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2009年9月14日 (月)

3党連立合意 EU型社会民主主義政治へ

【はじめに】

 9月9日、民主党・社民党・国民新党が交わした連立合意文書はこれまで日本の政府がとってきた競争至上主義の経済政策にピリオドを打ち、国民一人ひとりのセーフティーネットを充実させようとするものです。この合意が文書のとおり実行されるとすれば日本の政治の大転換であり、私は素直に喜びたいと思います。米国型の市場原理主義政治からEU型の社会民主主義政治への大転換です。このとおり実現すれば、私が弁護士としていつも歯ぎしりをしてきた不公平・不公正なことのかなりの部分がなくなり歯ぎしりをしなくてすみます。本当にこのとおり実行すするのだろうか?という疑問はありますが、実現は私たち国民一人ひとりの責任でもあります。国民の一人としてこの実現に積極的に関わっていくことこそが大切だと思います。

【民社国、連立に合意】
                     (9月10日 朝日新聞 より)

<福島・亀井氏、入閣へ 地位協定「改定を提起」>

 民主党の鳩山代表、社民党の福島党首、国民新党の亀井代表は9日、国会内で会談し、3党による連立政権を樹立することで正式合意した。最後まで調整が難航した安全保障政策は、日米地位協定改定の「提起」と在日米軍基地のあり方を見直す文言を加えることで決着し、計10項目の合意文書をまとめた。福島、亀井両氏が、それぞれ党を代表して入閣する。

<3党連立政権合意(骨子)>

・消費税率の据え置き
・ゆうちょ銀行などの株式売却凍結法を速やかに
 成立。郵政改革基本法案を速やかに作成
・子ども手当を創設。生活保護の母子加算を復活。
 高校教育を実質無償化
・後期高齢者医療制度を廃止
・日雇い派遣を禁止、製造業派遣も原則的に禁止
・国と地方の協議を法制化
・農家への戸別所得補償制度を実施
・温暖化対策の中期目標を見直し基本法を速やか
 に制定
・緊密で対等な日米関係をつくる。沖縄県民の負
 担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提
 起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方につい
 ても見直しの方向で臨む
・東アジア共同体の構築
・アフガニスタンの実態を踏まえた支援策を検討
・憲法の三原則を遵守(じゅんしゅ)を確認し、国民
 の生活再建に全力

【小泉純一郎よさらばじゃ!】

 3党連立合意は前文冒頭で小泉内閣が主導した競争至上主義の経済政策との決別を宣言し、国民各層のセーフティーネットの充実を図るとしています。

 小泉内閣が主導した競争至上主義の経済政策をはじめとした相次ぐ自公政権の失政によって、国民生活、地域経済は疲弊し、雇用不安が増大し、社会保障・教育のセーフティーネットはほころびを露呈している。
 国民からの負託は、税金のムダづかいを一掃し、国民生活を支援することを通じ、我が国の経済社会の安定と成長を促す政策の実施にある。
 連立政権は、家計に対する支援を最重点と位置づけ、国民の可処分所得を増やし、消費の拡大につなげる。また中小企業、農業など地域を支える経済基盤を強化し、年金・医療・介護など社会保障制度や雇用制度を信頼できる、持続可能な制度へと組み替えていく。さらに地球温暖化対策として、低炭素社会構築のための社会制度の改革、新産業の育成等を進め、雇用の確保を図る。こうした施策を展開することによって、日本経済を内需主導の経済へと転換を図り、安定した経済成長を実現し、国民生活の立て直しを図っていく。

【「障害者自立支援法」を廃止し応益負担を原則とする総合的な制度をつくる】

 3党連立合意は10の項目を掲げて実施に全力を傾注していくことを確認するとしています。私は私の弁護士としての仕事の関連で5,6,7に強い関心をもっています。

5 年金・医療・介護など社会保障制度の充実
 ▽「社会保障費の自然増を年2200億円抑制
  する」との「経済財政運営の基本方針」(骨太
  の方針)は廃止する
 ▽「消えた年金」「消された年金」問題の解決に
  集中的に取り組みつつ、国民が信頼できる、
  一元的で公平な年金制度を確立する。「所得
  比例年金」「最低保障年金」を組み合わせる
  ことで、低年金、無年金問題を解決し、転職に
  も対応できる制度とする
 ▽後期高齢者医療制度は廃止し、医療制度に対
  する国民の信頼を高め、国民皆保険を守る。
  廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援
  する。医療費(GDP比)の先進国(OECD)並
  みの確保を目指す
 ▽介護労働者の待遇改善で人材を確保し、
  安心できる介護制度を確立する
 ▽「障害者自立支援法」は廃止し、「制度の谷
  間」がなく、利用者の応能負担を基本とする総
  合的な制度をつくる

 この中で私に最も関係が深いのは、「『障害者自立支援法』は廃止し、『制度の谷間』がなく、利用者の応能負担を基本とする総合的な制度をつくる」という点です。障害者自立支援法は小泉内閣がつくったものでペテンにみちたネーミングとは全く逆の障害者の自立を阻害する天下の悪法です(私著「ノーマライゼーションに逆行する障害者自立支援法」参照)。この悪法のために日本でも少しずつ前進していた障害のある人の完全参加と平等の流れが大きく逆流しました。この悪法が政権交代でこうも簡単に廃止されるものかと喜びとともに驚きです。鳩山由紀夫氏も含め民主党は一貫して「障害者の自立を阻害する法律」とうい認識を示していました。今後を見守っていきたいと思います。

【登録型派遣・製造業派遣の原則禁止。雇用保険のすべての労働者への適用。男・女、正規・非正規間の均等待遇の実現】

 6 雇用対策の強化-労働者派遣法の抜本改正
 ▽「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止のみなら
  ず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇
  用とする。製造業派遣も原則的に禁止する。
  違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」の
  創設、マージン率の情報公開など、「派遣業
  法」から「派遣労働者保護法」にあらためる
 ▽職業訓練期間中に手当を支給する「求職者支
  援制度」を創設する
 ▽雇用保険のすべての労働者への適用、最低
  賃金の引き上げを進める
 ▽男・女、正規・非正規間の均等待遇の実現を
  図る

 「男・女、正規・非正規間の均等待遇」が実現すれば労働者の側から選ぶ「多様な働き方」が現実のものとなります。ところが現状は非正規=低賃金・首切り自由のメニューしか経営者が用意せず、多くの労働者は明日のパンを買うために不利な非正規雇用を受け入れてきました。障害者は厚生労働省による事業主に甘い法運用のため非正規雇用が圧倒的ですが、障害をもった労働者についても障害のない正規労働者と均等待遇を実現し、一個の労働者としての尊厳を回復すべきです。

【中小企業に対する支援を強化。「貸し渋り・貸しはがし防止法」を成立させる】

7 地域の活性化
 ▽国と地方の協議を法制化し、地方の声、現場
  の声を聞きながら、国と地方の役割を見直し、
  地方に権限を大幅に移譲する
 ▽地方が自由に使えるお金を増やし、自治体が
  地域のニーズに適切に応えられるようにする
 ▽生産に要する費用と販売価格との差額を基本
  とする戸別所得補償制度を販売農業者に対し
  て実施し、農業を再生させる
 ▽中小企業に対する支援を強化し、大企業によ
  る下請けいじめなど不公正な取引を禁止する
  ための法整備、政府系金融機関による貸付
  制度や信用保証制度の拡充を図る
 ▽中小企業に対する「貸し渋り・貸しはがし防止
  法(仮称)」を成立させ、貸付債務の返済期限
  の延長、貸し付けの条件の変更を可能とする
  。個人の住宅ローンに関しても、返済期限の
  延長、貸付条件の変更を可能とする

 日本のすぐれた製品やサービスは裾野の広い中小企業群の創意・工夫によって生み出されていました。中小企業は2006年時点で2,784万人に雇用の場を提供しており、非一次産業(公務を除く)の就業の場の約7割を担っています(2009年版「中小企業白書」172頁)。多くの国民が中小企業で働き日本経済を支えてきました。

【竹中平蔵「竹中教授のみんなの経済学」2000.12幻冬舎】

 経済学の基本のき
 1990年代を象徴するキーワード「リストラ」。日本の企業にとって、いま必要なリストラとは、バブル時につくった過剰な債務・過剰な設備・過剰な雇用の削減です。
 これを先送りにしてきたことが、日本の経済成長を抑制した原因となっています。3つの過剰が解消されれば、日本経済は本来可能であると見られる2%程度の成長ができることになります。

 小泉内閣の司令塔を自認した竹中平蔵氏は、その軸足をメガバンクと大企業の株主(経営)の立場にしか置きませんでした。その結果日本政府の経済財政政策・金融を担当とする長(大臣)としてのバランス感覚を著しく失っていました。竹中氏の3つの過剰のうち2つは明らかに偽りの表現です。「過剰な債務」は貸し手である銀行にとって「過剰な債権」であって、過剰な債務の削減は借り手の中小企業からみると突然の貸しはがしです。貸しはがしは新規融資のストップではなく、既存融資の回収を意味します。ほとんどの中小企業は銀行から借りたお金を一度に返す力はありません。多くの中小企業は工場を売り、自宅を売却しましたがそれでも返済できず破綻していきました。
 「過剰な雇用」は労働者が選択したものではなく経営者目線からの「過剰」です。しかしこれも中小企業経営者の目線ではなく、メガバンク・大企業の株主(経営)側にのみ軸足を置く金融・財政大臣の目線でしかありません。

「守りのリストラ」から「攻めのリストラ」にいち早く進んだ企業は過去最高益を上げている
 成長率を取り戻すために、過大な債務、つまり腐った部分を切り取るリストラが必要であるのはすでに述べてきた通りです。
 ただし、これは切り取るという点で受け身のリストラといえます。リストラが「再構築」だという本来的な意味を考えると、リストラにはもう一つ、「攻めのリストラ」というものもあります。 (中略)
 ここ数年、同じ業種でも「勝ち組」と「負け組」という二極化が起きているといわれます。不況だ、不況だといわれながらも、8社に1社は過去最高益を上げているという現実がある一方で、連続赤字となっている会社もあります。日本の企業がこれだけ大きく二極化した理由はここにあるのです。

 確かにメガバンクと一部の大手企業は勝ち組として残りました。しかしそのために切り捨てられたたくさんの労働者と中小企業者が生活の糧を奪われました。従来の職を失ったあと、「勝ち組」の大企業が突きつける非正規雇用を受け入れ不安定な生活を余儀なくされています。国内ではあいかわらず毎年3万人を超える人が自ら命を絶っています。また、日本のメガバンクや大手企業がグローバル競争(世界競争)で仮に勝ったとしても、外国の負け組企業で働く人々やその国の経済を破綻に導きます。「勝ち組」「負け組」理論はほんの一にぎりの人の勝利のために圧倒的多数の人々の不幸を招くものです。

【竹中平蔵著「構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌」(2006年12月日本経済新聞出版)】

 序章 改革の日々が始まった
 2001年4月26日、総理官邸

 それはまるで、日本最大のお祭りのようだった。テレビで何度も見た光景ではあるが、実際にその場に立つと、子供のときに胸をときめかしたお祭りのような華やかな喧騒と、興奮に溢れていた。第一次小泉内閣の組閣である。
 官邸の前庭には報道各社が陣取り、玄関の車寄せで人の動きがあるたびに、ものすごい数のフラッシュがたかれる。その閃光で目がくらむ中、私自身どのような顔をしていいのか--つまり少しはにこやかにすべきなのかそれとも神妙な面持ちがよいのか、よくわからないままに総理官邸へ入っていった。これがまさに小泉内閣5年5か月の始まりであった。そしてその後展開されるすさまじい構造改革への号砲、抵抗勢力との戦闘開始の瞬間だった。
 その数日前、内々に小泉総理(正確には首班指名の前であるから総理内定者ということになる)から、組閣の行われる26日の午後3時頃、ホテルオークラの近くにある総理の知人のオフィスで待機しているように言われていた。バブル崩壊後の疲弊した社会状況の中で、日本国民は小泉純一郎という異色のリーダーを待望した。社会全体が、小泉内閣の発足に沸いていたのである。
 通常の政治状況なら自民党の総裁つまりは日本国の総理大臣にはならないような強いリーダーが、いままさに誕生しようとしていた。国民の期待はとてつもなく大きいものがあったが、私もまた、小泉総理という奇跡の総理が誕生することを国民の一人として素直に喜んでいた。その総理から、直後「これからすさまじい戦いになる。大臣として内閣に入り一緒に戦ってくれ」と言われていたのだ。
              (中略)
 その間小泉内閣は、不良債権の処理を進め、失われた10年といわれた経済停滞を終焉させるべく全力で取り組んだ。また、反対する勢力と戦いながら、郵政民営化や道路公団民営化といった大制度改革に挑んだ。明確な総理主導で、官僚主体の政策プロセスを変えながら、様々な構造改革を進めたのである。政治的にもこの間、2度の衆院選挙と2度の参院選挙があった。また「郵政解散」という歴史的な出来事も経験することになったが、いずれの選挙でも小泉内閣は国民の信任を得続けた。内閣支持率は、この間平均50%(朝日新聞)を維持した。これは--中曽根内閣などを上回り細川内閣に次ぐものであるが、細川内閣が8カ月の短期政権であったことを考えると、実質的に支持率の最も高い内閣となった。

 悲しいかな人は己れを冷静に見つめることはできないし、自己の成功物語は強調しても、失敗は認めたくありません。最近テレビで見る竹中平蔵氏はその典型だと思います。「構造改革」の「功」と「罪」は横に置いて、ともかく新政権が3党合意のとおり米国型の市場原理至上主義政策からEU型社会民主主義政策に大転換することを祈るとともに、国民の一人としてその大転換の実現に関わっていきたいと思います。

【国会方針決定 民主「首脳会議」を新設 代表・幹事長ら新5役参加】
                  (9月13日 日本経済新聞 より)

 民主党は12日、新政権発足後の国会運営の最高意思決定機関として、鳩山由紀夫代表や小沢一郎次期幹事長ら「新5役」で構成する「党首脳会議」(仮称)を新設する方針を固めた。党政調会長が兼務する国家戦略局担当相が5役として首脳会議メンバーに入ることで政府と与党の一元化を目指す狙いがあるが、法案処理などを通じて党側の意向が強まる可能性もある。
 民主党は現在、鳩山代表と小沢、菅直人、輿石東3氏が務める代表代行と岡田克也幹事長の5人による「三役懇談会」が党運営の事実上の最高決定機関となっている。新たな党首脳会議は、政府側は鳩山氏と国家戦略局担当相に内定している菅氏、党側は小沢氏、輿石参院議員会長と国会対策委員長が参加する。外相に内定している岡田氏はメンバーから外れることになる。
 16日にも発足する鳩山新政権は、政策決定の「内閣一元化」を掲げ、官房長官は国会や党との調整役となる。5役による「首脳会議」は政策実行に必要な国会での法案処理の優先度をつけたり、成立に向けた対応を担うとみられる。国会対応で主導権を握る党側の意向が政策決定にも強く反映される可能性もある。

【私のコメント】

 岡田克也氏がはずれ小沢一郎氏の存在が大きくなることは気がかりです。鳩山由紀夫氏の「友愛」が小沢チルドレンをたばねる小沢一郎氏の数の「剛腕」にねじふせられなければよいのですが・・・

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