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2007年4月 8日 (日)

景気回復と無縁の中小企業経営と倒産

【東京地方裁判所民事20部(破産・再生部)】

 東京地方裁判所には、行政部、労働部、知的財産部、交通部等の専門部があります。企業や個人の破産事件を扱う破産専門部が民事20部です。企業や個人の再生(再建)を図る法的手続きを定めた民事再生法が2000年4月1日に施行され、これも民事20部が扱うことになりました。それまで民事20部のことを破産部と称していましたが、名称も破産・再生部に変更されました。企業再建のための法的手続きとしては別に会社更生法にもとづく会社更生手続があり、これは主として大型の企業が経営危機に陥ったときの再建手続で東京地方裁判所では民事8部(商事部)が扱っています。しかし、民事再生法施行後は大型の企業再建事件についても民事再生手続が利用されるようになりました。現に私が裁判所から選任されて監督委員(再生手続が公平・誠実に行われているか監督する者)に就任した株式会社池貝、株式会社川奈ホテル、ジャパン石油開発株式会社をとってもいずれもビッグな会社の再建事件です。

【ある中小企業の民事再生申立事件】

 私個人として3月22日にヘビーな労働事件の証人尋問が終わりやれやれ少しゆっくりできるかなと思っていましたが3月下旬から4月にかけて企業や個人の再建や破産で民事20部に頻繁に足を運ぶことになりました。
 ある中小企業(A社)が3月末の手形決済資金が足りず、再生手続開始の申立てをしました。ある都市の歴史ある企業であり、工場をもち経営者も真面目な人柄で取引先からも信頼されていましたが、力尽きて法的再建の道を選ぶ結果となりました。その都市も歴史の深い静かな都市で、裁判所に申立てた日は丁度桜が満開で、落ちついたまちなみと桜の花の美しさに一瞬みとれました。国は大企業や大銀行だけを手厚く保護しておきながら、こんな静かなまちのこんな真面目な中小企業まで存亡の危機に追い込む国の政策に強い憤りを覚えました。

【中小企業の開廃業・倒産の動向】
        (2006年版「中小企業白書中小企業庁編より)

 中小企業白書にもとづいて、中小企業の現状を見てみます。

【中小企業の減少】             (同書28~29頁より)

 我が国の廃業率は、近年は上昇傾向にあり、中でも2001年から2004年の期間においては企業数ベースで年平均6.1%と過去最高の水準になっている。この結果、開業率がわずかに上向いてることを差し引いても、廃業率が開業率を大きく上回り、その差は事業所数ベースで2.2%、企業数ベースでは2.6%と更に拡大し、この統計が取り始められた1947年以降いずれも最大となっている。
 こうした開廃業の動向を実際の企業数ベースでも見てみよう。開業企業数は1994年から1996年に年平均14.3万社まで減少した後増加に転じ、2001年から2004年には年平均16.8万社となっている。一方、廃業企業数は同じ期間で年平均17.2万社から29.0万社に増加しており、2001年から2004年をとるとその差は実に12.2万社にのぼっている。この結果、1986年のピーク時には535.1万社を数えた我が国企業数(全企業数ベース)も、2004年では433.8万社まで減少している。同じく1986年から2004年の間に、中小企業数も532.7万社から432.6万社まで減少した。

【法的倒産件数の増加】          (同書40~41頁より)

 我が国の倒産件数自体は、2001年の19,164件をピークに低下を続けてきており、2005年には12,998件と大きく減少、バブル崩壊後の最低水準となった。これを形態別に見ると、近年は銀行取引停止処分による倒産件数の減少が大きく、全体的に手形をはじめとする企業間信用が減少している中、不渡り手形を出して銀行取引停止処分となる企業が減少している可能性も考えられる。
 全体として倒産件数に一服感が出ていることは事実であろうが、一方で法的申立による倒産件数自体は破産を中心に増えていることからも、先に見た足下の倒産件数の減少をただちに倒産件数の改善であると直結して判断するには注意が必要である。

 注) 手形の利用が激減し、東京地方裁判所でも手形部という専門部を縮小しました。手形を利用しないため手形不渡りという倒産事件は減りましたが、実質的に破綻した企業は減っていないと言えます。

【私の意見】Up63_17

 多くの中小企業は金融機関の不良債権処理でなぎ倒されました。不良債権の発生には金融機関の側にも大きな責任がありましたが、金融庁は金融機関の保護を最優先し徹底した貸しはがしを指示しました。それでも生き残ってきたA社のような中小企業も大企業ばかりが強くなって厳しい経営を続けさせられてきました。A社はバブル期も踊ることもなく、堅実な経営を続けていました。しかしゆとりのできた大企業が自社で製造するなどにより取引額が大幅に減少しました。その上、原油価格の高騰により仕入れ価格が高騰しましたが買い手は価格の上乗せを認めてくれず、働いても働いても損失が拡大していきました。A社ではこの間都内の本社社屋を売却し、地方都市にある工場の3分の1の土地を売却してしのいできましたが、それでも自力で生き延びることはできませんでした。日本の製造業の強みはいぶし銀のような中小企業が創意・工夫のもとにすぐれたモノづくりを支えていたところにありました。今存続している中小企業も大企業の顔色をうかがいながらなんとか生きているというのがほとんどです。働いている日本人の7割が中小企業で働いています。個人だけでなく企業も明らかな格差社会となってしまいました。輸出型大企業やメガバンクばかりを保護する日本政府の政策では、多くの人々に笑顔がもどることはありえないことでしょう。

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