2008年5月12日 (月)

日経「改革停滞を憂える」と朝日「北欧に学ぶ」

 同じ5月5日に日経新聞と朝日新聞に対照的な記事が載っていましたのでご紹介します。一緒に考えて下さい。

【社説 改革停滞を憂える】
                   (5月5日 日本経済新聞 より)

<長期拡大でも地位低下>

 日本経済は2002年から上向いて戦後最長の拡大を記録し、いま踊り場にある。だが回復力は弱く、02年から昨年までの実質成長率は平均1.8%と、ともに2.65%の米英を下回る。一人当たり国内総生産は06年に経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国の18位(1993年は3位)に落ち込んだ。
 また世界経済フォーラムの調べによると、国別の競争力は昨年、世界8位(93年は1位)、情報技術分野の競争力では今年、19位(昨年は14位)と、多くの指標が日本経済の地位低下を示す。

<グローバル競争に耐える制度を早く>

 その背景にあるのは、日本がぐずぐずしている間に、米国、英国、北欧諸国など多くの国が経済のグローバル化に対応して市場重視の改革を進めてきた事実である。
 ところが日本では「小泉内閣以来の改革の行きすぎが地方経済の疲弊や所得格差を生んだ」などの声がある。その大半は的はずれに思える。例えば公共事業削減で地方経済が悪化したとしても、地方分権や農業改革、官業の民間移管などの改革を進めていれば悪化の度合いは緩やかだったはず。改革の行きすぎではなく不徹底な改革こそが問題だ。
 いま日本経済は米サブプライム問題に端を発した景気減速と、石油・食料を中心とした物価高の二重苦に入りつつある。そこでは財政・金融政策による需要管理は無力だ。需要を喚起すればインフレを加速させ、需要を抑えれば景気をさらに悪化させるからだ。需要管理ではなく供給面を改革し、世界で16位の労働生産性を高めるしかない。
 福田康夫首相は、「骨太の方針」に向けて成長戦略の策定を指示するなど表向きは改革に取り組んでいる。だが首相の関心は、中身があいまいな「消費者庁」の創設など国民受けを狙ったものに偏りがちだ。
 いま本当に必要なのは経済の開放と競争を通じて成長を持続させるための改革だろう。

 例えば関税の相互撤廃を軸とする経済連携協定(EPA)は、企業の国際展開に必須だ。現実には、東南アジア諸国と結んだ協定は日本が農産物などの市場開放を渋ったため、相手国の工業品関税引き下げも限定的で双方にメリットが少ない。日本への不信感から協定を守らない国も現れ、タイの鉄鋼関税などに日本の業界は不満を募らせる。今後、オーストラリアや欧州連合(EU)と実効ある協定を結ぶには本格的な市場開放を避けられない。
 そのためにも農業改革は大切だが歩みは遅い。一例だが、株式会社が土地を借りて大規模な農業を営む場合、市町村が仲介する。大抵は工作放棄地など条件の悪い土地があてがわれる。企業に対する役所の懸念もあるようだが、これでは農業の生産性向上は遠い。世界的な食糧不足は対岸の火事でなく、自給率向上の面からも競争力強化は急務だ。

 企業の税負担軽減も考えるときである。法人課税の実効税率は40.7%(東京都)と、ドイツ(29.8%)や英国(28%)を上回る。社会保険料や租税特別措置も勘案すると欧米より低い業種もあるが、法人税負担の著しく低いアジア諸国との競争も考えれば軽減は当然だ。
 グローバル化の時代には企業が各国と同じ土俵で競えなければ不利になる。その事実を与野党の政治家は厳粛に受け止めるべきである。

【特集 北欧に学ぶ】
                       (5月5日 朝日新聞 より)

<出生率も就労率も高く>

 一人の女性が一生に産む子どもの数である合計特殊出生率。フィンランドは1.84%(06年)で、日本の1.32%を大きく上回る。60年代以降、女性の社会進出とともに出生率は下がったが、87年を底に1.7~1.8台に回復、安定した。女性就労率は高く、多くが正規雇用だ。
 NGO「フィンランド家族連合」のアナ・ロトキルシュ上級研究員によると、教育レベルが高いほど女性の産む子どもの数は減る、という国際的な傾向はフィンランドには見られないという。

 共働きを支えるのは公立保育所と育児手当だ。産後10ヶ月間、収入の3分の2が出る育児休業が与えられる。この育休明けが、子どもを保育所に預けて職場復帰する最初の節目となる。保育所費は収入に応じて払う。低所得者は無料で、最高で月200ユーロ(約3万3千円)。3歳までは自宅で育てれば、育児手当が少なくとも月300ユーロ(約5万円)支給される。

 手厚い施策は国民の高い税負担が支える。所得が多い者ほど重税感が増す。ある政府関係者は「税負担は他のEUの他国と比べても、確かに重い。しかし、社会をよくするために使われていると納得できれば受け入れる、という感覚はみなにある」と話した。ロトキルシュさんは「税金はサービスで取り戻せる、という意識が強い」と言う。
(井田香奈子)

<数字でも豊かさキラリ>

 北欧諸国は、さまざまな指標で世界の上位に位置している。
 「世界競争力ランキング」(07年)では、デンマークが米国、スイスに次ぐ3位。世界の政財界リーダーが集まるダボス会議の主催者、世界経済フォーラムが各国のインフラ整備状況やマクロ経済の安定度、教育制度などの要素を指数化し、世界の経営者らへのアンケート回答と組み合わせて算出したものだ。
 教育面ではフィンランドが特に光る。経済協力開発機構(OECD)による生徒の学習到達度調査(PISA)では、科学的リテラシー(応用力)で03年、06年と連続して1位。「学力世界一」として、日本でも注目を集めた。
 女性の社会進出も進んでいる。国連開発計画(UNDP)が、国会議員や、管理職、専門職などに占める女性の割合などから算出するジェンダー・エンパワーメント指数(07年)では、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマークの順で1位~4位を独占。日本は54位だ。男女差に限らず、所得格差の度合いを示すジニ係数でわかるように貧富の格差も比較的小さい。
 財団法人・社会経済生産性本部が、健康や環境、労働経済など56の指標を使った「国民の豊かさ」総合指標(07年)でも、2位ノルウェー、3位スウェーデン、5位フィンランド、8位デンマークと上位を占める。総合的な「人間の豊かさ」を示すUNDPの人間開発指数(07年)でもノルウェーが2位など、北欧諸国が上位に並ぶ指標は枚挙にいとまがない。
(松井健、吉田美智子)

<尊厳をもてる社会を 東大教授 神野直彦氏>

 じんの・なおひこ 46年生まれ。専門は財政学。著書「人間回復の経済学」「『希望の島』への改革」などで、スウェーデンの経験を紹介し、福祉・教育・医療の充実や新産業育成の必要性を主張する。北ヨーロッパ学会理事。

 日本人は北欧について「高負担の国々が、どうやって経済成長できるのが」という点に関心を抱くが、彼らは経済成長よりも、尊厳をもって生きられる社会をどうやって築くかを重く考えている。
 スウェーデンでは、社会サービスを「オムソーリー」と呼ぶ。「悲しみを分かち合う」という意味。他者に優しくし、必要とされる存在になることが生きることだと考える。その概念によって社会が支えられている。
 高い税金に不満が少ないのも、分かち合いの発想からきている。いつかは自分も子供を持ち、高齢者、あるいは失業者になる。充実した介護や育児サービス、教育や職業訓練があれば、安心できる。
 企業活動や社会貢献もそうだ。会社では、個人が競い合うというより、家族や地域社会のようにみんなで知恵を出し合う。女性の知恵も生かす。こうすれば多くのアイデアが生まれ、需要に対応しやすい。信頼して分かち合う社会が、知識集約産業に適していたということだ。
 日本では、税や社会保険料を「負担」と考える。高負担だと海外投資が呼び込めないと思い込み、規制をなくして「小さい政府」を目指す。財政負担が重いという理由で後期高齢者医療制度をつくる。
 大学生への調査で「この社会は、気をつけていないと誰かに利用されてしまうか」という問いに、日本は8割が「そう思う」と答えた。フィンランドは25%だった。北欧の成功を部分的につまみ食いしようとしても、うまくいかない。まずは互いを信頼し合える社会、政治が必要だ。
(聞き手・山口智久)

【私の意見】Up63

 日経新聞がどうしてこんなにも小泉改革に入れ込むのか、私には今なお理解不能です。「いま本当に必要なのは経済の開放と競争を通じて成長を持続させるための改革だろう」と言われても、小泉改革で人々が少しも幸せになれず、この社会が尊厳をもって生きられる社会とは程遠いのに、この社説にとても賛同することはできません。株式会社に上質な土地を与えて農業生産をあげさせ、法人税を下げて企業の純利益を増やしても、そのことが人間としての国民ひとり一人の充実した人生に結びつかなければむしろ有害です。小泉・竹中「改革」の致命的な欠陥は生身の人間のことを考えていないことに尽きます。
 うつ病や過労死があとを絶たないのに日経社説が「労働生産性を高めるしかない」と言いきる偏向性は日本最大の経済紙だけにとても心配です。

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2008年4月27日 (日)

黒柳徹子さん トットちゃんの教育論

【トットちゃんの教育論 黒柳徹子さんに聞く】
                   (4月24日 日本経済新聞 より)

くろやなぎ・てつこ 1933年東京生まれ。トモエ学園から香蘭女学校を経て東京音楽大学声楽家を卒業。NHKの「ヤン坊ニン坊トン坊」などで人気者に。女優、司会者として活躍するかたわら、ユニセフ(国連児童基金)親善大使、社会福祉法人「トット基金」理事長として子ども支援にかかわっている。

<どの子も個性と才能を持って生まれてくる。それが周りにつぶされてしまう前に見つけて伸ばすのが教育だ、と教わりました>

 マリー・アントワネットの髪型を模したいつものタマネギ頭にベレー帽で、自宅近くの喫茶店に現れた黒柳徹子さん。小学校の時の思い出に触れながら、教育の重要性を説いた。
 「トモエ学園では心と体のバランスを重視し、ダルクローズという人が考えたリトミックというリズム教育を取り入れていました。作詞家のなかにし礼さんに、『あなたのおしゃべりの刻みはモーツァルトのリズムと同じ』と不思議がられるのもリトミック教育の影響。今テレビの仕事を続けていられるのもあの教育のおかげかしら」
 
 24年前、タンザニアへ行った時のことが忘れられない。ニエレレ大統領は元校長先生。教育に力を入れていた。「おかげで、タンザニアの識字率は今も他国に比べ高い。宗主国は植民地に教育の機会を与えませんでしたが、機会さえあれば、皆何とかして勉強します。木の下の“木下学校”で板きれに白墨で書いて授業をする先生、地面に枝で書く先生もいました。教育の重要性は途上国自身が一番わかっています」

<もがき苦しむ子どもたちの姿に、知らない方がましと思ったこともある。しかし、人間として知るべきことです>

 次から次へと、悲惨な話が出てくる。「こういう現実を知らないというのでは、子どもたちに申し訳ないですよ。戦争や自然災害で被害を一番受けるのは彼らなんですから」と嘆く。「リベリアやシエラレオネ、コートジボワールでは少年兵に出会った。誘拐され、少年兵に仕立てられた。大人の指示で戦い、相手を殺しただけなのに、『人殺し』と非難されていました」
 ユニセフは、開催中の「万人のための教育」ファスト・トラック・イニシアティブ実務者会合やアフリカ開発会議(TICAD)、洞爺湖サミットを通して、基礎教育の重要性を訴えていく方針だが、黒柳さんの考えも同じだ。
 こんなこともあった。「9.11」前にアフガニスタンへ行った。ヘラートという都市は難民であふれていた。黒柳さんはタリバンに、「難民キャンプの女の子たちに勉強させてあげて。キャンプから村に帰った時、読み書きができれば皆に教えてあげられるから。アフガニスタンのためにもなる」と直談判した。首都カブールと違い、規制もゆるいのか、「いいだろう」と許可してくれた。女の子が一生懸命勉強する姿が印象的だった。

 それにしても、ユニセフ親善大使をこんなにも長く続けられるエネルギーはどこから?ひとつは、戦争を経験していること。もうひとつは、トモエ学園の小林宗作校長の教えからだ。「いろんな障害のある子もいるなかで、いつも『みんないっしょにやるんだよ。みんないっしょだよ』と指導されていました。苦境にある子どもを見ると、いつもこの言葉が私の心に浮かび、大使の仕事を続けさせてくれるのです」

<アフリカは遠い。そう感じるかもしれません。でも、どこにいても人間同士。痛み、苦しみ、喜び、愛する心、それは同じなんです>

 黒柳さんは、子どもがイジメなどで自ら命を絶つ痛ましい事件が後を絶たない日本が心配でならない。「アフリカでは、反政府組織に家を焼かれて父親は殺され、母親はレイプされ、自分も手足を切り取られる。そんな子がいっぱいいる。そういう子でもけなげに生きようとしている。自殺したケースは一度も耳にしていません」
 「子どもは本来、前向きに生きる力を持っている。日本でも、子どもが生き生きするような教育をしてほしいですね。幼稚園から勉強、勉強では、他人を傷つけるか、自分を傷つけるかです。子どもの魂を自由にしてあげたい」
 話しながら、黒柳さんの目には何度も涙が光った。最後に、初めてアフリカの土を踏んだ時、スワヒリ語で子どものことを「トット」というのだと知った時の驚きを語ってくれた。「こんな偶然って本当にあるの。私の小さいころの呼び名が、アフリカでは、子どもという意味だなんて。子どものために働けと神様がおっしゃっているんだな、と思いました。つらくても、子どものために働けるというのはありがたいことです。子どもたちの苦しみを世界に知らせる。それが私の使命だと肝に銘じています」

【小学校1千校をアフリカに建設 高村外相表明】
                     (4月24日 朝日新聞 より)

 高村外相は23日、今後5年間でアフリカに約1千の小学校を建設し、約40万人に学びの場を提供することを柱とする途上国向けの教育支援策を明らかにした。援助規模は約300億円になる見通し。東京都内であった国際教育協力に関するシンポジウムで語った。
 高村氏は「国の自立を勝ち取り、成長を成し遂げるには多様な人材が不可欠」と教育の重要性を強調した。5月に横浜であるアフリカ開発会議(TICAD)や7月の北海道洞爺湖サミットに向けてアピールする狙いもある。
 既存の学校に対しても、給食の実施や井戸、男女別トイレの設置などを進め、HIV・エイズ予防啓発や防災教育などができる地域社会の拠点となる学校づくりを支援。また、今後5年間でアフリカの10万人を含む全世界で30万人の理数科教員に研修を実施する。
 ユネスコによると、アフリカやアジアではいまだに約7200万人が小学校に通えていないという。

【日本の子どもたちに関連する新聞記事】

<4月11日 日本経済新聞 生徒にセクハラ >
 教師を懲戒免職 横浜市教委

<4月14日 朝日新聞 中3女子、警官を足げり・つば吐き >
 自転車の2人乗り注意されて大暴れ 3人を公務執行妨害容疑逮捕 春日部

<4月16日 朝日新聞 学校裏サイト3万8000件>
 文科相調査 目立つ誹謗・中傷(「キモイ」「ウザイ」「チビ」など)

<4月23日 朝日新聞 「プロフに悪口」と殴打>
 中3重体 殺人未遂容疑 17歳少年逮捕

 自己紹介サイト 中高生に急拡大 いじめや援助交際 トラブル懸念

<4月24日 日本経済新聞 硫化水素 相次ぐ二次被害>
 自殺巻き添え死、住民避難 洗剤で発生 対策難しく
 硫化水素を使った自殺の二次被害が相次いでいる。23日夜にも高知県で女子中学生が自宅で自殺を図り、周辺住民ら120人が避難する騒ぎとなった。いずれのケースも身近な洗剤や入浴剤を使って硫化水素を発生させており、消防や洗剤メーカーは対策に頭を悩ませている。

<4月27日 朝日新聞 横浜 また硫化水素自殺>
 マンションで高3男子 住民ら50人避難

【私の意見】Up63

<教師ホットライン弁護団(仮称)その後の設立準備状況について>
 弁護士のネットワークづくりは少しずつ着実に進んでいます。弁護士のネットワークの構築と平行して教師グループとのネットワークも広げていきたいと思います。
 4月21日の日経新聞に
   未履修問題 校長自殺は公務災害
   茨城の高校 審査会が一転認定
という記事が掲載されていました。公務災害と認定されても亡くなった人は永遠にもどってきません。教師や校長を死に追い込む教育職現場の改善が急務です。私たち弁護士が、じりじりと気持ちが落ち込んでいく教師の方の心の相談相手の一員に加わることができればという思いでいます。

<日本の子どもたちの現状>
 黒柳さんは、子どもがイジメなどで自ら命を絶つ痛ましい事件が後を絶たない日本が心配でたまらないと涙を流しながら話されていましたが、最近の新聞記事を拾っただけでも、日本の子どもたちの現状が深刻な状況にあることがわかります。私たち大人は子どもたちに死を選択させる根源はこの社会のどこにあるのか真剣に考える必要があります。この社会は病んでおり、しかも重病です。

<日本政府久々のヒット>
 小泉内閣以来、日本政府は政府開発援助を減らし続け、世界第1位から第5位に転落しました。高村外相の小学校1000校をアフリカに建設するという表明は、日本政府の久々のほのぼのとした話です。トットちゃんだけではなく日本国をあげてアフリカや南アジアの子どもたちを応援していきたいものです。

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2008年3月22日 (土)

不信時代 企業や人信用できず家族を信用

【企業や人「信用できぬ」6割 「家族を信用」は97% 
                  政治・社会意識 本社世論調査】

                             (3月21日 朝日新聞 より)

 いまの日本には「信用できない企業が多い」と思っている人は60%。「信用できない人が多い」も64%で、企業や人への不信感が目立つ-朝日新聞社が全国3千人を対象に2月~3月上旬に郵送で実施した全国世論調査(政治・社会意識基本調査)で、世の中の信用・信頼が揺らいでいる実態が浮き彫りになった。政治家や官僚への信用は18%と低く、教師や警察は60%台。裁判でさえ72%だが、家族には97%の人が信用をよせている。
 度重なる食品の偽装問題の影響もあってか、「信用できる企業が多い」は29%にとどまり、「信用できない企業が多い」は60%を占めた。
 日本で売られている食品について「ほとんど信頼できる」は4%と少ないが、「ある程度信頼できる」は63%あり、「信頼」は合わせて7割近い。「あまり」「ほとんど」信頼できないは計30%だった。
 一方で、偽装問題などで一度信用を失った会社の製品を再び「買ってもよい」と思う人は38%で「買いたくない」が55%と半数を超えた。
 仮に食品会社に勤めていたとして賞味期限の偽装の事実を見聞きしたとき、「上司や同僚に相談する」は70%に達し、「警察やマスコミに通報する」も13%あった。「とくに何もしない」は10%と少ない。
 いまの世の中には「信用できる人が多い」と思う人は24%で、「信用できない人が多い」が64%にのぼった。「たいていの人は、他人の役に立とうとしている」と受け止める人も22%と少なく、「自分のことだけ考えている」が67%を占めた。
 生活と密接な関係がある12の項目を挙げてどれくらい信用しているかを聞くと、「信用している」と「ある程度信用している」を合わせた信用度は、①家族97% ②天気予報94% ③新聞91% ④科学技術86% ⑤医者83% と上位5位が8割を超えたが、政治家と官僚はともに18%で最下位だった。

<マナーの低下「感じる」9割 ごみ分別・電車内の通話・地面に座りこむ>
 他人との信頼を築くために「マナー」は欠かせない要素といえる。調査では、マナーについてさまざまな角度から聞いてみた。まず、日本人はマナーをよく守る国民だと「思う」人は28%にとどまり、「そうは思わない」が64%にのぼった。昔に比べて公共マナーの悪い人が増えたと「大いに思う」人は63%を占め、「ある程度思う」(30%)を合わせ9割以上の人が、マナーの低下を実感していた。
 マナーが悪いと感じるものを複数回答で選んでもらったところ「ごみを分別せずに出す」が72%で最も多く、「バスや電車内で携帯電話で通話する」「人が往来する地面に座りこむ」がともに68%で続いた。「地面に座りこむ」は20代と30代では一番多く挙げられた。「人前で化粧をする」(52%)行為には、男性よりも女性のほうが批判的だった。
 一方、刑事裁判の仕組みを大きく変える「裁判員制度」についても聞いてみた。もし裁判員に選ばれたら「必ず参加したい」人は10%しかおらず、「できれば参加したい」も26%と低い。20代~40代は参加意欲がやや高めだが、それでも半数に満たない。制度導入によって裁判への「信頼が増す」との回答も23%で、「そうは思わない」の69%を大きく下回った。死刑制度については「廃止したほうがよい」は8%で「そうは思わない」が86%と大半を占めた。

<家族を結びつけるのは 若者ほど「精神的なもの」>
 家族は信用できる存在-。ほとんどの人がそう受け止めるなか、では家族を結びつけているものは何か。5つの選択肢から1つを挙げてもらったところ、「精神的なもの」が39%とトップで、以下「血のつながり」33%、「一緒に暮らすこと」18%、「経済的なもの」3%、「名字や戸籍」2%の順だった。
 女性は「精神的なもの」が44%と高めなのに対し、男性は「血のつながり」が37%と最多で、「精神的なもの」は34%だった。
 年代による差も特徴的だ。「精神的なもの」は20代~30代の若い世代で55%を占め、特に女性は63%と際立つ。年代が上がるにつれて減る傾向にある。これに対し、「血のつながり」は逆に年代が上がると増え、40代~50代では男性35%、女性29%、60代以上では男性42%、女性40%でともに最多だった。
 ふだんの家庭生活にもう少しあったほうがよいと思うものを7つの言葉から1つ選んでもらうと、最も多かったのは「思いやり」で24%。次いで「会話」19%、「くつろぎ」15%、「笑い」9%、「自由」7%、「しつけ」5%、「親の権威」4%だった。
 目だった男女差はないが、ここでも年代による差が出た。「おもいやり」は高齢者ほど多く、60代以上では男女とも3割近い。「会話」も高齢層ほど多くなる傾向にあるといえそうだ。「くつろぎ」は女性で年代差が目立ち、60代以上では9%と少ない。一方、「笑い」は50代の男性で15%と高いのが目をひいた。

【私の意見】】Up63

<孤立する日本人と家族>
 朝日新聞が実施したこの世論調査は平均的日本人の意識をかなり正確に反映していると思います。政治家や官僚への信用が18%と低いのは当然のことで、私はむしろ健全なことだと思います。今の政治家や官僚を高く評価する結果が出る方が日本の民主主義の危機と言えます。
 「信用できない企業が多い」と思っている人が60%いるのも企業による不正行為がたびたび取り上げられている昨今の状況から仕方がない数字かなと思います。
 私が今回の調査結果の中で最も危惧するのは「信用できない人が多い」が64%を占め、その中で家族に対する信用度は高く「信用している」が74%、「ある程度信用している」が23%で、信用度計97%と群を抜いて高いということです。これだけを見れば日本人の家族は互いに信頼しあって言うことなし、ということにみえますが、実際はそうでないことは親子間、きょうだい間の殺人事件が毎日のように報道されることからも明らかです。
 今回の調査結果は、日本人の他人は信頼できないけれど“私たち家族は別、お互いに信頼しあっている”という意識を反映しています。信頼しあっている家族が集まって日本人の集団ができあがっているのですから他の家族集団に属する人々も信頼していい筈ですが、調査結果はそうではありませんでした。いまの世の中には「信用できる人が多い」と思う人が24%に対して、「信用できない人が多い」と思う人が64%を占めました。
 日本人が自分たち家族という閉鎖された小集団の中で孤立し、こぢんまりと生きている姿を反映しています。

<醒めた目で人や社会をながめる>
 調査結果は「たいていの人は他人の役に立とうとしている」と受け止めている人も22%と少なく、「自分のことだけ考えている」が67%を占めたとしています。マナーについて日本人はマナーをよく守る国民だと思う人は28%にとどまり、「そうは思わない」が64%にのぼり、9割以上の人がマナーの低下を実感しているとのことです。このような回答をする日本人のほとんどは“自分はマナーを守っている”と思っているのだろうと思います。
 政治家や官僚に不信感をいだいているにもかかわらず「政治にかかわりたい」と思う人は25%で、「かかわりたくない」人が68%を占め、参加意識は高くないという結果も出ています。
 日本人の多くに共通することは“自分は潔く正しく生きて生きたし、これからもそうでありたい。他のひとはマナーが悪いけれども自分と家族は別。政治なんてあんなうす汚れた世界にかかわって自分も同じように見られるのは真っ平ご免。好きな人がやればいい”と醒めた目で人や社会をながめています。参加意識が高くないので、日本人の政治的・社会的成熟度はいつまでも低く、小泉劇場のようなものを仕掛けられると単純に乗せられてしまいます。

<無表情な日本人>
 私はアジアにしろ、ヨーロッパにしろ、米国にしろ外国から帰って地下鉄に乗っていつも思うのは、なんて日本人は表情のない民族なのかとがっかりします。日本人は世界で一番安全なところに住み、必要なモノはあふれています。会社など自分の属している組織からはずされないかぎり、他者と交わることなく生きていけます。自分の所属する集団(会社や学校)での交わりはたとえ不本意であったとしても避けることはできませんが、その集団以外の人には無関心・無表情でも生きていけます。他者のために役立っていると思えるときに人は人としての喜びを感じるものですが、自分と自分の家族のためだけに生きても人としての喜びはごく狭いもので終わってしまいます。

<4歳の男の子から「おはようございます」とあいさつをされて赤面>
 そういう私も平均的日本人の一人で、ご近所の人に会っても、向こう3軒両隣位は「おはようございます」とあいさつしますが、それ以外の人とは醒めた目をして知らぬ顔して通りすぎています。今まであいさつしなかった人に、突然あいさつするのも変なようで、あいかわらずよそよそしい人間関係が定着しています。
 ある日家を出て都営地下鉄に乗るために坂をくだりかけたところ、これまで会ったことのない30代はじめ位のお母さんと4歳位の男の子が居ました。その横を私が無言で通りすぎようとしたところ、その男の子が大きな声で「おはようございます」と私にあいさつをしました。私はとまどいながら「おはようございます」と答えましたが、4歳の男の子に教えられたようで恥ずかしくなりました。冷め切った日本人同士の人間関係はまず身近なところからという教訓のように思いましたが、その後も私が他者とのコミュニケーションを図ろうと特別に改善・努力をしたわけではありません。ですから、正直なところ私もあまりえらそうなことは言えないのです。

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2008年1月28日 (月)

日経偏りすぎ? 成長・改革・内向き志向

            ― 1月27日・28日 日本経済新聞 より ―

【迷走ニッポン 今すべきこと】

 米国の住宅バブル崩壊で世界経済が変調を来すなか、日本は塹壕(ざんごう)にこもるような内向き志向を強めている。改革後退はグローバルにみた魅力の低下に拍車をかけている。逆境を乗り切り、成長する国をつくれるかの底力が試される。

 日本経済新聞の滝田洋一編集委員の名で出された1月27日の記事は私には疑問点が少なくありません。
 米国の住宅バブル(サブプライム)問題は竹中平蔵氏をはじめ日本の市場経済主義者たちがほめたたえていた米国経済の実体なるものがいかに虚構にみちたものであるかを白日のもとにさらしました。市場経済主義者たちが同様にほめたたえていた米、欧の金融機関も日本の金融機関と何ら変わらずいい加減なものであることも白日のもとになりました。日本の金融機関は米、欧の金融機関よりも先に金融危機を経験したために今回はサブプライム問題による痛手は 米、欧の金融機関よりも少なくてすみました。記事は「塹壕にこもるような内向き志向を強めている」とか「改革後退はグローバルでみた魅力の低下に拍車をかけている」とかの文学的、心情的言葉で表現していますが具体的に何をしろというのでしょうか。痛んだメリルリンチなど米、欧の金融機関の増資を引き受けろというのでしょうか。

【内向き脱却で悪循環断て】

 福田康夫首相は26日サブプライムローン問題への迅速な対応を訴えたが、中曽根氏が「米国発株安の歯止め役」を自任した20年前と違い、今の日本は最も大きく振り回されている。自民党が参院選で惨敗した昨年7月以来、外国人投資家の日本株売越額は3兆円を超す。日本は変わると期待していた外国勢が逃げ出したのだ。
 米欧と違いサブプライムの損失が少ないはずの日本の株式が売られるのはなぜか。日本の株式は外国勢の買いに頼っている。経済そのものも外需頼み。こんな「2つの外頼み」が背景にある。

 外国人投資家が日本株を売って日本の会社の株価が下がったからと言って、国民の生活にどんな影響があるのでしょうか。日本の企業が株式市場や債券市場から資金を調達するうえでは影響があるでしょうが、今日本の上場企業の多くは流動資産が豊富で証券市場から是が非でも資金を集めなければならない状況ではありません。
 1月28日の「迷走ニッポン 今すべきこと・中」で同じ日経の西條都夫編集委員は次のように述べ企業に資金が豊富にあることを認めています。

 幸いバブル崩壊後の「失われた15年」に日本企業はリストラを進め、財務基盤は健全化した。上場企業の営業キャッシュフロー(現金収支)は日本の国内総生産の1割弱に当たる40兆円に達している。

【国民1人当り名目GDPが世界18位】

 93年には経済協力開発機構(OECD)諸国中のドルベースで第2位だった一人当たり名目GDPは、06年には18位に低下した。金額でみても3万5000ドル強から3万4000ドル強へと減少している。円安で輸出を押し上げても、経済全体が上げ潮に乗っていない。
 所得の低い国は、高い国より速く成長するので、経済格差は縮まる。「経済学には収斂(しゅうれん)の理論があるのに、今の日米間にはそれが当てはまらず格差が開くばかり」。竹中平蔵慶大教授は日本の停滞に警鐘を鳴らす。

 日本工作機械工業会の1月22日の発表によると2007年工作機械受注は前年比10.6%増の1兆5899億円となり2年連続で過去最高を更新しています。円安の恩恵もあって日本の貿易収支も順調です。円安の恩恵を受けながら、その円安のもとでドル換算ベースで一人当たり名目GDPをはじき出せば下がるのは当たり前です。たとえ国民1人当り名目GDPが下がったとしても、日本の大企業には何の影響もなく、着実に財務体質を強化しています。日本の貿易黒字も着実に積みあがっています。竹中平蔵氏は「日米間の格差が開くばかり」と言っていますが、世界経済が変調をきたした震源地が米国であるのに、何をもって格差が開くばかりと言っているのでしょうか。理解に苦しみます。

【成長戦略こそ】

 バブル崩壊後の危機から脱すると、国民や政策当局者は慢心に陥りがち。新ビジネスの余地をつくる規制緩和のピッチは落ちている。対日投資に対し企業防衛を優先する空気が経営者にも広がりつつある。参院選後に一段と強まった内向き志向が、投資マネーの日本離れを加速している。
 日本は取り巻く外部環境が悪化するなかで、今こそグローバル化に対応した「経済開国」を急ぐときである。

 企業の新規参入などで農業の生産性を高め、市場開放を進めながら「攻めの農業」に転じる農業改革。外国の多様な人材を活用できるようにする労働市場改革。長い間、なかなか前に進まなかった改革は待ったなしだ。

 「経済開国」「攻めの農業」「外国の多様な人材を活用できるようにする労働市場改革」と魅惑的な言葉は並んでいますが、農家など国民一人一人の生活の安定にどのように寄与するのでしょうか。「改革!」と叫べばみんな黙ってしまった小泉・竹中「改革」は国民一人一人にどんな夢を運んでくれたのでしょうか。

【真の改革と成長の路線】

 企業にたまった潤沢なキャッシュ(手元現金)や家計の1500兆円の金融資産を生かし、海外からの投資資金を引き込む。そのためには金融業と金融市場の活性化が早急に必要だ。政策当局に求められるのは、真の改革と成長の路線である。

 「企業にたまった潤沢なキャッシュ(手元現金)や家計の1500兆円の金融資産を生かし、海外からの投資資金を引き込む」というのは理解不能です。企業にも家計にも資金が豊富であれば海外から投資資金を引き込むのではなく、むしろ海外に投資することを推奨することにならないでしょうか。「そのためには金融業と金融市場の活性化が早急に必要だ」と言うのはサブプライム問題で多額の損失を出した米、欧の金融機関や金融市場を見習えと言うのでしょうか。「政策当局に求められるのは、真の改革と成長の路線である」と言っても何が「真の」改革かが今問われているのです。かつて野党が「真の」民主主義とか「真の」革新とか言ってやゆされていましたが、総じて主張に裏付けがないときに「真の」という形容詞を使う傾向があります。

【変われない国に見切りをつける】

 西條編集委員は次のように述べています。

 日本郵船の宮原耕治社長は部下の報告にショックを受けた。年明けに投資家向け広報で担当常務を北米に派遣したが、機関投資家から「日本の企業に興味はない」といわれ、面会の約束さえ満足に入らなかったのだ。
 同社は中国の製鉄会社と長期契約を結ぶなど顧客基盤のグローバル化を進めてきた。だが日本に本社を置くという一点で、そっぽを向かれる。「日本の存在感がここまで低下したとは」。宮原社長の危機感は募る。
 米国に端を発した世界経済の変調。日本の信用システムが受けた傷は米欧に比べはるかに軽いはずだが、日本株の下げはきつい。政治における改革路線の後退などに外国人投資家が失望し、「変われない国」に見切りをつける構図である。

 西條委員は「政治における改革路線の後退などに外国人投資家が失望し」たと言っていますが、ほんとうにそうなのでしょうか。そのことがきちんと検証されたのでしょうか。私には客観的裏付けにもとづいた記事とは思えません。

【企業防衛】

 私はむしろ滝田編集委員の指摘する

「対日投資に対し企業防衛を優先する空気が経営者にも広がりつつある」

とか、西條編集委員の指摘する

「日経平均株価の昨年来高値は、東京高裁がブルドッグソースの買収防衛策を支持した昨年7月9日で、それ以降相場は下げに転じた。企業が内向きの姿勢を強めれば、投資マネーの日本離れは加速する」

という事実こそが投資マネーの日本離れに影響していると思います。
 しかし、そもそも企業は株式を公開するか否かの自由をもっています。企業家は大量の資金を集めたいために株式を公開しますが、自社独特のモノづくりに専念したり、他よりすぐれたサービスを提供し、折角企業評価が高まっても敵対的買収を受けると安心してモノづくりに打ちこめません。経営者が企業防衛に走りがちなのは当たり前のことです。これを経営者の自己保身と決めつけることはできないと思います。それに企業防衛を非難するのであれば、株のもちあいなどを進める企業群であって「政治における改革路線の後退などに外国人投資家が失望した」というのは論理が飛躍しています。

【社説・論説になると数値的卓越性がガクンと落ちる】

 何度も言いますが、私は日本経済新聞にすぐれた記者をたくさん知っています。たとえば障害者の労働問題の取材を受けた場合にも、一般紙の記者は弱者救済という安易な表現に走りがちですが、日経の記者は障害者の自立のために何が必要か、そのために企業のコストはどうかという視点から数値的、冷静に分析しながら、結論としては前向きな記事を書いてくれさすがと思うことがたびたびでした。ところがひとたび「成長」「改革」に関することになると日本経済新聞は「成長」「改革」路線を強調し、強調すぎのあまり日経新聞の強みである論理性、数値性、客観性、冷静性を欠く記事が少なくありません。第一線の記者の方々からは日経新聞の数値に裏付けられた卓越性を感じるのに社説とか論説になるとその卓越性がガクンと落ちてガッカリすることが少なくありません。時の経済界首脳の考えを反映しなければならない宿命でもあるのかな???
 それに株に投資することなど思いもよらない地方の農家の方や日々残業に追われている労働者にとって投資・投機大国になることがどんな意味があるのか、日本を代表する経済紙として広い視点から冷静かつ客観的に考察していただきたいと思います。労働者や農業従事者の収入が増えないかぎり、内需が高まらず外資だけでなく、日本の企業さえも活路を日本市場ではなく、アジア新興市場に求めているのが現実ではないでしょうか。

 

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2007年10月13日 (土)

京セラ 稲盛会長 社員の幸せ追う

【『働くニホン』 京セラ名誉会長 稲盛和夫氏 
                          きしみを越えて
                  (10月10日 日本経済新聞 より)

 組織を率いるリーダーは現場の力をどう引き出せばいいのか。経営者と社員のベクトルを一致させることは可能なのか。京セラの創業者として一貫して「和の経営」を主張してきた稲盛和夫名誉会長に聞いた。

【社員の幸せ追う】

 ――安倍前首相の突然の辞任で首相が代わり、リーダーのあり方が改めて問われている。リーダーの役割とは。
 「組織が目標に向かって進むには、その集団がどういう目的で存在するのかリーダーがはっきり示し、部下に理解・納得してもらわないといけない。世界平和のため、環境のためといった大義名分も必要だが、それだけでは働く人の日常から離れており、人を奮い立たせることはできない」
 「『美しい国』というスローガンは結構だったが、私たちの日々の生活からは遠かった。京セラは私が開発した技術を世に問う会社として1959年にスタートしたが、3年後に『全従業員の物心両面の幸せを追求する』という文書を社是に加えた。人類社会に貢献すると同時に、従業員が少しでも幸せな生活を送れるようにする必要があると考えたからだ」
 ――どんな組織が理想的なのか。
 「会社組織に経営者と社員という立場があるのは確かだが、私は昔から皆が同志でありパートナーという考えでやってきた。弁護士事務所のように同じ目的を持った人が集まり、上下でなく横の関係でやっていくという形だ。共に喜び共に苦しむ。一体感がある組織を作ることが一番大事だ」
 「リーダーは孤独といわれ、それが前首相の退任を招いた。しかし、苦しみを共有してくれる同志がいれば相当苦しい局面でも耐えていける。それにはトップが持っている経営哲学を開陳し、社員に理解してもらうことが大切だ。そういう組織は金太郎飴のようだとばかにされるが、だからこそ強い。トップにきちんとした哲学があるなら、まず金太郎飴であるべきではないか」

【意欲の低下防げ】

 ――正社員と非正社員など多様な人が同じ職場で働き、きしみも起きている。
 「経営者は株式価値を大きくするという使命のもと、働く社員をモノと見なしてきた。優秀な人を安い給料で雇って効率を上げる発想だ。非正社員は同じ職場で同じ仕事をしているのに待遇が違い、将来の保証もない。砂をかむような人間関係の中で働かせていれば、会社がひとたび傾いたときに内側から瓦解する。京セラは一部のパートを除けば、派遣労働者は使っていない」
 ――競争を勝ち抜くには経営効率を追求する必要があるのでは。
 「効率を求めたといえば言葉はいいが、経営者や株主がエゴイスティックになっている面はないだろうか。成果主義は経営者からみたら楽な手法だが、現場は疑心暗鬼に陥り、モラール(意欲)も低下していく」
 「3百年続いた中国・唐の太宗の言行録『貞観政要』に『君主たるものの道はまず百姓を存すべし』とある。知略を尽して君主になった人が、民を大事にしなければ国は滅びると言っている。経営も同じ。従業員が安心して働けるようにしなければ君主は倒される」

【稲盛和夫】
      (フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 より)

 稲盛 和夫(いなもり かずお、1932年1月30日生まれ )、日本の実業家。京セラ・第二電電(現KDDI)創業者。
鹿児島県生まれ。鹿児島市立鹿児島玉龍高等学校を経て、1955年鹿児島大学工学部を卒業。卒業後、がいしメーカーの松風(しょうふう)工業を経て、1959年、社員8人で京都セラミックス(現在の京セラ)を設立し、10年後、株式上場。ファインセラミックスの技術で世界的な企業に成長させた。1984年には第二電電(DDI、現在のKDDI)を設立した。
1984年、財団法人稲盛財団を設立し、京都賞を創設した。また、若手経営者向けの経営塾「盛和塾」を非営利にて主宰し、若手経営者の育成も行っている。
2005年、立命館小学校こども顧問委員に就任。
朝子夫人は、「韓国農業の父」として知られる禹長春の四女である。

<稲盛和夫の言葉>
-人生・仕事の結果 = 考え方 × 熱意 × 能力- 
 能力とは、才能や知能といった「先天的な資質」を表し、熱意とは、情熱や努力する心といった「後天的な努力」を表す。考え方とは、哲学や思想、倫理観といった生きる姿勢、それらをすべて包含した「人格」を表す。本人によると、最も大事なものが考え方であり、能力と熱意は0点から100点までの点数があるのに対し、考え方は-100点から100点までが存在する、とされている。

-動機善なりや、私心なかりしか- 
 DDIを設立し、電気通信事業へ参入するにあたって、自身の動機に利己的な心、「私心」がないかと、半年間にわたり自問したときの言葉。

-楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する- 
 物事を行うときに取るべき態度を表した言葉。構想を練る段階では、そのアイデアの可能性を引き出せるように楽観的になるのがよい。具体的な計画を立てる段階では、あらゆるリスクを想定し、慎重かつ細心の注意を払って厳密にプランを練るのがよい。実行する段階では、思い切って行動するのがよい。

-自燃性の人間、可燃性の人間、不燃性の人間- 
 ここでいう燃性とは、物事に対する熱意や情熱を表す。自燃性の人間とは、自分から率先して物事に取り組み、エネルギーを周囲に分け与える人を指す。可燃性の人間とは、自燃性の人や、既に燃え上がっている可燃性の人の影響を受けて燃え上がる人を指す。不燃性の人間とは、周囲からエネルギーを与えられても燃え上がらず、むしろ周りの人から熱意や情熱を奪う人を指す。

【私の意見】Up63

 松下幸之助氏が1894年11月生まれで1989年4月に94歳で亡くなり、盛田昭夫氏が1921年1月生まれで1999年10月に78歳で亡くなり、鬼塚喜八郎氏が1918年5月生まれで2007年9月に89歳で亡くなりました。稲盛和夫氏は、1932年1月生まれで盛田昭夫氏や鬼塚喜八郎氏と比べ一回り若い世代ということになります。30代後半に京セラの上場をはたし、多方面で活躍し、私には“派手な人だなあ”という印象の方が強かったのですが10月10日の日本経済新聞の記事を見て“おや、自分の思っていた人と違うぞ”というのが正直なところでした。早くから起業に花開き、潤沢な資金をバックにしながら積極的に社会貢献活動をやってこられた方だということを知りました。“人のため世のために役立つことをなすことが人間として最高の行為である”というのが稲盛氏の理念です。稲盛氏の理念に賛同します。75歳の現役の経営者として稲盛氏が一層活躍されることを期待致します。

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2007年9月24日 (月)

小泉改革政治の終わりと日本の存在感

【安倍辞任の衝撃】
【日本の存在感 低下懸念(日経ワシントン支局長実 哲也)】

                   (9月17日 日本経済新聞 より)

 コイズミ時代はやはり例外だったのか-。
 安倍晋三首相の唐突な退陣と、派閥の領袖の影が見え隠れする後継者選びを眺める米国では、そんな失望感が漂う。

<米国に戸惑い>
 トップが強い指導力で改革を進め、世界の中で積極的な役割を果たしていく。そうした小泉純一郎前首相のスタイルに、米国人は政権の内外を問わず、良い印象を持った。
 「小泉後も基本的な姿勢は続くという思い込みが米国にはあった」と知日派のキャンベル元国防副次官補は言う。米国やオーストラリア、インドなど「民主主義の価値観を共有する国々」との協調を前面に出す安倍首相への期待感はとくに強かった。
 それだけに、ブッシュ大統領との会談で「テロとの戦い」へ向けた協力を力強く約束してからわずか4日後の辞任表明には、失望以前にあぜんとしたというのが正直なところだろう。日本の政治家への不信感につながった可能性もある。
 「台頭しつつあるのは、1990年代のように、力のない首相が次から次へと登場しては政争が繰り広げられる時代に逆戻りするのでは、という静かな不安だ」(キャンベル氏)
 米国にとっては、強い指導者なき日本の針路も心配の材料だ。イラク戦争は米国の世論を二分しているが、アフガニスタンでの対テロ作戦は政権だけでなく、野党・民主党も含めて「よい戦争」と受け止められている。日米同盟の象徴といえる対テロ協力が首相を退陣に追い込むほどの争点になるとは想定していなかったのが実情だ。
 経済改革の修正を求める動きが与野党を問わず強まっていることにも戸惑っている。日本ウォッチャーの1人は「小泉改革を熱狂的に支持した日本人はどこへ行ったのか」と首をかしげる。
 米国では、小泉政権以降、外交、安全保障、経済という三つの柱で日米間のコンセンサスができてきたとの認識があった。だが、その認識が揺らぎ、日本を微妙な距離感を持って見るムードが出始めている。

<世界は止まらず>
 政治の漂流がもたらすのは、日米関係のすきま風だけではない。世界の中での日本の存在感も薄めかねない。
 「日本は発言力を高める機会を失いつつある」。英タイムズ紙は安倍首相辞任をこう評した。今後、自民総裁選で優位に立つ福田康夫元官房長官や民主党の小沢一郎代表らが、政治ばかりか経済に関してまで時計の針を逆戻りさせるようなことがあれば、国際的な役割を果たすことはもちろん経済大国の座すらあやしくなりかねない。
 世界は立ち止まってはくれない。
 自民党の総裁選びの間に、北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議が開かれる見通し。北朝鮮の核施設の無能力化へ進むかどうかの重要な節目となる協議は、日本の司令塔が不在の中で進むことになる。世界各国の首脳が集う国連総会にも「日本の顔」は登場しない。
 膠着(こうちゃく)状態にある世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)では、日本が積極的な役割を果たしていないとの批判が根強い。音無しの構えを続ければ、日本への信頼感は薄まるばかりだろう。
 韓国が米国に続いて欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)交渉に動くなど、世界はさらに前に動いている。企業の直接投資や優秀な人材を世界からいかに集めるかの競争も激化する一方。経済がグローバル化する中で、「競争」や「市場」を重視した経済政策を進めることは日本の繁栄に不可欠だ。
 民主主義国に政争や論争は付きもの。だが、世界の流れから目を背け、内向きの論議に明け暮れれば、日本の影響力は低下の一途をたどる。日本から世界にどんなメッセージを発していくのか。次の政権は、そこにも十分目を配る必要がある。

【「満州事変の日に日系店開業」
           中国・湖南 誤情報で300人騒ぐ】

                     (9月20日 朝日新聞 より)

 満州事変76周年の18日、中国湖南省長沙市の日系百貨店に地元の学生や市民ら約300人が集まり、日本製品の不買を訴えるなどした。百貨店がこの日、新店舗を開業するという誤った情報がネット上に流れ、学生らの反日感情をあおったとみられる。
 抗議があったのは、滋賀県を中心にスーパーを展開する平和堂(本社・同県彦根市)が長沙市東塘地区で開店準備を進める百貨店。事前に動きを察知した公安当局が朝から出動し現場を警戒。衝突や投石などはなく、夕方までに沈静化したという。
 9月初旬からネットの掲示板に「『国辱の日』にあえて開業させるのは、日系企業の挑発だ」などとして、抗議を呼びかける書き込みが相次いでいた。
 平和堂本社中国室の担当者は「満州事変記念日に開業などあり得ない選択だ。18日開業という話をしたことはないし、そもそも当局の営業許可がまだ下りていない。市民に受け入れてもらうための努力を続けているのに心外だ」と話した。

【アジア外交に期待 福田総裁誕生】
                     (9月24日 朝日新聞 より)

 安倍首相に代わり、今後の日本外交のかじ取りをしていくことになった福田康夫・自民党新総裁。靖国神社の参拝はしないと表明するなど近隣諸国にも配慮を見せる新リーダーの誕生を、中国や韓国、北朝鮮といったアジアの隣国、テロ特措法延長問題の行方に注目する米国の関係者らはどう見ているのか。

<米国 「現実主義」手堅い印象>
               
(ワシントン小村田義之)
 米国とのパイプを持ち、中国など近隣諸国にも配慮を示す福田氏の登場を、米政府や知日派の関係者は基本的に歓迎、アジア外交の進展に期待感が出ている。ただ、日本政治の不安定化も予測されており、将来的な不透明感への懸念はぬぐえない。
 米政府関係者は自民党総裁選の結果に祝意を表し、「彼の政権と一緒に働くことを楽しみにしている」とコメントした。福田氏はブッシュ大統領や父の元大統領と関係が良く、ベーカー前駐日大使とも親しい。「日米蜜月」を演出した小泉前首相や、米国流の戦略を掲げた安部首相の派手さはないが、手堅い印象が期待につながっている。
 グリーン前米国安全保障会議(NSC)上級アジア部長は福田氏を「現実主義者だ。日米同盟の重要性を理解している」と評価。「北朝鮮や中国に対し、より実際的な対応をするのではないか」と期待する。
 上院外交委員会のスタッフは、福田氏が靖国神社の参拝や従軍慰安婦問題など、近隣諸国を刺激する問題と結びついていない、と指摘。「日本の近隣外交に柔軟性が出れば米国にも日本にも良いことだ」と見る。
 一方で同スタッフは、少子高齢化や年金など国内問題が山積する日本では「次の政権で日米同盟の基礎を発展させることは、誰が首相でも難しい」とも語った。
 カルダー米ライシャワー東アジア研究所長は「イタリアのように、(日本政治は)政権がくるくる変わった90年代の構図に戻るのではないか」と指摘。テロ特措法の延長問題でも、野党などの反対論に懸念を示した。日本にとってシーレーンの確保は極めて重要であり「(インド洋上で活動する)テロ特措法への反対は戦略的な現実を反映していない」と言う。福田氏が新首相になった後、当面の外交課題となるこの問題への対応が注目されている。

 【私の意見】Up63

 日経ワシントン支局長は小泉前首相を過大に持ち上げすぎだと思います。小泉前首相が強いリーダーシップをもったすぐれた政治家などとはとても思えません。中国湖南省で起きた反日の動きは氷山の一角です。中国の公安当局が抑え込んでいるから今のところ沈静化を保っていますが、中国人の中に日本政府や日本人に対する不信が一触即発の危機を秘めており、小泉、安倍路線がなおも続いていれば中国政府も反日感情を抑え込むのをいつかあきらめて、放り出したことでしょう。米政府や米国内の知日派が福田氏の登場を基本的に歓迎しているのは当然です。米政府や米国人は日本が戦前型の国家に戻ることを許さないという強い思いをもっています。この点を見誤ったのが従軍慰安婦に関する安倍発言でした。
 日経ワシントン支局長は「日本の発言力」の低下や「日本の繁栄」を懸念していますが「世界の流れから目を背け、内向きの論議に明け暮れ」たのはむしろ小泉政治の時代であり、安倍政治の時代であったと思います。視点が「経済」「日本の繁栄」だけにとらわれていると世界の潮流の中で、日本という国家のありようを大きく見誤り、ひいてはそのことが日本企業の海外での経済活動にも深刻な影響を与えることを看過してはいけないと思います。

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2007年7月22日 (日)

日本の若い女性は地に足のついた改革者

【「戦争知りたい」が転機 女優 麻生久美子さん】
                       (7月20日 朝日新聞 より)

 女優 麻生久美子(あそうくみこ) 78年生まれ。95年に映画デビュー。「カンゾー先生」(98年)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞などを受賞。「贅沢な骨」「アイデン&ティティ」などに主演。中田秀夫監督「怪談」、アボルフィズル・ジャリリ監督の「ハフェズ」など公開予定作も多い。
 
 どんな失敗も、やさしくほほえみ受け止めてくれる。たおやかで、ちょっとさみしげで。男子のあこがれを凝縮したような女性を数多く演じてきた。
 だが、本人の心境は複雑だった。「別々の役を演じたつもりでも、遠目で見ると似たようなものばかり。自分の芝居も好きじゃなかったし、そう思いながらお客様にお見せするのも申し訳なくて・・・。真剣に引退を考えて悩んでいました」
 そんな時、転機となる作品と続けて出会った。ひとつはテレビドラマ「時効警察」。天然ボケの婦警・三日月役でコメディエンヌとしての魅力を開花させた。もうひとつは、映画「夕凪の街 桜の国」(28日公開)。昭和30年代初めの広島で、原爆症の不安を抱えて生きるヒロイン・皆実(みなみ)を演じた。 
 「私には想像もつかない心の傷を抱えているのに、皆実は前向きでおちゃめでたくましい。『これだけは私がやりたい!』と、初めて思った役でした」
 広島と長崎を訪れ、段ボール箱いっぱい資料を買い込んだ。読めば読むほど、自分の無知に腹が立ち、背負うものの大きさにおののいた。「理解することなど無理。知りたいと思うことが大切なんだ」。そう気持ちを切り替えて現場に臨んだ。
 同僚と恋に落ちた直後、皆実は発病する。<嬉しい?原爆を落とした人は、私を見て『やった!またひとり殺せた』ってちゃんと思うてくれとる?>。死の床のつぶやきは壮絶だ。
 「あのセリフは私も一番ショックだった。平和な時代に、これから幸せになろうという時に、死ななくてはならないなんて。悔しくて、もどかしくて、涙が止まらなかった」
 そんな時代を知る大人から、「しょうがなかった」という言葉が出る。「なぜそんなことが言えるんだろう。許せません」
 「私も、戦争のことは怖いから見ずにすませようとしてきた。でも、私たちが知らなければ、下の世代に伝える人がいなくなる。そのことの方がずっと怖くないですか」
 出世作「カンゾー先生」の終幕は、岡山から眺めた、広島の空の下に広がるキノコ雲だった。その雲の下にいた女性を演じたことに、不思議な縁を感じるという。初心に戻って、再出発。「もう辞めるなんて言わない。これからを見ていて下さい」

【働く貧困層、どう保障 
          作家 雨宮処凛(あまみやかりん)さん(32)

                    (7月19日 朝日新聞 夕刊より)

 政治はこの10年、若者を見捨てる方向で来た。
 就職氷河期、正社員になれない若者たちを、規制緩和という名目で外国人労働者と同じ「使い捨て労働力」にした。派遣で工場を転々とさせる。フリーターだからと低賃金で深夜労働させる。
 いまや非正規雇用者は労働人口の3分の1。一方、フリーターを積極的に正社員にしたい企業は、昨年の経団連の調査では1.6%しかない。一度正規ルートからはずれた人間に将来はない。
 最近、「戦争でも起きてほしい」と言ってくる30代、40代が出てきた。体力は衰えても収入が安定する見込みはない。いっそ戦争で社会が大混乱すればやり直せるかもしれない。名誉や恩給が受けられれば親孝行にもなるという。
 少子化といわれても、フリーターの男は結婚できないし、派遣の女たちは出産すれば失職する。フリーター同士で子どもを産んだら貧困から虐待にもなりかねない。10年後は、40代、50代の自殺者が急増するに違いない。
 参院選が年金問題で盛り上がるほど彼らはしらける。大多数が国民年金を払っていないから。教育改革をするなら、違法な働かせ方や危ない派遣業者の見分け方を学校で教えてほしい。だがそんな教育論も聞こえない。
 政治が悪いと理論的に言う若者は増えた。だが、体は都会のタコ部屋やネットカフェにあるのに、住民票は地元にある。帰省する金はない。怒りを投票行動に結びつけることさえできない。
 参院選の当選者にはぜひ、地元の都道府県の最低賃金で1ヶ月生活してみてほしい。ワーキングプアへの社会保障が日本の未来につながる。

【産婦人科医として石垣島に赴任した
              清水彰子(しみずしょうこ)さん(32)】

                       (7月10日 朝日新聞 より)

 大阪大の大学院終了後、研究者の道をあっさり捨て、今月1日、沖縄県・石垣島の県立八重山病院に赴任した。医学博士の学位を取った同期の女性は30人。離島医療に進んだのは1人だけだった。
 地域と診療科目の偏りに伴う医療格差が問題になっている中、選んだのは最もなり手が少ない地方の産婦人科医。だが「患者と向き合える臨床にこだわりたいだけ」と気負いはない。
 兵庫県・淡路島で生まれ育った。通ったのは全校児童が20人ほどの小学校。「指示を待たず、自分で考えて行動しなさい」と、何度も諭してくれた6年生の時の担任の言葉が生き方の原点という。
 産婦人科医の厳しさと、やりがいは実感している。大学院の学費は産婦人科のアルバイトで稼いだ。月10回以上の当直勤務では連続勤務が30時間を超えることも。妊婦の意識がとぎれ、胎児の心音が聞こえなくなったこともあった。一方で、手術が成功したときの喜びも。
 石垣島に興味を持ったのは、休暇で訪れた一昨年。故郷と同じ星空に懐かしさを覚えたからだ。医療はどうなっているのか。以来3度訪問し、病院も見学した。産婦人科のある病院は減り続け、今では八重山諸島全体で八重山病院だけに。
 周辺の島全体の出産は年に約600件。常勤4人、非常勤1人の同志とともに、最後の砦を支えていく覚悟だ。
 「自分で選んだ道です」。小学校の恩師には、そう伝えるつもりだ。

【私の意見】Up63_44

 ロスト・ジェネレーションと言われる20代後半から30代の女性たちは同世代の男性たちも苦境にあるのを肌でわかっているので、かつての多くの日本女性のように経済面で男性に頼る生き方は選択できません。ここに紹介した3人の女性だけでなく、この世代の女性たちの多くは自立をめざし、自分の生きている場から社会に真正面から向きあおうとしています。「改革!」「改革!」と叫ぶだけで中味が空っぽのリーダーとは違って、彼女たちは地に足のついた真の改革者となってくれるでしょう。明日のわが国に希望を感じ、うれしくなりました。

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2007年7月17日 (火)

中流層こそ日本の「宝」

【分裂にっぽん】
                      (3月29日 朝日新聞 より)

<生活ぎりぎり 展望も見えず>
 取材班は暮らしの変化を直視するよう努めた。昨年2月にとりあげた大都市勤労者の典型的マイホーム,東京・高島平団地の地域には,会社や家族という共同体の弱まりでリストラと老後不安に漂う団塊世代,孤島のような高層棟でぎりぎりの生活を強いられる高齢者,社会参加どころか展望のない生活を続ける30歳フリーターらがいた。

<成長と安定の「バランサー」>
 資本主義経済では,中流層は労働と消費の「核」として「成長を支えると同時に経済を安定させるバランサー」(佐伯啓恵・京大教授)で,民主主義の安定装置としても機能してきた。

 中流育成にいち早く成功した「戦後日本」は幸運だった。だが90年代以降の地球規模の市場経済化とIT(情報技術)化は中流層の育成と維持を難しくする。わずかな差で先んじれば利益が膨らみ,富が一部に集中しがちだからだ。

 日本もこの競争から逃れるわけにはいかない。だが,バブル崩壊後の経済の長期停滞を脱するためだったとはいえ,市場メカニズムに委ねる「改革」の負の作用を軽視。中流層の分厚さを「悪平等。貧富差が小さいとやる気をそぐ」とし,格差拡大を「活力」と勘違いしていたのではないか。
 中流層の崩れを食い止めるには,将来を見通せる雇用確保が不可欠で,企業の役割は大きい。ところがこの10年で正社員数は1割減,非正社員数は6割増。非正社員が働き手の3分の1を占めるまで膨らんだ。長期安定雇用による連帯感は日本型経営の強みで,消費者層の維持にもつながった。非正社員を酷使する「低コスト経営」競争にどんな未来があるのか。

<グローバル化 政府は対策を>
 「短期の結果を追う米国流社会ではいつ解雇されるかわからず,企業への忠誠心を失う。長期発展への技術開発もおろそかになり,いずれ成長も衰える。安定した中流層は重要」とノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授は警告する。
 技術や産業構造の変化にあわせ,働き手が新たな技能を身につけて再び仕事を得るには,職業訓練の充実など政府の支援も必要だ。貧困の再生産を防ぐには,公教育による底上げも欠かせない。貧しくても教育を受けて努力すれば進路が広がり,それで厚みを増した中流層から自然とエリート層も生まれる・・・・。だが現場では「競争は敗者をつくるが,いったん敗者になった学校や子どもに手をさしのべる施策がない」(高島平の公立中学校長)との声は強い。
 グローバル化の「果実」を得るためにも,分厚い中流層こそ日本の「宝」だと,いま一度気づくべきだ。

【「格差」の6年】
                       (7月8日 朝日新聞 より)

 6年前の参院選の光景を思い出す。確かに首相は叫んでいた。「改革には痛みを伴う」と。
 あのとき有権者は「恐れず,ひるまず,とらわれず」という首相の掛け声に応じて,痛みの中身を知らないままに支持した。その結果の小泉旋風が,時代の変わり目だった。
 「強い人がいれば弱い人を守ることができる」と訴えて,小泉首相は改革の旗を振った。製造業への派遣労働の解禁,1円起業の制度化などは,その典型例だ。
 だが,どうだろう。企業が最高益を更新しても,パートなどの非正規雇用が増えた。生活保護世帯も増えている。一方で,過疎化と高齢化が重なる。65歳以上が5割を超す過疎集落は全国で7800を超える。
 いまや「格差」は,所得,雇用,都市と地方など,さまざまな言葉と結びついて語られる。
 振り返れば,まるで「格差」の6年だ。そんな「格差」の現場で,参院選はどう語られているのか。

<アルバイト>
 東京・山谷。三門洋丈さん(21)は6月から,1泊1500円の2畳半で暮らす。「サウナやマンガ喫茶でも過ごしたけど割高だった」。仕事は引っ越し会社のアルバイト。18歳の夏から同じ職場で,日当は6500円。休みは月平均3日ほど。「いつ切られるか不安」。今春,妻子と別れ養育費を払う。

<タクシー業>
 熊本市中心部。客待ちの長い列にタクシー乗務員・菊池満穂さん(55)が並ぶ。月収は約19万円。02年の規制緩和で台数が増えた業界は,全国で運転手の待遇が悪化し,料金値上げ申請が相次いでいる。

<産科医不足>
 まもなく2人目を出産予定の主婦舘山乃奈さん(27)は青森県五所川原市の助産所に通う。助産師は福士レイ子さん(75)。だが,ここも来春で閉所される。高齢の嘱託医が産科を扱わなくなるからだ。「子どもが少ないから産め,産めと世間は言うけれどお医者さんがいない」。青森県の産婦人科・産科医は00年102人が04年94人に減った。人口10万人あたり6.3人で全都道府県で45番目。

<進む高齢化>
 石川県輪島市の輪島塗職人の大江喜八郎さん(71)は,3月の能登半島地震で自宅を失った。4畳半2間の仮設住宅に妻と住む。滞在できるのは長くて2年。「自宅を建てたいが,年をとって借金もできない」
 輪島市の65歳以上が人口に占める高齢化率は,00年の31.8%(全国平均17.3%)から,05年には35.0%(同20.1%)に。

【私の意見】Up63_43

 再び1億総中流社会をめざそう
 格差拡大の国会論戦で小泉前首相は「言われているほど日本社会に格差はない」「格差は悪いこととは思っていない」と言い張りました。各国のジニ係数を比較し,日本の格差は小さいと指摘する論調もあります(2006年12月6日 日本経済新聞)。しかし現実の格差は無視して良い差とは到底言えません。明らかに不平等であり,不公正です。同じ人として,同じ国民として格差のない社会をめざすのが国の本来の姿だと思います。今からでも私たちは再び1億総中流社会をめざしていきましょう。総中流社会はなまけ者が楽をし,才能のある人が埋もれるというのは市場原理主義を推進する政治家や「学者」たちがつくりあげたデマゴギーです。
 

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2007年7月 2日 (月)

国連調査 「豊かな国」日本が世界1位

【世界の富 「豊かな国」日本が1位
                 1人2000万円保有 国連調査】

                   (2006年12月6日 朝日新聞 より)

 国連の研究機関が5日発表した「世界の個人の富の状況」調査で、為替レートで計算した1人あたりでは米国や欧州、産油国も上回って日本が世界で最も豊かな国となる結果が出た。また、世界の成人人口の1%が世界中の家計の「富」の約4割を所有し、世界の約半数を占める貧しい人々は「富」の1%しか所有していないという地球規模の格差の実態も浮き彫りになった。
 調査は、国連大学直属の研究機関である国連大学世界開発経済研究所(ヘルシンキ)が初めて実施。00年時の各国政府や国際機構の統計をもとに、不動産や預貯金などの個人の資産から借金などの負債を差し引いたものを「富」と定義した。
 それによると、世界中の家計の富を合計すると125兆ドル。1人あたり2万500ドルとなった。国別に見ると日本は1人あたりの富が18万1千ドル(約2千万円)でトップ。米国の14万4千ドルなどを上回った。ただ、物価水準を考慮した購買力平均で計算すると、日本はスイスや米国、英国などを下回った。
 日本の特徴について、調査は「90年代の不動産や株式の市況の低迷も反映し、預貯金など流動性の高い資産を強く好んでいる」と指摘している。
 貧しい地域では、コンゴ(旧ザイール)が1人あたり180ドル、エチオピアは193ドルなどで、北米やヨーロッパ、日本などとの千倍規模の激しい格差を示している。世界を10人の集団にたとえると、1人が99%の富を独占し、残りの1%を9人が分けている状態だという。

【国連調査 世界の富 最も豊かな上位1%の層を
                日米だけで3分の2近くを占める】

                (2006年12月6日 日本経済新聞 より)

 最も豊かな層に属し、成人人口の1%に相当する人々が所有する富は、世界の4割に相当。「上位1%」を国別に分類すると、米国が最多の37%、日本は2番目に多い27%となった。日米だけで上位1%の3分の2近くを占めた。1人あたりの富の平均は2万6千ドル。日本は18万1000ドルで米国の14万4000ドルを抑えてトップ。中国は2600ドル、インドは1100ドルだった。

<ジニ係数比較 日本、格差小さめ>

 今回の調査では富の分配の格差を示す「ジニ係数」も国別に算出。値が1に近づくほど格差が大きくなる。日本は0.55で、米国の0.80などと比べ格差は比較的小さかった。世界全体のジニ係数は0.89。最も貧しい層を含む成人人口の50%が所有する富の合計は、世界全体の1%にとどまった。富は年々蓄積されるため、単年度の所得などに比べて偏りが発生する傾向が強い。
 調査を指揮したカナダの西オンタリオ大学経済学部教授のジェームズ・デイビス氏は「日本は(富の母数となる)貯蓄を重視する文化があり、比較的平等な富の国内分配につながっている」と分析した。

【ファミリー経済 エコノ探偵団
  米国の格差 ITや株高が背景に 富裕層ほど所得が増加】

                    (7月1日 日本経済新聞 より)

<上位1%に資産集中>

 ブルッキングズ研究所上級研究員で、米連邦準備理事会(FRB)の副議長も務めたことのあるアリス・リブリンさんに話を聞いた。「米国の所得格差は広がっています。富裕層の所得増加のスピードが速くなっているためです」
 米商務省の統計によると、所得の上位20%の世帯の平均年収は1995年から2005年にかけて14.7%増えた。上位40-60%の世帯の増加率6.7%、下位20%の0.4%を大幅に上回る。この結果、上位20%の所得が全所得に占める割合は50.4%に達した。
 次にニューヨーク大学を訪れ、経済学部教授のエドワード・ウルフさんに聞いた。「上位層、特にトップ1%くらいの人がより豊かになっています」
 ウルフさんがFRBの資料を基に分析したところ、04年には所得の上位1%の世帯が米国の個人資産全体の34.3%、上位10%の世帯が同71.2%を保有していることがわかった。

<専門職の生産性向上

 大規模になった取引を獲得するため、金融業界は高度な金融知識を持つ人材を確保しようと高給を競った。その結果、上位層の所得の伸びが大きくなったという。
 大手証券、ゴールドマン・サックスの最高経営責任者(CEO)が06年に5400万ドル(約65億円)、メリルリンチのCEOが4800万ドル(約57億円)もの巨額報酬を得たことは米国でも大きく報道された。
 CEOの報酬が上がったのは金融業界だけではない。あるシンクタンクの調査では、米大手350社のCEOが05年に受け取った報酬の平均は、一般社員の平均年収の411倍に上る。格差は10年前の180倍から大きく拡大しており、米労働総同盟産業別会議(AFL・CIO)など労働団体は批判を強めている。
 FRBの資料によると、04年の所得の上位10%の世帯では9割が株式を保有していた。他方、上位40-60%では半分以下、20%以下では1割の世帯しか株式を保有していない。

<賃金の二極化が加速>

 「IT化で工場労働者などの仕事が消える一方、経営者など高度な知識を必要とする仕事とサービス業の仕事は減らないため、賃金の二極化が加速しました」とマサチューセッツ工科大学の准教授デイビット・オーターさん。
 ニッセイ基礎研究所の主任研究員、土肥原晋さんにも聞いてみた。「米国では努力しだいで高給が取れ、そうした人が国全体を引っ張ればいいという考えが根強くあります。しかも日本より経営者の権限が強いため、CEOの報酬は高くなりやすいのです。ただ、技術革新による格差拡大は日本でも起こりうることです」「IT化や株高などで、金持ちがますます金持ちになる傾向が強まっています」

【家計の金融資産1536兆円】
                    (6月15日 日本経済新聞 より)

<昨年度末、1%増>

 日銀が15日発表した2006年度末の資金循環統計(速報)によると、家計が保有する預金や株式などの金融資産の残高は前年度に比べ1%増の1536兆1628億円となり、年度末では過去最高となった。内訳をみると、預貯金から他の金融資産への資金シフトが進み、国債と投資信託の保有残高は過去最高を更新した。
 資金循環は家計や企業、政府などの経済主体ごとのお金の流れを分析した統計。景気回復を受けて家計の金融資産残高は03年度以降、緩やかに増えている。
 今回は年度末としては最高だったが、四半期末でみると、06年12月末(1541兆9000億円)に及ばなかった。年末のボーナス資金が消費に回ったため減少したとみられる。

<国債・投信が最高>

 金融資産のうち、国内外の株式や債券で運用する投資信託は前年度末比24.5%増の68兆4000億円。保険、年金準備金は2.5%増の401兆9000億円だった。
 一方、現預金は0.1%減の769兆9000億円。金融資産全体に占める割合は50.1%と1995年度末以来の低水準となった。

【ファミリー経済 エコノ探偵団
                所得黒字が貿易黒字超える】

                    (2月25日 日本経済新聞 より)

 所得黒字は正確には「所得収支の黒字」。日本から海外への投資で得た利子や配当が、海外から日本への投資で支払う利子や配当分を上回れば黒字になる。つまり「外国との投資のやり取りでお金が手元に残る」状態だ。モノの輸出額から輸入額を差し引く貿易収支と共に、外国との取引動向を示す経常収支を構成する二本柱になっている。
 「実際にどれくらい増えているのかな」。財務省国際収支室に聞いてみると「2006年の所得黒字は13兆7449億円で20.8%増え、3年連続で過去最高を更新しました」。2年連続で貿易黒字額(06年は9兆4596億円)を上回ったという。

 実際、日本が海外に持つ資産の残高から負債残高を差し引いた「対外純資産残高」は05年末で180兆6990億円。1996年末の1.7倍に増えており、世界の中でも断トツの1位だ。
 「そういえば個人の海外投資も人気らしいな」。コスモ証券経営企画部長の宮内幸雄さん(49)に聞くと「外債投信のほか、最近は中国株やインド株の投信も一般の方に人気です」と教えてくれた。
 「日本が海外に持つ資産が増えたことで配当や利子も増え、所得黒字の増加につながっています」。

【私の意見】Up63_39

 世界の富、日本人の富に関する記事を並べてみました。
1、1945年8月15日以前に生まれた者にとって生死をさまよった戦争中の体験と廃墟の中を必死に生き延びてきた記憶が鮮明に焼きついているため、私たち日本人が世界一のお金持ちになっているなんて思いもよらないことです。しかし、一人一人の日本人の資産をとっても、また日本人が総体として持つ対外資産をとっても、日本は最も豊かな国であり、日本人は資産持ちの民族になったと言えます。

2、今では日本人は汗水を流して自分たちのその日の糧を得て生きる民族ではなく、他国の労働者の労働の果実の恩恵をも受けながら豊かさを享受する民族となりました。大きな枠組みの中で日本と世界を見れば、日本は世界に冠たる資本家国家であり、日本人は資本家集団ということになります。
 私は今さら社会主義国家を肯定する立場でものを言っているわけではありません。私が言いたいのは日本は富んだ国であるという現実を直視する必要があるということです。富める北の国の国民として、この瞬間にも病気と飢えでたくさんの子どもたちが命を失っている南の国に心を痛めるべきなのです。

3、日本のジニ係数0.55は米国の0.80などと比べて小さいという見方は、もっと格差が広がっても良いという考えにつながります。しかし、私たち日本人が米国モデルを模範にすることはほとんどの点でマイナスの結果を招くと思います。
 日本でも「貯蓄から投資へ」ということがあたかも時の流れであり、真理であるかのように言われています。ところが伝統的に株投資が当たり前の米国においても所得下位20%の層では1割の人しか株式を保有していません。株式投資できる富裕層が配当所得によって更に豊かになる社会は公正な社会とは私には思えません。

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2007年6月25日 (月)

買収防衛策導入と株主総会の多数派工作

【ニュースがわからん! 委任状争奪戦って何なの?】
                       (6月23日 朝日新聞 より)

 コブク郎 楽天とTBSがやっている「委任状争奪戦」って何なの。株主総会と関係があるみたいだけど・・・。
 A  会社の重要方針を決める株主総会が今月下旬に多くの企業で開かれる。総会には経営陣が役員選任や株主への配当などに関する議案を出すが、株主にも提案権がある。楽天は買収防衛策導入の厳格化と、三木谷浩史楽天社長らの社外取締役選任を求めている。
 株主は持ち株数に応じて議決権があるが、自分で行使することもできるし、ほかの株主に行使を委ねることもできる。委ねる場合の書類が委任状だ。議案の可否は株主の多数決で決まるため、ほかの株主に自分の提案に沿った行使をしてもらうか、賛同を求めて委任状を集めようとする。委任状は英語でプロキシというのでプロキシファイトとも呼ばれる。自らの方針への指示を訴える「多数派工作」だね。
 
 コブク郎 TBS以外にも争奪戦があるの?
 A  アデランスは5月の総会で買収防衛策の是非を巡って外資ファンドと争い、経営陣側が勝利した。ドトールコーヒーは今月下旬、同業他社との経営統合を巡って外資ファンドと経営陣が争う。役員選任や配当金額が争点の企業もある。
 日本企業は長年、経営にはあまり口をはさまない安定株主に支えられる持ち合い構造が続いてきた。最近は、注文をつける外資ファンドなどの保有比率が高まり、争奪戦が増えているんだ。

 コブク郎 どうやって指示を訴えているの?
 A  株主名簿をもとに株主に手紙を送ったり、電話をかけたりして委任状を集める。持ち株数の大きい株主には直接会い、自らの議案を説明するケースもある。選挙にたとえれば、持ち株数の大きい企業や大口投資家は、いわば多数の組織票を握る団体の幹部だ。これに対し、個人投資家は浮動票のようなものだ。

 コブク郎 争奪戦はこれからも増えるのかな?
 A  株主総会に詳しいアイ・アールジャパン社の寺下史郎さんは「日本は米国などに比べ、株主提案がしやすく、勧誘対象の株主も調べやすい」と言う。経営をチェックすることに関して株主の意識は年々高まっている。今後も争奪戦となるケースは増えていきそうだ。 (中川透)

【米スティール代表初の会見 「投資、3-5年が基本」】
                    (6月13日 日本経済新聞 より)

 米投資ファンドのスティール・パートナーズを率いるウォレン・リヒテンシュタイン代表が12日都内で記者会見した。「企業との関係を重視し、3-5年の長期投資を基本とする」と説明。スティールが仕掛ける買収に、新株予約権使った防衛策で対抗するブルドックソースには「反対(活動)を進める」と述べ、差し止め請求などにより法廷で是非を争う可能性も示唆した。
 リヒテンシュタイン代表は欧州系証券会社が主催するセミナーで講演するため来日。記者会見を開くのは世界で初めてだ。

<スティール・パートナーズ>

 1990年にウォレン・リヒテンシュタイン氏が中心となって米国で立ち上げた投資ファンド。「スティール」の名称は初めての投資先が鉄鋼株だったことに由来する。投資先企業に株主還元などを積極的に働きかける「モノを言う株主(アクティピスト)」として知られる。
 欧米のほか日本、韓国などで投資。日本では2002年にスティール・パートナーズ・ジャパンを設立し、日興証券出身の西裕介氏が代表を務める。日本企業への投資は「スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド」が手掛け、サッポロホールディングスや日清食品などの食品株のほか、シチズンホールディングスの大株主になっている。

<ブルドックの買収防衛策 反対を言明>

 スティールにTOB(株式公開買い付け)を仕掛けられたブルドックは7日、新株予約権で対抗する方針を発表。24日に開く株主総会で出席株主の3分の2以上の賛成が必要な特別決議に諮る。スティールに割り当てる新株予約権は行使させない条項を盛り込んでおり、同代表は「会社法の株主平等の原則に反する」と批判した。
 また日本の産業界で、株式大量購入者に目的や事業計画などの開示を求めたうえで対抗策を発動する、「事前警告型」の防衛策を導入する企業が増えていることについて「世界の中でも最悪(の手法)」と強調した。
 同代表はスティールが「(保有株を投資先企業に買い取らせる)グリーンメールをやったことはなく予定もない」と高値での売り抜けを狙ったファンドではないと説明。日清食品が実施した明星食品のTOBに応じて、利益を得たことに対しては「経営陣が日清食品に売るように言ったからだ」と主張した。
 「資本構造や経営が非効率で、企業価値に比べ株価が割安な企業」を投資対象にすると表現。株価引き上げのための意見を会社に提出し、「反応がない場合はその意見を公開し、経営陣を交代させることや全株式を取得することもあり得る」と述べた。
 スティールが買収を提案したサッポロホールディングスなどからは「過半数の株式取得を目指しながら、実際の経営をする意思がない」との声も聞かれる。これに対し同代表は「企業のオーナーになることと経営者になることは別」と反論。「オーナーとして経営陣に権限を渡し、しっかりやってもらう」と述べた。
 「敵対的」とみられることが多い点については、「我々の要求は敵対的ではない。経営陣に前向きにとらえてほしい」と訴えた。

【ゴーン社長 矢面総会】
                       (6月21日 朝日新聞 より)

 カルロス・ゴーン社長就任後、初の営業減益となった日産自動車の株主総会が20日、横浜市で開かれた。「世界販売420万台」などの必達目標(コミットメント)の達成を1年先送りしたことに対する株主の視線は厳しく、ゴーン社長の辞任や役員報酬の削減を求める声が上がった。
 出席した株主は昨年より393人多く、過去最多の2135人だった。質問に立った株主は8人で、うち4人はゴーン社長の経営手法の問題点をただした。「ゴーン氏のだれも寄せ付けないカリスマ性が、社員の愛社精神を低下させている。ゴーン社長の役目は終わったのではないか」などの