安倍首相不信任 参院選自民歴史的大敗
(7月30日 朝日新聞 より)
【自民歴史的大敗 首相は続投表明
公明も惨敗 政権運営厳しく】
安倍政権の信任が問われた第21回参院議員選挙は29日開票された。自民党は改選の64議席から30議席台に減らし、89年に宇野首相が退陣した過去最低の36議席に匹敵する歴史的大敗となった。公明党も選挙区で擁立した5人中3人が落選する惨敗で、非改選を含む与党の議席は過半数を割り込んだ。しかし、安倍首相は同日夜、続投を表明した。一方、民主党は改選議席32議席から60議席に躍進し、自民党が55年に結党してから参院で占めてきた第1党の座が初めて入れ替わった。民主党幹部は同日夜、安倍首相の退陣と衆院の早期解散を要求。朝日新聞社が全国で実施した投票者への出口調査でも56%が安倍首相に「代わってほしい」と回答している。安倍首相の政権運営は厳しくなり、進退論がくすぶり続けるのは必至だ。
【辞任に値する審判】
政治エディター 西村陽一
いくつもの「信」が問われた選挙だった。年金制度は信頼できるのか。「政治とカネ」の問題に自浄作用が働いたか。そして詰まるところ、安倍首相の政策と指導力、政権運営能力である。
この大敗をみれば有権者の答えは明らかだ。政権は国民による信任度チェックに落第した。安倍首相にとって辞任に値する厳しい審判である。
なるほど参院選は、総選挙と違って、政権選択の選挙ではない。しかし、前政権の巨大な衆院議席の上に生まれた安倍政権が、初めて全国規模で受けた洗礼である。何より、「私と小沢さんのどちらが首相にふさわしいか」と問いかけたのは、首相自身だった。
逆風の直接のきっかけは社会保険庁の失態と政府の初動ミスに対する怒りであり、透明性を欠く政治資金問題への批判だった。だが、それらが引き金となり、もっと深いところでじわじわ進んでいた支持基盤の変容を刺激し、国民にくすぶっていた疑問に火をつけた。
安倍首相には二つの顔があった。ひとつは、急進的な新自由主義改革を追い求めた小泉政権の継承者。もうひとつは、伝統的な規範、憲法や教育の再生を掲げる新保守主義的な為政者の顔である。
継承者としての安倍政権は、急進的な構造改革に疎外感を強めていた地方で票を失った。長年の貯金がなくなったかのような保守王国の総崩れ現象は、安倍氏が継いだ小泉時代の「負の遺産」を物語る。
一方、保守思想色の濃い課題は、身近な問題を重んじる有権者に、「政治は今、何を優先すべきか」をめぐるずれを実感させた。首相が本来手がけたい課題と国民が切実に解決を求める課題との不一致である。
英米には新自由主義と新保守主義とが共存した先例もある。安倍政権は、両者のほどよい均衡点をみいだせなかった。
しかし、それ以上に大きかったのは、一連の問題閣僚の任命責任や危機の際の対応ぶりにみられた、指導者としての器量と技量への疑問だった。
安倍首相は続投を表明する際、失われた「信」の回復策を語らなかった。「国造り」と「改革」をいうならば、それを根本から定義し直し、実行体制とあわせ、国民に示さなければならない。かつて選挙の顔として安倍氏を担いだ自民党は、この再定義に全面的に関与する責任がある。
民主党の勝利には戦術的成功の側面がある。自民党からはがれた支持層を安定的に固めきる再編を成し遂げたわけではない。政局に頭を奪われ、国会に混沌をもたらすだけでは、次の選挙で痛いしっぺ返しを食らうだろう。年金、税制、格差、政治資金、農業、分権、対テロなどで、法案と政策を政権準備構想としてまとめるべきだ。
内政と外交で、国会が緊張感に満ちた論争を行い、とくに2大政党の違いが浮き彫りになれば、その時こそが、衆院解散、総選挙で国民に信を問う機会となる。選択の時は早い方がいい。
年末から来年にかけて、すでに「ブッシュ時代の終わり」が始まった米国をはじめ、ロシア、韓国、台湾などで新しい指導者が次々と現れる。中国は五輪開催に国家の威信をかける。参院選後に長い政治の低迷が続くだけでは、日本は国際潮流を読み違え、「ポスト冷戦後」の世界から取り残される恐れがある。
【首相、改憲実現に固執 「基本路線国民は理解」】
首相は29日夜のテレビ番組で「惨敗の責任は私にある」としつつ、「基本路線については多くの国民のみなさまに理解していただいている」と強調した。閣僚の不祥事や年金記録問題などが問われた自民惨敗であり、自らの理念が否定されたわけではない-。首相の発言には、そんな思いがにじんだ。
首相は昨年9月の自民党総裁選で「戦後レジュームからの脱却」「美しい国、日本」という二つのスローガンを掲げた。共通する思想は「戦後保守主義の再構築」だ。
しかし、今回の選挙戦で「安倍カラー」は確実に色あせた。選挙戦では憲法改正に向けた国民投票法の成立などを必死にアピールしたが、ずさんな年金記録の問題や相次ぐ閣僚の不祥事の逆風にあおられ続けた。
大敗を喫しても首相が続投に固執するのは、ようやく国民投票法の成立にこぎつけた今、ここで退陣すれば、憲法改正の発議に向けた道筋を固められないという思いがある。また、集団的自衛権の行使を禁じた憲法解釈の変更を視野に入れた有識者懇談会が9月に結論を出す見通しの中、退陣すれば棚上げにされるとの考えもある。
さらに、来年7月には北海道洞爺湖で開く主要国首脳会議(G8サミット)で首相が議長を務める。米中印など温室効果ガスの主要排出国を巻き込んだ日本独自の地球温暖化対策を5月に発表した首相は、新たな国際的枠組みづくりに向けて主導的役割を果たしたいという思惑もある。
首相がこうした目標を抱えていることから、周辺では「(不祥事や失言が続いた)閣僚が悪いのであって、首相自身に失政はない」など首相の責任論を否定する意見が主流で、選挙結果にかかわらず続投すべきだとの声が強かった。
しかし、首相は問題を起こした閣僚をかばう姿勢に終始し、年金問題では支持率急落を受けて、初めて本格的な対策の検討に入ったのが実情だった。有権者が今回の参院選で首相の政権担当能力に疑問を投げかけたのは間違いないだけに、続投しても自らの思惑通りに進むとは限らない。
改憲の道筋についても参院選の大敗で必要な3分の2の議席確保は遠のき、民主党との協調の再構築も難航するのは必至。公明党が立て直しのため首相の憲法観との違いを鮮明にする可能性もある。首相が描く10年以降の改憲への道筋は大きく崩れることになった。
首相は29日夜、「信念を貫きながら、民主党にも耳を傾けながら結果を出していきたい」と語った。国会での法案審議などで民主党と協調する姿勢を示したものだが、首相の行く手は全く見えない状況だ。
【退潮の流れ止められず 社民】
社民党は改選3議席を上回ることができない見通しで、退潮傾向に歯止めをかけられなかった。選挙区と比例区で計7議席を目標に「安倍政権への不信任選挙」と位置づけて批判票への受け皿をねらった。しかし選挙区では01、04年に続き議席を得られず、比例でも低迷した。
【比例伸び悩む 共産】
共産党は比例区でも伸び悩み、改選5議席を維持できない見通しだ。非改選4議席とあわせても1ケタにとどまり、党首討論に参加できない状況も変わらなかった。前回、45年ぶりに全敗した選挙区では、東京、大阪などで接戦に持ち込んだが、議席には届かなかった。志位委員長は29日深夜、「次はぜひつなげたい」と語った。
【私の意見】
自民党が大敗し、ほっとしました。安倍首相の強行な国会運営には危険なものを感じていましたから、まずそれを止められるというのでやれやれ。それにしても自民党王国であった1人区で自民党がここまで大敗するとは驚きでした。地方を見捨てて格差を拡大した小泉改革路線に地方がはじめて憤りを示したと言えます。一方憲法9条を守ることを政策の中心としてきた社民党や共産党も退潮著しく、2大政党の流れに飲み込まれていきそうです。憲法9条と自衛隊については民主党の中に安倍首相と同じ考えの議員がたくさんいます。当面は憲法9条改正問題は前面に出ることはないでしょうが、憲法改正の発議ができる3年後には政治情勢も国民の意識もどのように変わっているかわかりません。不安要素はたくさんあります。国民のひとりひとりに根づいた憲法9条を守る市民運動を今から地道にひろげていく必要があります。
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