« 2007年9月 | トップページ | 2007年11月 »

2007年10月29日 (月)

NOVA 社長解任と会社更生の申立

                  (10月27日 日本経済新聞 より)

【NOVA破綻 迷走の4ヵ月 3取締役が幕引き】

 派手な宣伝戦略で知られた英会話学校最大手、NOVAの取締役らが社長を解任して会社更生法の適用申請に踏み切った。30万人の受講者や4千900人の講師・スタッフを巻き込んでの経営破綻。6月の経済産業省の行政処分から4ヶ月の迷走を追った。
 25日午後10時30分ごろ。東京新宿の新宿NSビル23階のNOVA東京本部で臨時取締役会が始まった。4人の取締役のうち参加したのは吉里仁見、アンダース・ルンドクヴィスト、渡辺勝一の3人。代表権を持つ猿橋望はそこにはいない。議題は「猿橋代表の解任決議」。発行済み株式数の72%(2007年3月時点)を実質的に所有していたワンマン経営者がその地位から滑り落ちる瞬間だった。
 猿橋本人はその30分ほど前、同じ東京本部のオフィスに入った。しかし、猿橋は携帯電話を片手にオフィスを歩き回り、3人の取締役が集まる別室に入ることはなかった。
 猿橋抜きで社長解任を決め、そろって代表取締役に就任した吉里ら3人は即座に会社更生法の適用申請を決議。申請書は日の出を待たず午前5時ごろに大阪地裁の窓口に届けられた。

<迫る「教室崩壊」背中押す>
 “準備”はその数日前から始まっていた。「スポンサー探しやつなぎ融資でご協力をお願いしたい」。NOVAの役員ら数人が極秘に取引銀行を回り頭を下げたという。
 「財務内容も分からないのに追加融資には応じられませんよ」。金融機関の多くは慎重な姿勢を崩さなかった。それでもNOVA取締役らは行動を起こさないわけにはいかなかった。
 21日の夜7時。東京・港のJR新橋駅近くにある全国一般労働組合東京南部の事務所にNOVAで働く約20人の外国人講師らが集まった。
 「これでは家賃が払えない」「雇用保険はもらえるのか」 -。参加者らは口々に窮状を訴えた。15日に振り込まれるはずの給与は支払われないまま。集会のまとめ役で、NOVA講師のロバート・テンシーも「先月結婚したばかりなのに」と浮かぬ表情を見せた。結局、この日は16日に続く2度目の組合員全員によるストを翌日に実施することを決めて散会した。
 「スト」はこれだけにとどまらない。「きょうは講師がいないので休みです」。給料がもらえないならと自主的に“休業”する講師が増え、予約受付で受講者がこんな応対を受ける例も目立っていた。
 家賃滞納が続き、閉鎖を余儀なくされる教室も続出。26日午後、記者会見した保全管理人によると、現時点でレッスン提供が可能な教室数は今年3月末から3割弱減少し670程度になっているもようという。
 「更生法申請はぎりぎり、土壇場のタイミング」(保全管理人の高橋典明)。ひたひたと迫る“教室崩壊”が3人の取締役の背中を押す形となった。その賭けが事業継続という「実」を結ぶかどうかは今後、支援先企業がみつかるかどうかにかかっている。

【ワンマン経営 空回り 提携立ち消え 人心は離反】
                  (10月28日 日本経済新聞 より)

 細かな営業方針にも指示を出し、社員に自らを「本部長」と呼ばせていたワンマン経営者の猿橋。海外留学から帰国後、1981年に創業した英会話事業を業界トップに育てた成功体験にこだわる猿橋が他社との提携で接点を見いだすのは難しく、その後も候補が浮かんでは消えていった。
 加速する顧客離れに歯止めをかけ、資金的な後ろ盾を得るための提携策がいっこうに実現しないまま、7月下旬からは日本人社員への給与の遅配や教室家賃の支払い滞納などが表面化する。
 それでも「絶対ポジティブ」という社是を地でいくように猿橋は強気の姿勢を崩さない。「秋の上昇波動に乗るまでキャッシュアウト(現金の支出)はできる限り絞り込んでいます。社員と生徒を守るために全力を尽くしています」。7月に続き、8月も給与の遅配に陥った際には記者の質問にこう答えていた。
 だが社内の人心は離反。エリアマネージャーなど幹部級の社員が給与支払いと社長退陣を求める嘆願書をとりまとめるなどの動きも出始めた。経産省の処分後に発足した経営改革委員会のメンバーである弁護士の佐藤明夫も9月4日、猿橋以外の3人の取締役に「すぐにでも社長を解任すべきだ」と進言した。
 資金繰りに追われる当の猿橋は社外の人間と行動をともにするようになり、幹部社員も携帯やメールでしか連絡がとれないような状況になる。
 「もはや企業の体をなしていない」と非常勤監査役の戸島利夫は10月初旬、辞表を提出。ほかの2人の監査役もほぼ同時期に足並みをそろえた。経理や総務など管理業務を担当する社員が櫛(くし)の歯が欠けるように職場を去り、資金の流れをつかむことさえできない状態になっていた。
 10月13日。経産省の担当課長と会い、経営の行方を聞かれた猿はそんな状況の中でも「引き続き頑張ります」と答えるだけだったという。
 「(更生法申請が)もっと早ければより有利な形でのスポンサー選定と事業譲渡ができたはず」。猿橋を解任したNOVAの取締役らが会社更生法の適用を申請した26日。記者会見で同社の手元資金が尽きたことを明らかにした保全管理人の高橋典明と東畠敏明は、いたずらに再建への時間が浪費されたことを悔やんだ。

【私の意見】Up63

1、 英会話学校のほとんどはNOVAのように株式会社が経営しています。多くの英会話学校の経営基盤はぜい弱で、受講生が唯一の資産という経営を余儀なくされているところが少なくありません。NOVAは駅前留学とか充実した外国人講師陣をうたい文句に大々的に広告宣伝を行ってきましたが、NOVAと外国人講師とのトラブルが絶えませんでした。

2、 NOVAの会社更生手続開始申立事件で、私は会社更生法手続きの申立代理人や更生管財人を経験した立場から注目する点があります。それは会社更生法の活用という角度からです。会社の再建に利用される法的手続きとしては、民事再生法にもとづく再生手続開始申立事件と会社更生法にもとづく会社更生手続開始申立事件の2つがあります。再生手続はもともと中小企業の再建手続として考えられていましたが、この手続のもとではそれまでの経営者が引き続き経営に携わることができます。一方会社更生手続の場合には経営陣の総入れ替えが原則でした。そのため中小企業に限らず大企業でも会社更生手続ではなく再生手続を選択することが少なくありません。NOVAも猿橋社長が申立てをしていればおそらく民事再生手続の方を選んだでしょう。たまたま今回は取締役が3対1で猿橋社長を解任しましたが、発行済み株式の72%を実質所有している猿橋社長は臨時株式総会を開いて逆に3人を解任することができた筈です。ところが臨時株主総会を開くためには2週間以上の日数が必要でその隙間をぬって今回の社長解任劇が成立しました。

3、 会社更生手続開始申立事件は東京地裁でも大阪地裁でも減っています。会社更生事件はかつては日本中を驚かすビッグな事件が中心でしたが、昨今は小さなゴルフ場の会社更生申立なども受理する傾向にあります。NOVAの事例を教訓に少数株主・少数取締役・一般債権者・労働債権者という弱い立場の者にも利用しやすいよう法制度を整備し、公正・衡平な再建手続の一層の充実を図る必要があると思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年10月26日 (金)

男と女 賃金格差大国 日本

                     (10月26日 朝日新聞 より)

【同一価値労働同一賃金へILO「法律を」】

 「同じ価値の労働なら性別に関係なく同じ賃金」を定めた国際条約をめぐり,国際労働機関(ILO)と日本政府の意見が合わない。この原則を定めた条約を日本は批准しているが,原則を規定した法律が日本にあるかどうかがあいまいで,男女の賃金格差も依然大きいからだ。ILOは日本政府に,来月までに原則実現のためどんな措置をとるかを報告するよう求めている。

【同一価値労働同一賃金】

 違う仕事でも「価値」が同じなら同じ賃金とする原則。「同一労働同一賃金」だと,「司書など女性の多い仕事の賃金が安く,消防士など男性が多い仕事が高い」といった性別役割分業による格差を正せないため,考え出された。知識・技能,精神的・肉体的負荷,責任,労働環境の厳しさの4要素で職務を評価するのが一般的で,欧米で普及している。

【政府「労基法で整備済み」】

 「日本は男女の賃金格差ではあまり成績がよくないといえる」「日本はまだやらなければならないことがたくさんある」
 先月,スイスのILO本部を訪れた「ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク(WWN)」など日本の女性NGOを前に,平等担当コーディネーターのショーナ・オルネイさんは言い切った。
 日本政府は,男女の同一価値労働同一賃金を規定したILO100号条約を1967年に批准した。その際,労働基準法4条が「女性であることを理由に賃金において男性と差別的取り扱いをしてはならない」と定めており,新法がなくても条約を実施できるとした。
 しかし,ILOの条約勧告適用専門委員会は今年,「労基法4条は条約の原則を完全には反映していない」「男女の同一価値労働同一賃金の原則を法令の形で表明することの検討を希望する」との見解を公表した。
 6月の総会では日本政府,連合,経済界代表が招かれ,「客観的な職務評価手法を促進する努力の強化」を求められた。職務評価とは,同一価値労働同一賃金かどうかを判断する手法だ。
 厚生労働省の安藤よし子雇用均等政策課長は「労基法4条は同一価値労働同一賃金の原則を含んでおり,新しい法令は必要ない」と話す。03年に男女間の賃金格差解消のガイドラインは作成したが,職務評価については特に具体策を出してはいない。ILO見解も強制力はない。だが,ILOは日本政府の報告を審査し,さらに見解を出す可能性もある。

【コース別人事 隠れみの】

 日本の女性社員の賃金水準は男性正社員の66%で,欧米諸国よりはるかに低い。パートの場合は半分以下だ。
 東京都の木村敦子さん(50)らは95年,総合商社兼松を相手に訴訟を起こした。年内にも控訴審判決が予定されている。
 「コース別人事で『一般職』に仕分けされ,何年働いても27歳の男性総合職の賃金を超えない。残業も引きうけ,仕事もさして変わらないのに」と木村さん。一審ではコースの違いにすぎないとされ,敗訴した。
 98年には,労働事件などを担当する裁判官でつくる協議会が「実定法上,同一労働同一賃金の原則を定めた規定も見あたらない」との見解でほぼ一致。賃金格差を判断する手がかりとして,男女別の賃金規定の有無などを挙げた。
 労働基準監督署でも,05年の約12万件の定期監督のうち,4条違反の指摘はわずか10件。ある監督官は「露骨な男女別賃金は激減し,コースの違いやパートを理由とするものがほとんどで摘発しにくい」と話す。

【職務給転換に落とし穴】

 内外の批判を受けて,経営側も,性別にかかわりなく「職務」で評価する賃金制度への切り替えを強調し始めた。日本経団連国際協力センターの鈴木俊男参与は,6月のILO総会で「かつては70%が(年功制度など)属人的な賃金で,30%が仕事に対する賃金だったが,最近は逆転した」。日本経団連も5月,「今後の賃金制度における基本的な考え方」で「仕事,役割,貢献度」を軸にする賃金への転換を求めた。
 しかし,森ます美昭和女子大教授は「貢献度を評価基準に含む日本型職務給では,主観的な裁量が幅をきかせかねず,性差別の解消につながらない」と言う。
 名古屋銀行のパート,坂喜代子さん(55)は1年契約を更新して28年間働き,退職行員の仕事を引き継ぎ,転勤も命じられた。今年5月,パート労働法が改正されて「正社員と同じ仕事,転勤あり,無期雇用」のパートに正社員と同じ待遇が義務づけられ,この条件に合うとして銀行側と待遇改善の交渉を始めた。
 だが,同行は「行員は指揮命令,パートはその実行で仕事が違う。転勤も別の職場で再契約しただけ」と主張。坂さんは「これでは会社の言いなりです」と警戒する。
 朝倉むつ子早大教授は「客観的な評価で賃金紛争を解決するために,専門家に職務評価を委託できる仕組みを労働審判制度に作ってはどうか」と提案する。「同一価値労働同一賃金の立法化だけでなく,使いこなす手段を作らないと,絵に描いたモチになる」

【私の意見】Up63

 厚労省の安藤よし子雇用均等政策課長が,労基法4条があるから「新しい法令は必要がない」と言っていることはうなづけません。労基法4条の規定「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」の表現は一見明快ですが抽象的なため,これが現実に機能していないところに問題があります。これを現実に実効性あるものにするのが厚労省の役割です。労基法4条違反には6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する旨の刑罰規定があるわけですから(労基法119条1号),厚労省が労基法4条で十分だと思うのなら労基法4条違反を理由に労働基準監督署に告発をさせる位の気迫で事にあたるべきです。
 私は40年間さまざまな形で女性と一緒に働いてきました。知識,技能,精神力,体力,責任感のどれ一つをとっても男性と女性の差は全くないというのがまぎれもない事実です。“差は全くない”とわざわざ言い立てること自体が女性の方に失礼なことですよね。
 にもかかわらず,日本の企業や官庁において女性が正当に評価されていないこともまぎれもない事実です。私が顧問弁護士として大企業の株主総会に出席していつも思うことは男一色の世界だということです。取締役,監査役に女性が就任している例はまだまだ希です。株主席には一般株主として女性の出席も目立つようになりましたが,株主総会をリードしている株主はあくまで男性です。
 女性や若い人を登用している企業の社内の雰囲気は明るく発想も柔軟だなというのが私がいつも感じるところです。私は株主総会に出席するたびに経営陣にもっと女性を登用した方が良いというのですが,大多数の企業は本気にはならないようです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月23日 (火)

母子家庭「使えぬ」就業支援

                      (10月22日 朝日新聞 より)

 母子家庭への児童扶養手当を減らす代わりに厚生労働省が力を入れるとしていた就業支援事業の利用が進んでいない。06年度の実施状況を朝日新聞社が都道府県などに聞いたところ、正社員化を促す企業への助成金は予算見込みの約1割、資格取得のための給付金も半分以下しか使われていない実態が浮かび上がった。

【母子家庭の就業支援事業】

 中心は、ホームヘルパーなどの講座を受け資格を取った場合に費用の4割(10月から2割)を支給する「自立支援教育訓練給付金」、看護師など2年以上かかり資格を取る際に12ヶ月を上限に最後の3分の1の期間に毎月10万3千円を支給する「高等技能訓練促進費」、母親を正社員で雇った企業に30万円の助成金を出す「常用雇用転換奨励金」の3事業。厚労省はこれらの事業を含む「母子家庭等対策総合支援事業費」として、06年度、自治体へ補助金19億円を計上している。

【正社員化助成 見込みの1割】

 厚労省は来年4月から、受給後5年を超える母子家庭の手当てを最大半分まで減らす方針だが、これとセットになった自立支援が進んでいない実態を受け、手当削減の凍結を検討している与党の判断が注目される。
 調査は、母親の資格取得を支援する「自立支援教育訓練給付金」、資格取得に期間がかかる場合に支援する「高等技能訓練促進費」、企業に母子家庭の母親の正社員化を促す「常用雇用転換奨励金」の3事業について、06年度当初予算に対する利用実績(決算・決算見込み)を調べた。主に町村部をカバーする都道府県と、県庁所在地の市、政令指定市に聞き、都道府県ごとに合算した(東京は都のみ)。
 厚労省は03年度の事業開始から毎年、実施している自治体数を公表しているが具体的な実施状況は明らかにしていない。
 もっとも実績が低かったのは、常用雇用転換奨励金で、平均実施率は12.4%。予算を組んだ31都道府県のうち22都道府県が実績ゼロ。制度を始めてから4年間ずっと利用がないため、今年度は予算計上自体を見送った県もあった。
 自立支援教育訓練給付金も、平均の実施率は45.6%。高等技能訓練促進費は、一部で予算を上回ったが実績ゼロの所もあり、地域によってばらつきが大きかった。
 厚労省母子家庭等自立支援室は「制度の周知部不足や、自治体による取り組みの差がある」と説明するが、自治体側からは「母子家庭の実態に合っていない」「制度の使い勝手が悪い」といった声が出ている。厚労省も来年度から、母子家庭向けの貸付金の返済期間を10年から20年に延ばす、高等技能訓練で入学一時金支給の制度を設ける-など使いやすくする見直しを検討している。
 母子家庭は約123万世帯で、うち児童扶養手当を受けているのは95万5844世帯(07年3月)。この約3割が、受給開始から5年以上がたち手当削減の対象になるとみられている。
 02年11月に成立した改正母子・寡婦福祉法の衆・参両院の付帯決議では、実際に児童不要手当を減らすための政令を決める際には法改正後の就業支援策の進み具合や母子家庭の状況なども考慮するとされている。

【就業支援現実離れ 3児の母(31)「資格取りたいが、
               日々の生活が目の前にある」 】

 「5年後に母子家庭への就業支援の実が本当に上がるのか。手当だけが削減されることにならないか」。児童扶養手当を減らす仕組みを導入した02年、国会で与野党双方から出た心配の声が現実になってきた。就業支援策はなぜ届かないのか。苦しい生活状況のままの母子家庭への手当を、削減していいのだろうか。

<児童扶養手当>
 母子家庭は所得に応じて月額9850~4万1720円が受給できる。2人世帯(子ども1人)の場合、年収130万円未満の世帯は満額を受給し、それ以上には減額、365万円以上は受けられない。2人目の子には5千円、3人目以降は3千円が加算される。

<自己負担分が重荷>
 「使えない制度はないのと一緒。『支援はしている』と手当の削減を正当化したい、国のための制度としか思えない」
 3年前に離婚し、6歳から10歳まで3人の子どもを育てる都内の女性(31)は、就業支援事業をそう怒る。
 離婚直後、医療事務の資格を取ろうと働きながら通信講座を受けた。当時は昼間のパートの後、家で子どもたちを寝かせてから時給880円の回転すし屋で働いた。
 夜、目を覚ました子どもから携帯電話に「ママ、どこにいるの」と泣きながら電話がかかる。胸を締め付けられる思いで耐えたが、結局3ヵ月で体を壊し、通信講座は断念した。約7万円の受講料はすべて自腹だ。「みんな自立したい、資格を取りたい。でも、仕事や子育て、日々の生活が目の前にある。その現実を、国はどこまでわかっているのか」
 子育てによる制約に加えて、経済的な負担も大きな壁だ。
 東北地方のある自治体の担当者は先日、母親からパソコンの講習を受けたいと給付金の申し込みを受けたが、母親は授業料が工面できず取り下げた。「無利子の貸付制度も勧めたが、将来の展望がないから、借金には二の足を踏むようだ」
 比較的、実績の高い政令指定市でも、例えば名古屋市では教育訓練給付金に2400万円の予算をとったが支給したのは500万円余り。常用雇用転換奨励金は54人分で1620万円を見込んでいたのに1件30万円の利用があっただけだ。
 厚労省の年次報告によると、昨年末までに制度を利用できた人は3事業合計で1万1千人余りで、常用雇用転換奨励金で正社員になったのはわずか92人。「初年度だけで約1万人が対象」という制度導入時に掲げた目標を4年かけてようやく上回った。

<手当削減方針自治体も懸念>
 「手当を減らされたらダブルワーク(仕事のかけ持ち)をして収入を上げるしかありません。今でも働き詰めなのに。私が倒れたら子どもたちはどうなるのかという不安を、ひとり親家庭の親はみんな抱えている」
 今月14日。東京・青山や大阪・梅田の街頭で、「これ以上働けません」「母子家庭の子どもたちに生きる権利を」などと書かれたプラカードを手にした母親たちが、母子家庭の厳しい生活状況や児童扶養手当削減への不安を訴えた。
 その2日後、厚労省は「母子世帯の収入が少し増えた」とする06年度全国母子世帯等調査の結果を公表した。しかし、景気が最悪だった時からやや上向いたとはいえ、平均年収213万円は今も一般世帯平均の4割に満たず、8年前の水準も回復できていない。
 そんな状況に、福祉の現場を担う自治体も、危機感を募らせる。政令指定市に東京を加えた18大都市の児童福祉主管課長会議は7月、手当の削減について、母子世帯の生活実態や自立支援の施策の進み具合などを踏まえて、慎重に対応するように求める要望書を厚労省に提出した。
 仕事の収入と児童扶養手当でぎりぎりの生活をしている母子家庭が、手当の削減をきっかけに生活保護に頼らざるを得なくなるかもしれないという心配がある。
 「手当だけ減らして、生活保護を増やしてどうするんだ、という声はある」(公明党幹部)。与党内にも、そんな声はくすぶる。
 神戸学院大学の神原文子教授は「日本の母子家庭は8割以上がすでに仕事をしており、先進国の中でも高い水準だ。それでも安定した生活ができないような低賃金に置かれていることが問題で、厚労省の就業支援は安定雇用につながっていない」と指摘。
 そのうえで、「自治体がんばれ、企業がんばれだけでは事態は打開できない。最低賃金の引き上げや同一労働同一賃金など、普通の働き方でも収入がアップできるような施策に、国自身も積極的に取り組むべきではないか」と話している。

【私の意見】Up63

 障害者自立支援法がペテンにみちた法律であることは何度も指摘しましたが、母親の自立支援も同じようにペテンにみちみちています。金満国日本が最も支えなければいけない人を切り捨ててこの国に希望にみちた未来があろう筈がありません。交通事故による脊髄損傷できわめて重い障害を負った医師(友人)が、障害者自立支援法は私たちを犠牲にした国家財政自立支援法だと言っていました。ある母親は“自立”“自立”と言われるたびに“出て行け!”“出て行け!”と言われているような暗い気持ちになると言っていました。小泉純一郎が“改革!”“改革!”と叫んだ中味は一番弱い人に自立という名のもとに犠牲を強いるものでしたが、これに対し深くも考えずに喝采を送った大多数の日本人にも責任があります。障害者であれ母子家庭であれ大多数の日本人にとり所詮他人事です。“自立はあたり前だ!”という単純思考で涼しい顔をしているのが残念ながらわが民族の社会的成熟度のレベルです。福田康夫さんは温もりのある社会をめざすと言っていましたが、格差が歴然とできてしまった現状では“これもお題目だけで終わる可能性”が大だと思ったほうが無難です。温もりのある社会に向けて大手術をする気概が福田さんから伝わってきません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月18日 (木)

アフガン部隊参加 野党に不協和音

                   (10月12日 日本経済新聞 より)

 民主党の小沢一郎代表が打ち出したアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊の参加という「持論」を巡って、党内外に不協和音が生じている。ISAF参加は政権を取った後の戦略とはいえ、武力行使を伴いかねず「憲法違反」との受け止めがある。

【小沢氏持論、抵抗強く】

 小沢氏の主張の根幹は、国連安全保障理事会の決議に基づく活動は「国連の発動」である自衛権を超えたもので、仮に武力行使を伴っても憲法9条には違反しないというもの。給油活動の継続に反対するのも直接的な国連決議がないとみるからだ。
 党内の旧社会党系や中堅・若手議員の一部には海外での武力行使への抵抗感が強い。11日の参院民主幹部らの会合では「政局の潮目の変化につながりかねない。政治家は得意分野で失敗しやすい」などの声があがった。
 同党幹部は一斉に不安の打ち消しに走っている。山岡賢次国会対策委員長は同日の記者会見で、小沢氏が持論に関して「嫌なら離党する以外にない」と発言したことについて「一般論を言っただけで、小沢氏の考えに賛成できなければ党にいられない、と言ったわけではない」と指摘した。
 ISAF参加論は、次期衆院選に向けて共闘を強めようとしている野党内でも反発が出ている。
 共産党の志位和夫委員長は記者会見で「新法に反対する一点では協力していく」と力説したが、ISAFへの参加は「憲法は国連決議があろうと、なかろうと海外での武力行使、威嚇を禁止している。憲法違反だ」と強調。社民党の福島瑞穂党首も連合大会で、小沢氏の退席後のあいさつで「ISAFへの参加は明確な憲法違反であり、認められない」と訴えた。

【公開書簡 「今こそ国際安全保障の原則確立を」
         自衛隊洋上給油活動 どう考えるべきか
      川端清隆氏への手紙  小沢一郎(民主党代表)】

                      (世界2007年11月号 より)

 自民党政府(内閣法制局)は今も、国連の活動も日本の集団的自衛権の行使に当たると解釈し、したがって国連憲章第7章第42条に基づく武力の行使(PKO、国連の認める多国籍軍等を含む)に参加することは憲法第9条に違反する、という解釈を続けています。では、それならなぜ、アフガンで「不朽の自由作戦」を主導する米軍を自衛隊が支援できるのでしょうか?集団的自衛権の行使を、ほぼ無制限に認めない限り、日本が支援できるはずがないのです。実際、カナダ、オーストラリアなどもその作戦に参加していますけれども、日本以外の参加国はほとんど集団的自衛権の行使として米軍に協力しています。
 ところが、日本政府は今も、集団的自衛権の行使は憲法上できないと主張しています。貴方も思い起こして下さい。湾岸戦争の時、自民党幹事長だった私は、戦闘部隊を送る必要はないけれども、せめて後方の野戦病院や、あるいは補給艦による物資などの輸送などはできるのではないか、と強く主張しましたが、内閣法制局も各省の当局者も反対しました。その時の憲法解釈は、国連活動の後方支援であっても、武力の行使と一体のものだ、だから、それに参加することは憲法第9条に抵触する、という論理でした。

 私は、日本国憲法の考え方からいって、米国であれどの国であれ、その国の自衛権の行使に日本が軍を派遣して協力することは許されないと解釈しています。同時に、国連の活動に積極的に参加することは、たとえそれが結果的に武力の行使を含むものであっても、何ら憲法に抵触しない、むしろ憲法の理論に合致するという考えに立っています。

 つまり、個々の国家が行使する自衛権と、国際社会全体で平和、治安を守るための国連の活動とは、全く異質のものであり、次元が異なるのです。国連の平和活動は国家の主権である自衛権を超えたものです。したがって、国連の平和活動は、たとえそれが武力の行使を含むものであっても、日本国憲法に抵触しない、というのが私の憲法解釈です。
 ちなみに、そのことについて、明確に述べている憲法学者がいます。横田喜三郎さんという東大教授で、のちに最高裁判所長官を務めた方です。横田さんの著書をお読みいただけば、より明確に理解していただけると思います。
 それから貴方は、私がアフガンのISAF(国際治安支援部隊)への参加の可能性を示唆していると書いていますが、私の主張はそんなあいまいな話ではありません。国連の決議でオーソライズされた国連の平和活動に日本が参加することは、ISAFであれ何であれ、何ら憲法に抵触しないと言っているのです。もちろん、具体的にどんな分野にどんな形でどれだけ参加するかは、その時の政府が政治判断をして決めることです。しかし、日本政府はこれまで、全て日本国憲法を盾に国連活動への参加を拒否してきました。私は、まずその姿勢を改めるべきだと、繰り返し主張しているのです。

 もちろん、今日のアフガンについては、私が政権を取って外交・安保政策を決定する立場になれば、ISAFへの参加を実現したいと思っています。また、スーダン(ダルフール)については、パン・ギムン国連事務総長がかつてない最大規模のPKO部隊を派遣したいと言っていますが、PKOは完全な形での国連活動ですから、当然、それにも参加すべきだと考えています。

 繰り返しますが、日本の国際社会への貢献、特に侵略あるいはテロに対する強制力の行使について、日本はこれまで、憲法を盾にとって一貫して消極姿勢をとってきました。私は、それは大きな過ちだと考えています。しかし同時に、日本国憲法の理念と第9条の考え方は、変える必要がない、むしろ忠実に実現すべきだと思っています。したがって、憲法の理念に従って、あらゆる分野で国際貢献を積極的にしていかなければならない、というのが私の結論です。

【私の意見】Up63

 安倍晋三という右翼的政治家に反対していたときは、小沢一郎氏は平和の旗手のようにうつりがちでしたが、小沢一郎という人物は、まあこの程度の人でしょう。憲法9条に対する忠実度においても、集団的自衛権の抑制においても、小沢一郎氏よりも福田康夫現首相の方がまだ信頼できるといえます。小沢氏が「もちろん、今日のアフガンについては、私が政権を取って外交・安保政策を決定する立場になれば、ISAFへの参加を実現したいと思っています」と断定している点については安倍晋三氏と共通した軍事行使を正義とする思想が根底に流れていて恐くなりました。小沢氏は長い間政治家をやっているわけですから国連決議が大国の駆け引きでいかようにも変わることを十分知っている筈です。国連決議があれば自衛隊は海外で武力行使をできるというのは子どもじみた論理です。そのうえ、米軍、カナダ軍、オーストラリア軍が武力行使をすることによってアフガンの人々は幸せになっているのでしょうか。これに日本軍が加われば更に幸せになると小沢氏は本気で思っているのでしょうか。米軍の介入をきっかけに国民相互の殺傷がイラクだけでなくアフガン、パキスタンにひろがっている実態をどのように受け止めているのでしょうか。ねじれ国会はひとりひとりの政治家の真価が問われます。同時に日本国民も真価を問われる重大な岐路に立っているといえます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月13日 (土)

京セラ 稲盛会長 社員の幸せ追う

【『働くニホン』 京セラ名誉会長 稲盛和夫氏 
                          きしみを越えて
                  (10月10日 日本経済新聞 より)

 組織を率いるリーダーは現場の力をどう引き出せばいいのか。経営者と社員のベクトルを一致させることは可能なのか。京セラの創業者として一貫して「和の経営」を主張してきた稲盛和夫名誉会長に聞いた。

【社員の幸せ追う】

 ――安倍前首相の突然の辞任で首相が代わり、リーダーのあり方が改めて問われている。リーダーの役割とは。
 「組織が目標に向かって進むには、その集団がどういう目的で存在するのかリーダーがはっきり示し、部下に理解・納得してもらわないといけない。世界平和のため、環境のためといった大義名分も必要だが、それだけでは働く人の日常から離れており、人を奮い立たせることはできない」
 「『美しい国』というスローガンは結構だったが、私たちの日々の生活からは遠かった。京セラは私が開発した技術を世に問う会社として1959年にスタートしたが、3年後に『全従業員の物心両面の幸せを追求する』という文書を社是に加えた。人類社会に貢献すると同時に、従業員が少しでも幸せな生活を送れるようにする必要があると考えたからだ」
 ――どんな組織が理想的なのか。
 「会社組織に経営者と社員という立場があるのは確かだが、私は昔から皆が同志でありパートナーという考えでやってきた。弁護士事務所のように同じ目的を持った人が集まり、上下でなく横の関係でやっていくという形だ。共に喜び共に苦しむ。一体感がある組織を作ることが一番大事だ」
 「リーダーは孤独といわれ、それが前首相の退任を招いた。しかし、苦しみを共有してくれる同志がいれば相当苦しい局面でも耐えていける。それにはトップが持っている経営哲学を開陳し、社員に理解してもらうことが大切だ。そういう組織は金太郎飴のようだとばかにされるが、だからこそ強い。トップにきちんとした哲学があるなら、まず金太郎飴であるべきではないか」

【意欲の低下防げ】

 ――正社員と非正社員など多様な人が同じ職場で働き、きしみも起きている。
 「経営者は株式価値を大きくするという使命のもと、働く社員をモノと見なしてきた。優秀な人を安い給料で雇って効率を上げる発想だ。非正社員は同じ職場で同じ仕事をしているのに待遇が違い、将来の保証もない。砂をかむような人間関係の中で働かせていれば、会社がひとたび傾いたときに内側から瓦解する。京セラは一部のパートを除けば、派遣労働者は使っていない」
 ――競争を勝ち抜くには経営効率を追求する必要があるのでは。
 「効率を求めたといえば言葉はいいが、経営者や株主がエゴイスティックになっている面はないだろうか。成果主義は経営者からみたら楽な手法だが、現場は疑心暗鬼に陥り、モラール(意欲)も低下していく」
 「3百年続いた中国・唐の太宗の言行録『貞観政要』に『君主たるものの道はまず百姓を存すべし』とある。知略を尽して君主になった人が、民を大事にしなければ国は滅びると言っている。経営も同じ。従業員が安心して働けるようにしなければ君主は倒される」

【稲盛和夫】
      (フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 より)

 稲盛 和夫(いなもり かずお、1932年1月30日生まれ )、日本の実業家。京セラ・第二電電(現KDDI)創業者。
鹿児島県生まれ。鹿児島市立鹿児島玉龍高等学校を経て、1955年鹿児島大学工学部を卒業。卒業後、がいしメーカーの松風(しょうふう)工業を経て、1959年、社員8人で京都セラミックス(現在の京セラ)を設立し、10年後、株式上場。ファインセラミックスの技術で世界的な企業に成長させた。1984年には第二電電(DDI、現在のKDDI)を設立した。
1984年、財団法人稲盛財団を設立し、京都賞を創設した。また、若手経営者向けの経営塾「盛和塾」を非営利にて主宰し、若手経営者の育成も行っている。
2005年、立命館小学校こども顧問委員に就任。
朝子夫人は、「韓国農業の父」として知られる禹長春の四女である。

<稲盛和夫の言葉>
-人生・仕事の結果 = 考え方 × 熱意 × 能力- 
 能力とは、才能や知能といった「先天的な資質」を表し、熱意とは、情熱や努力する心といった「後天的な努力」を表す。考え方とは、哲学や思想、倫理観といった生きる姿勢、それらをすべて包含した「人格」を表す。本人によると、最も大事なものが考え方であり、能力と熱意は0点から100点までの点数があるのに対し、考え方は-100点から100点までが存在する、とされている。

-動機善なりや、私心なかりしか- 
 DDIを設立し、電気通信事業へ参入するにあたって、自身の動機に利己的な心、「私心」がないかと、半年間にわたり自問したときの言葉。

-楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する- 
 物事を行うときに取るべき態度を表した言葉。構想を練る段階では、そのアイデアの可能性を引き出せるように楽観的になるのがよい。具体的な計画を立てる段階では、あらゆるリスクを想定し、慎重かつ細心の注意を払って厳密にプランを練るのがよい。実行する段階では、思い切って行動するのがよい。

-自燃性の人間、可燃性の人間、不燃性の人間- 
 ここでいう燃性とは、物事に対する熱意や情熱を表す。自燃性の人間とは、自分から率先して物事に取り組み、エネルギーを周囲に分け与える人を指す。可燃性の人間とは、自燃性の人や、既に燃え上がっている可燃性の人の影響を受けて燃え上がる人を指す。不燃性の人間とは、周囲からエネルギーを与えられても燃え上がらず、むしろ周りの人から熱意や情熱を奪う人を指す。

【私の意見】Up63

 松下幸之助氏が1894年11月生まれで1989年4月に94歳で亡くなり、盛田昭夫氏が1921年1月生まれで1999年10月に78歳で亡くなり、鬼塚喜八郎氏が1918年5月生まれで2007年9月に89歳で亡くなりました。稲盛和夫氏は、1932年1月生まれで盛田昭夫氏や鬼塚喜八郎氏と比べ一回り若い世代ということになります。30代後半に京セラの上場をはたし、多方面で活躍し、私には“派手な人だなあ”という印象の方が強かったのですが10月10日の日本経済新聞の記事を見て“おや、自分の思っていた人と違うぞ”というのが正直なところでした。早くから起業に花開き、潤沢な資金をバックにしながら積極的に社会貢献活動をやってこられた方だということを知りました。“人のため世のために役立つことをなすことが人間として最高の行為である”というのが稲盛氏の理念です。稲盛氏の理念に賛同します。75歳の現役の経営者として稲盛氏が一層活躍されることを期待致します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月 9日 (火)

派遣規制 労働側が攻勢 登録型禁止を

                      (10月5日 朝日新聞 より)

労働者派遣法の改正をめぐり,規制強化を求める労働側の攻勢が際立ってきた。一貫して規制緩和を勝ちとってきた経営側だが,格差問題への批判の高まりや参院選での野党大勝で,形勢は逆転。労働側が不安定な登録型派遣の原則禁止などを掲げて攻勢を強める一方,経営側は「風向きが悪すぎる」と,改正自体に及び腰だ。

【法改正へ 逆転国会追い風】

 「これまでは派遣法の改悪阻止がスローガンだったが,今度は私たちの側から労働者のための抜本改正を目指そう」。4日,労働者団体が参院議員会館で開いた集会。個人で入れる労組でつくる全国ユニオンの安部誠事務局長はこう訴えた。
 集会には約160人が参加。野党議員を招いた討論会では,「格差,貧困の原因は労働分野の規制緩和が最大の要因」などと政府を批判し,国会でも規制強化を求めていくとの発言が相次いだ。
 厚生労働省の諮問機関,労働政策審議会の部会では9月から,労使代表らによる派遣法の改正論議が本格化。厚労省は年末をめどに改正案の骨子となる建議をまとめ,来年の通常国会への改正案提出を目指している。
 労働側が最も強く求めるのは,派遣会社に労働者が登録し,派遣先が決まった時だけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」の原則禁止だ。派遣が終わると無収入になる不安定な働き方だからだ。登録型派遣を専門性が高い26業務に限定し,日雇い派遣も禁止するよう主張する。登録型で働く人は延べ193万人。改正が実現すると,かなりの人を企業が直接雇用するか派遣会社で常用型で雇うかしなければならなくなる。
 日雇い派遣に象徴される不安定な働き方は,99年の派遣対象義務の原則自由化や,04年の製造業派遣の解禁で普及した。労働側には「これまで譲歩しすぎた」(連合幹部)との反省もあり,一挙に巻き返す考えだ。
 強気の背景には,連合を支持母体とする民主党が参議院で多数を占めたことがある。野党は,偽装請負で行政指導を受けたキャノンの御手洗富士夫会長(日本経団連会長)を参考人招致し派遣法の問題点を追求する構えだ。規制緩和の急先鋒だった政府の経済財政諮問会議も,後ろ盾だった安倍前首相が辞任。福田新首相は4日の代表質問で,派遣労働の規制強化を求められ,必要な見直しを検討する方針を示した。
 激しい逆風で,事前面接の解禁などを目指していた経済界は一転弱腰に。登録型の原則禁止には明確に反対しているが,批判が強い日雇い派遣では「規律の強化には反対しない」(経営側委員)。格差批判の高まりで最低賃金の大幅引き上げをのまされた苦い経験もあり,「派遣法改正でもどんな無理難題を押しつけられるかわからない。改正見送りが最善の選択だ」(中小企業団体)との本音も漏れる。

-労働派遣法をめぐる主な論点-
Roudou07105
[厚生労働省資料などから作成]

【労働法学者 西谷敏教授「規制が支える自己決定」
                 (2004年11月 法律文化社)】

 労働者派遣について労働法学者の西谷敏教授は上記著書で次のように述べている(79頁)。

 労働者派遣は、労働者を雇用する者が使用せず、使用するものが雇用しない、という本質的な問題を含んでおり、派遣労働に特有の問題はすべてそこから派生している。そこで、この法律が制定された当初は、派遣が認められる業務範囲を限定することによって弊害を最小限にしようとし、業務の限定を解除した99年法は、派遣を一時的・臨時的労働力需要に対応するものとして、期間の面から限定しようとした。ところが、2003年改正は、派遣の範囲を拡大(製造業への派遣の解禁)するとともに、期間の限定を廃止もしくは大幅に緩和することによって、そもそも労働者派遣に限界をもうけようという発想そのものを正面から否定する結果となった。派遣労働は新たな時代の自由な働き方であって、積極的に位置づけられるべきものという「発想の転換」がなされたのである。しかし、有期契約の拡大や裁量労働についてもそうであるが、それらは基本的には使用者にとっての「自由な働かせ方」を意味するにすぎず、それを労働者の「自由な働き方」の拡大と説明するのは、すりかえにすぎないというべきである。

 また、同教授は、経営者の目先の利益のため労働の規制緩和がやみくもに進められてきたとして次のように指摘している(89頁)。

 この間,進行してきた規制緩和は,経営者にとっての目先の必要性のみに促されて強行されてきた感があり,戦後労働法制の基本理念への考慮の点でも,労働や労働者の変化の実証的研究の点でも,きわめて不十分といわざるをえない。まさに理念と実証を欠いたままやみくもに規制緩和が進められてきたというのが実態である。こうした労働法制再編の最大の問題は,その行き先が見えないことである。仮に労働法的規制が「悪」であるというのであれば,労働法そのものが解体されるべきことになる。

 総合規制改革会議は資本の意図を直截に反映させる構造になっていたことも指摘している(83頁)。

 総合規制改革会議や規制改革・民間開放推進会議においては,財界代表が責任者を務め,委員15人中10人ないし13人中8人を財界人が占めており(残りは研究者),資本の意図を直截に政策に反映させる構造となっている。労働政策の基本は,厚生労働省に設置された労働政策審議会やその労働条件分科会などの論議を経ないままに,まずこれらの機関答申などで決定され,それをふまえて閣議決定がなされる。したがって,各省庁や審議会の改正作業は,少なくとも公式には,すでに決定された基本方針の具体化を主たる任務とすることになる。

【私の意見】Up63

 小泉純一郎元首相は自分の好みで選んだ人たちで諮問会議を開催し、「多様な働き方」とか「多様な雇用形態」といういかさまな表現のもとに、トップダウンで非正規雇用を拡大する労働政策をがむしゃらに進めてきました。しかし、その赴くところは財界の財界による財界のための政治を一瀉千里に走ったにすぎません。働く人の労働環境や国民の日々の生活などに心を痛める人では全くありませんでした。安倍前首相も御手洗日本経団連会長と一体となって同じ路線を走っていましたが参院選で破れ挫折しました。労働契約に「多様な」メニューが用意されれば、企業は安くていつでもクビにできる契約形態を選ぶのは自然の理です。労働者の側に多様なメニューを選択できる基盤があってはじめて「多様な働き方」が実現しますが、企業が採用の自由を盾に、低賃金の非正規雇用のメニューしか労働者に提示しなければ、労働者に選択の余地はありません。
 ところで、小泉元首相、安倍前首相が政権を去ったといっても、変わってしまったものを元にもどすのはそう簡単ではありません。それどころか福田内閣と厚生労働省は次の通常国会で障害者についても正規雇用枠を減らしパート労働と派遣労働を増やそうとしています。
 ねじれ国会だからとか、福田政権になったからと言ってゆめゆめ油断することはできないと改めて感じました。
 なお、西谷敏教授は労働法学者の中の労働法学者で労働法学界の重鎮です。たまたま高校3年生のとき私は同じクラス(神戸高校3年6組)でした。私にとってとても誇りです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月 2日 (火)

高村外相 障害者権利条約に署名

                  (9月29日 朝日新聞夕刊 より)

【障害者権利条約に署名 政府、締結へ法整備検討】

 高村外相は28日午後(日本時間29日未明)、国連本部で障害者への差別撤廃と社会参加の促進を求める人権条約「障害者の権利条約」に署名した。同条約の最初の署名式は今年3月に行われ、80カ国以上が署名したが、日本政府は「国内法の整備が整っていない」として見送った経緯がある。
 日本は外務省や法務省、警察庁など9省庁で構成する「障害者権利条約にかかわる対応推進チーム」をすでに発足させている。今後、同チームを中心に、関連する法律の改正などを検討し、早期の締結(批准)をめざす考えだ。
 同条約は、締約国に対し、交通、教育、雇用などの面で障害者の立場改善のための立法・行政措置を要求、障害者を差別する国内法や習慣の廃止を義務づけている。06年12月の国連総会で全会一致で採択された。
 条約に署名済みの国は9月27日時点で、113カ国と欧州共同体(EC)。必要な法整備をして条約を締結している国はクロアチアやキューバなど5カ国。条約が発効するには、20カ国以上の締結が必要となる。 (佐藤武嗣)

【温暖化対策「政治決断を」 
               高村外相 国連で積極関与訴え】

 高村外相は28日夜(日本時間29日午前)、国連総会で演説した。気候変動問題について「世界の指導者たちは拡大する課題に対処するため、思い切った新たな政治決断をする責任を有している」と述べ、すべての主要な温室効果ガス排出国の参加を念頭に、「ポスト京都議定書」に向けた新たな枠組みづくりに積極的に関与する必要があるとの考えを強調した。

 高村氏はさらに、「来年の北海道洞爺湖サミットを通じて、国際的な合意づくりに貢献し、その成果を国連プロセスの中に反映させていく」との決意を表明した。

<アフリカの平和なくして、世界の平和と繁栄はあり得ない>
 また、来年5月に横浜で開催される第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)を前に「アフリカの平和なくして、世界の平和と繁栄はあり得ない。我が国は、アフリカにおける平和と安定の定着に向けた貢献を一層拡充していく」と語った。
 テロ対策措置法に基づくインド洋での海上自衛隊による給油活動については、11月1日の期限切れで活動の中断が避けられない状況だが、「責任ある国際社会の一員として、引き続き活動の継続が可能となるよう努力していく考えだ」と語った。

<北朝鮮との対話>
 北朝鮮問題に関しては「国際社会が拉致問題の一刻も早い解決を求める力強いメッセージを発出することが不可欠」としながらも、「拉致問題の解決とともに『不幸な過去』の清算にも取り組む」と表明。北朝鮮に対話を促した。
 05年当時の小泉首相が国連総会で決意を表明した日本の「常任理事国入り」について、今回の演説では直接言及せず、国連安保理改革に関して国連総会の会期中に「具体的な成果」をあげるよう促すにとどめた。昨年の国連総会では、自民党総裁選のために首相や外相は演説できなかった。 (佐藤武嗣)

【私の意見】Up63_2

 安倍政権が「国内法の整備が整っていない」という変な理屈をつけて署名しなかった「障害者権利条約」に福田政権に変わったとたんに当然のごとく署名しました。世界でもビリの方での署名ですが、障害者の人権侵害事件に携わっている私にとってはとてもうれしいことです。小泉元首相は障害者を苦しめる「障害者自立支援法」という名称と実体が違ういい加減な法律を作り、障害者の完全参加と平等を目ざしてきた世界の流れに逆行しました(2006年12月23日ブログ)。福田政権は少なくとも逆行はやめてくれそうです。
 高村外相の温暖化対策についての国連での演説も悪くはありません。「常任理事国入り」について言及しなかったのはとても良かったと思います。アフリカとの関係、北朝鮮との対話など、何だか日本の政治家が魔法をかけられたように一晩で品良くうつってきます。
 自民党の基本は保守であり、福田総理になったからと言って、手放しで安心はできませんが、政治に対するイライラ感は大幅に減りました。
 私のブログもこれからは政治を離れた一個の人間としての立場あるいは1人の弁護士としての立場からの記事を増やしていきたいと思います。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

« 2007年9月 | トップページ | 2007年11月 »