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2008年8月 4日 (月)

労働の規制改革と雇用破壊・格差の拡大

 「季刊 福祉労働」(現代書館 120号:9月25日刊)に発表予定の論文(要旨)をご紹介します。この120号では小泉「構造改革」による「小さな政府」方針で介護・医療・雇用・生活・人間関係の破壊が進んでいることを各立場から執筆されます。私はそのうちの雇用を担当しました。
 私の7月後半はこれを含めて2つの論文を雑誌に寄稿するため、時間をとられブログをとても長い間お休みさせていただきました。病気になったのでは?とご心配して下さった方もおられるかもしれません。
 でもこの論文を送ることで私の懸案の仕事はほとんど終わりました。訴訟事件もほとんど解決しました。早々と御用納めの気分で多少ルンルンです。
 年末までにまだ5か月ありますので、この間“さあ、何をしようかな?”と久しぶりに心のゆとりが出てきました。
 ブログも今後はもう少し小まめに発信するように心掛けますので、どうか愛想をつかさずに引き続きごひいきのほどをお願い申し上げます。

【労働の規制「改革」と雇用破壊・格差の拡大(要旨)】  

1.非正規社員とりわけ派遣労働者の増大
 (1) 2007年10月1日現在における非正規社員(職員)の割合は35.6%となり、3分の1を超えた。
(2)正規社員と非正規社員の賃金格差は明らかである。
(3) 事業所が非正規社員の割合を高めている理由は、労働コスト削減のためが最も多く、約8割を占めている。一方労働者側のニーズからすると正規社員以外の者のうち8割以上の者が今後希望する就業形態として正規社員を挙げている。
(4) 非正規社員の中でも派遣労働者の増加が著しく、2006年度は2005年度と比べて26.1%増加し、派遣労働者数が約321万人となった。
(5) 2007年の短期派遣労働者のうち、1日単位の雇用契約で働く日雇派遣労働者が84.0%を占めている。短期派遣労働者の1か月当たりの平均就労日数は14日間であり、平均月収は13.3万円となっている。本来なら日本の社会を力強く牽引してくれている筈の青年期の人達が明日をも知れぬ生活に追い込まれているのは、この国にとって由々しき事態である。

2.違法派遣、偽装請負、偽装管理者
小泉・安倍両内閣の6年5カ月は、大企業と富裕層を手厚く保護する一方、労働者、老人、中小企業、障害者等を徹底的に切り捨てた時代であった。この時代に大企業は政府の甘い姿勢に増長し、平然と違法行為を重ねた。
(1)違法派遣
 厚生労働省東京労働局は労働者派遣業大手のグッドウィルに2008年1月、またフルキャストに2007年8月、労働者派遣事業停止命令と改善命令を発令した。
(2)偽装請負
① 御手洗冨士夫日本経団連会長が代表取締役会長であるキャノンは、宇都宮工場や子会社の大分キャノンなどでたびたび労働局の改善指導を受けていたが改善しなかった。
② 松下電器産業の子会社「松下プラズマディスプレイ」の工場で違法な偽装請負の状態で働かされた原告が雇用の確認などを求めた裁判で、大阪高裁は2008年4月、「当初から両者間には黙示の労働契約が成立している」として、同社と労働契約上の地位があることの確認と、月24万円の賃金の支払いを同社に命じた。
(3)偽装管理者
日本マクドナルドのチェーン店の店長につき、管理監督者に当たらないとした。同裁判所は、過去2年分の不払い残業代など約755万円の支払いを命じた。

3.日雇い派遣の禁止
 2007年9月、安倍晋三が突然政権を放り出し、福田康夫が首相に就任した。福田は生活者・消費者を重視することを表明し、雇用・労働の規制緩和の流れにも変化が生じている。
(1) 与党プロジェクトチーム 与党のプロジェクトチームは、2008年7月、「労働者派遣制度の見直しに関する提言」をまとめ、日雇い派遣の原則禁止を盛り込んだ。
(2) 八代尚宏(国際基督教大学教授)はあいかわらず「日雇い派遣の禁止は労働者のためと言われているが、疑わしい。本人が自分の意思で行っている働き方について選択肢を狭めることが、労働者のためなのか。」と述べている(同新聞)。
(3)  民主党は、雇用契約期間が2か月以下の労働者派遣を禁止する改正案を準備している。

4.企業と人材
 (1) ソニー創業者盛田昭夫は「ソニーに関係のあるすべての人に幸福になってもらうことが私の念願であるが、とりわけ、社員の幸福は、私の最大関心事である。なんといっても社員は、一度しかない人生のいちばん輝かしい時期をソニーに委ねる人たちであるから、絶対に幸福になってもらいたい。」と述べていた。盛田はまた、「われわれ日本の経営者は、会社を運命共同体だと思っている。だから、いったん人を雇えば、たとえ利益が減っても経営者の責任において雇い続けようとする。経営者も社員も一体となって、不景気を乗り切ろうと努力する。これが日本の精神なのだ」と述べていた。
(2)日本型雇用の再評価
 安い労働力を求めて工場を海外に移していた輸出型企業も良質なモノづくりをめざし、国内工場の見直しを始めている。小泉内閣は労働者をコストとみなし、内閣自ら企業にリストラを奨励したが、このような内閣は自民党内閣の中でもきわめて異例、異常な内閣であった。米国サブプライムローンに端を発する米国の金融危機は、小泉純一郎や竹中平蔵が模範とした米国の経済システムがわが国以上に脆弱であることを白日のものにした。企業が良質の事業活動を展開するためには、盛田同様、社員の人生を大切にすることが不可欠であり、このことは国家に於いても同じであろう。

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