安倍改造内閣 政策見えぬ空虚な船出
【編集委員 星 浩】
(8月28日 朝日新聞 より)
にぎやかな内閣改造劇を遠目で眺めれば,この騒動が政治大乱第2幕の序章に過ぎないことが分かる。
第1幕は,参院選での自民党の歴史的惨敗だった。敗因が「安倍政権と民意とのズレ」にあったことは,自民党自身が総括文書で認めている。
年金問題で国民の不安が募っている時に安倍首相は「憲法改正」を争点に掲げる。格差拡大に苦しむ参院「1人区」から悲鳴が出ているのに,なすすべがない。都市部では改革に対する自民党の熱意に疑問が生じたが,それには明確な答えを示せない。そして自民党を率いた安倍首相の責任は問われないのか-。
あくまで続投するという安倍氏が,こうした民意とのズレを正しつつ挙党一致の態勢を整えることが,内閣改造の目的だったはずである。
結果はどうか。外交路線や歴史認識で安倍氏と立場が隔たる福田康夫,谷垣禎一両氏らを取り込むことはできなかった。町村信孝,伊吹文明,高村正彦,額賀福志郎各氏ら恭順の意を示した派閥会長クラスを登用。政権延命のための多数派づくりという狙いが見える。
地方の反乱にどう応えるのか。構造改革路線との折り合いをどうつけるのか。安倍氏や新閣僚から,具体的な処方箋は聞かれなかった。参院選の直後に「首相は退陣すべし」と威勢の良かった人が,一転して入閣に応じる光景も寒々しい。何よりも,この改造を経て,どんな政策を断行するのかが見えてこない。安倍政権の出直しは,空虚なものとなった。
政治大乱の第2幕は,与党が政策を競い合う舞台である。臨時国会で焦点となるテロ対策特別措置法は,日米同盟と国連中心主義との兼ね合いを論じ合う格好のテーマだ。イラクで輸送活動を続ける航空自衛隊の撤退問題も,合わせて爼上に乗せる必要がある。
年金制度の抜本改正,政治資金の透明化拡大,農業再生など論争の材料は尽きない。
参院選で大きく傷ついた安倍内閣が,改造後も浮揚のメドが立たなければ,いずれ総辞職を余儀なくされる。自民党は新総裁を選んで出直すことになる。一方,民主党は参院を主戦場に政府・与党を攻め立てる。参院選のマニフェスト(政権公約)を肉付けする作業が求められるが,与党側は財源問題を突く作戦だ。
与野党の真剣勝負を民意はどう判断するのか。内閣改造で始まった政治大乱の第2幕は,参院の解散・総選挙という最終章まで続く。
【自民党,賛否が交錯 森元首相皮肉「お友達残った」】
(8月28日 日本経済新聞 より)
自民党内では27日,内閣改造・党役員人事を巡り賛否が交錯した。森嘉朗元首相は神戸市内の講演で「実務型でいい顔ぶれだ」としつつも,石原伸晃政調会長の起用や渡辺喜美行政改革担当相の留任などについて「『お友達内閣』の年中・年長(組)の皆さんが残っている」と皮肉った。
参院選の惨敗にも触れ「(改造は)地方に対する姿勢が見えない」と指摘。総務相への増田寛也氏の起用は「改革派だ。必ずしも田舎をわかった人ではない」と述べた。
三人が入閣した津島派の津島雄二会長は記者団に「できるだけ広く人材を求めて挙党態勢でやっていこうという気持ちは受けとめられた」と評価。山崎派の山崎拓会長は,甘利明経済産業相の留任と遠藤武彦氏の初入閣について「適材適所に近い努力の跡が見られる」と語った。
入閣ゼロの谷垣派の谷垣禎一会長は「力があり能力がある人をうまく使っていくことも大事だ。そういう点で若干残念だ」と不満をにじませた。
【外れた矢野氏,直接抗議】
従来通り2ポストを確保した参院側も不満がくすぶっている。参院が最優先の入閣候補として推した矢野哲朗前参院国会対策委員長は27日夜,首相に電話して入閣から漏れたことを約25分にわたり抗議した。
「政治家・矢野を否定することになる。明確な説明をしてほしい」と迫る矢野氏を首相はこうなだめた。「矢野さんが悪いわけではない。人事全体のことを考えた。もし続投すれば,次は必ず起用する」
【私の意見】
政治家としての安倍晋三氏の識見・力量,また一個の人間としての安倍晋三氏の懐の深さ具合は,まあこの程度だろうなというのが率直な思いです。この組閣人事にはいささかの感動もありません。テロ特別措置法に反対する小沢民主党と比べると,安倍政権は米国のブッシュ政権同様もうすでにレイムダックの様相を呈しています。
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