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2006年12月27日 (水)

視覚障害・うつ病の労働裁判

【うつ病になった視覚障害者佐藤治氏の労働裁判】
                - 仙台地方裁判所に現在係属中 -

<視覚障害>
 佐藤さんは1962年生まれで、1983年(20歳のとき)Y社会福祉協議会(以下「Y社協」と略します)に就職しました。佐藤さんは就職のときにすでに「両網膜色素変性症」という視覚障害がありましたが、担当の総務、経理をきちんとこなしていました。佐藤さんは度の強い眼鏡で今でも普通の文字を読むことができ、私の知っている視覚障害の方の中でも軽度に属すると思います。

<うつ病の発症>
 Y社協は2000年4月から始まった介護保険事業に参入することになり、佐藤さんは1999年から介護保険業務の認可を得るための膨大な書類の作成等の業務を命じられました。佐藤さんは極度の超過勤務を余儀なくされ、加えて、会長、事務局長等より「赤字になったときは責任をとってもらう。」とのプレッシャーを受け続け、更に障害者差別の言動も受け、うつ病を発症しました。うつ病発症の状況について佐藤さんは次のように述べています。

「私は常にものごとを前向きに解決するよう務め、目のことも障害をバネにし、今までがむしゃらに仕事をしてきました。妻やヘルパーさんから『やせたんじゃない。疲れてるみたい。』と言われました。そう言えば眠れないし食欲も無い、だんだんやせてきて、平成12年6月16日頃、夜一人で仕事をしている時、突然発狂し泣き出し、自分で制御不能となりました。まさか私が『うつ病?』最初はテレビドラマみたいで受け入れられませんでした。たまりかねて6月17日にS中央病院に駆け込み(妻も心配して同伴)診察してもらったら、「うつ病」と診断されました。」佐藤さんはそれでもうつ病に耐えて働き続けました。介護保険は黒字となり、佐藤さんのがんばったお陰です。Y社協にとり重要な収入源としてY社協に大きく寄与しました。

<不適切な職場への異動命令>
 佐藤さんがほっとしていたのもつかの間、Y社協は佐藤さんを視覚障害者に不向きな職場への異動を命じました。視覚障害者は視覚障害のため物理的移動にある程度の苦労を伴いますがが、知的活動にはほとんど影響がなく、むしろ他の感覚や努力により健常者以上の知的活動を行っている視覚障害者が少なくありません。佐藤さんもそうです。ところがY社協は細かな文字を直ちに読みとらなければならない職場に佐藤さんの異動を命じました。佐藤さんは職場環境の改善を求めましたが、聞き入れてもらえず、むしろ減給処分などの厳しい扱いを受けました。Y社協は佐藤さんを退職させることしか考えていない対応をとり続けました。

<死の危機>
 佐藤さんはたび重なる降格、降級、言葉のハラスメントに耐えられず、死ぬ事しか考えられなくなりました。奥さんから「笑顔が消えた。じっと考え込んでばかりいる。仕事をやめて下さい。障害者を守るべきはずの社協が障害者いじめ。そんな所になんかいないで下さい。」とさとされました。そして奥さんに社協をやめていいかと改めて聞くと「いいですよ。生きてさえいれば何とかなりますから。」と言われ佐藤さんの心が決まりました。心配しているお母さんやお兄さんに報告に行き、お兄さんに長生きしたいので社協をやめたいと相談しました。お兄さんは、「病休をとって心の病を治してから今後の事を考えろ。今は正常な判断が出来ないのだから療養しろ。家族を守る為にも必要なんだ。」と言われ、思い切って病休を取り休む事にしました。

        Img_0496
      仙台高等・地方裁判所前にて 佐藤治,文代夫妻

<自然退職扱い>
佐藤さんはその後6ヵ月の病休と1年間の休職をしました。Y社協は佐藤さんが不適切な職場で病休中に改訂した就業規則を盾にとり、1年の休職期間満了を理由として2004年10月退職扱いにしました。

<裁判の争点>
 Y社協は佐藤さんの主張について全面的に争っています。争点は次のとおりです。

1.休職期間満了による退職扱いは有効か

 これが要は結論部分です。有効であれば、佐藤さんはY社協の労働者ではないので佐藤さんの請求は棄却となります。無効であれば佐藤さんは労働者としての地位が認められ、賃金を支払われることになります。

2.佐藤さんのうつ病発症は労災(公傷病)か私傷病か
 これについて労働基準監督署は2006年3月労災である旨の認定をしました。公的に労災認定をされたことは強い援軍ですが、裁判所はうつ病が業務に起因するのか否かを独自に判断しますので、その立証が必要です。

3.労災が認定されれば退職扱いは無効となるか

 労働基準法は「使用者は労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、療養のため休業する期間は解雇してはならない」と規定しています(19条1項)。ただ佐藤さんは解雇ではなく就業規則を適用して休職期間満了による自然退職扱いとされたもので、この法文がそのまま適用できません。これについてはエール・フランスが被告となった事件で東京地裁1984年1月27日判決は「使用者が従業員の復職を否定して休職期間満了による自然退職扱にする場合にあっては、・・・使用者が当該従業員が復職することを容認しえない事由を主張立証してはじめてその復職を否定して自然退職の効果の発生を主張しうるものと解するのが相当である。」としています。したがって解雇と同等の主張・立証責任が使用者側にあると言え、うつ病が労災であれば自然退職扱いが無効となると思います。

4.佐藤さんに対する減給処分は有効か

 佐藤さんは減給による損害額として6,196,381円の支払を求めています。病休、休職が業務に起因していればこの請求も認められてしかるべきです。

5.佐藤さんの職場復帰は可能か

 うつ病の労働者の場合、職場環境が変わらなければ、復職が難しいことが少なくありません。佐藤さんの場合、復職の条件としてY社協の職場環境並びにこれまでの姿勢の改善を求めていきます。

<次回予定>
 ・ 日時:2007年3月19日(月) 午後2時~午後5時
 ・ 場所:仙台地方裁判所 308号法廷
 ・ 予定:Y社協会長の本人尋問と佐藤さんの本人尋問

証人・本人調べに入るのは次回が初めてです。証人を調べてから原告や被告の本人尋問をすることが多いのですが、訴訟の迅速化のため、本人尋問を先にやって必要があれば証人尋問をするよう裁判所に要望し採用されました。裁判は、いきなり核心に入ります。
お時間のある方は,傍聴して佐藤さんを応援してあげてください。

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