ノキ弁 (軒先弁護士) どう?
(2月27日 朝日新聞 夕刊より)
【日弁連就職促進へ推奨】
新米弁護士が独立するまでの間、先輩の法律事務所に「居候」して給料をもらう「イソ弁」に変わり、固定給なしで事務所の机(軒先)だけを借りる独立採算型の「ノキ弁」が注目されている。司法制度改革に伴い、年内に司法修習を終えるのは昨年より千人多い約2500人。うち数百人が就職できないとも予測される状況に、日本弁護士連合会が、「ノキ弁」の推奨を始めた。だが、「いきなりの歩合給は厳しい」との声も上がっている。
【事務所の机拝借 固定給なし】
札幌市中央区の大通公園近くのビルに、「ノキ弁」を提案した高橋剛弁護士(55)の誠信法律事務所がある。10年前、就職先が決まらず困っていた修習生と雑談して思いついた。机の幅に間仕切りされた空間に、3人の「ノキ弁」が席を置く。
電話、パソコンなどは自由に使えるが、固定給はない。高橋弁護士が受けた依頼を共同受任し、ノウハウを教えてもらいながら報酬の一定割合をもらう。独力で引き受けた依頼は、報酬の全額が自分のものになる。
沖田良明弁護士(31)は昨年10月に修習を終え、机を借りた。債務整理など、すでに十数件を独力で受任。利息計算などの細かい仕事も自分でこなすので、帰宅は深夜だ。入所時に高橋弁護士が無利子で貸してくれた生活費100万円を取り崩しながら、専業主婦の妻と2人で暮らしている。
高橋弁護士は、これまで計6人の「ノキ弁」を受け入れた。いずれも平均的な「イソ弁」の年収(約600万円)かそれ以上の収入を上げているという。「事務所外の弁護士と組むことも自由で、様々な事件にかかわれるので勉強にもなる。『イソ弁』より教育効果は高い」と話す。
【今年400~500人就職できない恐れ】
旧司法試験合格者は、1年4ヶ月の修習が必要で、例年、秋ごろに終了する。今年は旧司法試験の合格者に加え、法科大学院(ロースクール)の修了者が受験した新司法試験の合格者も12月ごろ修習を終えるため、計約2500人がほぼ同時に就職期を迎える。うち約9割が弁護士を目指すとみられ、東京や大阪などの大都市は過密状態に。日弁連はこのままだと400~500人が就職できない恐れがあると試算する。
就職難対策として、日弁連の弁護士業務総合推進センターは昨年12月、高橋弁護士の事務所をモデルに「事務所内独立採算弁護士(ノキ弁)」について説明した冊子を作成し、全国での普及活動を始めた。「イソ弁」への固定給支払いが事務所側に負担となり、採用の障害になっているからだ。ただ、会員からは「『母屋に入れてもらえない』ともとられ、イメージが暗い」など、異論も出ている。
【私の意見】
① ノキ弁はむしろ理想型
私はノキ弁は弁護士大量時代に対応する上で望ましい制度だと思います。イメージが暗いとは全く思いません。先輩のもとで先輩のアドバイスを受けながら、しかもほとんどが自立というのは、若い弁護士が早くから個性を発揮する上で理想型と言ってもよいかもしれません。
② 弁護士の世界にヒエラルキーはない
問題はむしろノキ弁に机を貸してくれる先輩がどの程度居るかということです。弁護士の世界にヒエラルキーはありません。特殊な事件を除けば、ある事件に最もすぐれた弁護士というのは、その事件に最も熱心に時間をかけ、現場に足を運び、文献や判例を調べる弁護士です。ですから、大法律事務所のベテランのボス弁とかけ出しの若い弁護士が争った場合でも、その事件については若い弁護士がすぐれた弁護士であり若い弁護士が勝つことは少なくありません。ベテランと若手の間に大きな差がないということは、逆に見ればノキ弁に机を貸せるゆとりのあるベテラン弁護士を確保することは簡単ではないということです。
③ 弁護士に対する信頼感を確立するために
弁護士をうさんくさい人種だと思う人もいるでしょう。ですが、弁護士を多少の信頼感をもって見てくださる方も少なくありません。弁護士大量時代になると不祥事を起こす弁護士の数も増えることは不可避です。その中で弁護士に対する信頼を確立するためには国民から大多数の弁護士は真剣に仕事に取り組み、他の専門職とは違った視点から高い水準の成果を生み出していると思われるようにならなければなりません。
弁護士はヒエラルキーがないとはいいましたが、ベテラン弁護士の長年の経験にもとづく仕事感、人生観にはかけ出しの弁護士にはない味があることも事実です。弁護士大量時代の到来はベテラン弁護士、若手弁護士が一体となって弁護士の将来を真剣に考えなければいけない瀬戸際に立たされたことを意味しているのではないでしょうか。
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