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2007年10月 9日 (火)

派遣規制 労働側が攻勢 登録型禁止を

                      (10月5日 朝日新聞 より)

労働者派遣法の改正をめぐり,規制強化を求める労働側の攻勢が際立ってきた。一貫して規制緩和を勝ちとってきた経営側だが,格差問題への批判の高まりや参院選での野党大勝で,形勢は逆転。労働側が不安定な登録型派遣の原則禁止などを掲げて攻勢を強める一方,経営側は「風向きが悪すぎる」と,改正自体に及び腰だ。

【法改正へ 逆転国会追い風】

 「これまでは派遣法の改悪阻止がスローガンだったが,今度は私たちの側から労働者のための抜本改正を目指そう」。4日,労働者団体が参院議員会館で開いた集会。個人で入れる労組でつくる全国ユニオンの安部誠事務局長はこう訴えた。
 集会には約160人が参加。野党議員を招いた討論会では,「格差,貧困の原因は労働分野の規制緩和が最大の要因」などと政府を批判し,国会でも規制強化を求めていくとの発言が相次いだ。
 厚生労働省の諮問機関,労働政策審議会の部会では9月から,労使代表らによる派遣法の改正論議が本格化。厚労省は年末をめどに改正案の骨子となる建議をまとめ,来年の通常国会への改正案提出を目指している。
 労働側が最も強く求めるのは,派遣会社に労働者が登録し,派遣先が決まった時だけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」の原則禁止だ。派遣が終わると無収入になる不安定な働き方だからだ。登録型派遣を専門性が高い26業務に限定し,日雇い派遣も禁止するよう主張する。登録型で働く人は延べ193万人。改正が実現すると,かなりの人を企業が直接雇用するか派遣会社で常用型で雇うかしなければならなくなる。
 日雇い派遣に象徴される不安定な働き方は,99年の派遣対象義務の原則自由化や,04年の製造業派遣の解禁で普及した。労働側には「これまで譲歩しすぎた」(連合幹部)との反省もあり,一挙に巻き返す考えだ。
 強気の背景には,連合を支持母体とする民主党が参議院で多数を占めたことがある。野党は,偽装請負で行政指導を受けたキャノンの御手洗富士夫会長(日本経団連会長)を参考人招致し派遣法の問題点を追求する構えだ。規制緩和の急先鋒だった政府の経済財政諮問会議も,後ろ盾だった安倍前首相が辞任。福田新首相は4日の代表質問で,派遣労働の規制強化を求められ,必要な見直しを検討する方針を示した。
 激しい逆風で,事前面接の解禁などを目指していた経済界は一転弱腰に。登録型の原則禁止には明確に反対しているが,批判が強い日雇い派遣では「規律の強化には反対しない」(経営側委員)。格差批判の高まりで最低賃金の大幅引き上げをのまされた苦い経験もあり,「派遣法改正でもどんな無理難題を押しつけられるかわからない。改正見送りが最善の選択だ」(中小企業団体)との本音も漏れる。

-労働派遣法をめぐる主な論点-
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[厚生労働省資料などから作成]

【労働法学者 西谷敏教授「規制が支える自己決定」
                 (2004年11月 法律文化社)】

 労働者派遣について労働法学者の西谷敏教授は上記著書で次のように述べている(79頁)。

 労働者派遣は、労働者を雇用する者が使用せず、使用するものが雇用しない、という本質的な問題を含んでおり、派遣労働に特有の問題はすべてそこから派生している。そこで、この法律が制定された当初は、派遣が認められる業務範囲を限定することによって弊害を最小限にしようとし、業務の限定を解除した99年法は、派遣を一時的・臨時的労働力需要に対応するものとして、期間の面から限定しようとした。ところが、2003年改正は、派遣の範囲を拡大(製造業への派遣の解禁)するとともに、期間の限定を廃止もしくは大幅に緩和することによって、そもそも労働者派遣に限界をもうけようという発想そのものを正面から否定する結果となった。派遣労働は新たな時代の自由な働き方であって、積極的に位置づけられるべきものという「発想の転換」がなされたのである。しかし、有期契約の拡大や裁量労働についてもそうであるが、それらは基本的には使用者にとっての「自由な働かせ方」を意味するにすぎず、それを労働者の「自由な働き方」の拡大と説明するのは、すりかえにすぎないというべきである。

 また、同教授は、経営者の目先の利益のため労働の規制緩和がやみくもに進められてきたとして次のように指摘している(89頁)。

 この間,進行してきた規制緩和は,経営者にとっての目先の必要性のみに促されて強行されてきた感があり,戦後労働法制の基本理念への考慮の点でも,労働や労働者の変化の実証的研究の点でも,きわめて不十分といわざるをえない。まさに理念と実証を欠いたままやみくもに規制緩和が進められてきたというのが実態である。こうした労働法制再編の最大の問題は,その行き先が見えないことである。仮に労働法的規制が「悪」であるというのであれば,労働法そのものが解体されるべきことになる。

 総合規制改革会議は資本の意図を直截に反映させる構造になっていたことも指摘している(83頁)。

 総合規制改革会議や規制改革・民間開放推進会議においては,財界代表が責任者を務め,委員15人中10人ないし13人中8人を財界人が占めており(残りは研究者),資本の意図を直截に政策に反映させる構造となっている。労働政策の基本は,厚生労働省に設置された労働政策審議会やその労働条件分科会などの論議を経ないままに,まずこれらの機関答申などで決定され,それをふまえて閣議決定がなされる。したがって,各省庁や審議会の改正作業は,少なくとも公式には,すでに決定された基本方針の具体化を主たる任務とすることになる。

【私の意見】Up63

 小泉純一郎元首相は自分の好みで選んだ人たちで諮問会議を開催し、「多様な働き方」とか「多様な雇用形態」といういかさまな表現のもとに、トップダウンで非正規雇用を拡大する労働政策をがむしゃらに進めてきました。しかし、その赴くところは財界の財界による財界のための政治を一瀉千里に走ったにすぎません。働く人の労働環境や国民の日々の生活などに心を痛める人では全くありませんでした。安倍前首相も御手洗日本経団連会長と一体となって同じ路線を走っていましたが参院選で破れ挫折しました。労働契約に「多様な」メニューが用意されれば、企業は安くていつでもクビにできる契約形態を選ぶのは自然の理です。労働者の側に多様なメニューを選択できる基盤があってはじめて「多様な働き方」が実現しますが、企業が採用の自由を盾に、低賃金の非正規雇用のメニューしか労働者に提示しなければ、労働者に選択の余地はありません。
 ところで、小泉元首相、安倍前首相が政権を去ったといっても、変わってしまったものを元にもどすのはそう簡単ではありません。それどころか福田内閣と厚生労働省は次の通常国会で障害者についても正規雇用枠を減らしパート労働と派遣労働を増やそうとしています。
 ねじれ国会だからとか、福田政権になったからと言ってゆめゆめ油断することはできないと改めて感じました。
 なお、西谷敏教授は労働法学者の中の労働法学者で労働法学界の重鎮です。たまたま高校3年生のとき私は同じクラス(神戸高校3年6組)でした。私にとってとても誇りです。

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