« 2007年1月 | トップページ | 2007年3月 »

2007年2月26日 (月)

弁護士大量失業時代? 進まぬ採用

【弁護士倍増】             (2月25日朝日新聞より)

弁護士は約2万3千人だが,18年までに倍増する見通し。数を増やし,高すぎるとされる弁護士報酬の水準を下げようとするのが経済界の狙いだ。弁護士会内部で強まる懸念に対し,改革推進派が「社会が『法化』され,組織内弁護士の需要増が見込める」と説得した経緯がある。

【日弁連調査 9割超の企業「弁護士採用しない」】
                  (2月22日 日本経済新聞より)

企業や官公庁の中で働く「組織内弁護士」について,9割以上の企業が採用する考えのないことが21日,日本弁護士連合会の調査でわかった。

 回答した企業のうち,企業内弁護士が勤務しているのは約4%にあたる57社。半数近くが資本金500億円以上の大企業で,所属部署は多くが法務部門だった。
 採用計画を尋ねると「募集中」と「募集していないが採用予定はある」は計3%「採用予定はないが検討中」(4%),「関心はあるが検討していない」(44%),「採用は消極的」(49%)と具体的な予定がない会社は9割を超えた。

【7割 「顧問で十分」】

採用しない理由(複数回答)は7割が「顧問弁護士で十分」と答え,ほかに「報酬(給与)の問題」(12%),「法務部・知的財産部など既存のセクションで不自由しない」(同)だった。

【私の意見】Up63_10

私も今後企業や官公庁が組織内弁護士を増やしていくという点については悲観的です。日本企業にしろ官公庁にしろ組織的に課題に取り組む点においてはきわめて高い水準にあります。その組織の中でリーダーシップを発揮するのは弁護士資格をもっているか否かとはあまり関係がないと思います。
企業が弁護士に価値を見出すのは内部の一員としての意見ではなく,自社以外のさまざまな事件を取り扱っている弁護士による判断だろうと思います。
組織内弁護士が進まないとすると弁護士大量時代は弁護士大量失業時代ということになりかねません。若い弁護士の方にとり切実な問題です。私は若い弁護士の方に,どんな時代も正確・迅速・誠意ある日常の弁護士業務の積み重ねが基本だと言っていますが,それだけで大量時代の大波を乗り切れるか?というのが若い人たちの本音のようです。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

「首相,民人の声に耳を傾けて!」

【長時間労働の是正】
    - 2月23日 日本経済新聞 夕刊 『私もひと言』より -

<会社員,37歳,女性>
長時間労働が家庭生活を犠牲にし,少子化の最大の原因であることは明らかであると思う。夫の給与だけでは不安定なこともあり,共働きが当たり前となりつつある今,仕事と家庭の両立は妻だけの問題ではない。夫の残業を減らすため企業や政府が真剣に取り組むことこそ,少子化対策の根幹ではないか。

<会社員,42歳,男性>
長時間労働の改善に向けて残業代の割増率を引き上げるそうだが,企業の対応をきちんと監視していないと,自宅に持ち帰るサービス残業が増え,賃金は目減りする,といった事態になりかねない。

<会社員,54歳,男性>
息子は大学卒業後,従業員約三十人の土木設計会社に勤めている。盆暮れ以外は日曜も深夜まで仕事に追われ,月100時間以上の残業でも時間外手当はわずか数万円だ。彼の健康が心配で,転職もやむを得ないと考えている。中小企業の厳しい現実を実感している。

<会社員,32歳,女性>
非正社員の待遇改善も急務だが,正社員の負担も増すばかりだ。賃金制度を透明にし,仕事の内容に応じて働き方を選べる仕組みを早く整えないと,みんな壊れてしまう気がする。

【安倍首相と御手洗キャノン会長の蜜月】
                    (2月23日 朝日新聞より)

 20日夜,都心のフランス料理店。首相と会食した御手洗氏ら経団連幹部は強調した。「日本は世界的に格差はそんなにない。経済成長するほど格差は縮小するんです」
 首相が進める「新成長戦略」そのものだ。

 御手洗氏は22日も,首相と朝食をともにし,社会保障などについて話し合った。13日の自民党幹部との会合でも御手洗氏は「さらなる経済成長のための改革を続けていくうえで,我々は車の片方を担う」とまで語った。

【私の意見】Up63_11

安倍首相はホワイトカラー・エグゼンプションは労働時間短縮につながり,少子化対策にとっても必要という考えを示しました(1月6日ブログ記事『安倍首相発言』)。首相は大企業トップの声ばかりを聞くのではなく,働く人や家庭の切実な声に耳を傾ける姿勢をもってほしいものです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月25日 (日)

「国民投票法案」廃案の風を起こそう!

【2月14日大田区で13団体、26名が集まる】

2月14日(水)大田区立生活センターに弁護士9条の会・おおた が呼びかけて、国民投票法案成立阻止のための大田区内共同行動を提案する集会を持ちました。13団体、26名(弁護士9条の会(9)、大田たまがわ九条の会(2)、馬込九条の会(2)、年金者九条の会(1)、大田病院九条の会(1)、大田区職労(3)、六郷九条の会(1)、東矢口九条の会(1)、大田区議会議員(1)、大田革新懇(1)、大田区憲法を生かす会(2)、鉄建公団訴訟原告(1)、大田無防備の会(1))が集まり、各会の取り組みを報告しあい、国民投票法案廃棄のために共同で何かできないか討論を行いました。

【“大田区民が動いている”という流れをつくる】

会議上では、「とにかく今は時間がないのでまずは動いてみよう。共同行動に参加するかどうかはどれぞれの会の自由とする、動ける人、動ける会だけでも共同行動を起こしはじめよう!」という提案がされました。その提案を踏まえ大きく次の3点で意見がまとまりました。
① 国民投票法案廃案に向けて各々が一致できるところで協力する。但し参加する・しないは各団体・個人の自由とする。
② 憲法改悪反対共同センター作成の「改悪のための「国民投票法案」の廃案を求める請願書」署名を協力して集める。
③ とりあえず第一回目として、3月4日(日)午後1時30分にJR蒲田駅西口ロータリーに集まり共同行動を行う。

【本当に時間がなく、危険な状態です】

一人でも多くの大田区民の方、一つでも多くの市民団体にご参加いただき、国民投票法案成立阻止に向けて大田区で共同行動を起こしていきます。大田区以外でも反対の風を是非とも起こして下さい。

【私の意見】Up63_9

今自民党が進めようとしている国民投票法案(憲法改正手続法案)の成立は正に憲法9条の改正を目的とするもので、それ以外の何ものでもありません。単なる手続法案だとして軽く見て座視しているととんでもないことになります。
 新聞記事にあるように与党内でもまだズレがあります。しかし国民の側で反対ののろしを挙げないと5月3日までに一挙に可決させてしまう危険は大です。また、与党の足並みに乱れがあると言っても参議院選挙を意識しているからにすぎません。仮に5月3日までの成立を断念しても参院選後には淡々と成立させるというのがいつもの手口です。
何はおいても国民の側で反対ののろしを挙げ、国民投票法案成立にむけての流れをたたきつぶさなければなりません。
 日本弁護士連合会も組織を挙げて反対しています。あらゆるところであらゆる人が風を起こして下さい。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2007年2月24日 (土)

国民投票法案、波高し

- 2月24日 朝日新聞より -

【民主「持久戦」に転換、自民「与党で採決」論】

憲法改正の手続を定める国民投票法案をめぐり、与党と民主党の対決ムードが高まってきた。
与党と民主党は昨年から共同修正案の提出を念頭に協議を続けてきたが、民主党が賛否を明らかにしない「持久戦」に戦術転換し、協議は暗礁に。
「憲法記念日までの成立」をめざし、自民党内には与党単独採決の強硬論も出てきた。だが夏の参院選を控えて慎重論も根強く、一筋縄ではいきそうもない。

 国民投票法案を審議する衆参両院の憲法調査特別委員会は、いずれも審議の段取りが決まっていない。「民主党が応じない場合でも与党単独で採決し、憲法記念日の5月3日までに成立させる」との与党方針に、野党がこぞって反発しているからだ。
 与党と民主党は修正協議を重ね、昨年12月、投票年齢を「18歳以上」とすることなどで大筋合意した。与党は、民主党との共同修正案をまとめて提出できれば、今国会で円満に成立させられると思い描いた。だが、民主党は小沢代表の主導で賛否の判断を先送り。これが与野党の対立に火をつけた。

【公明は「自公民」基本】

そもそも両院で3分の2が必要な憲法改正の発議を見越し、国民投票法案は民主党も賛成しての成立が望ましいというのが与党の立場だった。公明党の太田代表は15日の記者会見で「厳密に5月3日にこだわるものではない」とした上で「あくまで自公民3党でこれまでやってきたことを基本にして考える」と語った。
自民党内からも「あまり争点にはならない」(谷津義男選挙対策総局長)と、憲法改正を前面に打ち出すことに否定的な声が出ている。単独採決などをして世論の注目を浴びることは、選挙対策上、得策ではないという意見が今後、強まる可能性もある。
 こうした異論を抱えつつ、与党単独でも突き進むのか。粘り強く説得を続けて民主を抱き込んだ方がむしろ早道なのか。与党執行部は近く難しい判断を迫られることになりそうだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月18日 (日)

失われた世代に支援を

【格差是正】
(2月18日 朝日新聞より)

 政治が最優先で取り組むべき格差問題は何か。正社員と非正規の働き手との間に横たわる賃金や契約期間など処遇での差別こそが焦点だ。
正社員なら若い時期から会社の負担で能力を高められる。得意技や専門知識が身につけば、転職しての再チャレンジも難しくない。一方の非正規雇用は最初から不利な立場に置かれる。
 私たちの社会には、こうしたハンディを理不尽な形で負わされた仲間がいる。
就職氷河期といわれた90年代に就職活動をした25歳から35歳くらいの層だ。「ロストジェネレーション(失われた世代)」ともいわれる。
 バブル崩壊による不況のなか、企業はリストラを急いだ。過剰な設備や借り入れだけでなく、社員の採用も削り込んだ。本来なら若い社員に任す仕事を派遣社員や業務請負などが埋めた。
 身軽になり、競争力を取り戻した企業は、いま高収益を享受している。だが、就職にあぶれた人々は取り残された。
経済協力開発機構(OECD)の対日審査報告書は「格差拡大の主な要因は労働市場における二極化の拡大にある」とし、その固定化に強い懸念を表明した。
 神戸の大手アパレル、ワールドはパート約6千人のうち5千人ほどを正社員に登用した。年22億円のコスト増だが、「一生の仕事として取り組む人材を確保する」という将来をにらんだ戦略だ。
 こうした企業を増やし、低賃金の非正規雇用にあぐらをかく経営者に転換を迫ることで、失われた世代を支える仕組みを社会で考えたい。

ただ、若い世代の1年は、将来の何年にも相当することを忘れてはならない。効果のある支援策づくりを急ぎたい。

【キャノン、派遣・請負正社員化、後回し 新卒採用優先】
(2月18日 朝日新聞より)

 違法な「偽装請負」の是正策の一環として、請負・派遣労働者の一部を正社員に採用すると昨夏に表明していたキャノンが、その後半年間の検討を経て、当面は高校新卒者らの正社員採用を優先する方針に転換した。政府は、新卒一括採用システムの見直しや非正規労働者の正社員化の推進を重点課題にしているが、キャノンの方針転換はこうした流れに逆行しそうだ。
同社は非正規労働者の正社員化について「撤回したわけではなく、優秀な人がいたら採用する」という。ただ、その判断はグループ各社に委ねており、採用予定数も示していない。
 国内のキャノングループでは、昨年6月時点で製造にかかわる請負労働者が1万5千人、派遣労働者が約7500人いた。偽装請負解消に伴い派遣を増やしたため、昨年12月には請負が約1万2千人に減り、派遣が1万2500人に増えた。
 偽装請負をめぐっては、民主党が、日本経団連会長でもあるキャノンの御手洗富士夫会長を国会に参考人招致するよう求めている。

【私の意見】Up63_8

 キャノンがこのような状況であるならば、御手洗富士夫氏は経済財政諮問会議の委員としても日本経済団体連合会の会長としても任にふさわしくないと批判されてもやむを得ないと言えるでしょう。

-----------------------------------------------

■人と組織の勉強部屋
興風日記
■就職氷河期被害者.com
■「獏無想日記」
■所長のblog

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2007年2月17日 (土)

武家社会研究家 笠谷和比古さん

- 2月7日 日本経済新聞 夕刊 より -

【歴史学者 笠谷 和比古さん】

(かさや かずひこ)国際日本文化研究センター教授。1949年兵庫県生まれ。京大院修了。専攻は日本近世史・武家社会論。著書に『主君「押込」の構造』(サントリー学芸賞)『士の思想』『徳川吉宗』など。

【米国流のリストラの横行は深い傷を残した】

バブル期に「もはや欧米に学ぶことはない」というおごりの風潮ががあった。しかし崩壊後は逆に日本型経営を全否定し、米国流のグローバル・スタンダードを適用せよ、という大合唱が起きた。人件費を切り詰めて利益を出すリストラが吹き荒れた。
日本型組織は個人の主体性を阻み、談合、なれ合い、事なかれ主義を生む非能率的なものとされた。従業員あっての会社という伝統的な考え方は古いとされ、会社側の都合によるリストラが横行し、雇用不安という深い傷を残した。

【日本型組織は人的資源を大事にした】

私はこうしたポスト・バブル期の対応は誤っていたと考えます。なぜなら弊害があるものの、日本型組織は欧米型とは違った形で、個人の自立や能力主義という普遍性を内包しているからです。強調したいのは日本型組織が人的資源、つまり従業員を大事にしてきたということです。
米国のように資源が豊富で人材も次々と調達できる移民型社会では、使い捨てでもかまわないでしょう。しかし、資源のない日本では人材を育てることが大切。先輩が後輩に技術を伝承しながら、年季を積むごとに仕事ぶりが認められて段階的に昇進するのが年功主義です。欧米とは違った日本型能力主義・成果主義といってよい。こうした日本型組織は徳川吉宗の時代からあったのです。

【徳川吉宗の人材登用】

徳川吉宗は優秀な人材を登用するために「足高制」を導入した。身分の低い幕臣も高い役職につける制度で、低い家禄の幕臣が高い役職についた場合、在任中は役職基準石と家禄との差額が「足高」として支給された。身分制度と能力主義を調和させたシステムだ。

【和食のように世界に通用するものがまだたくさんある】

いま世界中から和食が評価されていますね。日本には和食のように世界に通用するものがまだたくさんある。これからは米国流の覇権型ではない、各国が普遍的なものを出し合う共存型の多元的グローバリズムの時代でしょう。

【私の意見】Up63_6

笠谷和比古さんを私はこの記事ではじめて知りました。武家社会から現在のグローバリズムを斬る視点に斬新さを感じ紹介しました。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年2月13日 (火)

平成の鬼平の絶頂と失意、小説「霧の旗」

【「平成の鬼平」絶頂と失意】   (2月9日 朝日新聞 夕刊より)

中坊公平(77)はいま、蟄居するかのように京都の自宅で静かに暮らしている。
かつて「平成の鬼平」ともてはやされた。だが住専の不良債権回収をめぐって、半世紀つけていた弁護士バッジを自ら外した。

中坊は弁護士を父にもち、京都で「ぼんぼん」として育つ。企業の顧問などで「稼げる弁護士」になり、40歳で大阪弁護士会副会長。当時は社会問題に切りこむタイプではなかった。その人生がぐるりと回るのは森永ヒ素ミルク事件。「嫌がる子に毒入りのミルクを飲ませてしまった」と自分を責める母親の姿に、胸を突かれた。
弁護団長として国と森永を訴え、救済に奔走する。
お年寄りたちから2千億円を集めたペーパー商法、豊田商事事件では破産管財人として、社員の税金を国から戻させ、被害者に配るという離れ業を演じた。

90年、日弁連会長になった中坊が打ち出したのが「市民に開かれた司法」である。

住専の不良債権がのしかかった96年、中坊は請われて住管機構の社長に就く。「国民に追加負担はかけない」と采配をふるった債権回収は、徹底していた。
生来の負けん気、強烈な自負、パワフル。人前で部下をきつくしかる人でもあった。民主党の管直人(60)は「首相候補」で参院選立候補を持ちかけ、首相小渕恵三は内閣の特別顧問に迎えた。

中坊の暗転もまた住専が舞台となる。検察から不正な回収を了承した疑いで調べを受け、03年10月、弁護士廃業を表明。起訴猶予になった。「部下のしたことの責任をとった」と中坊はいう。

中坊の心底にはいつも「市民のために」の思いがあっただろう。だが、そうして在野から国民のヒーローになったがゆえに、足元がおろそかになったのか。

【松本清張 著 「霧の旗」】

1959年7月から1960年3月にかけて「婦人公論」に連載された長編小説。新潮文庫(552円)。

<あらすじ>
殺人容疑で捕らえられ、死刑判決を受けた兄の無罪を信じて妹柳田桐子が九州から上京した。高名な弁護士大塚欽三に弁護を懇願するが弁護料を理由にすげなく断られる。兄は汚名を着たまま獄死し、妹の弁護士に対する執拗な復讐が始まる・・・。

大塚は50歳をすぎており妻がいたが銀座でレストランを経営している河野径子(みちこ)という女性を愛していた。径子は以前からつき合っていた杉浦健次と別れ話をするため2人の隠れ家に行ったところ健次は刃物で刺されて死亡していた。びっくりしてとび出した径子は桐子と会い桐子を殺人現場に案内して証人役を頼む。桐子はわかったと言いながら一人で現場にもどり、犯人のものと思われるライターを現場から持ち出しかわりに径子のものと思われる手袋をライターのあった場所に置いてくる。径子が逮捕され、径子は桐子のことを捜査官に述べるが、桐子は径子に会ったこともない、ライターも知らない旨述べる。大塚は径子が犯人でないことを確信し、桐子に正しい供述とライターの引渡しを求める。桐子は最後にわかったと言い、自分のアパートに深夜来るよう大塚に言う。大塚が行くと桐子は大塚に酒を飲ませベッドに押し倒し「先生が好きだったの」と言い大塚を抱きしめ、なめまわし大塚の上に乗り情交を成立させた。翌日桐子は担当検事に内容証明郵便で「大塚が桐子に偽証を強要し、ついには肉体関係まで迫り穢されてしまった。高名な弁護士の仮面を暴くため自分の恥をここに書いた」旨郵送してきた。検事は大塚を呼び桐子の手紙を見せた。大塚は桐子の復讐を知った。大塚はこれに反駁の勇気がなかった。反駁する勇気がないのは自分の恥をさらすことよりも、彼が一人の少女の純潔を奪ったという罪の意識にある。大塚はあらゆる弁護士界の役職を辞任し、つづいて弁護士という職業も辞した。彼は自分でそうしたのだが、表面の事情を知っている者は、高名な大塚欽三がその過失から余儀ない立場に追いやられたと信じた。東京から桐子の消息が絶えた。

【私の感想】Up63_5
【弁護士のバランス感覚 在野と権力】

① 私は、30年位前に倍賞千恵子が桐子役、新珠三千代が径子役、滝沢修が大塚欽三役になった「霧の旗」の映画を見ました。“こんなことがあるのかな?”と思いました。
ところが、中坊公平氏についてこれと同じような処理が行われたことに驚きました。
中坊氏は2003年10月10日大阪弁護士会に退会届を提出し廃業しました。一方告訴されていた詐欺事件は起訴猶予になりました。

② 中坊公平氏と私は直接会ったことはありません。中坊氏が住管機構の社長の頃、住管機構からの借入先(債務者)の代理人として住管の職員や担当弁護士と弁済についての折衝を10件位の事件に関し行った経験があります。
住管機構は破綻した住宅金融専門会社の債権を引き継いだものから成り立っており債権は銀行より劣位の不良債権が多かった。ところが住管機構のバックには警察や国税局があり、しかもすぐに警察が動き出すのでおっかなくってみんな黙って従うしかない状況がつくりあげられました。上位の金融機関は勿論、裁判所さえも泣く子と住管には勝てないという意識が浸透していました。

③ 民事の世界に刑事をもち出すもので、私は不公平きわまりないと思いましたが、中坊公平氏は「国民に追加負担はかけない」という大義を強調し住管機構は民事上のルールを無視した債権回収を要求して、実現しました。

④ 中坊氏は弁護士として攻め続けることで脚光をあびました。企業の再建や清算事件の債務者側代理人というのは基本的に債務者という弱い立場の代理人です。のみならず債務者の内部でも社長、取締役、株主、親族、従業員とそれこそさまざまな立場の人の利害が錯綜していて、その錯綜した利害を調整しながらみんなが納得いく解決をめざしていかなければなりません。

正しいと思ってやっていても、どこから攻撃のたまがとんでくるかわかりません。自分の依頼者と思っていた人が後ろからたまを打ってくることだってあり得ます。中坊氏は攻める立場に立つことが常態であったために攻められた場合のことを考えるのがおろそかになったのではないかと思います。

朝日新聞は「在野から国民のヒーローになったがゆえに、足元がおろそかになったのか」としていますが、私は中坊氏は在野とはいうものの権力者的地位が長かったために足元がおろそかになったのではないかと思います。

⑤ 告訴された詐欺事件については多くの人々が厳しい指摘をしています(宮崎学氏HP「中坊RCC社長辞任事件の真相」他)。「霧の旗」の大塚欽三弁護士は自らの意思でバッジをはずしましたが、中坊氏はどうだったのでしょうか。「敗軍の将兵を語らず」ということわざがありますが、中坊氏が「部下のしたことの責任をとった」と述べている点にあらためてがっかりしました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月 9日 (金)

法人税率の単純な数値比較は間違っている!

-2月3日  日本経済新聞 記事 より-

【法人税下げ主要国で加速】
【実効税率20%台主流】
【企業競争力高め国も成長】

欧州を中心に主要国で法人税率を引き下げる動きが広がってきた。ドイツが国税と地方税を合わせた実効税率を2008年から現行より約9%低い29%台にするほか,フランスも今後5年間で20%への引き下げを検討。オランダなど今年から減税する国も多く,実効税率は20%台が主流になりつつある。企業の競争力を高めないと,国全体の成長と雇用を維持できないとの共通の危機感がある。40%程度で高止まりしている日本は国際競争力で後れを取るとの指摘もある。

-同日 日本経済新聞「解説」 より-

【主要な税源を間接税にシフト】
  

各国が法人税率下げに動いているのは,グローバル化の進展で企業が税負担の軽い国に拠点を移す傾向が広がっているためだ。自国内の企業の競争力を高めると同時に国外から企業を引き寄せて冨を稼がなければ,雇用や家計所得も伸びず,国の成長にかかわるとの共通認識がある。

消費税など国民に広く薄く負担を求める間接税を主な税源へとシフトさせ,企業や国の競争力の根幹にかかわる法人税については負担を軽くするという考え方だ。
こうした動きに一部で「国民に負担を強いた上での企業優遇」との反発もあるのは事実だ。だが各国政府は,企業の力強い成長が雇用や個人消費に波及し,国内景気の好循環を生み出す原動力になる点を無視できなくなっている。

-1月30日 日本経済新聞記事 より-

【キャノン8期連続最高益へ 今期 純利益,前期は4500億円】

キャノンの業績が一段と拡大する。2007年12月期は連結純利益(米国会計基準)が前期比9%増の4950億円と,八期連続で過去最高となる見通しだ。

29日発表した06年12月期の連結決算は純利益が前の期に比べ19%増の4553億円となり,初めて4千億円台に乗せた。製造業の06年度純利益では,いずれも07年3月期に1兆5500億円見込むトヨタ自動車,5千億円台を計画するホンダや日産自動車の三社に次ぐ高い水準だった。

07年12月期は売上高が前期比7%増の4兆4500億円,営業利益は8%増の7650億円と,ともに過去最高を更新する見通しだ。

【私の意見】Up63_4

① 日本経済新聞は日本を代表する全国経済紙でありすぐれた記者の方も多く知っていますが,税制改革についての論調はややバランスを失しているように思います。
論調は日本経済団体連合会の御手洗富士夫氏(キャノン会長)の意見そのままです。これは安倍内閣の意図するところでもあります。日本経済新聞には政府や日本経済団体連合会の主流の意見を反映しなければならない立場があるのかな?と多少感じざるを得ません。

② 日本政府の常套手段は都合のいいところだけ外国との数字を比較して,国民のマインドコントロールをすることにあります。トヨタやキャノンをはじめ日本の輸出型大企業は空前の利益をあげているにもかかわらず,昨年における国民の現金給与は実質減少しました。

③ ドイツの労働者の労働時間は日本よりはるかに少ないですし,フランスでは出産休暇中の所得補償などの母子保護政策によって1人の女性が一生の間に生む子どもの数の平均は2.005人に上昇し,子だくさんの国に変わりました。日本は1.26人です。障害者の法定雇用率も日本が1.8%に対しフランスは6%です。

④ 法人税を下げることだけで物価の高い日本に外国企業を引き寄せることができると本気で思っているのでしょうか。政府も経済界代表も都合のよい数字を並べるという姑息な方法をやめ,大局的見地から国民が安心して暮らせる政策や税制を追求する姿勢をもってもらいたいものです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月 5日 (月)

現金給与実質0.6%減少

【名目0.2%増加、実質0.6%減少】 
                                    (1月31日 日本経済新聞 夕刊より)

厚生労働省が21日発表した2006年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、一ヶ月平均の現金給与総額は前年比0.2%増の33万5千522円と二年連続で前年を上回った。しかし物価変動(生鮮食品を含む)の影響を除いた実質賃金は前年比0.6%減で二年ぶりに減少。景気の回復が賃金には十分波及していない実態が明らかになった。
所定内給与は前年比0.3%減の25万2千810円、残業代を示す所定外給与2.5%増の1万9千790円。月間の所定内労働時間は0.3%増の140.3時間と6年ぶりに増加した。所定内労働時間は増えたのに所定内給与がマイナスになったのもパート労働者増加が一因だ。

【私の意見】 Up63_2

小泉内閣も安倍内閣も経済成長優先主義であると言ってきました。しかしこの経済成長優先という言葉にもごまかしがあります。政府は国民全体のための経済成長ではなく、大企業のための経済成長を優先させているだけです。経済成長優先主義ではなく大企業成長優先主義と正確に表現するべきです。ところで大企業であれ、利潤追求を優先させるのは資本の論理であり、自社のことしか考えないのは当たり前のことです。社会資本や富を公正・公平に分配するのが政治の役割ですが、日本政府はその役割を投げ捨て大企業や富者本位の政策ばかり選択し、それが労働者に対する現金給与の減少につながっています。

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2007年2月 4日 (日)

若者の生活保護受給増加

【若年層の生活保護増加】   (2月3日 日本経済新聞より)

国による生活保護の世代別受給状況が厚生労働省の調べで明らかになった。2005年度の受給人員は143万3200人で10年連続で増加した。高齢者の受給率が減る一方で、20代などの若年者の受給が増えている。
 05年度の千人あたりの受給率は70歳以上で20.34人。前年度比0.37人分減った。70歳代の受給率は1990年代後半から上昇していたが8年ぶりに減少に転じた。一方、20歳から39歳の受給率は同0.38人増の4.04人。89年以降で初めて4人台を突破した。

【働く若者も20%以上が年収150万円未満】

労働契約形態について働く若者もその多くは、パート、有期契約、嘱託、派遣、請負の非正規雇用形態で働かされています。
非正規雇用では賃金の上昇がほとんどない上に、労働者にとりキャリア形成ができず、技術や経験の蓄積ができません。2006年労働経済白書によれば20歳代の20%以上の者の年間収入が150万円未満で、200万円未満をとれば3分の1に達しています。

【自殺者20~30代で急増】

2006年6月1日の警察庁の発表によると全国の2005年の自殺者は32,552人であり、8年連続して3万人を超えました。
前年との増減率を年代別でみると、60歳代以上が0.9%減、50代2.4%減に対し、40代2.1%増、30代6.3%増、20代5.0%増、10台以下3.2%増となっています。

【私の意見】

わが国の将来を支える青少年層が生活苦から生活保護を受けたり、苦悩の果てに死を選んでいます。厚生労働省の調査によれば、20代~30代の自殺は同年代の死亡理由の中で最も多いとのことです。上場企業が最高益を更新し続ける中で、国民のとりわけ若者たちの側に痛ましい現実があります。
この国はいったいどこにむかっていくのでしょうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2007年1月 | トップページ | 2007年3月 »