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2007年4月 1日 (日)

ソニー創業者盛田昭夫の信念・情熱・夢

(盛田昭夫論文集「21世紀へ」 2000年11月ワック株式会社より)

【はじめに】

 本書は井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。
 終戦の翌年、焦土の上に前身企業である東京通信工業を設立して以来、盛田は井深とともに半世紀にわたってソニーを慈しみ育て、国内外のあらゆる意味でのトップ・ビジネスへと導いてきた。その間に日本は、国際社会への復帰、高度経済成長への発展、そして世界レベルの貿易市場への参入など、一流国家への道に付随する幾多の課題と問題点に挑んできた。
                   
 改めて読み返してみると、その時代のソニーとわが国の経済環境を的確に表現しているのはもちろんだが、基本原則を見抜いて合理的に発展させるという盛田特有の能力によって、論の主旨は現在でも十分な鮮度を保っていることに驚かされる。いやそれどころか、世界が本格的なボーダレス社会に突入した今日こそ、国際人・盛田が放った言葉が本格的な意味を持つといっても決して過言ではない。

 日本が経済面をはじめとして行くべき方向を見失っているいまこそ、すべての経営者およびビジネスマンはもちろん、その他、日本のリーダーを志す人々への力強い助言となるだろう。
 1993年11月30日、盛田は早朝テニスのプレー中に脳内出血で倒れた。奇しくもその日は、経団連の平岩外四会長から盛田に対し、次期会長への就任要請が行われる日であった。
 しかしその席に着かぬまま。六年後の1999年10月3日、あの世に旅立った。盛田昭夫には「21世紀が見たい」との強烈な思いがあったに違いない。彼の意志は、そのまま日本と日本人に与えられた重要課題なのである。
(編集部)

【繁栄のための経営理念】              (1982年)

 経営理念という言葉の意味は、非常に漠然としている。だから、経営者に「あなたの経営理念は何か」と質問すれば、人によってじつにさまざまな答えが返ってくる。

 私の経営理念は「ソニーと関係あるすべての人を幸福にすること」である。これは理念というよりも、経営者としての私の使命というべきかもしれない。そして、その使命を果たすためには、さまざまな経営技術を駆使して利益をあげていかなければならない。つまり、理念を実践するために、いろいろな戦術が必要になる。

 ソニーに関係のあるすべての人に幸福になってもらうことが私の念願であるが、とりわけ、社員の幸福は、私の最大関心事である。なんといっても社員は、一度しかない人生のいちばん輝かしい時期をソニーに委ねる人たちであるから、絶対に幸福になってもらいたい。
 もし、その人が死ぬときに「おれは大事な人生を、あんなところでムダに過ごしてしまったな」と思ったら、これほど不幸なことはない。やはり、「おれはソニーで働けて幸せだった」と思って死ねるようにしてあげることが、社員に対する最大のつとめだと思う。
 だから、私は新入社員の入社式でいつも次のようにいうことにしている。
「君たち、ソニーに入ったことをもし後悔するようなことがあったら、すぐに会社を辞めたまえ。人生は一度しかないんだ」

【経営者はレイオフの権利があるか】

 私は、アメリカやヨーロッパで経営者連中を前に講演するとき、よく次のような話をする。「あなた方は、不景気になるとすぐレイオフをする。しかし景気がいいときは、あなた方の判断で、工場や生産を拡大しようと思って人を雇うんでしょう。つまり、儲けようと思って人を雇う。それなのに、景気が悪くなると、お前はクビだという。いったい、経営者にそんな権利があるのだろうか。だいたい不景気は労働者が持ってきたものではない。なんで労働者だけが、不景気の被害を受けなければならんのだ。むしろ、経営者がその責任を負うべきであって、労働者をクビにして損害を回避しようとするのは勝手すぎるように思える。われわれ日本の経営者は、会社を運命共同体だと思っている。だから、いったん人を雇えば、たとえ利益が減っても経営者の責任において雇い続けようとする。経営者も社員も一体となって、不景気を乗り切ろうと努力する。これが日本の精神なのだ」
 こういう話に対し、彼らは非常に興味を示す。私は話だけでなく、実際にサンディエゴの工場で実践もしている。ちょうどオイル・ショックのとき、サンディエゴ工場には約250人の従業員がいた。アメリカ人のマネージャーが、さっそく私にレイオフの提案をしてきた。そこで私は彼にいった。
「うちは絶対にレイオフしちゃいかん。利益が下がってもいいから、全員をキープしろ。その代わり、不景気の間を利用して社員教育を行う」
 それ以降、工場の清掃から始めて、日本式の社員教育を徹底的に実施した。レイオフを免れた250人の社員は、非常に感激し、熱心に社員教育を受けた。その結果、彼らは、現在数千数百人いる従業員のなかでも中核的な存在となって、大いに会社に貢献している。
 そういうときに、アメリカの経営者なら、当然レイオフして従業員を減らしているはずである。しかい、サンディエゴ工場ではクビ切りをやらなかったおかげで、従業員のモラールが大いに高まったのである。
 日本人も外国人も結局は同じ人間である。日本で通用する理念や原則は、世界でも通用するのである。

【盛田 昭夫(もりた あきお)】

ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。46年、井深とともにソニーの前身・東京通信工業を設立。ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。海外の経済界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。99年死去、享年78。著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新現実主義』(文藝春秋)『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』(共著、光文社)等がある。

【私の感想】Up63_15

 わが国が盛田昭夫氏のような経営者を輩出したことをとても誇りに思います。それにしても、「なんといっても社員は、一度しかない人生のいちばん輝かしい時期をわが社に委ねる人たちであるから、絶対に幸福になってもらいたい」と心の底から思っている経営者が今どれだけいるのでしょうか。

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