二十四の瞳の島に異形の国際投信ブーム
(12月8日 日本経済新聞 より)
【日本人とおカネ 第1部 危うき奔流
なぜ売れる異形の投信】
おカネにまつわる日本人の価値観が大きく変わろうとしている。預貯金に偏っていた保守的な個人マネーは国境を一気に跳び越え、いや応なくリスクと向き合い始めた。そこには危うさも見え隠れするが、個人マネーをうまく生かすことができれば日本の活力を高めることさえできる。
<グロソブの島>
香川県小豆島。瀬戸内に浮かぶこの島で「グロソブ」が爆発的に売れている。世界の債券に投資する投資信託で正式名称はグローバル・ソブリン・オープン。国際投信投資顧問が運用する。島での残高は100億円を突破。人口対比で日本全体の3倍の「濃度」で保有している計算だ。
「妹に勧められた。毎月2万円余りの配当金が年金生活の足しになる」(66歳女性)。証券会社のセミナーで、島民は海外経済動向に花を咲かせる。さながら「国際投資家の島」だ。
【「不思議の国」映すブーム】
かつて6万人を抱えた島の人口はいまや3万2000人余り。65歳以上の高齢者の割合は約3割を占める。そうめん、観光などを除けば産業は乏しい。過疎が進行するこの島は日本の近未来図でもある。
手をこまねいていれば、少子高齢化で日本の衰退は避けられない。だが、逆風をはね返す手はある。1500兆円の個人金融資産だ。有効に使えば別の景色がみえてくる。それを先取りするかのような小豆島の投資機運。だが、そこには「不思議の国ニッポン」も垣間見える。
たとえばグロソブの人気の秘密になっている毎月の配当金。配当分は運用に回らず、投資成績はその分下がることを知らない人も多い。運用開始から10年。仮に毎月分配せず、「複利」で運用を続ければ、設定時1万円の価格が6日時点で約1万5000円に上昇した計算だ。しかし、実際の価格は8000円弱で、分配金(5000円強)を考慮しても累計約2000円を取り損ねている。急激な円高になれば損が出る恐れもある。
長期の運用成果が投資の尺度となる欧米には毎月配当する商品はほとんど見当たらない。世界に類をみない異形の投信だ。
神奈川県藤沢市の遠藤崇(仮名、29歳)は2月にグロソブを20万円買った。理由は「有名だから」。年金のように分配金をもらえるため、高齢者には魅力だが、「資産形成を目指す若い世代には向かない」(ファイナンシャルプランナーの前川貢)。本来、年齢や家族構成に応じてマネープランは十人十色。なのにグロソブのような分配型の販売比率は公募投信全体の49%にのぼる。
投資初心者が一気に新興国株や外国為替を売買するのも不思議だ。営業マンから好調な数字を見せられると納得して買ってしまう。
横並びと新しもの好き。こうした投資行動の背景には日本人独特の「おカネ観」がある。立教大学大学院教授の内山節(57)は「日本人は、もの作りでおカネを得ることは評価するが、おカネがおカネを生む運用にはためらいがある」と話す。儒教的な倫理観からおカネは「卑しい」と考え、真剣に向き合ってこなかった。
<成熟への段階>
そんな風土にふってわいたのが将来への不安だ。終身雇用の崩壊、年金危機、そして少子高齢化社会-。「なんとかなるさ」でやってきた免疫のない日本の家計には、流行の金融商品やのうけ話が魅力的に映る。
横浜市の会社員、北康広(仮名、40)は1990年代、流行のIT(情報技術)株を組み入れた投信に飛びつき数百万円投資したが、気がつけば半値以下。以来、時間と資産の徹底した分散投資に転換した。国内外の株式と債券で運用する投信を少しづつ買い、通算の投資収益率は30%を上回る。試行錯誤して痛い目にあうことも日本人とおカネの関係が成熟に向かううえで必要なステップかもしれない。
リスクを理解し、多様な物差しで金融商品を評価する。こんな人が増えれば、金融資産を生かした新たな国づくりの扉を開くことができる。
【私の意見】
小豆島は私にとってとても思い出の多い島です。生まれは神戸ですが0歳から6歳まで広島県の小さな島ですごした幼少期の私にとり、小豆島は瀬戸内海に浮かぶ大きな島でした。小学校1年生の12月に私たち一家は再び神戸にもどり、小学校(神戸市立若宮(わかみや)小学校)6年生の時に全校生で映画「二十四の瞳」を観賞しました。主人公の大石久子先生の多くの教え子や小学生の娘が亡くなり、私には悲しい映画でした。中学(神戸市立鷹取(たかとり)中学校)3年生の時、修学旅行ではじめて小豆島を訪れました。紅葉した寒霞渓を名物のガイドのおじいさんがかん高い声で「ワガァー、カンカケイワァー」と自慢していました。大学(早稲田大学)3年生の夏、中央大学の学生の姉と一緒に経営していた小さな塾の塾生の小中学生を引率して、十数名で小豆島でキャンプをしました。海水浴をした土庄(とのしょう)海岸は青松白砂の美しい海水浴場でした。
私にとり小豆島の人たちは素朴でおだやかで親切な人たちという印象しかありません。“えっ!小豆島が国際投資家の島?”とても驚きました。
そもそも「貯蓄から投資へ」はニッポン人が進むべき正しい道なのでしょうか。将来への不安をおカネがおカネを生む運用ではたして解消できるのでしょうか。“将来への不安”は政府が作り出した不安であり「貯蓄から投資へ」も政府が人為的に作り出した方向です。投資にはリスクをともないます。日経記事は「リスクを理解し、多様な物差しで金融商品を評価する。こんな人が増えれば、金融資産を生かした新たな国づくりの扉を開くことができる」としていますが、そんな器用な人はどんなにふえても全体の少数です。利に聡い一部の人たちだけは金融商品で利益を蓄積するでしょうが、多くの人々は小豆島の多くの住民と同じです。投資と言えばカッコよく聞こえますが簡単に言えば儲ける為におカネを賭けることです。投資に成功して仮に儲けたとしても、それは儲けた人個人の問題であって社会に新しいものを何も生み出しません。一方で儲ける人がいれば他方で損をする人がいます。おカネを必要とする人におカネを供給するのだから間接的に社会に貢献しているという弁明には私個人としてはとても賛同できません。日経新聞が推奨する“新たな国づくり”にも賛同できません。
小豆島の人たちは、何も国際投資家にならなくとも美しい自然を生かして世界の島として生きていくことができます。小豆島が「グロソブ」でわきかえっていることを、二十四の瞳の著者の坪井栄さんや主人公の女教師大石久子先生が知ったらきっと嘆き悲しむと私は思います。
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コメント
祖母が小豆島に住んでいました。
確かに自然は美しい。
野菜も育てることができます。
魚もとれます。
でも、それだけでは現代では
成り立ってはゆかないのです。
若い世代は、島を離れ職を探します。
あとに残された
年老いた人々はどうやって
生きてゆけばいいのでしょう。
美しい自然を活かすという
美辞麗句は、島を救ってくれないのです。
投資を非難することは簡単です。
汗水たらして労働しても
食べるだけの糧を手に入れることが
できなくなりつつある現代に
または、足腰が動かなくなって働けなくても
充分な保障がない現代に
生きて行く保障を得る術として
投資を選んだ人たちを
私は非難することはできません。
きれいごとは、
充分な糧を働くことによって得られている
そしてこれからもその保障がある
幸せな人だけがいえるのです。
投稿 とおりすがり | 2007年12月10日 (月) 10時48分