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2011年4月 5日 (火)

東北の復興 人も企業も集める志の旗を

【波聞風問 編集委員安井孝之】
                 (2011年4月3日 朝日新聞 より)

 うす紅色のつぼみは一斉に開き始めていた。近くには花見酒の自粛を求める看板が立っている。その公園のそばのJR上野駅。広小路口に「あゝ上野駅」の歌碑がある。1960年代、東北地方からの集団就職列車に乗って上京してきた若者への応援歌だった。
 「戦後、日本経済大繁栄の原動力となったのがこの集団就職といっても過言ではない」。2003年に設置された歌碑にこう刻まれた。
 東北だけではない。地方は高度成長期から今もなお都市へ若者を送り出している。働き盛りの生産年齢人口の増加は都市部に需要を生み、その成長を支えた。東京と周辺の4都県の人口は依然増え、地方の減少は止まらない。
 東日本大震災は東京一極が富を集積してきた日本経済のひずみを痛撃した。
 東京都の65歳以上の高齢化率は約21%。一方、岩手県大船渡市や宮城県南三陸町はそれぞれ約30%と高い。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2035年の人口は東京都が05年に比べ1%増、大船渡市は34%減、南三陸町は39%減。被災地は高齢化と人口減が激しい地方都市の縮図だった。
 復旧から復興へ。大切なのは誰が担うのかである。
 関東、東北の電力不足は少なくとも数年は続くと見られる。節電するにしろ、企業の生産拠点がシフトする恐れはぬぐいきれない。
 復興には人も企業もなくてはならない存在だ。東京に人が移り、生産拠点が海外に移っていったこれまでの成長のありようを、根本から見直す時機なのかもしれない。
 阪神大震災が起きた95年の秋、大手通販会社の「フェリシモ」は本社を大阪市から神戸市に移した。震災前に決めた移転計画を半年遅れでそのまま実行した。
 矢崎和彦社長は「神戸の人や行政、企業にとても温かく迎えてもらった。神戸を良くしようとする『志縁』でした」と言う。復興への活力やヒントを探る「神戸学校」を同社主催で97年に始め、今月で168回となる。
 東北にどのような希望ある志の旗を立てるのか。三陸海岸の沖には恵み豊かな漁場がある。カキやホタテ、ホヤ、アワビなど高級食材が多い。漁業の再興を果たせば、国際競争力を持つ水産業の集積地になれるかもしれない。
 コメ、リンゴ、サクランボとブランド力ある農産物もある。クリーンエネルギーの開発・生産拠点づくりや首都機能の移転といった構想も議論すべきだろう。
 東北に希望のビジョンを掲げ、血縁、地縁だけでなく「志縁」でも人や企業、NPOが集まるという従来とは逆の流れを起こせないか。
 被災地の桜もまもなくつぼみを開いてくれるのだから。

【日本型産業モデル創出を シャープ会長 町田勝彦氏】
              (2011年4月2日 日本経済新聞 より)

 <大震災と企業 復興への道を聞く>

 東日本大震災で打撃を受けた東北地方のエレクトロニクス関連産業の行方は、シャープの将来も左右する。求められる早期の復興。併せて進む環境に配慮した町づくりで、日本型の新産業モデルを創設すべきだと町田勝彦会長は語る。
 ---現在の危機にどう向き合うのか。
 「被災地には部材などエレクトロニクスの川上産業が集積している。このまま衰退したら、自動車産業なども含めて日本の物づくり全体が崩壊する」
 「我々が製造する液晶パネルは川中に位置し、テレビは川下にあたる。私がテレビをすべて液晶に換えると言ったとき、液晶技術がまだ不十分だったので各方面から無謀だとされた。実現できたのは優れた部材メーカーがあったおかげだ」
 「円高もあり、苦境に立つ川上の産業がこの際とばかりに韓国、台湾、中国に大移動を起こしたら、我々の事業も国内では成り立たない。現状を軽く見てはならない」
 ---経済合理性に基づく判断も重い。
 「経営者は踏ん張らなくてはいけない。日本国という視点が必要だ。採算性を考えたら海外に引っ張られる。だが地域住民のことも考えざるを得ないと、経営者は様々に悩むだろう」
 「政府が産業政策上、東北地方のエレクトロニクス産業は大事だから支援するとの姿勢を明確にすべきだ。迷う経営者の背中を押してやらなければ、現実に流される」
 ---ソフト産業などに転換できないか。
 「ソフト関係の産業は重要だが、太い柱になるだろうか。金融業も期待されたが、欧米と競争して勝つのは容易ではない。日本人は感性が細やかだとか、生まれ育った風土によってそれぞれ持ち味がある。日本人の特性を考えれば製造業があっていると思う」

<環境重視し町づくり>

 ---以前のまま復元するのではなくて、国情にあった技術、産業モデルに改めるべきでは。
 「被災地の先端産業を早急に再建すると同時に、新たな町づくりによって新しい日本型の産業モデルを確立すれば、日本はすごいなと世界は再認識するだろう。原発事故で傷ついた日本の信用を回復するには、そのくらいの大きなことを考えなくては駄目だ」
  ---新産業創出のバネになれば良いが。
 「環境重視の町づくりは総合産業だ。太陽光発電や発光ダイオード(LED)照明、通信システムなど新技術の結晶である。我々も各地で計画に参加しているが、既存の都市では小規模な実証実験にとどまる。被災地では、町全体をゼロからつくることになる」
 ---小型、分散という発送も必要だろう。
 「原子力は今後も大切だと思うが、今回は巨大システムのもろさが出た。太陽光発電所は数千世帯が対象で分散型だ」
 「シャープ創業者の早川徳次は戦前、関東大震災で事業も家族もすべてを失い、独りで大阪に来てラジオ事業を始めた。今こそ創業者の精神を思い起こして気を引き締め、新事業を創出するスピードを上げなければならない」
        (聞き手は 特別編集委員 森一夫)

【私の意見】Up63

 震災で大きな影響を受けた東北地方の太平洋側が、自然と産業の調和した新たな文化を世界に発信する日本の新たな中心地として蘇るものと信じています。
 私事ですが、石巻で小さな運送業を経営していた知人のEさんが津波にさらわれ、娘さんと孫娘さんとともに亡くなったことを昨日知りました。電話が通じないので葉書でお見舞いをしたところ息子さんより電話があってこのことを知りました。十数年前トラックの運転手さん2名が石川県金沢市の建築現場でクレーンで荷おろし中にパネルの下敷きになって死亡するという事故が発生しました。建設業者等への運転手さんの遺族の損害賠償請求の先頭に立ち奔走し、自らも賠償金の一部を負担した誠実な人でした。陽気でやさしかった人を失いさびしいかぎりです。

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