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2010年4月14日 (水)

「独立役員」東証上場187社が未確保

【東証の上場会社「独立役員」187社が未確保】
               (2010年4月6日 日本経済新聞 より)

<先月末 届出の9%>

 東京証券取引所は5日、一般株主の保護を目的に上場会社に導入するよう義務付けた「独立役員」の3月31日時点の設置状況を公表した。届け出済み2094社のうち「未確保」と届け出たのは、9%にあたる187社。3月期決算企業は、2011年6月末以降に未確保ならば上場規則違反となり、企業名公表などの措置が適用される。
 現在までに届け出済みの独立役員の合計は3595人。うち75%が社外監査役、25%が社外取締役だった。1社あたりの平均人数は1.7人。独立役員の人数が最も多かったのはソニーの12人。次いで三井物産、三菱商事、新生銀行、富士急行、西日本旅客鉄道(JR西日本)の各8人。
 未確保だったのは豊田通商、ダイハツ工業、久光製薬など187社。社外監査役と社外取締役の中に大株主や親会社・主要取引先の役職兼務者などしかいないため、「未確保」と届け出た企業も多いとみられる。

<独立役員>

 社外取締役・社外監査役のうち、経営陣からの独立性が高く、一般株主と利益の対立が生じない者。独立役員に法的根拠はないが、東証は昨年末、独立役員の導入を上場規則に盛り込み、3月末までに存否を届け出るよう求めた。

【弁護士清水建夫及び銀座通り法律事務所の企業サポート・企業法務】

<企業顧問弁護士と労働弁護士は二重人格?>

 私の30代の弁護士業務の中心は企業法務と企業再生にありました。その頃顧問契約を交わした企業との顧問契約は今なお続いています。会社法は資本金5億円以上または貸借対照表上の負債の部の計上額が200億円以上の企業を大会社と定義していますが(2条⑥)、私は現在5社の大会社と顧問契約を結んでいます。そのうち3社が東京証券取引所の第1部に上場している企業でそれぞれの分野で著名な企業です。私のブログをご覧になれば、私は労働弁護士(労働者の側に立つ弁護士)と思われる方が少なくないと思います。確かにその面はありますが、他面では企業弁護士でもあるのです。そんな二重人格は許されない!との声が聞こえてきそうですが、私の中では私の良心に恥じることなく両立しています。私は顧問会社の社長以下役員との信頼関係構築に努めるとともに、顧問会社の社員(従業員)の方との信頼関係の構築も大切にしたいと思っています。このことについては後日あらためて述べたいと思います。

<私は社外役員には就任しない方針>

 私はこれまでに社外取締役にも社外監査役にも就任したことがありません。ひとたび、会社にコンプライアンス違反などの有事が発生すると、社外取締役であっても社外監査役であってもそれぞれの責任の存否が問われ、ある意味で被告席に立たされます。企業の活動は多岐にわたっており弁護士業務を抱えながら企業活動のすべてを監視することは不可能に近いことです。社外役員に就任していなければ有事が発生したときに、被告席ではなく弁護人席で役員や社員をサポートすることができます。そんなことで私個人としては役員に就任しない方針です。

<コンプライアンス委員会の外部相談担当>

 私にとり企業弁護士として最も座り心地の良い位置は、コンプライアンス委員会の弁護士としての担当です。私は大会社のうち4社でコンプライアンス委員会担当弁護士に選任されています。コンプライアンス委員会担当ですと、法律の順守を基本に役員にも社員にも取引先等の関係先にも公平・公正に対応できますし、またそれが求められます。私は最近ではコンプライアンス委員会担当弁護士として受身で相談・苦情事例を待つのではなく、役員や社員に私の方から積極的に提案することにしています。これについても後日あらためて述べたいと思います。

【独立役員と弁護士】

<弁護士と社外監査役>

 弁護士で社外取締役又は社外監査役に就任している人は少なくありません。多くの弁護士は弁護士業務が多忙なので、社外取締役との両立はむつかしく、社内監査役に就任しています。企業における「コンプライアンス(法令順守:参照wikipedia)」、「コーポレートガバナンス(企業の経営を監視・規律すること、又はその仕組みをいう:参照wikipedia)」、「CSR(企業の社会的責任:参照wikipedia)」が重視されており、法律専門家としての弁護士が社外監査役に加わることは意義あることだと思います。

【東京証券取引所の業務規則改正と独立役員】

 独立役員は東京証券取引所が09年12月22日に業務規定を改正したことによるものです。同取引所は独立役員について次のように定めています。(株式会社東京証券取引所平成21年12月22日公表 「『上場制度整備の実行計画2009(速やかに実施する事項)』に基づく業務規程等の一部改正について)」:東京証券取引所ホームページより)

Ⅰ 改正概要
1.コーポレート・ガバナンスの向上に向けた環境整備
(1)(2)  (略)
(3)独立役員
① 独立役員の確保
・ 上場内国株券の発行者は、一般株主保護のため、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役をいう。以下同じ。)を1名以上確保しなければならない旨を、企業行動規範の「遵守すべき事項」として規定するものとします。
・ 上場内国株券の発行者は、独立役員に関して記載した「独立役員届出書」を当取引所に提出することとし、当該届出書を当取引所が公衆の縦覧に供することに同意するものとします。
     (中略)
② 独立役員の開示
・ 上場内国株券の発行者は、独立役員の確保の状況(独立役員として指定する者が、以下のaからeまでのいずれかに該当する場合は、それを踏まえてもなお独立役員として指定する理由を含む。)を、コーポレート・ガバナンス報告書において開示するものとします。
     (a、b 略)
c 当該会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家又は法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、当該団体に所属する者及び当該団体に過去に所属していた者をいう。)
     (d、e 略)

【顧問弁護士の独立役員への就任】

 顧問弁護士が独立役員に就任することについては、上記②Cに該当するか否かが問題となります。すなわち「当該会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ている法律専門家」に該当するか否かです。これについて社団法人日本監査役協会監査法規委員会は10年2月26日「独立役員に関するQ&A」の中で次のような見解を述べています。(社団法人日本監査役協会 監査法規委員会 平成22年2月26日公表「独立役員に関するQ&A-独立役員届出書提出にあたっての監査役の実務対応-」:日本監査役協会ホームページより)

「『多額』の基準は会社法施行規則74条4項6号ロに従った解釈論となります。『多額』の報酬を受けていることで独立性について疑義が生じる理由は、社外役員が当該会社に経済的に依存し、その結果、財産を給付することを決定する権限を有する会社の業務執行者からの独立性が十分に確保されないおそれがあるからと考えられています(弥永真生『コンメンタール会社法施行規則・電子公告規則』(商事法務、2007年)421頁)。『経営陣から著しいコントロールを受けうる』立場にあるのか否かが、判断の重要なメルクマールとなります(経済産業省『企業統治研究会報告書』(平成21年6月17日)参照)。」

「『多額』か否かの判定を含め独立役員に該当するのか否かは、経営陣からの独立性に照らして判定されますので、最終的にはあなたとX社との現実的な関係次第といえます。
会計士や弁護士など一定の資格要件を持って会社にアドバイスをしている人や専門 性の高いコンサルタントは、経営陣の利益を図るためにアドバイスを行うというよりも、会社と委任契約を締結した者として会社利益の最大化のために、業務執行者に対して内部からは言えない客観的意見を述べていることも実態として少なくありません。独立監査役としての職責と社外監査役としての職責との間には法的に差異がないと考えることも可能であることはQ3で述べたとおりですが、例えば顧問弁護士が社外監査役に就任すること自体、そもそも会社法上も否定されていません(吉戒修一『平成5・6年改正商法』(商事法務、平成8年)224頁)。」

 日本公認会計士協会は金融商品取引法に基づく会計監査による監査報酬は原則として「多額の金銭その他の財産に該当しない」としています。したがって顧問弁護士が経営陣からの独立性を危ぶまれるほど多額の報酬を受け取っている場合(これはまれなことと思います)を除き、顧問弁護士が独立役員に就任することは問題がないと私は考えます。

【後輩弁護士の独立役員への推選】

 私は今回ある顧問会社に後輩の弁護士を独立役員に推選しました。私自身は社外取締役も社外監査役も就任せずに今日に至りましたが、弁護士が企業の独立役員としてコーポレートガバナンス、コンプライアンスの視点から積極的に参加するのは企業にとっても当該弁護士にとっても有益なことと思います。そんなことから今後とも要請があれば独立役員への推選を積極的に行っていきたいと思っています。幸いに役員賠償責任保険も充実してきており、故意又は重過失がないかぎり、損害賠償請求を受けて家も貯金も失うという事態は防げそうで、安心して役員に就任できる環境が整ってきています。

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