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2013年3月18日 (月)

「精神障害者の雇用義務化」10年後に後退

【精神障害「雇用義務化を」 厚労省分科会が意見書 法案提出めざす】
              (2013年3月15日 日本経済新聞 より)

 厚生労働省の労働政策審議会の分科会は14日、障害者雇用促進法で精神障害者の雇用を義務付ける必要があるとする意見書をまとめた。これを受け、同省は改正法案を作成し、21日に開かれる分科会で議論する。分科会で合意が得られれば改正法案を今国会に提出し、5年後の2018年4月の施行を目指す。
 ただ企業側からは「精神障害者の雇用支援策を充実させ、効果を確認してから義務化に踏み切るべきだ」などと慎重な声も出ており、法改正の見通しは不透明だ。
 厚労省が雇用義務の対象と想定するのは精神障害者保健福祉手帳を持つ統合失調症、そううつ病、てんかんなどの患者。近年は精神障害者の就労意欲が高まり、大企業を中心に採用が増えている。

【障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会報告書】

 「障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会」は平成24年8月3日厚生労働大臣に研究会報告書を提出した。その中で、精神障害者の雇用義務化について「精神障害者に対する企業の理解の進展や雇用促進のための助成金や就労支援機関における支援体制の強化等の支援策の充実など、精神障害者の雇用環境は改善され、義務化に向けた条件整備は着実に進展してきたと考えられることから、精神障害者を雇用義務の対象とすることが適当である。」と明確に結論した。ところが、労働政策審議会 障害者雇用分科会で経営者側委員が猛烈に反対し、義務化の実施時期が5年後に大幅に後退する法案を厚労省は準備中である。

 ※報告書全文はこちら〔障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会報告書〕(PDF)--厚生労働省ホームページ

【雇用義務制度の変遷】

<身体障害者・知的障害者>

 雇用義務制度は、昭和35年の法制定時に身体障害者を対象とした努力義務として創設され、昭和51年の改正により、法的義務へと強化された。また、昭和62年の改正により、知的障害者に対する雇用率の適用に関する特例(実雇用率の算定特例)が設けられ、その後、平成9年の改正により知的障害者に係る雇用率制度上の取扱いが法的に整備され(雇用義務化)、その算定基礎に知的障害者を含む障害者雇用率が設定された。さらに、平成17年の改正により精神障害者に対する雇用率の適用に関する特例(実雇用率の算定特例)が設けられた。

<精神障害者の取扱い>

 精神障害者については、平成16年の労働政策審議会障害者雇用分科会意見書において、「将来的にはこれを雇用義務制度の対象とすることが考えられる。」とされ、精神障害者の雇用の促進を図ることを目的に、平成18年4月からは精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の所持者)が実雇用率への算定対象とされた。また、平成20年の法律改正における国会の附帯決議においても、「精神障害者を雇用義務の対象に加えることについて、可能な限り早期に検討を行うこと」とされた。

【私の意見】Up63

 わが国は精神障害者に対する偏見のきわめて強い国です。精神障害者のほとんどの人はわずかな配慮さえあれば有為な社会人として活躍できる人たちです。モノづくりやサービスの提供で日本の企業は世界市場で高く評価されつつあります。ところが、足元の自社の職場における障害者雇用の世界では、障害者を差別し排除する前時代的な考えが大手をふっています。このような時代遅れの感覚をもつ企業は、すぐれたモノづくりやサービスの提供の面でも長続きはせず、いずれは凋落すると私は思います。1980年に国連総会で採択された「国際障害者年行動計画」は「ある社会からその構成員のいくらかの人々を締め出す場合、それは弱くてもろい社会である」としていましたが、同様のことが企業にもあてはまるのではないでしょうか。

3月25日追記New2↓↓

【精神障害者の雇用義務化 実は10年後に実施?】

 3月15日の日本経済新聞記事から私は精神障害者の雇用義務化は5年後と思っていました。ところが労働政策審議会 障害者雇用分科会の3月21日の議事次第(PDF:厚労省ホームページ)を見ると精神障害者の雇用義務化の改正は「平成30年4月1日から施行する」(資料1要綱案第六の一(8頁))としているが第四の二(7頁)は「二 障害者雇用率及び基準雇用率についてはこの法律の施行の日から起算して5年を経過する日までの間、労働者の総数に対する対象障害者である労働者の総数の割合に基づき、対象障害者の雇用の状況その他の事情を勘案して政令で定めるものとすること」としています。5年後に施行され施行されてから更に5年以内に法定雇用率を見直すというもので実際は10年後実施となる可能性が大きいと思われます。
 最近事務所では一般労働市場で働く統合失調症、てんかん、発達障害などのさまざまな精神障害をもつ労働者からの労働相談が一挙に増えています。これまでは身体障害の労働者の相談ばかりでしたので、良い傾向と思っていました。雇用義務化を見越した厚生労働省を含む行政側の積極的な働きかけであると前向きにとらえていました。それだけに、えっ!10年後?とびっくりするとともに、ようやく社会に出はじめた精神障害者を再び排除する動きに強い憤りを禁じ得ません。

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