(9月12日 朝日新聞 夕刊より)
【安倍首相辞任表明】
安倍首相は12日午前、辞任の意向を固め、自民党の麻生太郎幹事長ら複数の自民党幹部に伝えた。午後2時から首相官邸で記者会見し、11月1日に期限が切れるテロ対策特別措置法に基づく海上自衛隊のインド洋での給油活動の延長に向け、民主党の小沢一郎代表に呼びかけた首脳会談を断られたことを受け、「局面を転換しなければならない。新たな首相のもとでテロとの戦いを継続していかなければならない」と辞任の理由を説明した。昨年9月の就任以来、「政治とカネ」を巡る問題や失言で閣僚の辞任が相次ぎ、今年7月の参院選では自民党が惨敗し、参院で与野党が逆転した。8月末に内閣改造を行ったが、その後も閣僚が辞任するなど、政権運営が完全に行き詰まっていた。首相の退陣を受け、自民党は後継を選ぶ総裁選を実施する。
【「政策遂行できぬ」】
首相は会見で「国民の支持、信頼のうえに、力強く政策を遂行することができなくなった」とも語った。首相は臨時国会が召集された10日、所信表明演説で、参院選敗北の「反省」を口にしながらも、「改革を進めるため」として続投の決意を示したばかり。代表質問当日に辞意を表明するという極めて異例の退陣の仕方に、首相としての資質に対する疑問を最後まで国民に与えることになった。
首相は12日午後1時から衆院本会議で開かれる代表質問に出席する予定だったが、同日午前、自民党幹部に「私は辞任するので、代表質問に答えるわけにはいかない」などと伝えた。
首相は政権を取り巻く厳しい状況が続くなかで、これ以上政権を維持することはできないと判断し、臨時国会の実質的な論戦が始まる代表質問を前に退陣の判断を固めたと見られる。
安倍氏は岸信介元首相の孫で参院山口4区選出、当選5回。北朝鮮の拉致問題に対する厳しい姿勢で、国民的な支持を集め、小泉内閣のもとで党幹事長や内閣官房長官などを歴任した。
昨年9月の総裁選で、麻生現幹事長、谷垣元財務相を大差で破り、小泉内閣の改革路線を引き継ぐ形で首相に就任した。「戦後レジームからの脱却」を掲げ、通常国会で、「愛国心」条項を新設した改正教育基本法、防衛庁の省昇格法、憲法改正の手続法である国民投票法などを成立させた。
しかし、首相就任後、初めての本格的な国民の審判となった今年7月の参院選で、年金問題や閣僚の相次ぐ失言や不祥事などによる逆風を受けて惨敗。参院で与野党の勢力が逆転し、民主党が第1党となった。
しかし、続投を表明。8月27日に内閣改造を実施したが、わずか8日間で遠藤農水相が政治とカネの問題を巡って辞任に追い込まれるなど、政権の求心力を失っていた。
【首相、目をうるませ会見】
永田町に辞任のニュースが流れて1時間あまり、辞意表明した安倍首相は午後2時、首相官邸で会見に臨んだ。会見場に現れると、ゆっくりとした足取りで壇上にあがった安倍首相は、やや疲れた様子で、「えー、本日、総理の職を辞するべきとの、決意をいたしました」などと語り始めた。目はうるんでいた。「政策を力強く前に進めていくことは困難な状況になった」と語った。
【安倍政権の歩みと、首相の発言】
【テロ特措法と「心中」選んだ】
ジャーナリストの田原総一朗さんの話
安倍首相は政権から「逃げた」という批判が出ると思うが、それは少し違う。私は安倍首相はテロ特措法と「心中」する道を選んだのだとみる。おじいさんの岸信介元首相が安保条約と心中したのと同じで、安倍首相も文字通り「一身を賭して」テロ特措法を守ろうとしたのだろう。私はそのことは評価したい。ただ、岸元首相は気力の面ではるかに強かった。それだけの強さは安倍首相にはなかったのではないか。
【なぜ今なのか 間、抜けている】
精神科医の香山リカさんの話
安倍首相はすべてのタイミングがずれている。多くの人が遅かれ早かれ辞任するとは思っていただろうが、なぜ国会が始まる今なのか。間が抜けている。首相は偏差値世代の優等生のような常識的な面がある。しかし、政治家は人の心や雰囲気、効果的なタイミングを読む力も必要だ。辞任後に誰が出てきても、自民党の混乱を収拾できるとは思いにくいが、民主党も次の政権を担う準備があるような感じもしない。政治の混乱はますます深まるだろう。
【選んだ自民にも責任 ■ 二世・三世、懐が浅い】
●識者に聞く
突然の辞任劇に識者からは、首相の資質への厳しい意見が出た。
草野厚慶大教授(政治学)は「なってはいけない人が首相をしていたことを再認識させられる」と話す。「政治キャリアが浅いまま首相に就き、窮地に陥ると責任を投げ出してしまう。こんな人を総裁にした党の責任は大きい」
プロデューサーの残間里江子さんは「首相になることが人生の大きな目標で、シナリオはそこで終わっていたのでは」とあきれる。
ノンフィクション作家の佐野眞一さんは「『美しい国』『戦後レジームからの脱却』などの言葉は胸に響かなかった。彼が考えるより世間は広くて深い」。二世、三世の政治家が増え、「懐の深さを感じなくなった」という。
次の首相について佐野さんは「教育にせよ、環境にせよ、百年先の日本をどうするか、歴史観を持った人」と注文をつける。ジャーナリストの魚住昭さんは「小泉首相が壊したアジア諸国との関係修復、都市と地方の格差縮小、窮者を救うなどの政策を進める人を選ぶべきだ」。一方、草野教授は自民党の人材難を指摘したうえで「公明党の存在意義が改めて問われる。今後も与党にとどまるのかどうかを注目したい」と強調した。
元衆議院議員秘書のジャーナリスト上杉隆さんは「誰が総裁になろうと、解散総選挙で国民の信を問うのが筋」と主張。そのうえで「森首相が小泉首相に交代しただけで一気に支持率が上がった例もある。世論の動向をにらみつつ、解散のタイミングを計るのだろう」と観測を述べた。
【私の意見】
9月は夏休みあけで、裁判の日程が最も集中する月です。私はヘビー級訴訟事件4件の準備のためこの1ヶ月間新聞をほとんど目を通すことができず、私の部屋には開かれもしない新聞が小さな山となっています。しかしこの間に政局は一挙に動きました。安倍首相の辞任は時間の問題と思っていましたが、この放り出し方は一国のリーダーとしてはあまりにもお粗末すぎます。ダタッ子が “ボク、もういやんなっちゃった!” と言っておもちゃを放り投げているのと変わりがありません。まあでも、日本の軍国主義化を強力に推し進めようとした人物が首相の座をおりたことは世界の平和のためにも、日本国民のためにも良かったとほっとしています。もちろん安倍氏が首相をやめても強い軍隊を求める政治家はたくさんいますので、油断することはできません。「朝まで生テレビ」の司会をしている田原総一朗さんのコメントを見て、この人は大声で生テレビを仕切っているけれど“この程度の政治感覚の人か”とあらためて認識させられました。歴史や平和に対する日本人の向き合い方も田原氏の程度かもしれないという懸念をあらためて感じさせられました。
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