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2008年1月21日 (月)

福田首相の施政方針演説と株価暴落

 2008年1月18日第169回通常国会が招集され、福田首相は同日午後施政方針演説を行いました。森、小泉、安倍と3代続けて知性と分別を欠く首相が続いたあとだけに、私には福田首相の演説は久々の分別ある政治家の施政方針演説としてほっとした気持ちで受けとめました。補給支援特措法を衆議院の再決議で成立させるなど福田首相について納得できない点はありますが、これまでの3人の首相と比べると生活者の目線で国民とまっすぐに向きあおうとする姿勢を感じました。ただし、福田首相の施政方針演説は自民党の振り子の法則によって、右に寄りすぎたのを一時的に左に寄せただけで、生産者、供給者の側に立つという自民党の本質はいささかも変わるものではありません。
 その上、すぐに短絡的思考に走りがちな日本のマスコミは福田内閣の経済無策が株価暴落・日本丸沈没をもたらしていると合唱をはじめました。

【基本方針】

 福田首相は5つの基本方針を掲げています。

 第1に、生活者・消費者が主役となる社会を実現する「国民本位の行財政への転換」
 第2に、国民が安心して生活できる「社会保障制度の確立と安全の確保」
 第3に、国民が豊かさを実感できる「活力ある経済社会の構築」
 第4に、地球規模の課題の解決に積極的に取り組む「平和協力国家日本の実現」
 第5に、地球温暖化対策と経済成長を同時に実現する「低炭素社会への転換」
 以上5つの基本方針に基づき、私は、国政に取り組んでまいります。

【国民本位の行財政への転換】

 基本方針の第1について次のように述べています。

 国民に新たな活力を与え、生活の質を高めるために、これまでの生産者・供給者の立場から作られた法律、制度、さらには行政や政治を、国民本位のものに改めなければなりません。国民の安全と福利のために置かれた役所や公の機関が、時としてむしろ国民の害となっている例が続発しております。私はこのような姿を本来の形に戻すことに全力を傾注したいと思います。
 今年を「生活者や消費者が主役となる社会」へ向けたスタートの年と位置付け、あらゆる制度を見直していきます。

 首相が既存のものを「生産者・供給者の立場から作られた法律、制度、行政、政治」と言い切ったのには驚きました。社民党の福島瑞穂氏や消費者側の弁護士の発言とあまり変わりがありません。

<国民の信頼を取り戻す行財政改革>

 高齢化の進展に伴い、年金や医療など社会保障に要する費用は増加せざるを得ません。地球温暖化問題など新たな時代の課題への対応も必要となってきます。行政に対する信頼を回復するとともに、国民生活に真に必要な分野の財源を確保するため、徹底した行財政改革を断行します。

 「国民生活に真に必要な分野の財源を確保するため」に行財政改革を行うのだと言い、何のための行財政改革かを保守党の首相が明言したことも驚きです。

【社会保障制度の確立と安全の確保】

 基本方針の第2については次のように述べています。

<給付を受ける側に立った社会保障制度の再構築>

 国民生活の基盤を支える医療、年金、介護、福祉などの社会保障制度については、少子高齢化の進展などにより、制度の持続可能性が問われています。これまで、給付やサービスを受ける方々の立場に立った行政を本当に行ってきたのか、反省すべき点が多いと思います。今こそ、国民の皆様の立場に立って発想を切り替え、自立と共生の理念に基づき、将来にわたり持続可能で、皆が安心できるよう、社会保障制度を立て直さなければなりません。

 ここでも給付サービスを受ける側の立場に立った行政を強調しています。

【活力ある経済社会の構築】

 基本方針の第3については次のように述べています。

<中小企業や農業の活力を引き出し、すべての人が成長を実感できる全員参加の経済>

 第3は、雇用拡大と生産性向上を同時に実現し、すべての人が成長を実感できるようにする「全員参加の経済戦略」の展開です。意欲ある人が皆働けるように、女性と60代の方の労働参加率の引上げやフリーターの減少について、少なくとも政労使の合意に基づく数値目標を達成しなければなりません。また、労働分配率の向上に向けて、正規・非正規雇用の格差の是正や、日雇い派遣の適正化等労働者派遣制度の見直しなどを行います。各分野で高い能力、知識を持つ専門家の育成に力を入れるとともに、特に女性の参画が進んでいない分野に重点を置いて、女性の働く意欲を引き出すことができるよう、「男女共同参画社会」の実現に向け戦略的に取り組んでまいります。
 我が国経済の活力を支えるのは中小企業の底力です。日本の強みである「つながり力」を更に強化し、地域経済の活力の復活と中小企業の生産性の向上を実現するため、地域連携拠点を全国に200から300か所整備します。

 活力ある経済社会は女性、高齢者、フリーター、非正規雇用労働者、中小企業、農業従事者など日本の社会から置き去りにされてきた人々を含めて全員参加で実現すべきことを述べています。強者や大企業中心に活力ある経済社会をめざした小泉、安倍路線の軌道修正が汲みとれます。

【世界の平和と発展に協力する外交の推進】

 基本方針の第4について次のように述べています。

<「平和協力国家日本」>

 平和協力は狭義の安全保障の分野には限りません。貧困の解消、保健衛生状況の改善などは、人道上の要請であるとともに、すべての人々に「希望と機会」を与え、平和と安定への道を用意するものです。本年我が国で開催されるアフリカ開発会議やサミットなどにおいて、こうした「人間の安全保障」面での課題解決に向け、G8各国やEUとも協力してまいります。また、自然災害の多発する我が国が蓄積したノウハウを海外の防災に役立たせるよう、国際協力を進めます。

 平和で安定した国際社会は、日本にとってかけがえのない財産であり、日本ができるだけの協力を行う必要があります。日米同盟と国際協調を基本に、これらの地球規模の課題の解決に積極的に取り組み、世界の平和と発展に貢献する「平和協力国家」として、国際社会において責任ある役割を果たします。地域や世界の共通利益のために汗をかく、魅力に満ち、志のある国を目指したいと思います。

 平和協力は狭義の安全保障の分野には限らないとし、人道支援を視野において述べています。施政方針演説で日本の首相がアフリカについて触れたのは少しうれしくなりました。

【「低炭素社会」への転換】

 基本方針の第5について次のように述べています。

 地球環境問題は21世紀の人類にとって最も深刻な課題です。一刻も早く、国際社会の協力の下に、全地球的規模で、温室効果ガスの削減に取り組んでいかなければなりません。我が国は、これまで、徹底的に省エネ技術の開発や導入を進め、世界最高のエネルギー効率を実現しました。こうした「環境力」を最大限に活用して、世界の先例となる「低炭素社会」への転換を進め、国際社会を先導してまいります。

【憲法に関する議論の深化】

 安倍前首相が熱い思いで成立させたばかりの国民投票法について改正の議論を呼びかけたのにはびっくりしました。

 国の基本を定める憲法に関する議論につきましては、昨年の通常国会で関係各位のご努力により、国民投票法が成立しました。もとより国会が決めるべきことではありますが、今後は国会のしかるべき場において、国民投票法の審議過程で積み残された諸課題や、改正するとすればどのような内容かなど、すべての政党の参加の下で、幅広い合意を求めて、真摯な議論が行われることを強く期待しております。

 数は力なりと強行採決した安倍前首相を批判しているのに等しい発言です。

【日本経済新聞 論評 「株安、危機感乏しく」】
                    (1月18日 日本経済新聞 より)

 日経新聞は「株安、危機感乏しく」という見出しで福田首相の施政方針演説を次のように批判しています。

 福田康夫首相が施政方針演説で消費者行政の一元化などを打ち出すのは、生活密着型の「福田カラー」によって内閣支持率の低迷にあえぐ現状打開のきっかけをつかむ狙いがある。だた、日本経済を揺さぶる最近の急激な株安を食い止めるだけの具体的なメッセージには乏しく、危機感も伝わってこない。

 演説の柱の一つとして経済成長戦略の加速を掲げるのは、世界経済に占める日本の急速なシェア低下を受け、国際競争力の行方に不安を募らせているためだ。
 最近の株価下落や原油高への対応にもひとまず触れている。とはいえ市場で「経済無策」との声も漏れるなか、福田政権として打ち出す効果的な対応策は見当たらない。
 
 国民は明確なビジョンと実行力を求めている。政策の混迷や閉塞(へいそく)感は果たして国会のねじれだけによるものなのか、福田政権の体質にも原因があるのではないか。こんな声も漏れている。

【朝日新聞 社説 「では『改革』はどうする」】
                      (1月19日 朝日新聞 より)

 トーンは日経新聞とは違いますが、朝日新聞の社説は「では『改革』はどうする」という見出しで次のように述べています。

 米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き問題から、世界経済には暗雲が広がっている。そのなかでも日本市場の低迷ぶりが際立っている。財政再建など改革への取り組みがスピードダウンしていると見られていることが、その原因のひとつと指摘される。
 そうした大波に抗して、この国をどう引っ張っていくつもりなのか。国民への目配りを重視する首相の思いは理解できるが、内向きばかりに目を奪われて日本丸が沈み始めては元も子もない。
 癒しの政治も、経済の安定なしには立ち行かない。福田流の「改革」をもっと明確に語ることだ。それなしに国民本位と言われても、説得力がない。

【日本の経済の実態】

 マスコミは福田内閣の「改革」軽視、バラマキによる経済無策が世界で日本だけが株安、円安に低迷し、経済を失速状態にしたとの合唱をはじめようとしています。
 私は日本の実態経済はそんなに悲観するほどやわなものとは思いません。次の2つの記事をご覧下さい。

<株安、欧米・アジアで加速 下落率日本と並ぶ 米景気減速懸念強まる>
                   (1月20日 日本経済新聞 より)

 欧米やアジア市場でここへ来て株価の下落が加速し、下げの大きさが際立っていた日経平均株価に並んできた。米景気が本格的に減速し始めたとの見方から世界的に経済の先行き懸念が高まったことが背景にある。
 1月第2週時点(11日まで)の日経平均の年初来下落率は7.8%で3-4%前後の各国指数に比べて下げが大きかった。しかし第3週時点(18日まで)ではほぼ横並び。日経平均は9.4%と以前下げ幅が大きいが、香港が9.4%、フランスやドイツも9.3%など、下げ幅が並んできている。米英も9%近い下げになった。

<金融機関08年、本社調べ 日本でファンド融資拡大>
                   (1月20日 日本経済新聞 より)

 国内外の金融機関が日本で買収ファンド向けの融資を拡大させる。日本経済新聞が実施した調査によると、2008年の計画を示した大手銀行や外国証券など14社は合計で2兆円超の買収融資を用意、07年実績の3倍強に増やす。欧米では信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の影響で金融機関が融資を手控えており、大型のM&A(合併・買収)は事実上ストップ。影響が軽微な日本市場で攻勢をかける。
 
 欧米では昨年8月以降、サブプライム問題の余波で金融機関が融資に慎重になり、M&Aの件数や金額が急減。融資を実行した後、債権を別の投資家へ転売するのを前提にしているが、この株価も下落しており、損失も膨らんでいる。
 ところが、日本では巨額の損失を計上した欧米の一部金融機関を除き、積極的な融資姿勢を維持している。
 ある外国証券会社によると、世界的な大手買収ファンドは欧米市場で融資がつかないため、日本やアジア市場に目を向けているという。

 日本株だけが株安でないこと、日本の企業は健全なため世界の資金が日本に集まりつつあるということが伺われます。

【私の感想】Up63

 私はバブル崩壊直後の企業再建で再建途上の企業の代理人としてたくさんの金融機関を回り協力を要請しました。その頃は日本の金融危機は本格的にははじまっていませんでした。訪ねた金融機関の支店長が「株価も下がるし銀行としても大変です」と言ったのを聞き、株に疎い私は“なぜ、銀行が株のことを気にするのなかな?融資先企業の財務体質のことを考えればいいのに・・・”という疑問を持ちました。銀行の資産の相当割合を株式が占めていることを当時の私は思っていなかったのです。小泉・竹中改革が“貯蓄から投資へ”の流れを国策としてつくったため、株安は銀行のみならず国民一人一人の金融資産の下落を意味するようになりました。馬券を買って一喜一憂する程度ならまだいいですが、かなりの日本人の生活が株価の動向に左右される社会が活力ある健全な社会とは私は思いません。株価に一喜一憂することなく、国民一人一人が社会にささやかなものであってもプラスを生み出そうとする志をもてる国づくりをめざしたいものです。

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