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2008年4月 1日 (火)

AERA 派遣うつをうつの弁護団が支援

  AERAの4月7日号(3月31日発売)に「『派遣うつ』原因は正社員」という記事が掲載されています。その中で「働くうつの人のための弁護団」の立場から私がコメントした記事が掲載されていますのでご紹介させていただきます。

-以下AERA記事(文・編集部浜田奈美)より-

【「派遣うつ」原因は正社員】

<今や非正規雇用者は1730万人以上。数では正社員の半数に及ぶが、職場での立場は弱く、うつになる人も多い。「心の安全網」も不十分だ。>

 「大変ですねえ。思い切って社員さんに、一度キレてみたらいいじゃないですか」
 自分より2歳年上の派遣元の担当者の言葉に、派遣社員のタカコさん(仮名、28)は耳を疑った。派遣先での仕事量の多さや正社員との人間関係の難しさに、精神的に不安定になり、相談を持ちかけた矢先のことだ。タカコさんはそれ以上相談する気になれず、やりきれない思いで帰途についた。
 「キレて解決できるものなら、とっくにそうしてますよ。それができないのが派遣のつらさなのに。何もわかってないんだと知って、ショックでした」

【オレ忙しいから頼むよ】

 タカコさんが、いま勤務する都内の広告会社に「事務補助」として派遣されたのは2年前だった。営業系の超多忙な職場で、タカコさんは、忙しい正社員たちに代わって電話応対や資料整理、経費書類の作成などを任されている。多忙な部署だけに殺気立つ瞬間も多いのだが、そんな時はタカコさんにも緊張が走る。正社員にかかってきた電話を本人に転送しようと試みて、正社員がいらだち紛れに、「何よ、今すごく忙しいのよ」と、電話口でタカコさんにいわれのない不満をぶちまけることが多々あるからだ。
 「オレ忙しいから頼むよ」と、本来なら自分でやるべき雑用を言いつけにくる社員も、タカコさんが職場に慣れるにつれ増えた。景気づけに職場で宴会がある時は、生ゴミやお酒の片づけを当然のように、「タカちゃん、よろしくね」と任せて二次会に消える社員をよそに、生ゴミと格闘して残業するパターンも度々あった。
 週5日、残業を含めて月収20万円弱。正社員たちはそのダブル、いやトリプルスコアの給料を手にしていると思うと、「いったい、どこまでが自分の給料分の仕事なんだろう」などと考えてしまう自分自身に、さらに落ち込む。
 1年半がすぎた頃、職場で突然、脈絡もなく泣き出してしまった。心療内科を訪ねてみようかと迷ったけれど、職を失いたくない一心でギリギリまで踏ん張ろうと、まずは派遣元の担当者に相談したのだった。
 タカコさんは半ばあきらめたようにこう語る。「『実はうつです』なんて派遣社員が言ったら、『元気なやつよこせ』って言われてクビですよ。だからせめて部署替えを相談できたらと思ったんですが」

【人脈なく相談できず】

 職場のうつの深刻化が指摘されて久しい。最近の調査では、厚生労働省の労働安全衛生基本調査(2006年9月発表)で、従業員10人以上の約8500民間事業所のうちメンタルヘルスを理由に休業した従業員がいる事業所は3.3%。従業員1000人以上の事業所に限れば、8割以上に至った。仕事上のストレスによる精神障害で労災認定を受けた人も、06年度は前年度の1.6倍、過去最多の205人だった。

 人材マネジメント会社「アトラクス ヒューマネージ」では昨年、全国の企業約100社の従業員1400人を対象に独自のストレス検査を実施した。その結果、「正社員」と「非正社員」とでは「非正社員」の方がストレスの対処がうまくいっておらず、身体の不調や憂鬱感をより強く感じていることがわかったという。
 同社の斉藤亮三代表取締役社長はこう分析する。「非正社員は正社員に比べて人的サポート、特に上司からのサポートが得られていない、と数値に表れています。人的サポートの代表的手段が『相談』。相談によってストレス軽減が期待されますが、一般的に非正社員は正社員ほど社内の人脈が豊富ではなく、相談しづらい立場なことが、ストレス状態を悪くしていると考えられます」

【過労で嗅覚まひの後・・・】

 しかし、不幸にして何一つ“心のセーフティーネット”にアクセスできず、最悪の結末を迎えたケースもやはりある。上段勇士さんが23歳で自らの命を絶ったのは1999年3月のことだった。

 98年の年末、上段さんは家族と過ごすため東京の実家に帰宅。やつれ、憔悴した上段さんを自宅に残して母親ののり子さんが外出し、戻ると、家は「カビキラー」の刺激臭が充満し、上段さんはその中で風呂掃除をしていた。嗅覚が鈍っていたのだ。
 目隠しをして様々な調味料の味見をさせても識別できない。ほぼ完全に嗅覚も味覚もまひした、深刻なうつ状態。その3ヵ月後、上段さんは遺書らしき文言を部屋に残して命を絶った。

 のり子さんはこう振り返る。「よく『つらければ言えばよかったのに』と言われますが、非正社員はそうできないことを前提に雇用されています。『いつでも解雇するぞ』という姿勢を感じて生活するから、必死に働きます。それなのに、勇士が過労ラインを超えていることを把握できる上司が、職場に一人もいなかった。正社員である上司が、派遣や請負社員たちの仕事内容をよく知らないのです。正社員が命令だけを下し、非正社員が手足となって働く。そんな理不尽な現場に、何も知らずに社会人の第一歩を踏み出した勇士が不憫でなりません」

【法的手段も活用を】

 もしも自殺に至らなかったとしても、「治療」だけでは決してすまされないケースである。こういう場合、法的アプローチで安易な首切りを阻止したり、労災申請で「実例」を重ねたりすることが大切だ。
 05年、「働くうつの人のための弁護団」を結成した清水建夫弁護士は、非正規雇用者がうつなどを発症した場合でも、労働時間の超過や複雑な人間関係などの「業務起因性」を立証することで、地位保全や解雇権乱用阻止も十分可能と強調する。「派遣先がよく変わる派遣社員でも、派遣元に対して安全配慮義務責任を問うことができますし、日雇い派遣でも、現場に行ったら仕事がなかったという繰り返しでうつになった人などは、裁判で勝てる可能性がある。非正規の人も『うつは自分の責任』と泣き寝入りするのではなく、我々のような窓口を活用する勇気を持ってください」

【私の意見】Up63_2

 正社員も非正規社員も同じ人間。年齢も仕事の内容もほとんど変わりません。それなのに企業が労働条件を差別し、同じ人間同士が足のひっぱりあいをし一方が他方を見下す構造となっています。この記事をみてこのような構造をつくった政治家、財界人、えせ「学者」たちにあらためて言いようのない憤りを感じました。足のひっぱりあいをしなくとも私たちは全員豊かに楽しく生きていける環境にあります。働くうつの人のための弁護団に非正規雇用の方からも時折メールで相談がありますが、職場内での身分がもともと安定していないため“弁護士さんのところまで行ってもどうせクビを切られる”とあきらめる方が多いことは確かです。でもこの歪んだ構造をつき崩すためには最も痛めつけられている人から声を挙げていく必要があります。弁護団は精一杯応援しますので、あきらめずに声を挙げてほしいと思います。

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