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2007年1月 4日 (木)

労働のビッグバン

最近、労働のビッグバンということがしきりに言われるようになりました。これは働く人の生活の根本にかかわることで厳しい視点で監視する必要があります。

【ビッグバン (Big Bang)】
ビッグバンについてイミダスは次のように解説しています。

①宇宙創生の大爆発、宇宙は150億~200億年前に大爆発し膨らみ始め、現在も膨張し続けているといわれる.
(2)イギリスで金融・資本市場の自由化の一つで、1986年に実施された証券制度の自由化.

【労働のビッグバン】
これからすると労働のビッグバンは労働市場の自由化を意味します。
経済界や経済界を代弁する「学者」が規制改革に聖域はないと言ってこの7~8年労働の規制改革なるものを矢つぎ早やに進めてきました。わたしたち日本人はビッグバンという言葉に抜本的(爆発的)大改革という印象を抱きがちです。
労働のビッグバンは、政府、経済界、「学者」の造語ですが、これもまた欺まん的表現の造語に該当すると言えます。今言われている労働のビッグバンは労働者のための大改革ではなく、経済界のための大改革だからです。

【規制改革・民間開放推進会議】
規制改革・民間開放推進会議は2006年12月25日「規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申の概要 - さらなる飛躍をめさして - 」 を発表しました。副題の「さらなる飛躍」も政府、経済界の得意の欺まん的表現であって、国民の視点に立ったさらなる飛躍とは言えません。
概要は、雇用・労働分野について次のとおり定めていますがいずれも労働者の権利を制限するものばかりです。

(1) 労働契約法制の整備
○労働条件の最低基準を定めた労働基準法以外に労働契約に関する公正・透明な、民事上のルールの明確化を図る視点から、労働契約法制を整備[次期通常国会に法案提出等所要の措置]

(2) 労働時間法制の見直し
○労働時間にとらわれない働き方を推進する観点から、ホワイトカラーの従事する業務のうち裁量性の高い業務について、労働時間規制(深夜業規制を含む)の適用除外とする制度に ついて検討、措置[次期通常国会に法案提出等所要の措置]

(3) 派遣労働をめぐる規制の見直し等
○紹介予定派遣以外の労働者派遣における事前面接の解禁 [平成19年度中に検討]
○雇用申込み義務の見直し[平成19年度中に検討]

【社会権としての勤労の権利・労働基本権】
欧米諸国の憲法は、国民間の実質的平等を実現するため20世紀になって、自由権とは別に社会権を保障してきました。日本国憲法も同じで、芦部信喜・高橋和之補訂「憲法」(第三版 岩波書店 2002年)は次のように記述しています(242頁)。

「日本国憲法は、生存権(25条)、教育を受ける権利(26条)、勤労の権利(27条)、労働基本権(28条)という社会権を保障している。社会権は、20世紀になって、社会国家(福祉国家)の理想に基づき、とくに社会的・経済的弱者を保護し実質的平等を実現するために保障されるに至った人権である。その内容は、国民が人間に値する生活を営むことを保障するものであり、法的に見ると、それは国に対して一定の行為を要求する権利(作為請求権)である。この点で、国の介入の排除を目的とする権利(不作為請求権)である自由権とは性質を異にする。もっとも、社会権にも自由権的側面がある。」

同書は勤労権と労働基本権について次のように記述しています(250頁)。

「19世紀の資本主義の発達の過程において、労働者は失業や劣悪な労働条件のために厳しい生活を余儀なくされた。そこで、労働者に人間に値する生活を実現するために、労働者を保護し、労働運動を容認する立法が制定されることにな
った。このような経緯を踏まえて、日本国憲法は、27条で勤労の権利を保障し、納税(30条)、教育(26条)と並んで、勤労が国民の義務であることを宣言し(法律により勤労を国民に強制することができるという意味ではない)、かつ、勤労条件の法定を定めるとともに、28条で労働基本権を保障している。」

「契約自由の原則が全面的に妥当している場合には、現実の労使間の力の差のために、労働者は使用者に対して不利な立場に立たざるをえない。労働基本権の保障は、劣位にある労働者を使用者と対等の立場に立たせることを目的としている。」

【社会権の全面否定】
小泉・竹中「改革」が押し進めた新自由主義・規制改革・自己責任路線は憲法的には社会権を全面的に否定し、わが国を19世紀型自由主義国家に押しもどそうとするものです。安倍内閣はこれを踏襲し、一層押し進めようとするものです。
(1) 労働契約法案を次期通常国会に提出
 規制改革・民間開放推進会議は労働基準法とは別の法律として
 「労働契約法案」を公正・透明な民事上のルールの明確化を図る視
 点から提出するとしています。ここでいう民事上のルールとは何で
 しょうか。2006年12月27日労働政策審議会(会長菅野和夫)は厚
 生労働大臣に答申を提出していますが、まず労働契約法制の必要
 性について

「労働契約の内容が労使の合意に基づいて自主的に決定され、労働契約が円滑に継続するための基本的な考え方として、次のとおりルールを明確化することが必要である」

とし、労働契約の原則について、

「労働契約は、労働者及び使用者の対等の立場における合意に基づいて締結され、又は変更されるべきものとすること」

としています。
前述のとおり、現実の労使間の力の差があるため、憲法は勤労の権利と労働基本権を保障しました。規制改革・民間開放推進会議労働政策審議会の答申はこれを全面的に否定するものです。
団結権など労働基本権の視点から見ますと労働組合の組織率は厚生労働省の発表によれば2006年6月時点で18.2%で、労働者の6人に1人が労働組合に入っているにすぎません。しかも、その労働組合が労働者全体の権利を守っておらず、90年代以降のリストラの際、労組は正社員の雇用維持を優先し「経営側の生き残り策にも協力してきた」(連合幹部)という実情です(12月29日付朝日新聞朝刊より)。今こそ法律が労働者を守らなければならないのに労働者を自由競争で保護のない労働市場に放り出そうとするのが労働契約法制だと言えます。

(2) 労働時間規制の除外(ホワイトカラーエグゼンプション)これは、一定のホワイトカラーについて、労働時間規制を除外するもので労働界は「ただ働き・サービス残業の合法化」であるとして強く反発しています。しかし、これについても規制改革・民間開放推進会議は、

○労働時間にとらわれない働き方を推進する観点から、ホワイトカラーの従事する業務のうち裁量性の高い業務について、労働時間規制(深夜業規制を含む)の適用除外とする制度

について、次期通常国会に法案提出等所要の措置をとるとしています。労働政策審議会もこれを認める答申を提出し、しかも制度の導入の条件として労使委員会を設置し、対象労働者の範囲、賃金の決定方法等主要事項を労使委員会で決議することとしています。労働組合が会社のリストラに協力するような企業風土の中で労使委員会を設置しても、経営側の意向を汲んだ決議がされることは明らかです。規制改革・民間開放推進会議にしろ労働政策審議会にしろ、労使間の力の差に対する認識を意図的に欠落させています。
2006年12月28日付日経新聞朝刊は、「経済界は報告書をおおむね歓迎。法改正が実現すれば労働時間規制の除外の早期導入に意欲的な姿勢を示す企業も多い」としています。
30代の労働者にどんなにうつ病が増えても、過労死や過労自殺をする人がどんなに増えても、労働者の権利の削減を大合唱するのがこの国の政府、経済界、「学者」の実像です。

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