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2008年2月18日 (月)

高裁、中曽根元総理の労組壊滅政策にメス

【中曽根康弘元総理の反労働組合主義】

 中曽根康弘氏は戦後の歴代首相の中でも最も右翼的な政治家と言えます。私が戦後の首相の中で右翼的な政治家を挙げるとすれば、岸信介、中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三の4名です。その中でも岸信介と中曽根康弘は筋金入りと言えます。中曽根は1982年11月田中派の後押しで首相の座に躍り出ましたが、旧帝国海軍あがりの改憲論者で、首相就任の初会見で第二次世界大戦を<大東亜戦争>と発言、「レーガン詣で」をした時には<不沈空母>発言、靖国神社への<首相参拝>を強行して、中国などに「日本帝国主義の復活」と激昂させました。しかし当時の自民党の中で改憲論議は活発ではなく、靖国参拝もその後とりやめました。
 中曽根氏は改憲論者であるとともに反労働組合主義者で総評を中心とする当時の労働組合運動を徹底的に忌み嫌っていました。

【中曽根氏の公言 国労壊滅・総評崩壊を意識しその一念で国鉄分割・民営化を断行した】

 総理大臣として国鉄の分割・民営化を強行した中曽根氏は、分割民営化(1987年4月)の10年後位から雑誌やNHKインタビューなどで「国鉄分割・民営化」は、国労を崩壊させれば総評が崩壊し、55年体制を終末に導くことを意識し、その一念で強行したことを、自己の歴史に残る業績として随所で誇らしげに公言しています。

<AERA1996年12月30日号>

 「総評を崩壊させようと思ったからね。国労が崩壊すれば、総評が崩壊する(国鉄分割民営化は)そのことを明確に意識してやったのです」

<中曽根康弘著「自省録 歴史法廷の被告として」(新潮社、2004年)>

 「中曽根内閣」といえば、業績の大きな柱として、国鉄の分割・民営化、税制改革、教育改革、行政改革は、大きく語られ記憶されてよいと考えています。

 なかでも、国鉄分割民営化は、国労の崩壊、総評の衰退、社会党の退潮に拍車をかけて、55年体制を終末に導く大きな役割を果たしたのです。

<「文藝春秋」2005年12月号>
 中曽根氏は以下のような発言をしています。

 「国鉄民営化は、国鉄労組を崩壊させました。国鉄労組の崩壊は総評の崩壊、つまり社会党の崩壊につながります。だから国鉄改革は、日本の基盤に大きな変化を与えたんですよ。もちろん私はそれを認識して実行に移しました。私が三木内閣の幹事長をしていた時、国鉄労組が8日間のゼネストをやった。私は徹底的に戦ってストを破った。そして202億円の損害賠償を要求して以降、法廷闘争となった。その時以来、国鉄の民営化と総評・国鉄労組の崩壊を狙っていたのです。」

【国鉄の分割・民営化と徹底的な組合差別】

 1987年4月国鉄は民営化され地域別に6つのJR各社と全国1つのJR貨物に分割されました。国鉄職員は公共企業体の職員として公務員並みの身分保障がされていたのですが、中曽根元総理や国鉄当局は分割・民営化にあたり新事業体であるJRに採用されない労働者数として41,000人を意図的に作出し、国鉄当局は、当局に従順に従わないとJRに採用されないとおどし、国鉄労働組合(国労)からの脱退を執ように求めました。現実にも最後まで国労を脱退しなかった労働者はJRに採用されず、国鉄清算事業団に残され、3年後の1990年3月に解雇されました。解雇された国労所属の労働者295名が、国鉄を承継した日本鉄道建設公団を被告として2002年に提訴したのが鉄建公団訴訟で、私はその常任弁護団の1人です。これについては2005年年9月15日に第1審判決がありました。

<第1審判決>
 第1審判決は次のように述べて、国鉄の不当労働行為(組合による採用差別)を認定し、不法行為にあたると断じました。

 「国鉄が、原告らをJR北海道、JR九州の各採用候補者名簿に記載しなかったのは、主として、これら原告らが、国労に所属していることないし国労の指示に従って組合活動を行っていることを嫌悪して、国労組合員に対する能力、勤労意欲、勤務態度等の評価を恣意的に低く行い、不利益に取り扱ったことによるものであると強く推認することができる。」

 「以上によれば、国鉄がJR北海道、JR九州の各採用候補者名簿に記載しなかったのは、同原告らが、主として、国労に所属していることないし国労の指示に従って組合活動を行っていることを理由として、採用基準を恣意的に適用し、勤務成績を低位に位置付けたこと(以下「本件加害行為」という。)によるものと認められ、不法行為と評価するのが相当であり、当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。」

 第1審判決は不当労働行為は認めましたが、1990年解雇については時限立法にもとづく解雇でやむをえないとして解雇無効を認めず、原告らについてわずか1人500万円の慰謝料のみを認めました。これについては原告、被告双方とも不服として控訴し東京高等裁判所第17民事部で現在審理されています。

【鉄建公団訴訟で東京高裁は葛西敬之JR東海代表取締役会長の証人採用を決定】

 2月15日鉄建公団訴訟の控訴審で東京高等裁判所第17民事部の南敏文裁判長は次の4月18日の口頭弁論期日に現JR東海の代表取締役会長である葛西敬之(かさい よしゆき)氏の証人尋問を行うことを決定しました。葛西氏は国鉄が分割民営化するにあたって職員局次長の地位にあり、東京高裁は不当労働行為(組合差別)の実体と原告ら労働者の解雇の正当性の有無について、旧国鉄の指揮官を尋問する必要があると判断したことによるものです。
 葛西氏はJR東海の代表取締役会長であるほか、国家公安委員会委員、政府の教育再生会議の委員でもあり、政財界に発言力の強い人物です。地裁でも葛西氏の証人尋問を求めていましたが、東京地裁の第36民事部でも、第19民事部でも採用されませんでした。組合対策の功績が認められ、出世階段を昇りつめ、今ではすっかり大物となった葛西氏の尋問を東京高裁が決定したことに、事実解明に向けての東京高裁の強い決意を感じて、私は一瞬心がふるえました。

【中曽根元総理の意を受けて】

 中曽根内閣が誕生したのは1982年11月ですが、この頃から国労潰しの動きが鮮明になってきています。国鉄分割・民営化の直前である1985年6月から1987年1月にかけては国鉄職員29万人をまきこんだ不当労働行為(組合差別)が国鉄当局によって白昼堂々と行われました。これは時の内閣総理大臣のお墨付きがあったから国鉄当局幹部が何臆することなく、強引に組合潰しを実行しました。日本の労働運動史上前代未聞の組合潰しであり、この過程で多くの国鉄労働者が路頭に迷ったり、自殺で亡くなったりしました。血塗られた1頁として労働運動史上消し去ることができないものとなりました。

【闘う労働組合が壊滅した今 日本の社会におきていること】

 中曽根元総理や葛西氏らの企図したとおり、わが国から使用者と対立しても労働者の権利を守る労働組合が激減しました。労働組合の組織率は18%を割り、その労働組合もほとんどが御用組合で、わが国ではストライキは死語と化しています。このような国は世界でも極めてまれで、もともと労働者の権利に関する法的な秩序が存在していなかった日本の企業秩序社会において、使用者の一方的な支配に黙々と従う労働者群という構図がほぼパーフェクトな形でできあがってしまいました。
 その結果日本の社会に何が起こったでしょうか。リストラによる中高年労働者の自殺、30代を中心とするうつ病の増加、過労死、うつ病を苦にした自殺、ワーキングプア化した非正規雇用労働者等々。今やKAROSHIは日本の労働者の現状を表現する国際語と化しています。正当な労働組合活動を行う労働組合が消滅することによって、日本の労働者の屍が累々と積みあがっています。
 中曽根元総理や葛西氏は勝ち誇った如く自伝を出版していますが、彼らには日本の社会がかけがえのないものを失ったことが理解できていないと思います。葛西氏の証人採用は、中曽根元総理の労働組合潰しに裁判所がメスを入れることにつながります。健全な社会をとりもどすためにもきちんとした成果を勝ち取りたいと念じています。

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はじめまして。
 貴ブログへの突然の書き込みの非礼をお許しください。「運動型新党・革命21」準備会の事務局です。
 この度、私たちは「運動型新党・革命21」の準備会をスタートさせました。
 この目的は、アメリカを中心とする世界の戦争と経済崩壊、そして日本の自公政権による軍事強化政策と福祉・労働者切り捨て・人権抑圧政策などに抗し、新しい政治潮流・集団を創りだしたいと願ってのことです。私たちは、この数十年の左翼間対立の原因を検証し「運動型新党」を多様な意見・異論が共存し、さまざまなグループ・政治集団が協同できるネットワーク型の「運動型の党」として推進していきたく思っています。
(既存の中央集権主義に替わる民主自治制を組織原理とする運動型党[構成員主権・民主自治制・ラジカル民主主義・公開制]の4原則の組織原理。)
 この呼びかけは、日本の労働運動の再興・再建を願う、関西生コン・関西管理職ユニオンなどの労働者有志が軸に担っています。ぜひともこの歴史的試みにご賛同・ご参加いただきたく、お願いする次第です。なお「運動型新党準備会・呼びかけ」全文は、当サイトでご覧になれます。rev@com21.jp
 

投稿: 革命21事務局 | 2008年10月14日 (火) 13時58分

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