労働裁判に登場しない障害のある労働者
【おわび】
ブログを1週間に1度更新するとお約束していましたが、長い間お休みしてすみませんでした。このところオリジナル記事を書く時間がなかなかとれません。
【労働裁判に登場する障害者と登場しない障害者】
(1) 労働裁判に登場する障害者のほとんどは正規雇用の労働者です。その中でも解雇無効や休職後の復職拒絶による退職扱いを争って労働者としての地位の確認を求める事案に登場するのは中途障害の労働者ばかりです。障害又は疾病によって職務遂行能力の低下を理由として解雇されたり、復職を拒絶されるからです。
(2) それでは、採用時にすでに障害のある労働者は安定した雇用環境の下で働いているのでしょうか。結論は逆で、むしろきわめて不安定で劣悪な雇用形態のもとで働かされています。
【障害者の雇用は5ヵ月連続で増加したが、法的救済を求める障害者増えず】
(1) 厚生労働省は09年3月31日、同年2月中に解雇された障害者は全国で前月比で82人増の計452人になった旨、集計結果を発表しました。景気悪化の影響で、同省は08年10月から障害者を対象とした毎月の解雇数を集計していますが、5ヵ月連続の前月比増となっています。また、08年度に解雇された障害者は累計で2233人で、07年度の計1523人より710人増。07年度の平均(約127人)からみると09年2月は約3.5倍です。
(2) 解雇の急増にもかかわらず障害者から弁護士への労働相談はほとんど増えていません。したがって、労働裁判を求める障害者もほとんど増えていません。その理由は障害者の雇用形態は有期契約(3ヵ月、6ヵ月、1年など)、アルバイト、パートの不安定な雇用形態(非正規雇用)が多いからです。不況を理由とする派遣切りや正規労働者の解雇を目のあたりにみて、多くの障害者は自身が非正規雇用のため労働裁判をあきらめているのが実情です。これについては日本政府の責任が大きいと私は思います。
【厚生労働省が率先して障害者の非正規雇用化を推進】
厚生労働省は最近のように一般労働者に非正規雇用が増大する前から障害者雇用は非正規(有期)雇用でも障害者雇用促進法上の常用労働者にカウントしてよいとする運用を行ってきました。このため障害者の多くは契約社員か嘱託社員という不安定な低賃金労働で固定化されています。
労働省職業安定局監修、日本障害者雇用促進協会編「障害者雇用ガイドブック」(平成11年版305頁)は常用労働者につき次のように記述しています。
[常用労働者]
雇用義務の算定の基礎となるのは、『常時雇用される労働者』に限定されますが、『常時雇用される労働者』とは、雇用契約の形式のいかんを問わず、事実上期間の定めなく雇用されているすべての労働者をいい、実体的に判断されるべきものです。
具体的には、次のような労働者をいいます。
① 期間の定めなく雇用される労働者。
② 一定の期間(例えば、1ヵ月、6ヵ月等)を定めて雇用される労働者であって、その雇用期間が反復更新され、事実上期間の定めのない労働者と同様の実態にあると認められる労働者。すなわち、過去1年を越える期間について引き続き雇用されている労働者又は雇い入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者。
③ 日々雇用される労働者であって、雇用契約が日々更新されて事実上期間の定めのない労働者と同様の実態にあると認められる労働者。すなわち、②の場合と同様に、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている労働者又は雇入れのときから1年を超えて雇用されると見込まれる労働者。
これは、例えば日雇いであっても「1年を超えて雇用されると見込まれる労働者」であれば企業が1.8%の雇用義務を負う障害者の「常時雇用される労働者」にカウントするという取り扱いです。法の「常時雇用される労働者」というのは正規雇用すなわち①を指していることは明らかです。厚生労働省(労働省)自ら障害者を不利な条件で固定化させるもので、国による障害者差別と言えます。
厚生労働省は本年2月10日日本経団連に「障害者の解雇数が増加傾向にあるなど、今後厳しい状況になることが懸念される」として雇用の維持や新たな雇い入れの促進、障害者を雇用する事業主や福祉施設での仕事の確保などを申し入れました。しかし、日本経団連にこれを受け入れる姿勢はありません。障害者の解雇の増加は解雇しやすい雇用形態を容認してきた厚生労働省の施策の結果です。
世界不況を理由とする08年秋以降の派遣切り・期間工切りにあわてた厚生労働省は、障害のない労働者についてこれまでとは逆に非正規雇用の正規化に向けて旗を振るようになりました。障害者についても非正規雇用に固定する施策を直ちに改めるべきでだと思います。
| 固定リンク



コメント