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2008年1月 5日 (土)

坂東眞理子「女性の品格」と男女共同参画

【坂東眞理子著「女性の品格」(2006.10.3 PHP新書)】

著者紹介(著書の巻末の記載より)

坂東眞理子(ばんどう・まりこ) 1946年富山県生まれ。東京大学卒業。69年総理府入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事を経て、98年女性初の総領事(オーストラリア・ブリスベン)。2001年内閣府初代男女共同参画局長。04年昭和女子大学教授を経て、昭和女子大学副学長、同大学女性文化研究所長。2007年4月より同大学学長。
著書に『副知事日記-私の地方行政論』『ゆとりの国オーストラリア-ブリスベン総領事見聞録』(以上、大蔵省印刷局)、『男女共同参画社会へ』(勁草書房)、『新・家族の時代』(中公新書)などがある。

 著者について私は面識がありませんが、上記記述並びにウィキペディアの記事から、著者は女性官僚としてのトップ・エリートとしての道を常に歩んだ人と言えます。
 私は2006年にベストセラーになっていた藤原正彦氏の「国家の品格」(2005年11月新潮新書)を2006年末に購入しましたが、著者の論旨に賛同できず途中まで読んで放っていました。「女性の品格」は2007年のベストセラーで知人から聞いて2007年に購入しました。両著とも1年で200万部を超えるベストセラーになり正に今“品格ブーム”と言えます。今回「国家の品格」についても何とか読みましたのでこれについては後日触れさせていただきます。

【著書の中味は女性のトップエリートとしての処世訓】

 「女性の品格」という題名に男性としての興味半分でワクワクとした思いで手にとったのですが、中味はトップ・エリートとして歩んできた著者が足を踏みはずすことなく歩んできた処世訓と言う風に受けとめました。女性に対する現代道徳書とも言え、中味は地味で当初期待したワクワク感は残念ながら消えてなくなりました。
 目次を一部紹介すると次のとおりです。

 第一章 マナーと品格
   礼状をこまめに書く
   相手に喜ばれる物の贈り方
 第二章 品格のある言葉と話し方
   ネガティブな言葉を使わない
   乱暴な言葉を使わない
 第三章 品格のある装い
   流行に飛びつかない
   勝負服をもつ
 第四章 品格のある暮らし
   行きつけのお店をもつ
   得意料理をもつ
 第五章 品格のある人間関係
   怒りをすぐに顔に出さない
   家族の愚痴を言わない
 第六章 品格のある行動
   人の見ていないところで努力する
   時間を守る
 第七章 品格のある生き方
   恋はすぐに打ち明けない
   倫理観をもつ

 著者がもとめるとおりのマナーを実行できるのは、おそらく女性の中でもごくかぎられたほんの一部の人でしょう。これを実行できる人が品格があり、できない人が品格がないというのもいささか性急すぎるように思います。その意味ではこの本からワクワク感を感じない女性も多いかもしれません。著者と自分では置かれている状況が違うと感じるだろうと思います。著者はあとがきで「有能な中間管理職をめざす女性ではなく真のリーダーとなる女性になってほしい」と結んでいますが、私が著者に期待するのは、一部のエリート女性の育成ではなく、大多数の女性を対象とする女性総体の社会参画の引上げです。

【著しく低水準のわが国における男女共同参画の現状】

 国際比較でみた男女共同参画の状況-女性の活躍とワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和) (内閣府男女共同参画局:H19男女共同参画白書より) によると国際比較でみた男女共同参画の現状は次のとおりです。

1.政治・行政
○女性の国会議員割合は,ここ10年ほどの間に増加しているが,国際的に見ると日本はアジア諸国を含めた諸外国と比べて低い水準にある(189か国中131位)。
○国家公務員の管理職に占める女性割合を見ると,日本は1.8%で各国と比べて低い。

2.働く場
○働く場における女性の参画も低水準にとどまっている。女性の就業割合は,一部のアジア諸国よりも高い水準にあるが,管理的職業従事者に占める女性の割合は,韓国とともに著しく低くなっており,他国と比較して伸びも小さい。
○日本の女性の労働力率を年齢階級別にみると,子育て期に当たる30歳代前半で低下するM字カーブを描くが,外国の女性の1970年代からの年齢別労働力率の推移をみると,欧米諸国を中心にM字カーブの底が解消して逆U字カーブを形成している。
○日本のパートタイム労働者の比率は他の先進諸国と比べて高い水準にあるが,特に女性のパートタイム労働者の割合が増えており,フルタイム労働者との賃金格差・処遇格差が男女の賃金格差の一因となっている。

3.生活
○男性の家事・育児時間は,諸外国と比較して著しく短い。
○日本では,固定的性別役割分担意識の変化にも関わらず,労働時間は諸外国と比較して長く,その分,家庭や地域で過ごす時間が短くなっている。

【男女共同参画の女性総体の水準の引き上げを期待】

 著者は男女共同参画室長を経て、2001年内閣府初代男女共同参画局長に就任。2003年8月埼玉県副知事選に出馬したため退任しましたが、それまでの間官僚として男女共同参画に関し、常にトップの地位にあったと言えます。現在は昭和大学学長の地位にあり官僚時代と違ってそれこそ自由に発言できる立場にあります。
 ところでこの点に関する著書の論調はどちらかと言うと抑制的と言えます。

 「私は女性が社会に進出し活躍することが必要だと信じていますが、それは従来の男性と異なる価値観、人間を大切にするよき女性らしさを、社会や職場に持ち込んでほしいと思うからです。女性が社会に進出しても、『できる女』を目指し有能なやり手ばかり増えるのはさびしいことです。」(6頁)
 
 「しかし私は福祉が整い国民皆年金、皆保険の制度が整った国になったからこそ、その制度を安定的に持続するためにも、とことん保険を利用して自分が得しようというのではなく、本当に必要な人が必要なときに利用するようにするのが品格ある国民だと思っています。」(210頁)

 「『育児休業は私たちの権利です』と正論を言うと、そういう人たちの気持ちを逆なでします。同じことが雇用機会均等法にもいえます。均等法がない時代は、男性のみの求人が当たり前だったというと『うっそー』といわれる時代です。それでもいろいろな形で女性に対する差別は残っています。若くて、素直で、地位が低いうちは重宝がられても、女性がしっかり責任のある仕事をするようになると反感をもつ人もいます。差別は許されません。差別するほうが間違っているのはいうまでもありません。しかし個人の生き方としては自分の権利を振り回すより、皆さんのお陰でという感謝を表しながら黙って実力を蓄え、一目おかれる存在になるほうが、スムースに運びます。」(211~212頁)

 日本における男女共同参画の水準が女性にとり満足いくものになっていれば著者の抑制的な姿勢もうなずけます。しかし、現状は先に述べたとおり、国際的に見ても著しく低水準にあります。不均等・不平等で苦しんでいる多くの女性たちにとって著者の姿勢にはおそらく満足しないと思います。
 ひるがえって日本の男性は20代も30代も40代も50代も60代もみんな疲れはてています。女性が元気で活躍してくれることは男性としてもウェルカムです。著者の目線をトップ・リーダーの高い位置ではなく、女性一般の普通の位置に下げ、その位置から是非とも女性総体の社会参加の水準の引上げに尽力していただきたいと、男性の立場からも強く願わざるを得ません。

 

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