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2008年8月17日 (日)

うつ病を克服する 倉嶋 厚さんに聞く

                   (8月14日 日本経済新聞 より)

【嵐の後は必ず小春日和 完全主義やめ気楽に】

 くらしま・あつし 気象学者、エッセイスト。1924年長野市生まれ。理学博士。49年気象庁に入り、札幌気象台予報課長、鹿児島気象台長などを歴任。84年定年退職後、NHK解説委員として「ニュースセンター9時」などで気象解説。96年NHK放送文化賞受賞、著書は「花の季節ノート」など多数。

【人生は必ず展開する。死んではいけない】

 1980-90年代、NHKニュース番組などで気象キャスターを務め、含蓄のある解説でお茶の間の人気をさらった倉嶋厚さん。97年に愛妻の泰子さんをがんで失って、重いうつ病にかかり、自殺未遂と長期入院。しかし見事に社会復帰、その後はエッセイストとして原稿執筆や講演に忙しい毎日を送っている。
 うつ病からの回復の経緯は2002年、「やまない雨はない」という著書に。これまでに文庫版を含めて16万部余りを発行、うつ病を扱った本としては異例のベストセラーになった。
 屋上から飛び降りようとした東京・新宿の自宅と仕事場があるマンションで語ってくれた。「自殺者は年間3万人以上。未遂者を入れれば10倍の約30万人。その家族など関係者を含めるとさらに10倍の約300万人。10年続くと約3000万人という数字になります。事実、私の兄も自殺、同僚が3人自殺している。うつ病は自殺の主因といわれるが、国民の多くが身近にうつ病は自殺を経験している。だから私の赤裸々な告白が関心を呼んだのでしょう」
 「うつ病になると、オール・オア・ナッシングの気分になり、離婚してしまえ、職場を辞めてしまえ、死んでしまえという衝動に駆られる。でもとりあえず1分、1時間、1日決断を先延ばしにしてほしい。大事なことは決定しないというのが私の教訓。妻の死がショックでうつ病になり、死んで楽になりたいと思った。マンションの屋上に10日間通い、ついに飛び降りたつもりが元の場所に着地。亡くなった妻が止めてくれたのかもしれない」
 「それから11年。その後の人生を考えるとものすごく展開している。どんどん仕事をしてきたし、全国各地に出かけていろんな人々に出会えた。人生マイナスばかりではない。死んではいけない。西行の歌に『命なりけり』という言葉が出てくる。『命あればこそ』という意味。生きていて良かったと思います」

【人生70点主義。苦しかったら、周囲にSOSを出すことも必要】

 「うつ病になる人にはまじめで完全主義の人が多い。でも完全主義はやめた方がいい。何でも自分だけで抱え込まないで、肩の力を抜いてマイペースでやる。満点ではなく、毎日70点で落第しなければいい。NHKに出演し始めたころ悩んだが、こう考えて楽になりました」
 「その後もNHKを辞めようと考えたことは何度もある。ある夜、NHKの廊下で俳優の故・大坂志郎さんとすれ違った。振り返ると、大坂さんも振り返って声を掛けてくれた。『いつも楽しく拝見しています。役者だから分かりますが、短い時間にあれだけなさるのは大変な苦労や工夫があるのでしょう。これからもいい仕事を続けて下さい』と。私には大きな励ましになりました」
 「道元の教えに『愛語能く廻大の力あることを学すべきなり』という言葉がある。人に慈愛の心で接し、(思いやりである)顧愛の言葉を掛けるていると怨敵さえ降伏するということ。大坂さんは私に愛語を掛けてくれた。愛語に満ちた職場、地域、国をつくれればいいですね」
 「苦しいときは周囲にSOSを出すことも必要。妻が亡くなって間もなく、早朝、資源ごみを出しに行って顔見知りの女性に出会った。目が合うと私は近寄って『妻が死にました。困っているので誰か家事をしてくれる人はいないでしょうか』と話した」
 その女性の紹介で、現在も身の回りの世話を受けている水口きよみさんが来た。長期入院した時も倉嶋さんを終始面倒見てくれたお手伝いさんだ。「あの時、ごみ出しに行っていなければ、今の私はない。周囲の人もSOSに応えて具体的に助けてあげることが必要です」

【自然に対する畏敬の念が失われている。自他を大事にする心も】

 10人兄弟の9番目だった倉嶋さんに父親が残した教訓がある。「心配事は縦に並べろ」
 「15、6歳の時もひどいうつ病になった。不安でいたたまれなかった私に、父は大きな紙を持ってきて一本線を引き、『心配事を近い順から並べてごらん』と言った。書き出してみると、父は『こうやって縦に並べてみると今のお前の心配事は一つだ。一つ一つやっていけばいいんだ』と諭しました。人生の長期予報はあたりません。『あまり先のことは心配せずに、今あることを一つずつ一生懸命やっていこう』と気が楽になりました」
 倉嶋さんの優れた気象解説は、日々欠かさない克明な自然観察のたまもの。「最近、人々の心に自然を恐れ敬う気持ち、畏敬の念がなくなったのではないか。例えば満点の星を見ても感激することがなくなった。以前、NHKのスタッフと群馬県の赤城山に取材に行ったときのこと。夜空を見るとものすごい星空だったのですが、若い人は『プラネタリウムみたいだ』と言って平然としていた。畏敬の念がなくなったことが世相に反映していると思う。マスコミは人々に畏敬の念を取り戻させる優れた番組や記事を提供してほしいと願います」
 「月遅れの盆を前に、芭蕉の『数ならぬ身とな思ひそ玉祭』という俳句を思い出す。若き日の愛人とされる寿貞の墓前で詠んだ句ですが、『ものの数ではない身と思うな』という意味です。現在はみんなが自分や他人を粗末にしすぎている。簡単に人を殺したりする。自他を大切にする心が今こそ必要なのではないですか」
 倉嶋さんは小春日和という気象用語が大好きだ。「木枯らしが吹いて冬が来たと思うと、小春日和になる。激しい嵐にあっても必ず小春日和が来る。人生はこの繰り返し」 (編集委員 木戸純生)

【私の感想】Up63

 NHKの気象解説で私もよく倉嶋さんのユーモアがあふれて、人情味のある解説を聞きました。天気予報を聞くのが楽しみになるほど人をひきつける力がある方です。その倉嶋さんが重いうつ病にかかり、自殺しようとしたことは驚きでした。誰でもうつ病になりうるということを倉嶋さんのこのお話であらためて思いました。倉嶋さんに愛語を掛けた大坂志郎さん、心配事を縦に並べて書かせた倉嶋さんのお父さん。倉嶋さんはすばらしい人に守り育てられたのですね。今度は逆に倉嶋さんの言葉や、著書にいかに多くの人々の命が救われたことでしょう。

【株式会社アーバンコーポレーションの民事再生事件の監督委員に】

 私は8月13日に民事再生の申立をした株式会社アーバンコーポレーションの監督委員に東京地方裁判所より選任されました。負債総額2558億円でマスコミは今年最大の倒産と報じています。
 8月4日のブログで今年は早々の御用納めでルンルン気分ですと書きましたが、御用納めを返上し、今しばらく身も心も引き締めて職務に専念したいと思います。監督委員というのは言葉のとおり、民事再生の申立をした会社が、民事再生手続きや会社経営を公正・誠実に行っているか否かを監督する立場にあります。この事件についての具体的な言及は立場上差し控えますが、新聞記事のご紹介や手続きについての一般的な説明を折をみてさせていただきたいと思っています。

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コメント

清水先生
アーバンコーポレーションの監督委員のご就任
ご苦労様です。
巷間さまざまな取上げられ方をされている大型民事再生事件なんですね。

さて、今回は気象キャスター倉島厚さんのうつ病に関しての日経コラムが取り上げられました。
大坂士郎さんの愛語ですか、私もNHKニュース9のお天気キャスターの倉島さんからも同様な人柄のにじみ出るような温かみを受けたものでした。
たまたま倉島さんが郷里の高校の先輩というご縁で、9月12日に虎ノ門パストラルで開催の同窓会の講演会の講師を引受けていただきました。

倉島厚さんのお父様は、たしか私が育った昭和30年後半から昭和40年前半にかけて、長野市長を務められた倉島至さんだと思います。    M.S生

投稿: | 2008年8月20日 (水) 15時35分

清水先生
初めてブログを拝見させて頂きました。
以前、浜野ゴルフ倶楽部の件ではお世話になりましたが。我々会員としては非常に喜ばしい勝利でした。
私は不動産業界に属する物ですが、この度のアーバンコーポレーションの清水先生の監督委員の就任には驚きと希望を感じております。どの様な再建を目指してゆくのか拝見させていただきます。

投稿: 大輔 | 2008年8月21日 (木) 00時45分

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