母子家庭「使えぬ」就業支援
(10月22日 朝日新聞 より)
母子家庭への児童扶養手当を減らす代わりに厚生労働省が力を入れるとしていた就業支援事業の利用が進んでいない。06年度の実施状況を朝日新聞社が都道府県などに聞いたところ、正社員化を促す企業への助成金は予算見込みの約1割、資格取得のための給付金も半分以下しか使われていない実態が浮かび上がった。
【母子家庭の就業支援事業】
中心は、ホームヘルパーなどの講座を受け資格を取った場合に費用の4割(10月から2割)を支給する「自立支援教育訓練給付金」、看護師など2年以上かかり資格を取る際に12ヶ月を上限に最後の3分の1の期間に毎月10万3千円を支給する「高等技能訓練促進費」、母親を正社員で雇った企業に30万円の助成金を出す「常用雇用転換奨励金」の3事業。厚労省はこれらの事業を含む「母子家庭等対策総合支援事業費」として、06年度、自治体へ補助金19億円を計上している。
【正社員化助成 見込みの1割】
厚労省は来年4月から、受給後5年を超える母子家庭の手当てを最大半分まで減らす方針だが、これとセットになった自立支援が進んでいない実態を受け、手当削減の凍結を検討している与党の判断が注目される。
調査は、母親の資格取得を支援する「自立支援教育訓練給付金」、資格取得に期間がかかる場合に支援する「高等技能訓練促進費」、企業に母子家庭の母親の正社員化を促す「常用雇用転換奨励金」の3事業について、06年度当初予算に対する利用実績(決算・決算見込み)を調べた。主に町村部をカバーする都道府県と、県庁所在地の市、政令指定市に聞き、都道府県ごとに合算した(東京は都のみ)。
厚労省は03年度の事業開始から毎年、実施している自治体数を公表しているが具体的な実施状況は明らかにしていない。
もっとも実績が低かったのは、常用雇用転換奨励金で、平均実施率は12.4%。予算を組んだ31都道府県のうち22都道府県が実績ゼロ。制度を始めてから4年間ずっと利用がないため、今年度は予算計上自体を見送った県もあった。
自立支援教育訓練給付金も、平均の実施率は45.6%。高等技能訓練促進費は、一部で予算を上回ったが実績ゼロの所もあり、地域によってばらつきが大きかった。
厚労省母子家庭等自立支援室は「制度の周知部不足や、自治体による取り組みの差がある」と説明するが、自治体側からは「母子家庭の実態に合っていない」「制度の使い勝手が悪い」といった声が出ている。厚労省も来年度から、母子家庭向けの貸付金の返済期間を10年から20年に延ばす、高等技能訓練で入学一時金支給の制度を設ける-など使いやすくする見直しを検討している。
母子家庭は約123万世帯で、うち児童扶養手当を受けているのは95万5844世帯(07年3月)。この約3割が、受給開始から5年以上がたち手当削減の対象になるとみられている。
02年11月に成立した改正母子・寡婦福祉法の衆・参両院の付帯決議では、実際に児童不要手当を減らすための政令を決める際には法改正後の就業支援策の進み具合や母子家庭の状況なども考慮するとされている。
【就業支援現実離れ 3児の母(31)「資格取りたいが、
日々の生活が目の前にある」 】
「5年後に母子家庭への就業支援の実が本当に上がるのか。手当だけが削減されることにならないか」。児童扶養手当を減らす仕組みを導入した02年、国会で与野党双方から出た心配の声が現実になってきた。就業支援策はなぜ届かないのか。苦しい生活状況のままの母子家庭への手当を、削減していいのだろうか。
<児童扶養手当>
母子家庭は所得に応じて月額9850~4万1720円が受給できる。2人世帯(子ども1人)の場合、年収130万円未満の世帯は満額を受給し、それ以上には減額、365万円以上は受けられない。2人目の子には5千円、3人目以降は3千円が加算される。
<自己負担分が重荷>
「使えない制度はないのと一緒。『支援はしている』と手当の削減を正当化したい、国のための制度としか思えない」
3年前に離婚し、6歳から10歳まで3人の子どもを育てる都内の女性(31)は、就業支援事業をそう怒る。
離婚直後、医療事務の資格を取ろうと働きながら通信講座を受けた。当時は昼間のパートの後、家で子どもたちを寝かせてから時給880円の回転すし屋で働いた。
夜、目を覚ました子どもから携帯電話に「ママ、どこにいるの」と泣きながら電話がかかる。胸を締め付けられる思いで耐えたが、結局3ヵ月で体を壊し、通信講座は断念した。約7万円の受講料はすべて自腹だ。「みんな自立したい、資格を取りたい。でも、仕事や子育て、日々の生活が目の前にある。その現実を、国はどこまでわかっているのか」
子育てによる制約に加えて、経済的な負担も大きな壁だ。
東北地方のある自治体の担当者は先日、母親からパソコンの講習を受けたいと給付金の申し込みを受けたが、母親は授業料が工面できず取り下げた。「無利子の貸付制度も勧めたが、将来の展望がないから、借金には二の足を踏むようだ」
比較的、実績の高い政令指定市でも、例えば名古屋市では教育訓練給付金に2400万円の予算をとったが支給したのは500万円余り。常用雇用転換奨励金は54人分で1620万円を見込んでいたのに1件30万円の利用があっただけだ。
厚労省の年次報告によると、昨年末までに制度を利用できた人は3事業合計で1万1千人余りで、常用雇用転換奨励金で正社員になったのはわずか92人。「初年度だけで約1万人が対象」という制度導入時に掲げた目標を4年かけてようやく上回った。
<手当削減方針自治体も懸念>
「手当を減らされたらダブルワーク(仕事のかけ持ち)をして収入を上げるしかありません。今でも働き詰めなのに。私が倒れたら子どもたちはどうなるのかという不安を、ひとり親家庭の親はみんな抱えている」
今月14日。東京・青山や大阪・梅田の街頭で、「これ以上働けません」「母子家庭の子どもたちに生きる権利を」などと書かれたプラカードを手にした母親たちが、母子家庭の厳しい生活状況や児童扶養手当削減への不安を訴えた。
その2日後、厚労省は「母子世帯の収入が少し増えた」とする06年度全国母子世帯等調査の結果を公表した。しかし、景気が最悪だった時からやや上向いたとはいえ、平均年収213万円は今も一般世帯平均の4割に満たず、8年前の水準も回復できていない。
そんな状況に、福祉の現場を担う自治体も、危機感を募らせる。政令指定市に東京を加えた18大都市の児童福祉主管課長会議は7月、手当の削減について、母子世帯の生活実態や自立支援の施策の進み具合などを踏まえて、慎重に対応するように求める要望書を厚労省に提出した。
仕事の収入と児童扶養手当でぎりぎりの生活をしている母子家庭が、手当の削減をきっかけに生活保護に頼らざるを得なくなるかもしれないという心配がある。
「手当だけ減らして、生活保護を増やしてどうするんだ、という声はある」(公明党幹部)。与党内にも、そんな声はくすぶる。
神戸学院大学の神原文子教授は「日本の母子家庭は8割以上がすでに仕事をしており、先進国の中でも高い水準だ。それでも安定した生活ができないような低賃金に置かれていることが問題で、厚労省の就業支援は安定雇用につながっていない」と指摘。
そのうえで、「自治体がんばれ、企業がんばれだけでは事態は打開できない。最低賃金の引き上げや同一労働同一賃金など、普通の働き方でも収入がアップできるような施策に、国自身も積極的に取り組むべきではないか」と話している。
【私の意見】
障害者自立支援法がペテンにみちた法律であることは何度も指摘しましたが、母親の自立支援も同じようにペテンにみちみちています。金満国日本が最も支えなければいけない人を切り捨ててこの国に希望にみちた未来があろう筈がありません。交通事故による脊髄損傷できわめて重い障害を負った医師(友人)が、障害者自立支援法は私たちを犠牲にした国家財政自立支援法だと言っていました。ある母親は“自立”“自立”と言われるたびに“出て行け!”“出て行け!”と言われているような暗い気持ちになると言っていました。小泉純一郎が“改革!”“改革!”と叫んだ中味は一番弱い人に自立という名のもとに犠牲を強いるものでしたが、これに対し深くも考えずに喝采を送った大多数の日本人にも責任があります。障害者であれ母子家庭であれ大多数の日本人にとり所詮他人事です。“自立はあたり前だ!”という単純思考で涼しい顔をしているのが残念ながらわが民族の社会的成熟度のレベルです。福田康夫さんは温もりのある社会をめざすと言っていましたが、格差が歴然とできてしまった現状では“これもお題目だけで終わる可能性”が大だと思ったほうが無難です。温もりのある社会に向けて大手術をする気概が福田さんから伝わってきません。
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