障害者にも解雇の嵐 実習訓練さえ中止
(2月15日 朝日新聞大阪本社版「時時刻刻」 より)
【私の意見】
<私も取材を受けました>
朝日新聞の2月15日の大阪本社版の時時刻刻の欄に「障害者にも解雇の嵐」という見出しで、かなりの紙面を割いた記事が掲載されました。私も取材を受け、私のコメントが紹介されています。
<常用労働者で有期契約>
日本では民間企業が障害者を雇用しなければならない割合(法定雇用率)を1.8%と定めています。法律はこの法定雇用率にカウントできる障害をもった労働者は「常用労働者」でなければならないとしています。「常用労働者」を素直に解釈すれば法律は正規労働者としての雇用を求めていることが明らかですが、厚生労働省は一般労働市場で非正規労働がほとんどない時代から、障害者雇用は日々の契約(1日契約)でも1か月契約でもよい、とにかく1年以上雇用することを前提としてさえいればすべて「常用労働者」にカウントするという、企業にきわめてゆるい、やさしい指針を出しました。ですから障害をもって働く人の多くは早くから非正規雇用(有期雇用)です。
<万国の女性労働者立ち上がれ!>
政府は昨年12月法律を改正し障害者をパート(短時間労働)で雇用した場合は0.5人分の雇用として法定雇用率にカウントするとしました。パートはこれまで主として女性が主婦としての生活との両立のなかで選択した雇用形態でした。これ自体とても低賃金で日本の経済界は女性労働者を搾取し続けていると私は思っています。いつか女性労働者がゼネストをしてくれれば、日本の労使関係はずいぶん変わるのになと時々思います。万国の女性労働者立ち上がれ!そこまで発展しないのは男子(夫)の労働の補完として巧妙に位置づけられているからだろうと思います。
<障害をもって働けるだけマシ>
さて障害者雇用に話をもどしますが、障害をもった労働者のパート労働は配偶者の労働補完ではありません。国は障害のある労働者が自らの稼ぎで食べていける制度を確立するべきです。ところが今日本政府の進めようとする障害者施策は障害をもった労働者を低収入に固定化するものです。“福祉から労働へ”という考え方に異論はありませんが、これを推進する政府や地方自治体の側に“障害をもって働けるだけマシ”という障害のある人の尊厳を否定する考え方が基底にあるように思えてなりません。
朝日の記事は一寸長いですが全文紹介します。
【実習訓練さえ中止】
障害者の雇用が世界的な不況に揺らいでいる。国の調査では昨年末から解雇者が倍増しているが、数字に表れない非正規雇用の「雇い止め」などを含めると、実態ははるかに深刻、との指摘もある。賃金カットや実習受け入れ中止も相次ぐ現場で、社会的自立は担保されるのか。なりふり構わぬ障害者リストラの拡大に、明日への不安が募る。(高島靖賢、山内深沙子、滝川卓史)
「もう仕事がない。申し訳ないが、今月で辞めて欲しい」。岡山県内の電子部品工場。1月下旬、ここで働いていた知的障害者の男性(38)が事務所に呼ばれ、解雇を言い渡された。
社員20人ほどの小さな工場で組み立て作業を担当していた。状況が一変したのは昨年11月だ。受注激減で勤務時間が半分になり、月10万円あった手取り収入は半分以下に落ち込んだ。12月には1日3時間勤務に。年明けから仕事は工場の掃除だけになった。
会社には10年以上勤めた。職場の上下関係がすぐのみ込めないなどコミュニケーションに課題はあったが、覚えた仕事をコツコツとこなしてきた。同僚も障害を理解して優しく接してくれた。月給と障害基礎年金をあわせ、アパートで1人暮らしもできた。
以前働いていた会社でも解雇された経験がある。失業が1年以上続き、福祉施設の職員がつてを頼りにやっと見つけてくれたのが、この工場だった。
人生2度目のリストラ。「時間があるから」と本人が申し出て、近所にある就労支援のための作業所で、割りばしの袋詰めなどの軽作業を無償で手伝い始めた。貯金は残り約70万円。当面は年金と失業給付でやりくりするが、給付が切れるまでに職が見つかる保証はない。「家族には頼りたくない。また働ける日は来るのかな」。つい不安を口にした。
全国206か所にある「障害者就業・生活支援センター」には、解雇や賃金カット、出勤日の激減など苦境に立たされた障害者からの相談が絶えない。
「1月から時給を748円から600円に下げると言われた」。昨年末、大阪府内のセンターに知的障害のある20代男性から、こんな相談が寄せられた。約2年前からリサイクル工場で働いていた。
男性の時給額は府の最低賃金。会社側は経営悪化を受け、障害者の最低賃金を減額する特例許可を労基署に申請していた。センターから事情を聴かれると、「彼を雇い続けるための苦渋の決断。給料を下げるしか方法がなかった」と説明したという。
和歌山県内のセンターには昨年末、就労支援団体から「実習生の受け入れを断られた」との相談があった。障害者とジョブコーチが企業で実習する障害者自立支援法の制度を活用し、メーカーの下請け工場で数人の障害者が実習訓練を受けていた。受け入れ中止の理由は、受注の落ち込み。センターの担当者は「就労への大切なステップなのに・・・」と肩を落とす。
滋賀県のある養護学校は昨年10月以降、就職活動での体験自習を受け入れていた複数のメーカーから、相次いで受け入れを断られた。今春の就職希望者のうち半数は、まだ就職先が決まっていない。
【氷山の一角にすぎない】
「働く障害者の弁護団」代表の清水建夫弁護士の話 統計に表れる障害者の解雇数は「氷山の一角にすぎない」。障害者の場合、パートや契約社員など非正規雇用で働く人が圧倒的に多く、契約期間満了による「雇い止め」や、強引に自己都合退職に追い込まれた事例を含めると、状況はより深刻だ。不況が続けば、人件費が高い中高年の障害者をリストラの標的にする恐れが強まるだろう。
【弱い歯止め 届かぬ理念 就業規則 リストラに利用】
従業員数56人以上の企業は、1.8%(法定雇用率)以上の障害者を雇うことが義務付けられている。だが、08年の障害者雇用率は1.59%。過去最高を更新したとはいえ、達成企業の割合は44.9%と半数以下にとどまる。
法定雇用率を達成できない企業には、1人につき月5万円の納付が課されるが、低額すぎて解雇や退職勧奨の歯止めにならない、との批判もある。さらに、現時点で納付義務があるのは従業員数301人以上の企業だけで、相当数の中小企業は対象から外れる。
もう一つ、社会的弱者の解雇のハードルを低くしてしまう課題として挙げられるのが、企業の就業規則だ。
今なお、多くの会社には「精神または身体の障害により業務に耐えられないと認められたとき」は社員を解雇できる、とする就業規則が残る。
障害者の人権問題に取り組む弁護士有志でつくる「はたらく障害者の弁護団」によると、業績が悪化するとこの規定を持ち出し、露骨な解雇をしようとする企業があるという。
本来は解雇を決める前に、障害者が働き続けられるように職場環境を整える「合理的配慮」が企業側に欠かせない。視覚障害者のために音声変換ソフトのパソコンを導入するのは、その一例だ。ただ、こうした理念が十分浸透しているとは言い難い。
【昨年11、12月 急に悪化】
厚生労働省によると、障害者の雇用状況は急速に悪化している。全国のハローワークに届け出があった昨年10月の障害者の解雇者数は125人で、07年度の月平均(126.9人)と同水準だったが、11月には234人に急増。12月も265人に上った。
資料が残る00年度以降の解雇者数を見ると、01年度の4017人から減少傾向が続き、07年度は1523人だった。だが、08年度は4月から12月までの合計がすでに1411人に達し、前年度を大きく上回るペースだ。
障害者を解雇した企業はハローワークに届け出る義務がある。ただ、制度を知らずに無届けで解雇する企業も相当数に上るとみられる。
同省は「障害者は一度離職すると再就職が非常に困難であり、解雇者の増加は深刻な問題」(障害者雇用対策課)として10日、日本経団連に障害者雇用の確保などを要請した。ハローワークの障害者専門支援員を全国で70人増員したほか、障害者を雇いいれた中小企業への助成金を昨年12月から段階的に拡充するなどの対策を講じているが、効果は不透明だ。
企業からの下請け作業が運営の柱だった障害者施設を取り巻く状況も厳しい。
全国社会就労センター協議会は1月から2月にかけて、加盟1543の施設を対象に、景気後退による受注減少などの影響を緊急調査。その結果、回答があった632施設のうち416施設が「目立った影響があった」と答えた。
職業別では、自動車関連が144で最多。次いでリサイクル関連51、段ボール関連20、印刷関連19の順だった。同協議会は今後、国や地方自治体に障害者の積極採用を含む雇用対策を求めていく方針だ。
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