生2度目のリストラ。「時間があるから」と本人が申し出て、近所にある就労支援のための作業所で、割りばしの袋詰めなどの軽作業を無償で手伝い始めた。貯金は残り約70万円。当面は年金と失業給付でやりくりするが、給付が切れるまでに職が見つかる保証はない。「家族には頼りたくない。また働ける日は来るのかな」。つい不安を口にした。
 全国206か所にある「障害者就業・生活支援センター」には、解雇や賃金カット、出勤日の激減など苦境に立たされた障害者からの相談が絶えない。
 「1月から時給を748円から600円に下げると言われた」。昨年末、大阪府内のセンターに知的障害のある20代男性から、こんな相談が寄せられた。約2年前からリサイクル工場で働いていた。
 男性の時給額は府の最低賃金。会社側は経営悪化を受け、障害者の最低賃金を減額する特例許可を労基署に申請していた。センターから事情を聴かれると、「彼を雇い続けるための苦渋の決断。給料を下げるしか方法がなかった」と説明したという。
 和歌山県内のセンターには昨年末、就労支援団体から「実習生の受け入れを断られた」との相談があった。障害者とジョブコーチが企業で実習する障害者自立支援法の制度を活用し、メーカーの下請け工場で数人の障害者が実習訓練を受けていた。受け入れ中止の理由は、受注の落ち込み。センターの担当者は「就労への大切なステップなのに・・・」と肩を落とす。
 滋賀県のある養護学校は昨年10月以降、就職活動での体験自習を受け入れていた複数のメーカーから、相次いで受け入れを断られた。今春の就職希望者のうち半数は、まだ就職先が決まっていない。

【氷山の一角にすぎない】

 「働く障害者の弁護団」代表の清水建夫弁護士の話  統計に表れる障害者の解雇数は「氷山の一角にすぎない」。障害者の場合、パートや契約社員など非正規雇用で働く人が圧倒的に多く、契約期間満了による「雇い止め」や、強引に自己都合退職に追い込まれた事例を含めると、状況はより深刻だ。不況が続けば、人件費が高い中高年の障害者をリストラの標的にする恐れが強まるだろう。

【弱い歯止め 届かぬ理念 就業規則 リストラに利用】

 従業員数56人以上の企業は、1.8%(法定雇用率)以上の障害者を雇うことが義務付けられている。だが、08年の障害者雇用率は1.59%。過去最高を更新したとはいえ、達成企業の割合は44.9%と半数以下にとどまる。
 法定雇用率を達成できない企業には、1人につき月5万円の納付が課されるが、低額すぎて解雇や退職勧奨の歯止めにならない、との批判もある。さらに、現時点で納付義務があるのは従業員数301人以上の企業だけで、相当数の中小企業は対象から外れる。
 もう一つ、社会的弱者の解雇のハードルを低くしてしまう課題として挙げられるのが、企業の就業規則だ。
 今なお、多くの会社には「精神または身体の障害により業務に耐えられないと認められたとき」は社員を解雇できる、とする就業規則が残る。
 障害者の人権問題に取り組む弁護士有志でつくる「はたらく障害者の弁護団」によると、業績が悪化するとこの規定を持ち出し、露骨な解雇をしようとする企業があるという。
 本来は解雇を決める前に、障害者が働き続けられるように職場環境を整える「合理的配慮」が企業側に欠かせない。視覚障害者のために音声変換ソフトのパソコンを導入するのは、その一例だ。ただ、こうした理念が十分浸透しているとは言い難い。

【昨年11、12月 急に悪化】

 厚生労働省によると、障害者の雇用状況は急速に悪化している。全国のハローワークに届け出があった昨年10月の障害者の解雇者数は125人で、07年度の月平均(126.9人)と同水準だったが、11月には234人に急増。12月も265人に上った。
 資料が残る00年度以降の解雇者数を見ると、01年度の4017人から減少傾向が続き、07年度は1523人だった。だが、08年度は4月から12月までの合計がすでに1411人に達し、前年度を大きく上回るペースだ。
 障害者を解雇した企業はハローワークに届け出る義務がある。ただ、制度を知らずに無届けで解雇する企業も相当数に上るとみられる。
 同省は「障害者は一度離職すると再就職が非常に困難であり、解雇者の増加は深刻な問題」(障害者雇用対策課)として10日、日本経団連に障害者雇用の確保などを要請した。ハローワークの障害者専門支援員を全国で70人増員したほか、障害者を雇いいれた中小企業への助成金を昨年12月から段階的に拡充するなどの対策を講じているが、効果は不透明だ。
 企業からの下請け作業が運営の柱だった障害者施設を取り巻く状況も厳しい。
 全国社会就労センター協議会は1月から2月にかけて、加盟1543の施設を対象に、景気後退による受注減少などの影響を緊急調査。その結果、回答があった632施設のうち416施設が「目立った影響があった」と答えた。
 職業別では、自動車関連が144で最多。次いでリサイクル関連51、段ボール関連20、印刷関連19の順だった。同協議会は今後、国や地方自治体に障害者の積極採用を含む雇用対策を求めていく方針だ。

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2009年2月10日 (火)

社会参加型のユニオンを作ろう!

【ユニオンが人気】

 最近あちこちでユニオンができています。私もいくつかのユニオンに構成員というより弁護士として参加しています。
 ユニオンは労働組合を横文字(カタカナ)にしたもので中味は同じという見方があります。労働組合というと赤い鉢巻をして“闘争!”というイメージがあり、今の若い人には敬遠されがちです。ユニオンの方がやわらかくてカッコいい。だから労働組合という言葉をやめてユニオンがはやっているというわけです。

【ユニオンは労働組合より広い?】

 辞書でunionを繰ってみました。①結合、連合、併合、合同、団結 ②連合国家、連邦 ③同盟、組合、協会、連合 ④和合 ⑤結婚 ⑥=trade(or labor)union(労働組合) となっていました。なるほどユニオンは労働組合より幅のある広い言葉だと言えます。

【労働組合法上の労働組合】

 名前は○○ユニオンでも○○労働組合でもいいんですが、労働組合法上の労働組合の資格があるかないかは重要です。労働組合法上の労働組合であれば使用者(雇主)と組合として団体交渉ができます。使用者が団交に応じなければ都道府県の労働委員会に団交に応じるように命令してほしいと申立てることができます。労働組合法上の労働組合をつくるのは大変なことではありません。労働組合は1人ではつくれませんが、労働者が2人以上いればつくれます。

【同じ会社の労働者でなくともよい】

 日本の労働組合の主流は企業別組合と言って、同じ企業の労働者だけでつくる組合です。日本の企業別組合は労使協調型で経営者の考えに従うのがほとんどで、そのような組合は1人の労働者が解雇されたり不当な配置転換を受けても組合として本気で取り組んでくれません。
 そこで最近増えているのは、個人加盟の地域ユニオンです。組合員1人1人の勤めている会社は全くバラバラですが、それでも労働組合法上の労働組合です。地域ユニオンがある1人の労働者の勤務条件について団体交渉を求めた場合にその労働者を雇用する経営者は組合との団体交渉を拒否することができません。地域ユニオンはストライキという手段は効果的に使えませんが、団体交渉という点では、労働者が1人で会社とわたりあうよりも、仲間のいる労働組合の方が強力に交渉ができます。解雇や賃金カットや配置転換などが法的におかしいと思われるときは、労働仮処分、労働審判、訴訟などの法的手段を選択することができます。労働組合と弁護士のすみわけができて、最初から弁護士が直談判するよりも、私たち弁護士も大いに助かります。

【労働組合法上の労働者の資格は労働基準法上の労働者の資格よりゆるやか】

 労働基準法上の労働者とは、事業主(雇主)に使用されて賃金の支払を受ける者でなければなりません(同法9条)。ところが労働組合法上の労働者の資格はとてもゆるやかです。
 ・労働者はパート、アルバイト、契約社員、派遣社員でもよい。(これは労働基準法上も同じ)
 ・請負契約、委任契約によって労働に従事する者も、他人に労務を提供し、それに対し報酬を受けている場合はユニオンの構成員となれる。
  例えば、一人親方の大工・左官、水道メーターの委託検針員、放送局と出演契約をしている芸能員など。

【知的障害者ユニオンを作ってみたら?】

 1999年5月知的障害をもつ労働者の会「さくら会」の学習会に講演に呼ばれたとき、私はそのように言いました。さくら会のメンバーは“いいね”“面白そうだね”“やってみようか”とにぎやかにしゃべっていましたが、さくら会の中心メンバーの高坂茂さんが2000年3月勤め先のクリーニング工場の機械に巻き込まれ亡くなり、知的障害者ユニオンは日の目を見ずに今に至っています(2008年3月28日ブログ記事参照

【再び知的障害(者)ユニオンを作ってみたら?】

 私はこの2月11日午後1時から知的障害者の親の方々を前に「障害者権利条約(労働・雇用)にもとづき実効性のある国内法をつくるためには」という題で講演をすることになっています。そこで再び知的障害(者)ユニオンを作ってみたらと提案してみようかと思いました。もっとも当日参加される方々はどんな方かわからないので、ただ今のところ私が頭の中で一方的に考えているだけのことです。私が考えているのは次のようなことです。

 ・組合員は2人以上いればよい。
 ・労働基準法上の労働者でも、そうでなくてもよい。
 ・失業者でもよいし、請負人でも受託者でもよい。
 ・子供も親も広い意味の労働者であれば、親子とも組合員に
  なれる。
 ・親が主婦や自営業者であれば、親は準組合員になればよい。
 ・子供が福祉的就労のときは厳密にいえば労働者といえるか
  どうかという問題があるが、失業している潜在的労働者とみる
  こともできる。いずれにしろそんなことはたいした問題ではない。
 ・大切なのは親と子が一緒になってユニオン(労働組合)をつく
  り、ユニオンとして改善要求をすることである。
 ・改善要求の相手は、知的障害者の使用主のこともある。
  この場合は労働組合法にもとづく団体交渉になる。
 ・国や自治体と交渉し、要求することもできる。この場合は国や
  地方自治体に団交に応じる義務はないが、数が多くなれば応じ
  ないわけにはいかない。
 ・そのようにしてみんなでスクラムを組んで改善を求めていく。
 ・単なる親の会よりも、ユニオンとなればこちらとしても肩の力が
  入るし、先方も正面から受け止めざるを得ない。

・・・と思いをめぐらしていますが、今のところ私の一人芝居です。

【自分の利益を追求しながら社会参加型のユニオンをつくろう!】

 知的障害(者)ユニオンは一つの例ですが、私は自分にとって何が利益になるかとということを基本に据えたうえで、社会参加型のユニオンをつくり、社会の歪んだ部分を正していくのが、これからのあり方ではないかと思います。
 私は7年前にChange Japan!という団体をつくり日本の政治を変えるよう試みましたが、日本の政治の変革はそんなに生やさしいものではないということを悟りました。私はまた、いくつかの市民団体をつくったり参加したりしています。しかし、市民団体とユニオンの違いはユニオンは構成員の経済的利益その他の利益を追求するという具体的な目的をもって集まっています。一方市民団体は社会の全般的問題に目線が移り、個々の利益とのつながりが薄くなりがちです。そのため途中で息切れしてしまいます。
 理念とか理想とかだけではなく、集団の共通の利益は何かということをまず最初に明確にし、その共通の利益に向かってユニオンという旗のもとみんなの力を結集する。このように共通の利益を追求する過程で社会の歪みも是正されていくのではないでしょうか。私たち日本人は、自分の利害を捨てて社会を正すのを美徳と思いがちです。しかし、それは結局のところ長続きしないし社会を正す力ともならない。私は自分の反省をこめて最近このように感じるようになりました。サア!欲をムキ出しにして社会を変えよう!

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2008年9月14日 (日)

派遣・中小社員 雇用悪化 しわ寄せ

                 (8月26日 朝日新聞 より)

 景気減速が鮮明になり、雇用環境も悪化してきた。とりわけ、正社員に比べ企業の人員調整の対象になりやすい派遣社員や、経営が苦しい中小企業の社員ら、弱い立場の労働者にしわ寄せが出始めている。(福間大介、松浦祐子)

【「最初に切られ 格差痛感」】

 「社員と同じように何年も働いてきたのに、こんなにあっさり切られるなんて、ひどすぎる」自動車部品メーカー、ボッシュの富岡工場(群馬県)で働く男性派遣社員(45)は、突然の契約解除に憤る。
 請負契約で働いて時期を含め、同工場で4年近くトランスミッションの部品の洗浄を担当してきた。だが、7月29日、派遣会社から呼び出され、8月末での契約解除を通告された。男性を含め、対象は同じ製造ラインで働く約10人。9月末の契約期限を前倒しする中途解約だった。
 男性はすぐに、派遣社員でつくる労働組合に相談し、ボッシュ側に団体交渉を要求。今月7日、ボッシュ側は、北米の自動車販売が不振で、減産対象の部品は7月の生産量が昨年の3分の1ほどに減っており、人員整理に踏み切らざるを得ない、と説明したという。「結局、最初に切られるのは僕たち派遣社員なんだと、格差を痛感しました」。就業先のあっせんを求めているが、次の仕事のめどはたっていない。
 派遣社員を大量に受け入れてきた自動車業界では、トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)も6月と8月の2回の人員調整で、派遣社員計約800人の契約を解除。輸出の6割を占める北米の景気減速に伴う減産が主な理由だ。
 こうした動きは、輸出に頼っていた製造業全体に広がりつつある。製造派遣最大手の日研総業は「今年に入り、派遣の依頼は前年より1~2割少ない状態。7月からは解約も出始め、派遣稼働人数が減ってきた」という。厚労省幹部も「従業員に占める派遣社員の割合が増えているので、前回の景気後退より速いテンポで失業者が増え始める可能性がある」と警告する。

【中小企業はさらに深刻】

 資源高で経営が苦しい中小企業は、さらに状況が深刻だ。
 関東地方のある運送会社は7月、トラック運転手約20人の給料を月20数万円の月給制から時給800円の時給制に変更した。昨年、営業エリアの排ガス規制が厳しくなり、借り入れでトラック5台を買い替えたが、原油高で借金の返済計画が狂い、資金繰りが悪化。人件費を切り下げるしかなかったという。しかし、その後も業績は回復せず、結局、今月中旬に廃業。従業員は全員失業した。
 中小企業が多い食品業界も穀物価格の高騰などで厳しい経営環境が続く。食品会社の労組でつくるフード連合は「中高年層を対象にした希望退職の募集など、人員調整の動きが出てきた」と警戒感を強めている。
 厚生労働省が7月、全国の中小企業(従業員300人未満)4412社を対象に実施した緊急調査では、原油高などで資金調整や雇用調整に踏み切った企業は全体の12.5%に上った。内訳をみると、希望退職の募集(3.3%)や解雇(3.4%)はまだ少ないが、賞与や賃金を切り下げた企業は57.0%。従業員の過不足感を示す雇用DIは正社員はマイナス(不足)だが、派遣社員はプラス(過剰)で、非正社員の再契約停止が17.8%に上っている。

【私の意見】Up63

1. 政府によるリストラの奨励・推進
 竹中平蔵氏は著書「みんなの経済学」(2000年12月幻冬舎)30頁で次のように述べてリストラを推奨しました。

「 1990年代を象徴するキーワード『リストラ』。日本の企業にとって、いま必要なリストラとは、バブル時につくった過剰な債務・過剰な設備・過剰な雇用の削減です。これを先送りにしてきたことが、日本の経済成長を抑制した原因となっています。三つの過剰が解消されれば、日本経済は本来可能であると見られる2%程度の成長ができることになります。」

 これがそのまま小泉内閣の政策となり、政府はリストラを奨励し続け、またいつでも雇用関係を終了できる派遣などの非正規雇用の法制度を拡大し続けました。政府がリストラを叫ぶ中で日本を代表する企業ですら、ためらいもなくリストラを実行する風潮ができあがってしまいました。上記朝日新聞記事はその風潮が日本企業にしっかりと根付いたことを如実に示しています。

2. 大企業の人件費負担は大幅に減少
 政府の後押しがあって、日本の大企業の人件費負担は大幅に減少しています。
 平成20年版「労働経済白書」はこのことを次のように記述しています(45頁)。

「 財務省『法人企業統計調査』により企業の人件費負担を労働分配率でみると、1990年初のバブル崩壊後に大きく上昇し、その後も経済の低成長の下で高水準で推移してきた。しかし、最近では、景気の回復に伴い2001年度の75.1%をピークとして低下し、その後2005年度には70.0%とやや上昇し、2006年度には69.3%と再び減少した。」
「 労働分配率には、企業規模別に大きな違いがあり、2006年度では、資本金10億円以上の企業で53.3%、同1億円以上10億円未満で66.3%、同1億円未満で79.6%となっており、中小企業ほど付加価値に占める人件費の割合が高く営業純益の割合が低い。」

3. 大手製造業の収益力は6年連続で向上
 9月10日の日本経済新聞は大手製造業1026社を対象とした集計結果にもとづき、大手製造業の収益力が6年連続で向上したことを次のように報じています。

「 製造業の収益力を示す損益分岐点比率が2007年度に76.19%と前年度比0.07ポイント低下し、6年連続で改善したことが分かった。積極的な設備投資などで増えた固定費を売上高の伸びで吸収し、さらに筋肉質になった。」

4. 手元資金豊富な日本企業 海外M&A急増2.8倍
 人件費負担が減少し収益力が向上した結果、日本大手企業には現在きわめて豊富な手元資金があります。9月13日の日本経済新聞は次のように報じています。

「 日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)が急増している。2008年の総額は8月までで前年同期の2.8倍にあたる4兆5600億円に上り、年間ベースで既に過去2番目の水準に達した。少子高齢化を背景にした国内市場の成熟を受け、企業は海外での成長機会獲得を急いでいる。豊富な手元資金が元手になっており、欧米企業による海外M&Aが急減しているのと対照的だ。」
「 欧米では米住宅ローン問題による信用収縮で、金融機関が与信に慎重になっておりM&A資金の供給も滞りがち。『借金が少ない日本企業の財務力が国際比較で相対的に強まっているうえ、海外株安の影響で外国企業を買いやすくなっている』(大和総研の原田泰チーフエコノミスト)ことが有利に働いている。
 今後は傘下に収めたもとで企業の効率運営をどう進めるか、日本企業の国際経営力が試される。」

 海外の企業を買収するほどお金にゆとりがあっても、景気の低迷を口実に、労働者を簡単にクビにするのが今の大企業であり、それを助長してきたのが日本の政府です。正規社員にしろ派遣社員にしろ賃金を唯一の生活の糧にして生活しています。これを助長し続けた日本政府の責任は重いですし、労働者と家族を路頭に迷わすことに何の心の痛みも感じない経済人には強い憤りを覚えます。

5. 福田首相退陣で経済界に再び勢い。「構造改革から逃げるな」
 福田首相が生活者・消費者重視の政策を強調していたため経済界は鳴りをひそめていましたが、辞任表明以後視野の狭い今時経済人(いまどきけいざいじん)たちが再び手前勝手な主張を合唱しはじめました。日本経団連(会長御手洗冨士夫氏)は新しい政権に対する提言事項として消費税を2010年度に現在の5%から10%に引き上げることを決めました(9月10日日本経済新聞)。
 また、草刈隆郎規制改革会議議長は日本経済新聞のインタビューを受け「構造改革から逃げるな」と次のように述べています(9月10日日本経済新聞)。

「 英国ではサッチャー政権時代から約20年にわたって規制緩和など構造改革を推し進め今日の復活につなげた。日本が改革を進めた時期は小泉政権時代のわずか4、5年にすぎない。それなのに『改革疲れ』などといって逃げることは許されない。日本は構造改革路線に戻らないと厳しい課題は克服できない」
「 福田政権では規制改革がほとんど何も進まなかった。ただ小泉政権でも混合診療の規制改革が中途半端に終わるなど官製市場の大玉はあまり進まなかった。公的部門の岩盤はとても厚い。まずは過去に閣議決定した改革事項をしっかり進めることだ。07年度は医療など約20項目の約束が守られず、08年度も30項目強を進めなくてはいけない」
「官僚組織は政治情勢をにらんで巻き返しを図っている。鬼のいぬまに権限強化へ走る恐れは否めない。要注意の案件は4点。漁業対策、決済ビジネス、消費者庁、日雇い派遣にかかわるものだ。このほか医療品のネット販売禁止、コンビニエンスストアの深夜営業禁止、外資規制も問題視している。医療、農業、保育分野は規制改革を通じた成長の余地が十分ある」

6. 経済界のご機嫌を伺う政治に、私たちは断固レッド・カードを!
 大企業がグローバル市場で勝ち抜いてどんなに利益を挙げても、手元資金がどんなにたまっても、その果実を労働者の側にビタ一文分配しないことが、最高利益を挙げ続けてきたこの6年間で実証されました。かつての経済界の代表は財界総理と言われ、大手企業だけでなく中小企業、自営業、労働者等ひろく国民各層への影響に配慮しながら提言してきました。
 しかし、今時経済人は自社の目先の利益しか頭になく、経済界は始末の悪い利益団体に成り下がったように思います。
 これに歯止めをかけるのが政治の役割ですが、小泉・安部両内閣の6年半は諮問会議を重用し、今時経済人のご機嫌伺いの政治に終始しました。
 さて、衆議院総選挙も秒読みにさしかかりました。私たちは今度こそ経済界のご機嫌伺い政治に、断固としたレッド・カードをつきつけましょう!

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2008年5月 5日 (月)

医師も教師も名ばかり管理職 是正勧告等

【医師について名ばかり管理職と是正勧告/滋賀県立病院に労基署】
独立行政法人 労働政策研究・研修機構/メールマガジン労働情報NO.430:2008/4/25 発行より)

 滋賀県守山市の県立成人病センター(河野幸裕病院長)で、管理職の医師が、権限がないのに残業代が支払われない「名ばかり管理職」の状態に置かれているとして、大津労働基準監督署が労働基準法に基づく是正勧告をしていたことが23日、分かった。

 名ばかり管理職をめぐっては、未払い残業代の支払いを求める訴訟や労働審判が相次いでいる。公立病院にも同様の問題があることが明らかになったが、センターを運営する県病院事業庁関係者は「医師不足が要因となっている」と説明している。

 大津労基署は内部告発を受け、今月11日、センターに立ち入り調査。同事業庁から事情を聴き、勤務日誌など関係書類を調べた。

 この結果、部長以上の管理職の医師で、勤務終了後5~6時間の残業が常態化。月数回の夜間当直では、夜間診療や急患対応に追われ、当直が明けても深夜まで連続勤務する場合も多かったが残業代は支払われていなかった。

 さらに一般の医師も同様の勤務状態にあったが、一日8時間の法定労働時間を超える残業をさせる場合、労使協定を結んで労基署に届け出なければならないとの労働基準法の規定も守られていなかった。

 同事業庁の谷口日出夫庁長は「勧告を受けたのは誠に遺憾。今後、専門家を交えて協議し早急に対応したい」と話している。

 センターは、がんや循環器、脳神経疾患などの三大生活習慣病に対する拠点病院として1970年に創立。4月1日現在で、病床数は541、常勤の医師77人。2006年度の入院患者は延べ約13万8,000人。外来患者は約22万8,000人。

(共同通信)4月 24日

【教諭自殺、公務災害と認定/東京高裁が逆転判断】
独立行政法人 労働政策研究・研修機構/メールマガジン労働情報NO.430:2008/4/25 発行より)

 静岡県内の小学校の養護教諭だった尾崎善子さん=当時(48)=が2000年に自殺したのは、過重な仕事が原因でうつ病を発症したためとして、母親が公務災害と認めるよう求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は24日、うつ病による自殺と公務との因果関係を認定。請求を棄却した1審判決を取り消した。

 浜野惺裁判長は「尾崎さんは経験したことのない事態に次々と遭遇し、精神的に深刻な危機に陥り、抑うつ状態になった」と認定。「担当する特別支援学級に、行動に問題がある男児の体験入学を進める重圧で、うつ病を発症して自殺したと認められ、公務との間に相当の因果関係がある」と結論付けた。

 高裁判決によると、2000年1~2月、尾崎さんの特別支援学級に、友人に突然暴力を振るうなど行動に問題がある男児が体験入学。尾崎さんは、ほかの児童をけったり、髪の毛をつかんだりする男児の対応に悩み、その前後にうつ病となり、同年8月に自殺した。

 母親は、地方公務員災害補償基金静岡県支部で公務災害ではないと認定されたため、この処分取り消しを求め提訴した。

(共同通信) 4月 24 日

【京都地裁 教員の月67~108時間の超勤を残業と認めず 超勤100時間超の教員についてのみ京都市に55万円の支払いを命令】
               (MSN 産経ニュース 2008.4.23 より)

 違法な残業を行わせたうえ健康保持のための安全配慮義務を怠ったとして、京都市立小、中学校の教員ら9人が市に総額約3300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、京都地裁であった。中村哲裁判長(異動のため辻本利雄裁判長が代読)は、残業そのものの違法性は認めなかったものの、残業が月100時間を超えた教員について「勤務が過重にならないよう管理する安全配慮義務を怠った」として、市に55万円の支払いを命じた。

 ほか8人の請求は棄却した。原告、被告とも控訴する。

 判決によると、原告側は授業の準備や部活動の指導などで月に約67~108時間の超勤があったと指摘。「教職員の残業を原則禁止する給特法に違反する」と主張し、慰謝料や未払いの賃金の支払いを求めた。

 判決で中村裁判長は残業について「自発的、自主的な側面がみられる」として違法性は認めなかったが、「市は教員が心身の健康を損なうことがないよう、勤務時間を管理する義務がある」と指摘。残業が月100時間超と、原告で最長だった中学校教員(47)について「校長は時間外勤務が極めて長時間に及んでいたと認識、予見できたのに改善措置を取らなかった」として安全配慮義務違反を認定した。

【私の意見】Up63

1 前回のブログで教師は名ばかり管理職と述べましたが、医師の世界も長時間労働が当然視されています。教師・医師→聖職→黙々と働くのが当たり前であり善である、という公式の中で、残業手当も支給されず黙々と働かされているのが多くの教師や医師の実態です。働くのは善ですが、8時間を超える労働は労働の質が低下し悪に転化します。働かないことは善というラテン系の美徳が日本人には欠けています。

2 京都地裁の判決には全く納得いきません。各自治体の条例では「教育職員については、原則として正規の勤務時間を超える勤務はさせないものとする」「正規の勤務時間を超える勤務をさせる場合は、臨時又は緊急にやむを得ない必要があるときに限るものとする」と既定しており「京都市教職員の給与等に関する条例」第27条の2にも明確に規定されています。京都地裁は残業が当然視され残業をせざるを得ない教育現場の実態に目をつぶっています。政府、自治体が国民の基本的人権を侵害しても許される環境を日本の司法が支えていると思うことが少なくありません。本件もその一つだと思います。

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2007年12月 2日 (日)

労働力人口2030年に1000万人減

                 (11月29日 日本経済新聞 より)
【厚労省推計】

 厚生労働省が28日まとめた推計によると、日本の2030年の労働力人口(15歳以上の就業者と求職者)は現在の6657万人から1070万人も減る。少子と高齢化は世界最速、先陣を切って人口減社会に突入し、働き手の減少ペースも類がない。“昔ながら”の仕組みでは社会の形を保つのが難しい。

【働く仕組み 変革必要に】

 日本の制度には働ける人まで働けなくしている面がある。例えば厚生年金では60歳以降も正社員などとして働くと、賃金に応じて年金が減ってしまう。慶応義塾大の清家篤教授は「働く意欲をそぐ制度。早く改める必要がある」と指摘する。企業の若者採用は新卒中心。パート女性の多くは夫の被扶養者にとどまるため「年収130万円未満」に仕事を減らす。人口増の時代から残る日本流を見直せば、1千万人分の「人材力」を引き出せるかもしれない-。

<高齢者1割で300万人>
 65歳以上の高齢者は現在約2700万人で、今後も増え続ける。
 一部の企業は高齢者活用に動き始めた。大手流通業のイオンは2月から定年を65歳に延長。トヨタ自動車は60歳以上の再雇用者に希望や業務内容に応じて4時間の勤務を認めている。
 現在65歳以上で働いている人は約500万人。2700万人のうち、あと1割が仕事に就いたとすると、「300万人」近い働き手が労働力不足を埋めてくれる。

<女性の潜在労働力350万人>
 日本は女性の力を十分に生かしていない。出産を機に女性の7割が仕事を辞める世界でも特異な国だ。在宅勤務や短時間勤務の充実で柔軟な働き方を用意し「引き留める」ことが第一歩となる。大手企業では制度が整い始め、帝人では長期勤続者がこの10年余りで23%から47%にまで伸びた。
 家事や子育てで仕事をあきらめている女性は「350万人」。柔軟な働き方ができれば潜在力が動き出す。

<ニートは60万人>
 18-34歳の働き盛りの人口は現在約2800万人。これが2030年には約1900万人と3割以上減る。
 仕事も学校にも行かず職業訓練も受けていないニートは62万人。定職につかない若者のフリーターは187万人。ニートは定職に就けるよう、フリーターは正社員など失業の心配なく働けるよう、再チャレンジの後押し策をもう一度盛り上げるときだ。

<先端技術磨けば百人力>
 人間に代わる労働力として期待されているロボット。すでに産業用分野で日本は世界一の「ロボット大国」。日本の産業用ロボット稼働台数は約37万台で北米やドイツを大きく上回る。
 介護や医療ロボットに商機を見出す会社も多い。セコムが食事支援ロボットを発売したほか、近く人間の手足の動きを助けるロボットスーツも登場する。日本ロボット工業会の予測では07年の日本のロボット出荷額は7600億円と過去最高を更新する見通し。日本の最先端が生きる。

<外国人向け制度づくり>
 高齢化で需要が高まる介護分野。政府はフィリピン人の看護師・介護士を受け入れる計画を進めていたが、フィリピン国会でいまだ認められず、「まったくメドが立たない」(厚労省)。
 経済協力開発機構(OECD)は日本が現在と同じ生産年齢人口を保つには年間50万人の外国人受け入れが必要と試算する。実際に日本で長期就業が認められた外国人は05年で約2万人。優秀な外国人が働くインフラを整えなければ、世界の人材争奪に出遅れる。

【識者の見方 年1%のマイナス成長も】

日本総合研究所ビジネス戦略研究センター・山田久所長
 労働力人口が2030年に1070万人減少した場合、日本経済は年1%程度のマイナス成長に陥る可能性がある。2030年を待たず、あと十数年後に実質成長率はマイナスに転じるだろう。
 労働力人口の減少によって、働いて賃金をもらう人が減り消費は低迷する。国内市場の衰退は避けられない。企業の海外移転が加速し、現場の担い手がいなくなれば製造業が競争力を保つのも難しくなる。少ない労働力人口が東京など大都市部に集中すれば地方の地盤沈下も進む。
 すでに一部の地方でみられる窮状は日本という国の未来かもしれない。成長率がマイナスになると税収が減る。国家財政はますます厳しくなり増税や行政サービスの縮小も覚悟しなければならない。
 労働力人口の減少を放置するわけにはいかない。技能が高い高齢者の再雇用は意味があるし、女性管理職の比率を増やし女性の働く意欲を高める必要もある。若者が多い非正社員の待遇改善も有効だ。減少ペースを国や企業、地域の工夫で抑え、一人ひとりの生産性を引き上げる。成長し続けるため、日本がやらねばならないことは明確だ。

【私の意見】Up63
                
<ムシのいい話>
 
中高年のリストラを行い、若者や女性の非正規雇用を拡大して労働コストの削減にまい進していながら、労働力不足となると手のひらを返したように高齢者を活用しよう、女性を活用しよう、ニートを活用しよう、外国人を活用しようというのはあまりにムシのいい話。なんとも無定見で、場当たり主義の国の労働政策にあきれます。

<外国から見ればぜいたくな話>
 仕事はあるけれども人が足りない。人が足りないとマイナス成長になる!他の国から見ればなんともぜいたくな話です。

<インドネシアの少女リウ>
 半月ほど前にNHKの衛星放送でインドネシアの16歳のストリート・チルドレンの少女リウを追ったドキュメンタリー番組を見ました。リウは12歳頃までは両親と弟妹3人と一緒に生活し普通の生活をしていましたが、父親の会社が倒産し失職して、それ以降父親がリウを厳しく叱るようになりました。なぐるけるの暴行も絶えず、リウは父をきらってストリート・チルドレンになりました。リウはストリート・チルドレンの仲間と一緒にうまくもない歌をうたって人々から投げ銭をもらって食いつなぎ、建物の軒下など路上で寝ながら生活をしていました。リウの母親はリウをさがしあて、家にもどそうとしましたが、がんこな父親は“おれはまちがっていない”と言って自分の態度をあらためず、リウももどりませんでした。やがてかつての同級生が中学を卒業し、高校に進学するようになってリウの心にあせりがでてきました。母親の説得で中学卒業検定試験を受けましたが失敗し、リウは更に遠い所へと逃げていきます。自分もストリート・チルドレンだった少女(18歳位?)がストリート・チルドレンを家にもどすボランティアをしており、リウが家に戻る決断をするうえで彼女が大きな影響を与えました。父親の失職は3年たっても続いていますが、がんこだった父親も“おれが悪かった。帰りたいときはいつでも帰ってくればいい”と言って、リウに謝り、リウも次第に家にもどるようになりました。

<フィリピンの看護師、介護士>
 フィリピンでは外国で働く看護師、介護士の育成に力を入れている映像を見ました。フィリピンの若者は日本語も勉強していますが、日本はなかなか受け入れてくれないと嘆いていました。日本経済新聞の記事はフィリピン国会が認めてくれないとなっていますが事実は逆だと思います。

<日本を先頭にアジア諸国が成長という虚像>
 かつて日本を先頭にともに成長すると言われていた韓国、台湾、アセアン諸国を雁の群れに例え、群れをなして成長するアジア諸国と言ってきましたが、しかしこれは日本人に都合のいい表現であって、日本には多少自国を犠牲にしてでも群れから遅れそうなアジア諸国の成長を応援するという考えはありませんでした。今、日本にとってアジアは市場として重要であり、低賃金の生産拠点として重要ですが、他国の成長は日本政府や経済界にとってはcompetitor(競争相手)の台頭であって日本をおびやかすような存在は官民一体となってたたきつぶしています。その結果アジア諸国の中日本の一人勝ちが続いているというのが現状です。

<グローバル化の世界で日本人のありようが問われるのはこれから>
 リウがストリート・チルドレンになったことと日本企業の一人勝ちは決して無縁ではないという思いで私は映像を見ていました。外国人の受け入れにしても日本は世界に冠たる鎖国国家です。受け入れるにしても研修という偽りの名目のもとに低賃金で働かせるなどアジアの若者にとって日本は自分の国より収入が多いので働きたい国ではあるけれともやさしさの欠けている国と見られています。
 グローバル化社会の中で私たち日本人のありようが本当に問われるのはこれからです。

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2007年11月14日 (水)

労働契約法案審議に見る民主党の裏切り

【11月8日衆議院通過】

 私が3月28日のブログでこわ~い法律案と指摘していた労働契約法案が自民党、公明党に加えて民主党の賛成でいとも簡単に衆議院を通過しました。参院選で民主党が第1党となり民主党は労働契約法案と最低賃金の一部を改正する法律案を提出し、11月7日の衆議院厚生労働委員会では与党議員からの質疑に対し論陣をはっていました。ところが4時すぎにあっさりと自らの法案を撤回し、すぐさま水面下で与党とすりあわせてきた共同修正案を自ら提案し賛成多数で可決しました。“党首密室会談”を契機とし、民主党は姿勢を一変させ、自らの法案に執着することなく、政府案を抽象的な美辞麗句を並べるだけで合意し、結局政府案に収斂されてしまい、共同修正案を11月8日衆議院本会議で可決しました。

【政府案,民主党案,可決した修正案】

 政府案、民主党案、可決した修正案については以下リンク先をご参照ください。
 政府案と民主党が独自に提言した修正案についてはこちら([政府提出案と民主党提出案の比較](働く女性の全国センター)) 、民主党がこれらをあっさり撤回し共同提案した修正案についてはこちら([労働契約法案に対する修正案対照表](独立行政法人労働政策研究・研修機構))です。
 当初の民主党の独自案も労使対等でない労働契約の分野に民事法ルールをもちこむなどの多くの問題点がありましたが、労働者の立場に立とうとする姿勢が多少はありました。今回の民主党の対応はこれをかなぐり捨て、労働者や市民に対する明らかな裏切り行為です。

【働く女性の全国センター・全国労働組合連合会の緊急声明】

 働く女性の全国センターは,「パートや派遣、若者や女性の意見も聞かないで勝手に労働契約法の新設するのは、やめにしてください。働く人たちの声に耳を傾けない自民党・公明党・民主党が嫌いになってしまいます。」として緊急声明(緊急声明第2弾-11/8-)を出していました。同センターは就業規則による不利益変更の実例を具体的に紹介もしています。
 また、全国労働組合連合会は「最低賃金法と労働基準法、大型新法の労働契約法といった、労働者にとって重大な法案が、参考人招致もされず、一部政党による密室審議で粛々と進められ、政府案ベースに収斂されてしまった。その姿は異常であり、民主的な国会運営からはかけ離れたものといわざるをえない」という談話を発表しています。
 これらの団体こそが厳しい条件下で働く者の声を正しく代弁していると言えます。
 これに関する朝日新聞の記事をご紹介します。

【労働契約法案に警戒感 女性・非正規「就業規則 悪用も」】
                     (11月10日 朝日新聞 より)

 衆院を8日に通過した労働契約法案に、女性や非正規の働き手などの間で警戒する声が出ている。就業規則を労働契約とみなすとの内容に「就業規則の変更を悪用して労働条件が切り下げられるのでは」との不安が強まり、衆院での修正も小幅だったためだ。7日には全労連や全労協,女性ユニオンなどが共同で国会前集会を開いた。14日にも開き,悪用への歯止めを盛り込むことなどを求める。
 法案は、労働契約の基本的なルールや手続きを明文化するのが目的で、会社と社員の個別紛争の増加を背景に、労働側が制定を求めてきた。
 労働側は当初、有期契約の従業員の均等待遇など働き手を保護する内容を求めていたが、使用者側が反対。判例でルールが確定していることだけを明記することで連合も合意した。
 具体的には「就業規則の内容が合理的で周知させてあれば、働き手が合意した労働契約とみなす」ことなどが盛り込まれ、衆院も小幅な修正で通過した。これに対し、全労協や全労連は「判例の条文への反映のさせ方が不十分だ」と、法律の独り歩きを警戒。特に、労働者にとって不利益になる就業規則の変更を「内容が合理的で周知させてあれば可能」とする点について「だれにとって合理的なのか不明確。非正社員は就業規則作成に意見も言えない」と疑問視する。
 「周知」についても、衆院厚生労働委員会で7日、社民党の安部知子議員が「日雇い派遣の給料天引きを記した就業規則は会社のホームページに掲載されていた(のに労働者はよく知らなかった)。これで周知になるのか」と問題提起した。
 女性の待遇向上を目指す「働く女性の全国センター」は「女性は労組の少数派。就業規則を不利に変えられても反対しにくい」と反対声明を発表。「反貧困ネットワーク」の湯浅誠さんやシングルマザー問題に取り組む赤石千衣子さんらも賛同、「非正規労働者の紛争解決にも役立てたいなら、その声をもっと聞いて」と訴えている。
 日本労働弁護団の棗一郎弁護士は「個別紛争が増える中で労働契約法は必要で、まず小さく産んで大きく育てることだ。ただ、今回の法案の内容は極めて不十分。審議の拙速は避けるべきだ」と話している。

【私の意見】Up63

 小沢一郎民主党党首は市民や労働者の立場に立つ人物でなく、資本の側に立つ根っ子からの保守政治家であることが明白となりました。
 社会の片すみに追いやられている老人や若者や障害者や農民や地方に光をあててほしいと願った参院選の国民の声を聞いたふりをしながら、裏切った小沢氏の責任は重大です。連合も所詮は恵まれた大企業の労働者の代表にしかすぎないことが暴露されました。
 給油新法や自衛隊の海外派兵についての国民世論も支持の方向に、小沢氏の迷走を契機として一気に増加しています。
 国民も含め日本の保守化は参院選前よりもっと進んでしまったというのが私の正直な認識です。
 日暮れて道遠し。この国は行きつくところまで行かないと良質の国家に生まれ変わることができないのではないかという悲観的思考が私の頭の中でグルグルまわっている今日この頃です。

 

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2007年11月 4日 (日)

冬のボーナス前年割れ

【冬のボーナス前年割れ 民間予測4年ぶり1%前後】
                      (11月3日 朝日新聞 より)

 主な民間シンクタンクがまとめた民間企業のボーナス予想で、今冬の支給額が4年ぶりに昨冬より1%前後減る見通しになった。好業績が続く大手企業の支給額は増える見込みだが、原材料の値上がりなどで経営が厳しい中小企業が落ち込む見通しだ。
 今年夏のボーナスも3年ぶりに同1.1%減っており、景気回復下で続いた増加傾向が頭打ちになりつつある。
 各社が予測したのは、厚生労働省が毎年発表する「年末賞与」(従業員5人以上の事業所対象)の動き。昨冬は、1人平均で前年比0.1%多い43万3825円だった。
 この日までに主なシンクタンク6社が発表した今冬の予測は、1社が前年比の0.2%増としたほかは、0.5%~1.6%のマイナス。中小企業の業績動向のほか、支給額が高い団塊世代が退職する半面で、支給額が低いパート労働者が増えているのが影響。
 「企業の雇用不足感が弱まっている」(野村証券)、「企業が従業員重視から株主重視に進んでいる」(みずほ証券)といった要因もあるという。
 一方、日本経済団体連合会の調査では、大企業のボーナスは昨冬より0.69%増の90万1031円。さらに、三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、国家公務員のボーナスは同2.5%増の70万円の見込みで、企業規模間や官民の格差も開きそうだ。

                  (10月31日 日本経済新聞 より)

【今夏ボーナス1.1%減 3年ぶり 中小企業中心に抑制】

 厚生労働省が31日発表した毎月勤労統計調査によると,2007年夏の賞与(ボーナス)は40万7637円となり,前年比1.1%減と3年ぶりに減少に転じた。原材料高で収益が圧迫されやすい中小企業を中心にボーナスを抑える動きが強まったとみられ,個人消費が伸び悩む原因の一つになった可能性がある。
 賃金水準の高い団塊世代の大量退職が本格的に始まったことや賞与の少ないパートタイム労働者の増加も影響した。正社員の雇用者数が前年同期に比べて1%弱の伸びに対し,パート労働者は5%近く増えた。
 大企業を対象にした日本経団連の調査では今夏のボーナスは過去最高を更新。主に上場企業を対象とする日本経済新聞社の調べでも前年比2.5%増となり,5年連続のプラスだった。従業員5人以上の事業所を対象とする毎勤統計では中小企業の動向が大きく反映された格好だ。
 日銀も今月の金融経済月報で「グローバル化や財政再建,原材料価格上昇の影響を強く受ける中堅中小企業でボーナスの抑制傾向が続いている面もある」と分析している。
 業種別にみると製造業が51万1264円と1.7%増え,5年連続のプラス。非製造業では運輸業(8.0%減),医療・福祉(5.4%減),情報通信(4.3%減)など減少した業種が目立った。
 同時に発表した9月の1人あたり平均の現金給与総額(速報)は前年同月比0.5%減の27万3144円となり,2ヵ月ぶりに減少した。

【労働基準法改正案 今国会成立を断念
             与党 雇用2法案は成立を狙う】

 与党は31日,最低賃金のかさ上げなどを盛り込んだ雇用ルール見直し3法案のうち,一定時間以上の残業代の割増率を引き上げる労働基準法改正案の今国会成立を断念した。次期国会に向けた扱いについては会期末に協議する。最低賃金法改正案と労働契約法案の2法案の成立は目指す。
 衆院厚生労働委員会は同日の理事会で,11月2日に政府提出の雇用ルール見直し3法案と民主提出の最低賃金法改正案,労働契約法案の実質審議入りを決めた。自民,民主の同委理事は審議と並行して2法案の修正協議を開始。2法案については民主も理解を示しており,今国会成立の可能性も残っている。

【私の意見】Up63

 かつては元気な中小企業が日本経済をひっぱっていましたが,今は強すぎる大企業と経営に苦しむ中小企業という構図が定着してしまいました。このことが中小企業で働く労働者の給与減につながっています。働く人の71%は中小企業で働いていますから,圧倒的多数の国民が給与減,賞与減,倒産による失職という苦しい生活を余儀なくされています。国会では残業代の割増率の引き上げも見送られました。審議入りを決めた労働契約法案は労使対等の原則の確立というこれまた偽りのうたい文句をもとに労働者の保護をなし崩し的にとっぱらおうとするものです。労働者にとってマイナスはあってもプラスはありません。民主党案もこの本質を没却しており、結果的には労働者の首をしめる内容になっています。この点については後日もう少し詳しく述べたいと思います。

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