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2012年1月 9日 (月)

緒方貞子氏 “繁栄の孤島”あり得ない

【私の意見】Up63

 緒方貞子氏は国連日本政府代表部公使、国連難民高等弁務官などを歴任し、現在国際協力機構(JICA)理事長を務めています。緒方貞子氏の発言はやはり鋭く、重く、しかしやさしい!と思いました。日本経済は円高に見られるように欧米が苦しむ中で安定しています。とりわけ日本企業は潤沢な手元資金を元手に、海外で次々とM&Aを展開しています。私にとって、これまで多国籍企業とは米欧の企業という思いがしみ込んでいました。今や日本企業が欧米企業にとってかわる勢いで多国籍化しています。しかし私たちが“繁栄の孤島”だけを追求するとやがて単なる“孤島”に変わってしまいます。緒方氏の指摘を重く受け止め、私たちはアジアの人々がこの島で生活をエンジョイできる社会にchangeする必要があります。
 欧米を意識しての英語は多くの日本人の生活感覚から浮いたところにありましたが、アジア人とのコミュニケーションを図るための英語には生活のにおいがします。ネイティブな英語でなくとも、お互いにブロークンな英語でもとにかく意思の疎通を図ることが第1です。そう思うと英語が身近なものに感じられ、私も中学校の英語の教科書のおさらいからでも始めようかなという気になってきました。

【“繁栄の孤島”あり得ない 緒方貞子 国際協力機構理事長】
                   (1月8日 日本経済新聞 より)

 東日本大震災で日本は世界各国から多大な支援を受けた。発展途上国への援助を国際貢献の軸に据えた従来の立場とは異なる経験だ。世界を見渡しても経済における米欧の優位は揺らぎ、新興国の存在感が強まる。激動する世界に旧来の発想でいいのか。国際情勢の変化を肌で感じる国際協力機構(JICA)の緒方貞子理事長に聞いた。

【おがた・さだこ】

 63年米カリフォルニア大バークレー校で政治学博士号。国連日本政府代表部公使、上智大外国語学部長などを経て91~00年に国連難民高等弁務官。03年から現職。東京都出身、84歳。

 ---東日本大震災では日本は支援を与える側から受ける側に回りました。
 「様々な国や国際機関から物資や人員で助けていただき、いろんなことを学んだ。驚いたのはこれまで援助してきた発展途上の国や地域が義援金を集めるなど、熱心に支援してくれたこと。アフガニスタンではイスラム原理主義の旧タリバン政権に破壊された大仏の跡があるバーミヤンで、日本の復興を祈る人たちがいた。途上国とは持ちつ持たれつの関係だと改めて思う」
 ---日本の援助への“恩返し”なのでしょうか。
 「援助に近視眼的な見返りを求めるのは誤りだ。例えば、アフリカ諸国への支援がすぐに日本の国益につながるはずはない。でも、その地域が安定し、人々が安心して生活できるようになれば、日本製品を買えるほど経済力が高まるかもしれない。ワクチン配布で子供たちが健康に育てば、進出企業が労働力を確保することもできる」
 「中長期の視点が欠かせない。その意味で、財政悪化を理由に日本の政府開発援助(ODA)が1990年代後半から一貫して減る現状には危機感を覚える」

<新興国と共存を>

 ---途上国と共存共栄することが重要というわけですね。
 「日本だけが利益を得る“繁栄の孤島”という考え方は通用しない。アジア新興国が台頭しているが、日本の製造業にとって欠かせない存在になった。昨年起きたタイの洪水で、こうした国々が部品などのサプライチェーン(供給網)の大切な一部だと再認識できた。それに製品は国内だけで売るわけではない。途上国の民生向上で“買える人”を増やすことが重要だ」

<「時代は変わった」>

 ---日本が援助してきた途上国は新興国として発言力を強めています。2008年のリーマン・ショックを受けて20カ国・地域(G20)という新たな枠組みができました。
 「欧州債務危機をみるまでもなく、多くの先進国の財政は悪化している。先進7カ国にロシアを加えた主要8カ国の枠組みだけでは世界の問題に対処しきれない。新興国をG20という枠組みに迎え、発言力を与える代わりに責任を分担させる仕組みは適切だ。G20には多くのアジア新興国が参加する。その代表的な中国には07年度を最後に新規の円借款を停止した。『時代は変わった』と強く思う」

【変わる秩序 統治改革を】

 ---グローバル化が進むなか、昨年はロンドンや米ウォール街など先進国で暴動やデモが発生しました。
 「経済運営において、富の配分に良識が働かなくなった結果かもしれない。自由な社会だけど、一部の人だけ裕福になる。これまで有効だった税制という手段だけでは再分配ができなくなってきた」
 「暴動やデモに加わった若者らは格差の実態をなんとなく気づいてはいたが、インターネットなどIT(情報技術)を通じ具体的に知った。チュニジアで始まった北アフリカや中東の民衆による反政府デモ『アラブの春』にも通じる。アラブの民衆はネット上のフェイスブックやツイッターを通じ国境を越えて情報を共有、独裁的な政権に異議を申し立てた」
 「ITの発達は16世紀ごろの大航海時代に匹敵する情報革命だと思う。政府側としてはガバナンスの改革が必要なのではないか。政府の正当性を納得してもらうような改革、あるいは、このように変えたいといったような提案をしていく。不公平を改善するような努力をしていかないと、人々がITで情報を確保する時代には対応できない」

<英語の役割重要>

 ---世界が激動しているのに、海外への留学生が減るなど日本では内向き傾向が強まっているようです。
 「大学3年になってすぐに就職活動でそわそわしては留学どころではない。企業は海外の大学院に社員を留学させてきたが、人間性を高めるのなら、もう少し若い時期に大学などに留学する方がいい。企業は採用の仕組みを変えるべきだ。また海外からも多くの留学生を受け入れなければ世界と日本はつながれない」
 「やはり英語の役割は重要だ。海外に活路を求める企業はグローバル人材の育成に懸命だが、英語を話すことが国際化の第一歩になる。周辺のアジアには英語の上手な人が随分増えた。日本が『繁栄の孤島』と呼ばれているうちはまだ良い。そのうち『繁栄』がとれ、単なる孤島になってしまうことを恐れる」

【ODA・留学生 右肩下がり】

 日本からの政府開発援助(ODA)や留学生の推移をみる限り、「内向き」という印象はぬぐえない。
 ODAは一般会計の当初予算ベースで1997年度の1兆1687億円をピークに右肩下がりを続けている。2012年度の政府予算では5612億円に落ち込んだ。
 ODAには政府から発展途上国へ直接支援する2国間援助と国連など国際機関への資金拠出がある。有償資金協力(円借款)、技術協力を含む2国間援助の多くを国際協力機構(JICA)が担う。
 海外の大学など高等教育機関に在籍する日本人留学生の数も04年の約8万3000人を最高に減っている。経済協力開発機構(OECD)などの調査をまとめた文部科学省の資料は08年の6万6833人が最新だが、その後も減少傾向に歯止めがかからないとみられている。
 一方、日本の高等教育機関に在籍する外国人留学生数(各年5月現在)は10年が14万1774人で、00年の2倍以上に膨れた。
 政府は教育研究機関の国際競争力を高めるため20年をメドに外国人留学生数を30万人に増やす目標をたてている。海外に留学生獲得のための拠点を設ける大学も目立ってきた。だが、東日本大震災で帰国者が出るなど、今後10年で倍増できるかとうかは不透明だ。

【日本の政治、危機感薄く】

 11年の日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)は計5兆円を超え、過去最高になった。人口減を背景に縮小必至の国内市場を見限り、新興国などに活路を求める企業の姿勢は明確だ。一方、競争力強化へ制度改革を進めるべき政府の腰はなお重い。緒方氏は「政府のスタッフの大半がグローバル人材でないといけない」と述べ、懸念をにじませた。
 ITで世界が狭まり、欧州債務危機が瞬時に東京市場に打撃を与えるような時代に入ったのに、日本では政府も政治家も、どこか人ごとのようだ。危機感は薄く、国の借金を重ねて痛みの伴う改革を先送りする。世界からの遊離は深刻だ。(編集委員 加賀谷和樹)
 

 

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