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2008年5月18日 (日)

増える若者のうつ

    (NHK「きょうの健康」 6月12日放送(6月19日再放送))

【神庭重信 九州大学大学院教授】

神庭重信(かんば・しげのぶ) 経歴:1954年生まれ。80年慶應義塾大学医学部卒業。専門は精神医学、特に気分障害、精神科薬物療法、ストレス科学、行動遺伝学  九州大学病院(精神科・神経科) 

 「うつ病」は中高年に多い病気ですが、最近では若い年代の人にも増加しています。若者の場合は、起こりやすいタイプ、症状、薬物療法の効果、周りの人の対応方法など、典型的なうつ病とは異なる点が多くあります。

【若者のうつ 中高年に多い典型的なうつ病とは異なる特徴をもつ】

 最近若者にうつが増えています。“うつ”とは、うつ病を含むうつ状態全般を指します。うつ病の患者数は中高年が最も多いのですが、厚生労働省の調査によると、10歳代後半から30歳代前半の人のうつ病が、3年間で約1.5倍に増えているのです。また、日本の若者は諸外国の若者に比べ、うつ病になりやすい傾向があるともされています。
 若者のうつは、うつ病とまではいえない“うつ状態”であることが多く、中高年によくみられる典型的なうつ病とは、いろいろな点で異なります。例えば、中高年でうつ病を発症しやすいのは、「まじめ」「几帳面」「責任感が強い」といった傾向があり、非常に一生懸命仕事をする人です。自分の役割や社会の規範などを重視し、周囲の期待に応えようとすることで無理が生じてしまいます。
 これに対し、若い人でうつになりやすいのは、自己への愛着が強い人、“自分は何でもできる”という漠然とした自信を持っている人、社会的な規範への抵抗感をもつ人、周りの環境にうまく適応できない人などです。伸び伸び育ってきた若者が、社会の規範やビジネスの世界における成果主義、厳しい上下関係などに適応できず、うつ状態になることがあります。

【若者のうつの症状 倦怠感が長引きやすく周囲や環境を非難することが多い】

 中高年に多い典型的なうつ病では「憂うつ感」「意欲低下」「倦怠感」といった症状が現れますが、これは若者のうつでも共通しています。これらに加え、「睡眠障害、食欲低下、不安感、イライラ、焦燥感」といった症状もよく現れます。
 若者のうつに特徴的なのは、倦怠感が長引くことです。その結果、なかなか職場に復帰できず、無理をして戻ろうとすると「めまい、吐き気、頭痛」といった不快な症状が現れたりします。
 また、自分がうつ病になって会社に行けないのは“上司が悪いからだ”“仕事が合っていないからだ”というように、自分ではなく、他人や周囲の環境の責任にして非難する傾向があります。
 中高年の典型的なうつ病では、症状が現れてもうつ病だとは認めたがらず、“自分の頑張りが足りないからだ”と考えがちです。ところが若者のうつでは、みずから“うつ病である”と考えたがることが多いのが特徴です。治療中も、うつの症状が残っていることにこだわったりします。

【診断】

 うつ病の症状が、ほぼ毎日、一日中現れていて、それが2週間以上続く場合には、うつ病だと考える必要があります。
 若者のうつは、うつ病と同じような症状が現れる「双極性障害」や初期の「統合失調症」と見分けにくく、また、「パーソナリティー障害」、「発達障害」などが原因でうつ状態になっていることもあります。うつが疑われる症状が見られたら、きちんと精神科を受診し、早い段階から適切な対策を講じていくことが大切です。

【若者のうつの治療 抗うつ薬が効きにくい傾向があり、環境の改善が特に重要】

 うつ病の治療は通常、「休養」、抗うつ薬などによる「薬物療法」、考え方を変える認知療法などを含む「精神療法」が3本の柱となります。中高年の典型的なうつ病の場合、これらの治療によって、多くは3ヶ月~半年ほどでよくなっていきます。
 ところが、若者のうつでは、この3本柱の治療だけでは解決しないことが多いのが実情です。症状が重いときには3本柱の一般的な治療を行いますが、簡単に効果が現れないこともあります。
 特に薬物療法で使う抗うつ薬は、中高年のうつ病にはよく効きますが、若者のうつには効きにくく、症状が慢性化しがちです。さらに、若い人が抗うつ薬を服用した場合、服用開始から約2週間の間に、「気持ちが高ぶる、イライラする、死にたい気持ちが強まる」といった副作用が現れることがあるので注意が必要です。
 特に24歳以下の人では、抗うつ薬の服用初期に自殺したいという願望が強まる危険性が若干ながらあるため、使用については十分に検討される必要があります。薬物療法は、プラス面とマイナス面を考慮し、慎重に行われなければなりません。
 症状が軽くなってきたら、医師と一緒に、“どんな環境に置かれていて、どんなストレスがあるか”など、うつのきっかけとなっているストレスの原因を整理します。そのうえで、環境を変えたり、足りない能力を習得する手助けをしたりして、患者さんが環境に適応していくのを支援することが、若者のうつの重要な治療となります。

【周りの人の対応 典型的なうつ病と異なることを理解し、環境を整える努力が必要】

 若い人のうつは中高年に多い典型的なうつ病と異なるため、周りの人は特に次の点に注意します。
 若い人のうつは“怠けている”と誤解されがちですが、本人は非常に苦しんでいます。周りの人はその苦しさを理解し、休養と服薬を勧めるようにします。
 典型的なうつ病は、抗うつ薬を服用して休養していればよくなることが多いのですが、若者のうつでは薬が効きにくく、治療に長い時間がかかることも少なくないことを理解してください。
 周りの人は、医師との連携を深めて社会復帰のためのリハビリテーションを支え、さらには勤務先や学校とも協力しながら、患者さんの環境を整えることを考えるのも非常に大切です。
 また、本人を責めないようにします。患者さんを追い詰めて逃げ道を塞いでしまうような対応をすると、自傷行為に走ったりすることもあるため、避けなければなりません。なるべく本人のよいところをほめるように心がけ、前向きに社会復帰しようという気持ちをもたせることが大切です。

【私の意見】Up63

 日本の若者は世界でもとびぬけて危害を加えないやさしい“生きもの”です。私は時々若者の街と言われる渋谷を訪れることがあります。たくさんの若者がいますが、恐いと思わせるようなニイちゃんもネエちゃんもいません。みんな他人のことに無関心です。昔は“眼をつけた”と言ってすごむ若者が時々いましたし、若者同士の喧嘩も時々ありました。渋谷はほんとうに安全なまちです。もともと日本人は殺人の発生率は米国、英国、フランス、ドイツの5分の1ないし3分の1です。若者の殺人や強盗の発生率は他の世代よりも多いのが各国共通です。日本も昭和20年代はそうでしたが今では若者は大人世代と変わりがありません。それだけ日本の今の若者はとびぬけて安全です。
 私たちは青年期によくキレました。キレて友人やまわりの大人と口論になり時にはとっくみあいの喧嘩となりました。でも今の若者は職場で傷つくようなことがあるとキレる前に自分の中にとじこもる傾向があるように思います。
 働くうつの人のための弁護団に休職中の若い人の復職相談が時々あります。ご本人からの相談と両親を通じての相談があります。弁護団から勤務先に働きかけると、多くの場合勤務先は一定の職場環境の改善の努力を示しますが、根本的な解決でないため休職期間が満了により退職したというケースも少なくありません。
 相談を受けながらやさしい“彼にとって”“彼女にとって”魅力のある生き方は何だろうと思いをめぐらしますが、いい処方箋がなかなか見つからないのが私の悩みです。

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コメント

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投稿: 沙南 | 2009年6月15日 (月) 17時52分

 若者世代のうつ病(別名:新うつ病)についてですが、若者が優しいのは今も昔も変わりません。ただ、現代の若者は、人に興味がなく、人の痛みを知りません。知ろうともしないのが現実です。
 キレて喧嘩して他人を傷つけるのは、犯罪です。しかし、じゃれあい程度の喧嘩で引っ掻き傷がつく程度の喧嘩で、人の痛みを知ることができます。しかし、現代の若者は人も痛みを知りません。頭でっかちの個人主義です。理屈上、殴られると痛いという事はわかっていますが、実際にどの程度のものかわかっていません。ですから、一度事件が発生すると人を殺めることが多く存在します。事件の発生件数は減少したのかもしれないが、一件一件が凶悪化しているのも事実です。

投稿: 悩んでいる一人 | 2012年7月 1日 (日) 19時16分

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