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2009年5月 4日 (月)

三橋貴明著 本当はヤバくない日本経済

                 (2009年4月25日 幻冬舎

〔著者紹介〕三橋貴明 1994年、東京都立大学(現・首都大学東京)経済学部卒。外資系IT企業をはじめNEC、日本IBMなどに勤務後、2004年中小企業診断士の国家資格を取得。企業の財務分析で培った解析力をマクロ経済に応用し、経済指標など豊富なデータをもとに国家経済を多面的に分析する「国家モデル論」が注目される。著書に『本当はヤバイ!韓国経済』『本当にヤバイ!中国経済』『ドル崩壊!』(以上、彩図社)、『崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)など。

【著書についての全般的感想】

 題名からどうせ日本経済団体連合会「希望の国、日本」(07年1月)、安倍晋三「美しい国へ」(06年7月)、麻生太郎「とてつもない日本」(07年6月)の類の単細胞思考の日本絶賛論の本だろうと思って読みました。そういう面もありましたが、著者はデータをもとに、多くの日本人がマスコミによって植えつけられ常識化していたことが事実と異なるのではないかという疑問をもたせてくれました。

【今までの常識の変更を迫る】

 この著書で今までの常識の変更を迫られた点は次のことです。

1.日本の輸出依存度は言われるほど高くない。
 輸出依存度=製品の輸出額÷GDP(国内総生産)
 7カ国の比較
  ドイツ(40.0%)、韓国(38.3%)、中国(37.4%)、
  ロシア(27.3%)、イギリス(15.9%)、日本(15.5%)、
  アメリカ(8.4%)

2.日本は世界で2番目に大きい内需を持つ経済大国である。
 07年 日中の名目GDP構成比率
  日本 個人消費56.6%、純輸出18.1%、固定資本形成23.2%
  中国 個人消費35.3%、純輸出13.7%、固定資本形成40.2%
日本は輸出が減っても、内需はそれほど縮小しない(外需依存国ではないため)。
日本は輸出と設備投資の落ち込みを内需が下支えしている。個人消費がそこそこ堅調だったからこそGDPの落ち込みがこの程度で済んだ。

3.実質実効為替レート(各国の物価変動も加えて算出)で見ると円高とは言えない。
 ドル円の適正為替レートは1ドル80円台前半と考えられている。

4.日本の輸出の主役は耐久消費財(自動車・家電など)ではなく工業原料や資本財である。
 消費財 一般消費者が購入。日本の輸出総額の18%程度(08年)を占めているに過ぎない。
 資本財 企業が消費財を生産するために購入。機械や装置などの工場設備、精密部品などの最終消費財の材料となる財。
 ・資本財は通貨高(円高)に強い。
 ・資本財の競争力の根源は価格ではなく品質に依存している。価格の安さに魅かれて品質の悪い資本財を購入してしまうと、自分の企業が製造する製品の品質が落ちてしまい競争力に多大なるダメージが生じてしまう。
 ・外国の消費財企業が一度日本の資本財メーカーからの購入を決定すると余程のことが無い限り同じメーカーからの購入を継続するのが一般的。

5.日本や韓国の輸出企業を苦しめているのは為替レートの上下ではなく、需要の縮小である。主要輸出品が耐久消費財ではなく資本財であるのも日本の輸出を減少させる一因となった。
 韓国や中国などの耐久消費財輸出国の製造プロセスは、①資本財の輸入、②加工、③耐久消費財の輸出、という流れになっている。そのため、世界的な需要激減を受け、耐久消費財輸出国はまず日本からの資本財輸入をストップしたのである。

6.日銀が円高対策の為替介入を行うと介入金額分だけ日本政府の債務が増加する。為替介入の結果、外貨準備が積み上がると、その多くは米国債で運用される。米国債の購入とはアメリカ政府への融資そのものである。

7.政府が借金して支出を増やすのであれば、為替介入ではなく、日本国内の景気対策に費やすべきである。政府が早急に実施しなければならないのは雇用対策である。

8.アメリカは常に海外から資金が流れ込むしくみの維持と努力をしてきた。ついに行き着くところまで行き着いたのが、住宅ローンなどの債権を証券化し金融商品として海外へ販売する、すなわちアメリカ国民の借金の輸出だった。

9.アメリカ政府が米国債をこれまで以上に乱発しようとしている。
 米国債が無制限に発行され信用や価格が下落すると、ドルの信用が揺らぐ。逆にドルが必要以上に供給され価格が大きく下落すると今度はドル建てで売買と利回りが支払われる米国債の信用も砂上の楼閣のごとく崩れ落ちる。そして、今、アメリカは米国債をこれまで以上に発行する必要があり、実際に発行しようとしている(アメリカ政府によるドル紙幣印刷~プリンティング・マネー~によって、アメリカは自国の経済危機からの脱出をもくろんでいる)。

【日本の強み】

 著者は日本の強みを次のとおり、列挙しています。

1.内需が大きく、外需依存が小さい。
2.円高による国民や企業の購買力向上。
3.GDPあたりエネルギー効率が世界一
4.治安が維持され、犯罪件数も減少中
 ~世界で最も安全な国で犯罪件数が減少している現実~
5.①企業の技術力が高く、裾野も広い。
  ②国民の革新性が世界一
  ③文化的・技術的なオリジナリティが高い。
6.①家計の金融資産(純資産)が大きい。
  ②世界最大の対外純債権国

【著者に賛同できない点】

 著者は、日本で犯罪件数が減っているのに外国人犯罪、特に来日した中国人と韓国人それにブラジル人による犯罪が高止まりしたままであることを指摘しています。そして、中国人や韓国人が日本を世界に悪い影響を与えている国と評価していることと絡めて次のように述べています。

 「マスメディアや政治家が、どれほど口先で日中友好やら日韓友好やらを唱えたところで、現実は変えられない。これらの事実をどう受け止め、どう対処するべきなのか。
 中韓両国が日本をどう評価するのかは、もちろんあちらの勝手である。だが、こと日本国内における犯罪件数の問題となると、話は全く別だ。我々日本人の日常生活の安全に直結する以上、絶対に看過することはできないだろう。
 しかも今後、少子高齢化がさらに進展し、日本が移民政策について最終的判断を下す時期が来る可能性がある。その際には、犯罪件数が多い国からの移民をどう受け入れるのか、それとも件数の少ない国からの移民についてのみ、解禁するのか。
 マスメディアが日本についてネガティブなことを語る際は、『日本人は』と主語をやたらと大きくする。その割に、こと外国人犯罪の問題となると『中国人は』『韓国人は』とひとくくりにすることに対し、差別だの何だの屁理屈をこねるから困ったものだ。」

 データを駆使した著者の力作もこのあたりになると冒頭で揚げた単細胞的思考の本と変わらなくなり、値打ちを一挙に下げてしまった感があります。著者はまだ若いのですから国粋主義者としてではなく幅広い国際感覚をもった研究者として大成することを願ってやみません。

 

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コメント

初めてコメントします。
この本は私も読みました。
確かに後半の部分にご指摘のような箇所もありますが、この本の本質は各国のモデル論とそこから導き出す日本の将来のモデルです。
正直日本は輸入によって成り立っていると思っていましたので、目から鱗でした。

投稿: akky | 2009年5月 4日 (月) 19時59分

この人の話は全部鵜呑みにしない方がいいですよ。ごく基礎的なマクロ経済論(法学部卒で、趣味で経済論を齧った私ですらそれぐらいは知ってるし、すでにそれらの間違いは近年―20年ぐらい前から―修正されている)しか知らないようですから。

【今までの常識の変更を迫る】

 この著書で今までの常識の変更を迫られた点は次のことです。

1.日本の輸出依存度は言われるほど高くない。
 輸出依存度=製品の輸出額÷GDP(国内総生産)

 ドイツ(40.0%)、韓国(38.3%)、中国(37.4%)、
  ロシア(27.3%)、イギリス(15.9%)、日本(15.5%)、
  アメリカ(8.4%)

この数字自体は正しいですが、産業構造自体の中身を全く無視してます。数式を出すとややこしいんで、話を超単純にすると、150万円分の部品を輸入し200万円の製品にして輸出している国(韓国など)と、50万円の原材料を輸入し300万円の製品を輸出している国(日本など)は、数字だけで比較するのはナンセンスです。この場合に輸出が失われると、前者は50万円の内需を失いますが、後者は250万円の内需を失います。他にも
②国民の革新性が世界一
③文化的・技術的なオリジナリティが高い。

②…見方を変えれば、あるいは分野を変えればまったく反対の見方が出来る
③…短所にもなる。
(どちらも、外国人労働者の裁判をされているなら、お分かりになると思いますが)

など、ところどころツッコミたくなるものがあります。


投稿: 通りすがり | 2009年5月25日 (月) 20時54分

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