2009年7月 6日 (月)

連合の「雇用における障害差別禁止法」案

【連合の「雇用における障害差別禁止法」(仮称)制定について】

 連合は第20回中央執行委員会(2009.5.21)で確認の上、連合の「雇用における障害差別禁止法」(仮称)制定についてを発表しました。その内容はこちら(連合ホームページhttp://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/seido/shougaisya_koyou/data/20090521.pdf)をご覧下さい。内容についていくつか検討すべき点があることはありますが、大筋では連合がこのような案を発表したことは大変意義深く、障害をもって働く労働者にとっては大変心強いことだと前向きに評価したいと思います。

【連合主催によるシンポジウム「雇用における差別禁止法」をつくろう開催】

◆日時 2009年6月29日(月)14:00~17:00
◆場所 全電通労働会館2F「全電通ホール」
◆主催 日本労働組合総連合会(連合)
◆参加対象 構成組織・地方連合会、障害者団体、一般、マスコミなど 150人程度
◆開催内容
*主催者代表挨拶
 古賀 伸明  連合事務局長

*基調講演「国連の障害者権利条約について」
 長谷川 珠子 成蹊大学法学部講師

*厚生労働省「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」中間整理について
 吉永 和生  厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課長

*連合の「雇用における障害差別禁止法」(仮称)について
 長谷川 裕子 連合総合労働局長

*障害者関連団体、労働組合からのコメント
 西村 正樹 (自治労障害労働者全国連絡会代表幹事)
 土師 修司 (社会福祉法人電機神奈川福祉センター理事長)
 下堂園 保 (NPO法人タートル理事長)
 尾上 浩二 (DPI日本会議事務局長)
 長谷川 裕子(連合総合労働局長)

*閉会

 私は、全国働く障害者ユニオンの組合員や障害児・者人権ネットワーク会員とともに一聴衆として参加しました。

【厚生労働省「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」中間整理について】

 これについては、吉永和生 厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課長から発表がありました。その内容はこちらをご参照ください(厚生労働省ホームページ〔労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会(第11回)議事次第 資料〕)
 私はこの中間整理は次のとおり現行の障害者雇用率制度を無批判のまま積極的差別是正措置として高く評価していることに危惧しています。

【障害者雇用率制度の位置付け】
○ 差別禁止の枠組みと、現行の障害者雇用率制度との関係については、実際問題として雇用率制度は障害者の雇用の促進に有効であり、差別禁止の枠組みと矛盾しない、積極的差別是正措置(ポジティブアクション)に当たるとの意見が大勢であった。

 私がこれまでも述べてきましたように現行の障害者雇用率制度は厚生労働省の企業に甘い運用の結果、障害者は契約社員・嘱託社員などの非正規雇用に固定化されつつあります。この点の改革なしには現行の障害者雇用率制度が積極的差別是正措置と言えず、むしろ差別固定化措置と言った方が的確です。
 シンポジウムで私は連合に現状の雇用率制度の改革に取り組んでほしい旨述べました。これについ長谷川裕子連合総合労働局長より連合の労働契約の基本はすべて「期間の定めのない契約」と考えており、障害者雇用についても、同一姿勢で取り組んでいきたいと回答がありました。

【働く障害者の弁護団の今後の取り組み】

 法定雇用率制度で採用されている障害者の雇用形態について今後独自に調査を進めていきたいと考えています。また、実態調査のため「障がい者非正規雇用110番」なども検討したいと思います。ただ、障害者団体も弁護士もいろんな課題に追われているため十分な取り組みができるか一寸心配な面があります。とはいえ政局が流動化する中で、国連の障害者権利条約を大きな後ろ盾として、今こそ障害者の権利に根ざしたしっかりとした国内法をつくるベストチャンスだと思います。多くの人と力をあわせてその実現に向け取り組んでまいりたいと考えます。

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2009年6月29日 (月)

障害者の正社員扱いを求める訴訟を検討

【訴訟に向けてご意見をお寄せ下さい!】

 6月21日のブログで私の論文「裁判に見る日本の障害者雇用の現状」を紹介させていただきました。その同じ日に朝日新聞が「進まぬ障害者雇用」という記事を掲載していました。この中で18年間「一般嘱託」という非正規社員のため18年間で月給はわずか2千円しか上がらず、住宅手当も家族手当もない加賀沢志のぶさん(50)のことが紹介されていました。私は論文の中で障害者の雇用の促進等に関する法律は「常時雇用する労働者」のみを法定雇用率の対象とする労働者としており、これは正規雇用労働者を指します。それにもかかわらず国(厚生労働省)は非正規雇用でも常時雇用する労働者としてカウントするという企業に甘い運用をしていることを指摘しました。加賀沢さんは国による障害者差別の容認の犠牲者と言えます。加賀沢さんにかぎらず多くの障害者が非正規雇用のため不安定な地位にあり解雇(雇い止め)をされても争えない弱い立場にあります。働く障害者の弁護団はこれら非正規雇用の障害者の方を原告、国と企業を被告とする訴訟提起を検討したいと思います。訴訟提起が可能かどうか、可能としてどのような訴訟になるか、まだ検討の段階ですが、関心をお持ちの方は是非働く障害者の弁護団にご意見をお寄せ下さい。
 以下、朝日新聞の記事「進まぬ障害者雇用」を紹介します。

【現状は、企業の過半、法定義務下回る】
                     (6月21日 朝日新聞 より)

 東京都港区のオフィスビルの一室。障害者7人がパソコンの操作やビジネスマナーを学ぶ。NPOが企画した障害者向けの就職支援プログラムだ。
 参加者の男性(40)は元イラストレーター。交通事故で手に障害が残り、4年前から派遣社員として自動車関連の工場で働いていた。不況を理由に今年1月に「雇い止め」された。再就職先はまだ見つからない。
 景気の低迷で、08年度に解雇された障害者は、前年度の1.8倍の2774人に上る。ハローワークを通じて求職のあった11万9765件のうち、就職できたのは4万4463件で、就職率は37.1%と前年度より5ポイント余り下がった。
 日本で障害者の働く場は、一般の企業と、作業所などの福祉施設に大別される。知的障害者が通う作業所で公園清掃などをしてきた参加者の女性(26)は、企業への就職を目指す。「作業所の工賃は安い。企業で働いて、生活費を親に渡したい」と話す。
 企業には、障害者雇用促進法で、全従業員数の1.8%分の障害者を雇うことが義務づけられている。だが、実際の平均雇用率は1.59%で、過半数の企業が未達成だ。
 たとえ雇用されても差別を受けるケースも少なくない。
 大手損害保険会社で保険金の支払い業務を担当する前橋市の加賀沢志のぶさん(50)は、両足に障害がある。入社してから18年間、正社員と同じように働いてきた。
 しかし、18年間で月給はわずか2千円しか上がっていない。正社員に支給される住宅手当や家族手当もない。この企業が、主に障害者雇用のために設けている「一般嘱託」という非正社員での採用だからだ。
 加賀沢さんは、個人で加入できる労働組合に入り、待遇改善を求めて会社と団体交渉を続ける。「正社員並みの仕事をさせながら、障害を理由に低い待遇に抑える差別は許せない」と訴える。

【私のコメント】Up63

 個々の企業には待遇改善を求めるとともに国の運用の誤りを正す必要があります。

【欧州は、働く場を確保、差別禁じる法】
                     (6月21日 朝日新聞 より)

 欧州では伝統的に障害者の雇用を促す手厚い政策がとられてきた。これはもともと障害者雇用が第1次世界大戦後の戦傷者らの雇用保障政策から出発したためだ。国家補償の理念に基づき福祉に重点を置いた制度がつ作られ、一般の障害者にも適用が広がった。
 障害者の働く場を確保することが重視され、日本と同じ割り当て雇用制度を持つドイツ、フランスの法定雇用率は、日本より高い5%、6%だ。国や自治体が費用を補助して自活できる賃金を保障する制度も広く普及している。
 90年代の経済停滞の中で、欧州各国は福祉政策の見直しに着手した。障害のある人もない人も共に暮らす「ノーマライゼーション」の理念も広がるにつれて、障害者の「働く権利」を保障し、個々の障害に応じた就労を支援し、労働市場に受け入れることを重視するようになった。
 95年に制定された英国の障害差別禁止法では、障害を理由に採用や昇進などで差別することは違法と定める。欧州連合(EU)は00年、雇用均等指令を出し、障害にかかわりなく雇用について均等に待遇するよう加盟国に求めた。
 これを受けて、欧州ではほとんどの国に障害による差別を禁止する法制がある。この中には、使用者に過度の負担とならない限り個々の障害者の特性に合わせて労働条件や環境を調整する「合理的配慮」の義務づけも含まれる。施設のバリアフリー化や通院のための休暇、手話通訳を置くことなどが求められる。国連は06年、合理的配慮を義務づけた障害者権利条約を採択し、日本も批准に向けて対応を迫られている。
 引馬(ひくま)知子・田園調布学園大学准教授は「欧州は割り当て雇用に加え合理的配慮を含む均等法を定め、多様な施策で障害のある人とない人の間の壁を低める努力を続ける。割り当て雇用に重点を置く日本も、差別禁止法制を検討する時期に来ている」と話す。

【私のコメント】Up63

 欧州のみならず、韓国でもしっかりとした障害者差別禁止法が制定されました。日本も80年代までは政府の側もノーマライゼーションの理念を広げる動きがありましたが、90年代の経済停滞の時期に欧州とは逆にノーマライゼーションの流れを30年以上逆戻りさせました。その最たるものが小泉内閣が2005年に成立させた障害者自立支援法です。

【課題は、訓練から労働へ 後押し必要】
                   
(6月21日 朝日新聞 より)

 日本企業では、義務づけられた法定雇用率の未達成が続く。このため昨年、障害者雇用促進法を改正し、これまで制度の対象外だった従業員300人以下の中小企業にも段階的に適用する。未達成の場合は、不足分1人当たり月4万~5万円の納付金を国に納めなければならない。だが、「障害者を雇うよりも、納付金を払った方が安い」と判断する企業も多い。
 これまで多くの障害者の受け皿となってきたのは授産施設や作業所といった福祉施設だ。こうした施設は「訓練」の場と位置づけられ、最低賃金など労働法の対象外だった。障害者が受け取る工賃は平均で月約1万2千円と、生活を支えるにはほど遠い。
 このため、06年に施行された障害者自立支援法は「福祉から雇用への橋渡しの強化」を目指す。企業への就職を目指す障害者がビジネスマナー講習などを受けられる「就労移行支援事業」を新設。福祉施設で働く障害者についても、訓練型に加え、雇用契約を結ぶ雇用型が導入され、最低賃金の保証や社会保険の加入も義務づけられた。
 これまで福祉施設から企業に就職する障害者は年間約2千人。政府は11年度までに年間9千人の移行を目指す。
 だが、福祉と雇用のはざまで矛盾も残る。同じ障害者でも、公共の職業訓練施設で受講すると無料で、手当が出ることもある一方、福祉施設では応益負担として原則、利用料を支払う必要がある。
 日本障害者協議会の勝又和夫代表は、こう訴える。「障害者だからといって『訓練』で一生を終えるのはおかしい。基本的には『労働』と位置づけ、労働法を適用すべきだ。障害の程度により働く能力には差がある。企業や施設に、国が賃金の補填をすることで、雇用を後押しする必要がある」 (山根祐作。松浦祐子)

【私のコメント】Up63

 障害者権利条約は締約国に障害者が働きやすい職場環境等の改善を義務づけていますが、日本の国内法(障害者基本法と障害者の雇用の促進等に関する法律)は健常者に近づけるための障害者の改造(訓練)を重視しています。障害者権利条約と日本の国内法は法思想が全く異なります。しかも、天下の悪法障害者自立支援法は訓練について応益負担と称して障害者から利用料をとることにしています。国の財政再建のために経済的弱者からお金をむしりとろうとするもので、後期高齢者に医療費の負担を求めるのと共通するものです。

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2009年6月21日 (日)

拙著「裁判に見る日本の障害者雇用の現状」

【労働法律旬報「特集・障害者の権利条約と障害者雇用」】

 「労働法律旬報」は労働関係の出版物を多く出版している「旬報社」が毎月2回発行している雑誌です。その1696号(5月下旬号)で「障害者の権利条約と障害者雇用」という特集が組まれました。各論文と執筆者は次のとおりです。私の論文は出版社の了解のもとに添付しました。

*障害者権利条約とわが国の障害者の一般雇用施策関係法の問題点と課題[山田耕一(京都女子大学教授)]
*ドイツの障害者雇用の現状と検討課題-日本法への示唆[小西啓文(明治大学准教授)]
*アメリカの障害者雇用[永野秀雄(法政大学教授)]
*EU均等法と障害のある人・家族・支援者の雇用-英国コールマン事件を契機とする均等待遇保障の新展開[引馬知子(田園調布大学准教授)]
*裁判に見る日本の障害者雇用の現状[清水建夫(銀座通り法律事務所)]

           

■論文:「裁判に見る日本の障害者雇用の現状」
                         清水 建夫

【私の論文「裁判に見る日本の障害者雇用の現状」の紹介】

1 福祉奴隷工場(障害者虐待)と経営者・県・国の責任

 補助金目当てに多数の知的障害者を雇用した経営者が県やハローワーク等からは「福祉の神サマ」としてチヤホヤされながら、他方では障害者を寄宿舎に住まさせて暴行の限りを尽くし、女性労働者には次々と強姦を行っていました。このようなとんでもない経営者が滋賀と水戸で明らかになりました。親の訴えによりこの事実が少しずつ表に出はじめても警察・検察庁・県・ハローワーク・労働基準監督署の動きはにぶく、知的障害者や親の訴えを本気で聞こうとしませんでした。検察庁は虐待行為のほとんどを不起訴とし、横領や助成金詐欺のみを起訴し、裁判所も被告人である経営者は「障害者雇用に貢献した」として見当違いの情状をもとに執行猶予の判決を言い渡しました。被害者側から不公平だと非難される始末です。このような中で大津地裁は2003年3月24日民事裁判の判決で経営者だけでなく県や国に対し、国家賠償法にもとづく責任を認め、損害賠償を命じる画期的な判決を下しました。その時の裁判長が私が司法修習生時代に親しかった神吉正則(かんきまさのり)君であったことをこの論文を書くにあたってはじめて知りました。彼の地道でコツコツと努力する人柄を思い起こし胸が熱くなりました。

2 「職場環境の改造」を求める障害者権利条約と「障害者の改造」を求める国内法

 障害者が社会に参加する上での障壁は障害者その人に原因があるのではなく、障害と社会の間の環境に原因があります。この環境を変えて障害者と社会参加(雇用)の障壁をとり除こうとするのが世界の流れであり障害者権利条約の基本思想です。日本の法律は障害者を負の存在と位置づけ、障害者を可能なかぎり健常者に近づけるべく障害者を改造することによって、障害者の社会参加(雇用)を認めようとするものです。このように障害者権利条約と日本の国内法(障害者基本法、障害者の雇用の促進等に関する法律)とは法思想が全く異なっています。日本政府は障害者基本法の表現上の手直しで障害者権利条約と国内法との整合性を図ろうとしています。しかし法思想の異なる国内法を抜本改正しないかぎり、権利条約にそった法律とはなり得ず、ただお茶をにごしてごまかすだけの国内法改正に終わってしまいます。

3 厚生労働省の事業主に甘い運用が障害者の労働環境を一層悪化させた

 厚生労働省、各都道府県労働局、ハローワーク、地方自治体の障害者雇用の担当者の多くに「障害者は働かせてもらえるだけまし」という考えが今なお根強く残っているように思います。そのため事業主に対して腰がひけ、事業主に甘い運用に傾いています。日本の国内法が事業主主体・障害者客体の障害者雇用立法であることに加え、これら行政が事業主に甘い運用をおこなってきたため、障害者が労働者としての尊厳を保つことが大変困難な実情です。

4 障害者の労働に関する裁判事例

 これまで障害者の労働に関する裁判事例を整理した文献が見当たらなかったので「旬報社」」から与えられた今回のチャンスを利用し、裁判事例(和解で終了したものを含めて)を私なりに整理してみました。頁数の関係で裁判一つ一つの紹介は詳しくできませんでしたが、詳しくは引用した判例そのものをあたっていただきたいと思います。

5 裁判から見えるもの

 小泉内閣時代に成立した障害者自立支援法により日本の障害者福祉と雇用は一挙に30年以上冬の時代に逆もどりさせられました。この悪法は日々障害者を苦しめています。世界同時不況を理由に多くの障害者が解雇されましたが、多くの障害者が非正規雇用のため、裁判で闘う障害者はあらわれません。一面で日本政府は外圧に弱いところがあります。障害者権利条約を武器にして後退しきっている日本の障害者福祉と雇用を世界の水準までもどすチャンスと言えます。放っておくと日本政府は障害者基本法の微修正だけでお茶をにごして終わらせる可能性が多分にあります。 「ある社会がその構成員のいくらかの人々を閉め出すような場合、それは弱くもろい社会なのである」(国連総会で1980年1月30日採択された「国際障害者年行動計画」より)。私たちは弱くもろいこの社会を根本から変えるために障害者権利条約を忠実に実行する国内法の制定を粘り強く求めていく必要があります。そのことが障害のある人だけでなく障害のない人にも住みやすい社会につながると思います。

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2009年6月 7日 (日)

民主党年金改革案と自民党世襲制限先送り

-自民終わりの始まり-

【年金改革案 民主「最低保障月7万円」 制度一元化、財源は消費税】
                  (6月7日 日本経済新聞 より)

 民主党は次期衆院選マニフェスト(政権公約)に盛り込む年金制度改革案を固めた。職種によって異なる年金制度を一元化し、支払った保険料に応じて給付額が決まる「所得比例年金」と消費税を財源とする満額月7万円の「最低保障年金」の2本柱とする。2007年の参院選マニフェストを引き継ぎ、消費税率引き上げの時期とも絡む新制度への移行完了に必要な期間は明記しない。
 鳩山由紀夫代表、菅直人代表代行、岡田克也幹事長ら幹部が4日会談し、基本方針を確認した。国民の年金制度や年金行政への不信感が強いとみており、制度改革を衆院選の争点に据える。
 政権獲得後に詳細な制度設計をして4年以内の法律改正をめざす。全額税方式の最低保障年金を創設するのは、安定的な財源を確保して老後の生活保障を充実させる狙いだ。現行25年の受給資格期間は廃止し、所得比例年金の保険料(15%の労使折半)を納めれば、最低でも月7万円受給できる仕組みとする。最低保障年金は所得比例年金を一定額以上受給する人は減額する。
 新制度には十分な移行期間を設ける方向だが、詳細な制度設計は先送りする。すでに年金を受け取っている人は将来にわたり現行制度に基づき受給し、現役世代は当面は現行制度と新制度が混在した形となる見込みだ。新制度への移行が完了するまでに消費税率の引き上げが必要となるが、増税幅や時期には言及しない方向だ。
 年金行政の見直しでは、税と保険料の一体徴収や、共通番号制度の導入も明記する。

【「抜本改革」の是非争点 民主の年金案 財源、詳細は先送り】
                   (6月7日 日本経済新聞 より)

 民主党が次期衆院選で提案する年金制度改革案は、現行制度の抜本改正に力点を置き、消費税論議を含む詳細な制度設計は政権獲得後に先送りする。年金記録問題などで高まる年金不信を踏まえ、まずは制度改革の是非を争点にしたい考えだが、財源にはあいまいな点も残している。

 現在の年金制度は職種によって制度が異なるなど複雑で世代間の負担格差も指摘されている。民主党案は分かりやすさと公平性を重視し、自営業者も含め収入に応じた保険料を納め、支払った保険料に見合う年金を受給する仕組みに統一する。現行制度に比べ負担と給付がどう変化するのかさらに分かりやすく示す必要があるほか、効率的な保険料徴収や低所得者対策なども課題ととなる。
 政府がすでに約束した将来の年金支払いに対する積立金不足(過去債務)をどう解消するかなど移行期間中の財源の手当て策はあいまいだ。民主党の岡田克也幹事長は先の党代表選で270兆円の過去債務を新制度と切り離した別会計とする案を示したが、マニフェストには記載を見送る方向だ。
 政府・与党内でも年金制度改革を議論する動きが出ているが、方向性に乏しい。政府の社会保障国民会議は昨年11月、基礎年金の税方式化の試算を含む最終報告を発表。4月に議論を始めた安心社会実現会議は非正規労働者の厚生年金の加入要件の緩和などを議論している。

【親バカ承知!小泉4代目“襲名劇場”】
    (Sponichi Annexニュース 2008年9月28日記事 より)

 小泉純一郎元首相が27日、地元の神奈川県横須賀市での講演会で「次の総選挙に出馬しない」と述べ、引退を正式に表明した。後継に指名した次男進次郎氏(27)も同席し、同選挙区から次期衆院選に「立候補する決意を固めました」と述べた。実質最後となる“小泉劇場”に、1000人以上の地元支援者が駆けつけた。

 (小泉純一郎元首相は、) 進次郎氏については「親バカと言われるでしょうが、私が27歳のときよりはしっかりしいてる」と紹介。その後「じゃあ進次郎、あいさつしよう」と呼び込むと、進次郎氏が登壇。「よっ、4代目!」と掛け声が飛ぶ中、父と同じ赤いネクタイをつけた進次郎氏は「ここ横須賀と三浦(神奈川11区)から立候補する決意を固めました」と表明。「こいつは何かやってくれそうだ、そんな政治家になれるよう一生懸命努力します」と力を込めた。

【自民世襲制限先送り 小泉氏次男ら「例外」】
                     (6月 5日 朝日新聞 より)

 自民党の武部勤・党改革実行本部長は4日、同本部の拡大幹部会で、国会議員の世襲制限を次の総選挙から行うとした当初の案を撤回し、実施時期を明記しない修正案を示した。自民党の世襲制度に対する取り組みは大きく後退しそうだ。
 武部氏は5月21日、国会議員の親族が同じ選挙区から続けて立候補する場合、次の総選挙から公認しない、とする案を示していた。現職は含まれず、対象となるのは小泉元首相の次男進次郎氏(神奈川11区)と白井日出男元法相の長男正一氏(千葉1区)の新顔2人だった。
 しかし、無所属で当選した後に追加公認するなどの「抜け穴」が批判されたほか、自民党の世襲議員からは早急な制限への異論が噴出した。
 武部氏は5日の党改革実行本部総会で修正案の了承を取り付け、麻生首相に報告す予定。実施時期については、党執行部に委ねる考えだ。
 これを受け、世襲制限を唱えてきた菅義偉・選挙対策副委員長は、小泉氏の次男などすでに公認が内定している2人は例外的に公認することとし、今後政界引退を表明した国会議員の親族は次の総選挙から公認しない方向で調整を進めている。
 しかし、自民党はほとんどの選挙区ですでに公認を内定しており、次の総選挙で新たな対象者が現れる可能性は少ない。菅氏は世襲制限を政権公約に掲げることを目指しているが、事実上、「次の次の総選挙」に向けた検討課題にとどまる可能性もある。
 民主党は次の総選挙から、3親等以内の親族が同じ選挙区から続けて立候補することを認めないと決めている。同党が総選挙に向け、世襲問題を自民党への攻撃材料にするのは確実だ。

【私の意見】Up63

 世界各国と比べて、経済面では日本はとび抜けて豊かですが、国民のほとんどは自分の将来に不安をいだいています。
 民主党の年金改革案は国民にひろくセーフティーネットを張るための第一歩として評価できます。財源として消費税率のアップだけでなく、法人税・所得税の見なおしをあわせて検討する必要があります。財源がどこであれ、最終的に一人ひとりのセーフティーネットがしっかり張られているかどうかが重要です。私は2009年5月12日のブログ「あきらめずに総中流社会をめざそう!」の中でセーフティーネットのレベルは日本における生活保護レベルではなくヨーロッパ諸国や米国の国民の中位のレベルに置くべきであると述べました。
 年金改革にしろ政治家の世襲制限にしろ、民主党には現状から少しでもより良いものに改めようという機運を感じますが、自民党にはそれが感じられません。何も変えなくとも選挙では当然のごとく当選するという時代は終わりつつあるというのに危機感が感じられません。自民支配の時代の終わりが確実に始まったと言えます。

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2009年5月25日 (月)

盧氏の自殺とサルコジ ベルルスコーニ 麻生

【盧前大統領の死 隣国の政治の悲劇を思う】
                 
(5月24日 朝日新聞社説 より)

 思いもかけない、何とも悲痛な結末である。1年あまり前まで韓国の大統領だった盧武鉉氏が亡くなった。
 きのう早朝、自宅の裏山に警護員とともに登り、岩場から落ちた。
 家族あての短い遺書を盧前大統領は残していた、と側近の弁護士が明らかにした。自殺と見られている。
 盧氏は在任中の収賄の容疑者として検察の聴取を受けた。会社を経営する後援者が盧氏の妻や親族に640万ドル(約6億1千万円)の資金を渡したが、絶大な権力が集まる大統領制のもと、大統領への賄賂として問うべきではないか、との判断からだ。
 「退任後に知った」などと盧氏は容疑を否認していたが、身内が受け取ったことは認め、自分のホームページで「民主主義や正義という言葉を述べる資格は失った」と記していた。出頭時も「面目ない」と国民にわびた。
 検察が盧氏の法的処分をどうするかを決める最終段階での死である。
 今回の盧氏周辺の資金疑惑は、韓国の国民に対して、これまで以上に政治への深い失望を与えてきた。
 地盤や血縁、学歴が幅を利かす。日本もそうだが、政治とカネが切り離せない。そんな社会を変えてほしい。盧政権は、国民のその熱い期待にこたえるべく登場したはずだった。
 全斗換、盧泰愚の両大統領は自信が腐敗問われ、続く金泳三、金大中元大統領はいずれも子息が不正資金の受け取りで断罪された。
 それもあって盧武鉉氏は裏取引のない透明な政治を唱えた。人権派弁護士として活躍し、対立する野党からもカネに清潔と見られる庶民派だった。
 かつて政権と検察の癒着が激しかったが、盧氏は検察の独立を保証し、陪審制度導入を含む司法制度改革を支えた。過去の権力犯罪の解明にも切り込んだ。
 そういう盧氏も旧弊は断ち切れなかったということか。「歴史の清算」を目指したのにできず、司法の裁きに耐えかねたのだろうか。
 韓国では早速、捜査が強引だったとの批判が噴き出している。政界対立の火種にもなりかねない。だが、今回の悲劇をそうさせるべきではない。
 世界は未曽有の経済危機にある。輸出に頼る韓国経済もまた、たいへんに苦しい状況だ。ここで政治も対立を深めてしまってはよくない。
 朝鮮半島の安定を望む日本にとっても、まず韓国が安定してほしいし、存在感を高めてもらいたい。
 曲折はあっても、韓国には独裁から民主への一貫した流れがある。そしてこの20年あまり、民主主義を深めて市民社会を成熟させ、経済の発展という輝かしい成果をあげてきた。
 こうした実績を踏まえ、政治の安定に歩みを進めてほしい。それが、盧氏の死を無にしない道ではないか。

<盧前大統領の「遺書」>
               
(5月24日 日本経済新聞 より)

 とても多くの人々に迷惑をかけた。
 私のせいで、いろいろな人が受けた苦痛はとても大きい。
 今後、受けるだろう苦痛も推し量ることはできない。
 余生も他人の足手まといになるしかない。
 健康がよくなく、何もすることができない。
 本を読むことも、文章を書くこともできない。
 あまり悲しむな。
 生と死はすべて自然の一かけらではないのか。
 すまないと言うな。
 誰も恨むな。
 運命だ。
 火葬してくれ。
 そして、家の近くに、とても小さな石碑を一つだけ残してくれ。
 昔から考えていたことだ。

【“恋愛キング”サルコジ大統領の結婚力】

<離婚後3カ月で、サルコジ大統領が再々婚!?>
               
All About2008年01月18日 より)

 2007年10月にセシリア夫人と離婚したばかりのフランス大統領サルコジ氏が、2008年1月10日にパリの大統領府において、噂の恋人である元スーパーモデルで14歳年下のカーラ・ブルーニさん(38歳)と結婚式を挙げたらしいと、フランスの地方紙が報道。
フランス人といえば「恋愛至上主義」で有名なお国柄。公人である大統領だって、例外ではない・・・

  [→詳細は(All About2008年01月18日 ガイド:二松まゆみ記事)]

<サルコジ大統領夫人 買い物袋に全裸で登場>
           
 (Sponichi Annex2008年12月14日 より)

 2008年米ニューヨークで行われた競売で900万円以上の値が付き世界を騒がせた、サルコジ仏大統領夫人で歌手のカーラ・ブルーニさん(40)のモデル時代に撮影されたヌード写真が、今度は夏物衣料メーカーパルドンの買い物袋に購買欲を刺激するような思わせぶりなせりふも付記されプリントされた。カーラさんは、この買い物袋の流通禁止を求め提訴。ヌード写真をめぐり再び騒がしくなりそうだ・・・

  [→詳細は(Sponichi Annex “社会”2008年12月14日)]

【ベルルスコーニ伊首相が誕生日に駆けつけ、離婚騒動の原因になった18歳女性】
               
 (msn産経ニュース 2009.5.5 より)

 イタリアのベルルスコーニ首相が、ナポリ在住で雑誌グラビアにも登場したノエミ・レティジアさんの18歳の誕生日に駆けつけたとの報道を受け、ベロニカ夫人が激怒し、離婚の意志を正式に表明、奔放な女性関係に端を発したイタリアのベルルスコーニ首相(72)とベロニカ夫人(52)の離婚問題が注目されている・・・

  [→詳細は(msn産経ニュース)]

【私の意見】Up63

 盧武鉉前韓国大統領の死はとても残念です。人権派弁護士の大統領として、モタモタする日本とは対照的に障害者差別禁止法を韓国でいち早く成立させました。
 地盤、血縁、学閥、カネと政治の切り離しを期待されて登場した盧武鉉氏がカネの疑惑で逮捕寸前の事態に陥ったのは残念です。盧氏はおそらく賄賂については知らなかったと私は思います。そう信じたいですね。なぜなら賄賂を認識して受け取ることは盧氏の築いてきたすべてを自ら破壊することになるからです。
 盧氏は韓国をとりまく環境が大変厳しい時期に大統領となりました。不運でもありました。外交面ではアメリカ合衆国はブッシュ二世、日本は小泉純一郎といずれも右翼・保守政権でした。北朝鮮との対話路線を進展させる上で金大中元大統領よりはるかに厳しい環境下にありました。経済も低迷し、国民の苛立ちの原因となりました。それにしても自殺という決着を選んだのはとても残念です。盧氏が私の身内であれば死ななくってもいいんじゃないかと言いたくなります。よしんば収賄に関係していたとしても有罪判決を受けて服役すればいいじゃないか、命までとられることはないんだから・・と言いたいです。
 サルコジフランス大統領とベルルスコーニイタリア首相の華やかでセクシュアルな記事はこれと対照的です。私はサルコジ氏がフランス大統領に就任する前後の動静について批判的な記事「仏バスチーユ広場のデモと戦後レジーム」「癒着サルコジ氏と完全無欠の小泉前首相」を書きました。でも今では私生活と政治家としての資質は別だと思うようになってきました。
 フランス人もイタリア人も「彼(サルコジやベルルスコーニ)に政治の舵取りを頼んだのであって、それさえしっかりやってくれれば私生活は関係がない」と考えているのでしょうね。
 麻生首相が夜は日本の旧御三家ホテルでブランデーを飲んですごすことをマスコミが問題視しましたが、フランス人やイタリア人の目から見れば、それは彼(麻生)の自由であって、マスコミが問題にすることが理解できないかもしれません。私の目線もフランス人やイタリア人に近くなってきました。
 韓国人の自殺が増加しています。女優の自殺が続きましたから、今回の前大統領の自殺は韓国の人々の心に一層重くのしかかっていることと思います。韓国の自殺率は日本と変わらないほど高い割合を占めています。儒教的考え方が日本人以上に強く残っています。日本人も韓国人もこれからはフランス人やイタリア人のように仕事と私生活は別、と割り切った方がよいかもしれません。盧武鉉氏という真面目な政治家を失って私が感じたことです。

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2009年5月17日 (日)

欧米企業「性別の壁」取り払い競争力強化

                  (5月17日 日本経済新聞 より)

【多様性(ダイバーシティ)競争力の源に】

 企業の競争力を強めるには組織の「多様性(ダイバーシティ)」を高める必要があるとの考え方が欧米を中心に広がり始めた。これまでのように格差是正を目的として女性や有色人種らマイノリティー(少数派)を義務的に登用するのではなく、組織の多様性を柔軟な発想や着実な経営につなげ、企業活動の原動力にするという流れだ。

<欧米では女性の管理職が増えている>

欧米では女性の管理職が増えている

【最高多様性責任者(CDO?)】

 多様性が企業業績を左右するとの見方から、専任ポストである最高多様性責任者(CDO?)を置く企業が増えている。
 電機大手の独シーメンスは3月、約150人の女性管理職を対象にした世界的な社内組織を立ち上げた。女性社員の教育や訓練、育児休業からの復帰などを積極的に支援するためだ。旗を振ったのはCDOのリー氏。「多様性こそがシーメンスの長期的成功の必要条件だ」と話す。
 シーメンスではCDOと女性社員が直接連絡を取れる体制も整え、若い女性社員のやる気を引き出す。2011年までに世界中の法人で管理職の多様性を大幅に高めるのが目標だ。
 数年前には一般にはほとんど知られていなかった役職がCDO。シーメンスに加え、ナイキなどの欧米企業が相次いでポストを創設。幅広い人材の登用が進んでいるか、マイノリティー社員の昇格に障害はないかなどに目を光らせる。欧米企業が多様性を重視するのはそれが業績に影響を与えるためだ。
 女性の社会進出などを支援する非営利組織(NPO)「カタリスト」が主要な520社を対象に07年に行った調査によると、女性役員の比率が高い企業群では収益力を示す自己資本利益率(ROE)が、役員比率が低い企業群より約5割高い。売上高利益率でみでも同様に4割ほど上回るという。
 組織の多様性が確保された企業として4段階の分類の最上位グループに入るのは、ウォルト・ディズニーやゼロックス、エクソンモービルなど。これとは反対に金融危機で実質破綻したベアー・スターンズ、経営再建中のゼネラル・モーターズ(GM)は最下位グループに区分される。

<CDO>

 英語のチーフ・ダイバーシティ・オフィサーの略。企業トップである最高経営責任者(CEO)から直接の指示を受けるポストという位置づけで、広範囲にわたる権限を与えられているケースが多い。
 CDOは多数派とは人種や性別が異なる人材の登用を促進し、組織の多様性を拡大する役割を担う。少数派の社員が差別を受けていないかどうかについても監視する。人材争奪戦の激化や経済のグローバル化を背景に、欧米を中心にCDOポストを創設する企業が増えている。

【大胆な発想に期待】

 差別是正措置が社会的な要請を背景とするのに対して、多様性の重視は企業からの自発的な動き。コンサルティング会社のマッキンゼーの調査によると、経営陣に3人以上の女性がいる企業は「職場環境」や「経営戦略」「調整力」で優位に立つ。男性ばかりが経営陣だと企業の能力を超えて目標を追求する傾向があるが、女性が入ると経営がより現実的になるという事例も報告されている。
 マッキンゼー日本法人の本田桂子ディレクターは「多様な人材の登用に積極的な企業は大胆な発想が多く、それが好業績につながる」と話す。性別や人種にこだわらず、自然に優秀な人材を使うことが競争力を強化するというわけだ。
 「多様性」重視が進んでいるのは産業界だけではない。北欧フィンランドでは閣僚20人のうち12人が女性。議会でも女性の比率は全体の4割以上を占める。2000年には初めての女性大統領が誕生した。
 欧州が深刻な金融危機に直面した昨秋、欧州連合(EU)の共通対策をまとめたのはフランスの女性閣僚であるラガルド経済・財務相だ。ドイツのメルケル首相をはじめ、欧米では主要な閣僚ポストを女性が握るケースは少なくない。
 日本でも丸紅が4月に専門チームを立ち上げるなど、多様性重視の動きが出始めた。丸紅人事部の鹿島浩二企画課長は「少子化で人材不足が懸念される日本では多様性を重視した戦略が特に重要だ」と訴える。だが、国際労働機関(ILO)の調査によると、日本全体でみれば、管理職に占める女性の割合はわずか9%。欧米の30~40%台に遠く及ばない。

 激戦となった昨年の米民主党予備選。米大統領候補の座を最後まで争ったのは黒人であるオバマ上院議員と女性のクリントン上院議員だった。白人男性の指定席とも考えられていた大統領のポストが性別や人種の壁を越えて争われるようになったことが多様性が重視される社会への変化を物語っている。(ロンドン=岐部秀光、国際部 宮下奈緒子)

【私の意見】Up63

 若い社員や女性社員がのびのびと働いている企業は伸びるというのが私が日々感じていることです。日本の企業社会は長い間男性中心社会でした。女性はお茶汲み、電話番、コピー担当という位置づけで、結婚すれば寿(ことぶき)退社、やれやれめでたしめでたし・・・・・。
 その日本企業も女性の登用の必要性にやっと気づきはじめたというところでしょうか。
 人口減社会は労働力減社会であり、人口減社会は消費者減社会です。労働力の面からも消費者の目線でみる面からもオジサンだけでは力不足なのは誰の目にも明らかです。女性が力を発揮しているか否かはその企業の将来性を図る上での重要な物差しと言えます。

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2009年5月12日 (火)

あきらめずに再び総中流社会をめざそう!

【私の主張】Up63

【中進国ではダメなの?】

 日本はGDP(国内総生産)が世界第2位の経済大国です。ですが中国がもうすぐ追い越し、GDPを基準にすれば日本は世界第3位に落ちるのは時間の問題です。2007年の人口でみると中国13.3億人(世界人口の19.9%)、インド11.7億人(同17.5%)、アメリカ合衆国3.1億人(同4.6%)に対し、日本は1.3億人(同1.9%)で人口面から見ても大国ではありません。
 私たち日本人は1945年8月の敗戦で世界一貧乏な国民になったと思っていたのに、1960年代以降世界から経済大国と言われるようになり、私たち自身もそう思うようになりました。しかし、経済大国ニッポンが私たち一人ひとりの日本人にどんな幸せを運んだのでしょうか。明治政府以来欧米に追いつけ追い越せとがむしゃらに走らされてきていざ追いついてみると、今度はマスコミに韓国や中国に追い抜かれると更に尻をたたかれています。でも翻って考えてみて、国民一人ひとりにとって、GDP世界第2位がなんぼのものなのでしょうか。経済大国が国民一人ひとりにとってなんぼのものなのでしょうか。仮にこの日本が経済大国から経済中進国にすべり落ちたとしたら、私たち日本人は不幸な国民になるのでしょうか。

【人を愛する喜びを忘れた日本人】

 たびたび私が述べてきたことですが、日本人は世界で冠たる貧相な表情の国民です。私も同じなので「日本人は・・・」という資格はないのですが、現実問題として町を歩いていても電車に乗っても豊かでほのぼのとした表情をもった日本人に出くわすのはとても困難です。わかりやすい言葉で言えば、はっきり言って日本人はみんな目つきが悪いのです。日本国民の目つきの悪さはおそらく世界のトップクラスです。私はこの目つきの悪さはどこからくるのだろうと時々考えます。経済的に貧ししいから目つきが悪くなったということはありえません。ほとんどの国は経済的に日本より貧しいのですが、他の国の国民の表情は日本人よりくったくがなく、日本人より底抜けに明るいものがあります。
 私は日本人の表情が貧相で暗いのは、人を愛する喜びをすっかり忘れてしまったからだと思います。他者に役立つことを感じたときに人として「ああ、自分は生きているんだ!」と喜びを感じることができます。どんなにお金があっても、どんなに大きな家に住んでいても、どんなにおいしい料理を食べても、それが自分(家族を含めて)のためだけであればそのうちあきてくるものだと思います。
 1945年最貧国から出発した日本国民は物質的豊かさが満たされることを単純に幸福と思ってきました。しかし、豊かさを現実に手に入れてみると更なる豊かさを追い求めてもそれだけではむなしいものがあります。
 今の日本人の多くはそのむなしさの中にあって、自分と自分の家族あるいは自分と恋人との閉ざされた世界だけに閉じこもってしまっていると思います。

【再び総中流社会をめざそう】

 米国発の世界同時不況を理由に大手企業が派遣切り・期間工切りを当然の如く実行し、多くの労働者が住むところもなく寒空に放り出されました。昨年末から日比谷公園に急遽作られた派遣村に助けを求めた労働者たちはその典型です。日本の企業がグローバル競争で勝ち残れば、日本人も幸せになるという大企業や政府やマスコミの言うことがでたらめであったことを事実が証明しています。日本でも富裕層と富裕層でない人々との間の経済的格差は拡大しています。米国社会と同じように日本でも階層分化が急ピッチで進んでいます。しかしこのような階層分化は下位層の人々は勿論のこと上位層の人々にとっても人間本来の幸福をもたらすとは私には思えません。
 日本でも確実に階層分化が進んでいますが、米国やヨーロッパ社会ほどの階層社会の歴史はありません。日本の富裕層は他国と比べると越えがたいほどの絶大な権力をもっているわけではありません。日本は今からでもまにあうと私は思います。
 小泉内閣以降顕著になったお金持ち優遇政策をやめ、中低所得者層が明日の生活を心配しないでよいようなしっかりとしたセーフティーネットを張りめぐらしましょう。そのセーフティーネットのレベルは日本における生活保護レベルではなく、ヨーロッパ諸国や米国国民の中位の国民レベルに置くべきです。それは日本の豊かさからすると容易に実現できるレベルです。若者も老人もシングルマザーの女性も欧米国民の中位のレベルの生活が保障されるならば、一人ひとりがのびのびと生きていくことができ、健康で文化的な生活を享受することができます。自分にゆとりをもつことができれば、他者(社会)に役立つ生き方を追い求めるゆとりも出来てきます。

【再び美しい顔をとり戻そう】

 このように述べると私の言っていることは夢物語のように、あるいは道徳訓話のように思われるかもしれません。私は夢物語を語っているのでもなければ、道徳訓話を述べているつもりもありません。今の日本人の追い求めている(あるいは追い求めさせられている)生き方は明らかにまちがっているということです。私が強調したいのは、私たち日本人は経済大国をめざす必要はないし、日本人一人ひとりが競う必要はないということです。経済的中位の国であったとしても他者のことを思いやるゆとりのある社会の方が私たち一人ひとりにとってははるかに幸せだということです。
 敗戦で最貧国となった戦後の日本人をニュース映像で見た方は多いと思います。食べものにもこと欠いていたのに子どもたちの目はキラキラと輝いていました。お母さんたちは清潔で理知的で、でも他人の子どもたちも慈愛のまなざしで見つめるやさしさがありました。一方男性の多くは自信を失っていました。30年前中国人の水墨画家は日本に来て日本の男性の表情には歴史があり、美しいと言ってくれました。25年前アメリカ人は私に日本人はpolite(礼儀正しい)と言ってくれました。21年前日本に来たスペイン人は日本人はいつもニコニコしていて電車の中では寝ているのを不思議がっていました。8年前に日本を旅行した韓国人が老人に席を譲らない日本人のことを韓国に帰って両親に話したところ、戦前の日本にいた両親からそんなことは日本人に考えられないと言われました。あらためて3人で日本に来て「お前の言うとおりだ」と両親は納得しました。
 これまでも日本人が他者を思いやるゆとりをもてていたとは思いません。その時々にいろんな問題をかかえていました。でも今よりもいい顔をしていたことは確かです。
 私たちは少しでも他者を思いやることのできるゆとりある社会を築き、少しでも美しい顔をとりもどしたいものです。そのためにも、お互いが意味のない競争をしないですむ総中流社会のニッポンを再びめざそうではありませんか。

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2009年5月 4日 (月)

三橋貴明著 本当はヤバくない日本経済

                 (2009年4月25日 幻冬舎

〔著者紹介〕三橋貴明 1994年、東京都立大学(現・首都大学東京)経済学部卒。外資系IT企業をはじめNEC、日本IBMなどに勤務後、2004年中小企業診断士の国家資格を取得。企業の財務分析で培った解析力をマクロ経済に応用し、経済指標など豊富なデータをもとに国家経済を多面的に分析する「国家モデル論」が注目される。著書に『本当はヤバイ!韓国経済』『本当にヤバイ!中国経済』『ドル崩壊!』(以上、彩図社)、『崩壊する世界 繁栄する日本』(扶桑社)など。

【著書についての全般的感想】

 題名からどうせ日本経済団体連合会「希望の国、日本」(07年1月)、安倍晋三「美しい国へ」(06年7月)、麻生太郎「とてつもない日本」(07年6月)の類の単細胞思考の日本絶賛論の本だろうと思って読みました。そういう面もありましたが、著者はデータをもとに、多くの日本人がマスコミによって植えつけられ常識化していたことが事実と異なるのではないかという疑問をもたせてくれました。

【今までの常識の変更を迫る】

 この著書で今までの常識の変更を迫られた点は次のことです。

1.日本の輸出依存度は言われるほど高くない。
 輸出依存度=製品の輸出額÷GDP(国内総生産)
 7カ国の比較
  ドイツ(40.0%)、韓国(38.3%)、中国(37.4%)、
  ロシア(27.3%)、イギリス(15.9%)、日本(15.5%)、
  アメリカ(8.4%)

2.日本は世界で2番目に大きい内需を持つ経済大国である。
 07年 日中の名目GDP構成比率
  日本 個人消費56.6%、純輸出18.1%、固定資本形成23.2%
  中国 個人消費35.3%、純輸出13.7%、固定資本形成40.2%
日本は輸出が減っても、内需はそれほど縮小しない(外需依存国ではないため)。
日本は輸出と設備投資の落ち込みを内需が下支えしている。個人消費がそこそこ堅調だったからこそGDPの落ち込みがこの程度で済んだ。

3.実質実効為替レート(各国の物価変動も加えて算出)で見ると円高とは言えない。
 ドル円の適正為替レートは1ドル80円台前半と考えられている。

4.日本の輸出の主役は耐久消費財(自動車・家電など)ではなく工業原料や資本財である。
 消費財 一般消費者が購入。日本の輸出総額の18%程度(08年)を占めているに過ぎない。
 資本財 企業が消費財を生産するために購入。機械や装置などの工場設備、精密部品などの最終消費財の材料となる財。
 ・資本財は通貨高(円高)に強い。
 ・資本財の競争力の根源は価格ではなく品質に依存している。価格の安さに魅かれて品質の悪い資本財を購入してしまうと、自分の企業が製造する製品の品質が落ちてしまい競争力に多大なるダメージが生じてしまう。
 ・外国の消費財企業が一度日本の資本財メーカーからの購入を決定すると余程のことが無い限り同じメーカーからの購入を継続するのが一般的。

5.日本や韓国の輸出企業を苦しめているのは為替レートの上下ではなく、需要の縮小である。主要輸出品が耐久消費財ではなく資本財であるのも日本の輸出を減少させる一因となった。
 韓国や中国などの耐久消費財輸出国の製造プロセスは、①資本財の輸入、②加工、③耐久消費財の輸出、という流れになっている。そのため、世界的な需要激減を受け、耐久消費財輸出国はまず日本からの資本財輸入をストップしたのである。

6.日銀が円高対策の為替介入を行うと介入金額分だけ日本政府の債務が増加する。為替介入の結果、外貨準備が積み上がると、その多くは米国債で運用される。米国債の購入とはアメリカ政府への融資そのものである。

7.政府が借金して支出を増やすのであれば、為替介入ではなく、日本国内の景気対策に費やすべきである。政府が早急に実施しなければならないのは雇用対策である。

8.アメリカは常に海外から資金が流れ込むしくみの維持と努力をしてきた。ついに行き着くところまで行き着いたのが、住宅ローンなどの債権を証券化し金融商品として海外へ販売する、すなわちアメリカ国民の借金の輸出だった。

9.アメリカ政府が米国債をこれまで以上に乱発しようとしている。
 米国債が無制限に発行され信用や価格が下落すると、ドルの信用が揺らぐ。逆にドルが必要以上に供給され価格が大きく下落すると今度はドル建てで売買と利回りが支払われる米国債の信用も砂上の楼閣のごとく崩れ落ちる。そして、今、アメリカは米国債をこれまで以上に発行する必要があり、実際に発行しようとしている(アメリカ政府によるドル紙幣印刷~プリンティング・マネー~によって、アメリカは自国の経済危機からの脱出をもくろんでいる)。

【日本の強み】

 著者は日本の強みを次のとおり、列挙しています。

1.内需が大きく、外需依存が小さい。
2.円高による国民や企業の購買力向上。
3.GDPあたりエネルギー効率が世界一
4.治安が維持され、犯罪件数も減少中
 ~世界で最も安全な国で犯罪件数が減少している現実~
5.①企業の技術力が高く、裾野も広い。
  ②国民の革新性が世界一
  ③文化的・技術的なオリジナリティが高い。
6.①家計の金融資産(純資産)が大きい。
  ②世界最大の対外純債権国

【著者に賛同できない点】

 著者は、日本で犯罪件数が減っているのに外国人犯罪、特に来日した中国人と韓国人それにブラジル人による犯罪が高止まりしたままであることを指摘しています。そして、中国人や韓国人が日本を世界に悪い影響を与えている国と評価していることと絡めて次のように述べています。

 「マスメディアや政治家が、どれほど口先で日中友好やら日韓友好やらを唱えたところで、現実は変えられない。これらの事実をどう受け止め、どう対処するべきなのか。
 中韓両国が日本をどう評価するのかは、もちろんあちらの勝手である。だが、こと日本国内における犯罪件数の問題となると、話は全く別だ。我々日本人の日常生活の安全に直結する以上、絶対に看過することはできないだろう。
 しかも今後、少子高齢化がさらに進展し、日本が移民政策について最終的判断を下す時期が来る可能性がある。その際には、犯罪件数が多い国からの移民をどう受け入れるのか、それとも件数の少ない国からの移民についてのみ、解禁するのか。
 マスメディアが日本についてネガティブなことを語る際は、『日本人は』と主語をやたらと大きくする。その割に、こと外国人犯罪の問題となると『中国人は』『韓国人は』とひとくくりにすることに対し、差別だの何だの屁理屈をこねるから困ったものだ。」

 データを駆使した著者の力作もこのあたりになると冒頭で揚げた単細胞的思考の本と変わらなくなり、値打ちを一挙に下げてしまった感があります。著者はまだ若いのですから国粋主義者としてではなく幅広い国際感覚をもった研究者として大成することを願ってやみません。

 

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2009年4月26日 (日)

搾取国日本 外国人研修生死者最多33人

               (09年4月25日 日本経済新聞 より)

【昨年度 心疾患や自殺など】

 来日した外国人の研修生や技能実習生が病気などで死亡するケースが増えている。国際研修協力機構によると2008年度の死者数は33人で、前年度の21人から大幅に増えて過去最多となった。心筋梗塞(こうそく)など心疾患による死亡が急増しており、健康管理体制の不備を指摘する声が出ている。
 昨年4月、ある中国人実習生の男性(33)は午前6時に鳴った目覚まし電話のアラームを止めると、そのまま再び寝入った。30分後、普段なら起きてくるはずの時間に起きてこないことを不審に思った同室の男性が様子を見に行くと、実習生の顔色は蒼白(そうはく)。病院に搬送したが急性心不全で死亡した。
 翌5月にはやはり中国出身の男性実習生(38)が起床してこなかったため、同僚が起こそうとしたところ、すでに亡くなっていた。急性心筋梗塞とみられるという。

<健康管理体制 不備の声も>

 外国人研修生・実習生の支援事業を行っている国際研修協力機構には、こうした死亡事例の報告が相次いでいる。08年度に亡くなった33人の死因で最多は「脳・心疾患」で、全体の46%に当たる15人。前年度の2.5倍に増えた。
 統計を取り始めた1992年度から99年度まで年間死者数は2~9人だったが、00年度以降は01年を除き2ケタに。04年度以降は毎年20人以上になった。累計死者数は212人。脳・心疾患が66人と最多だったほか、自殺も20人に達した。
 出身国別にみると中国が134人と最も多く、続いてインドネシア39人、フィリピン19人、ベトナム14人。同機構は「正確な比較はできないが、心疾患の発生率は同年代の日本人のほぼ2倍になっているとみられる」と分析。
 研修生の受け入れは、ここ数年、年間約7万人前後で推移している。外国人の研修制度を巡っては、実務研修が労働と区別しづらく、事実上安価な労働力として利用されていた実態が明るみに出るケースが続出。賃金の未払いを巡る訴訟も各地で起きている。劣悪な環境が健康を害しているとの指摘も出ている。

【ITで進む中国人頼み】
              (09年4月26日 日本経済新聞 より)

 埼玉県川口市芝園町は日本で中国人の比率がもっとも高いとみられる町だ。人口の36%が外国人で、その大半は中国人。この町で異変がおきている。
 「帰国する人と2、3人すれ違った」。この町に長年住む張建国氏(仮名)はこう語る。町の中国人は学歴が高く、IT(情報技術)企業で働く人が多い。「国でチャンスを探すよ」。1人は別れ際、張氏にこう言い残して去った。

 不況は日本で働く外国人も直撃した。IT技術者の派遣などを手がける張氏の会社も仕事が減り、一時は50人近くいた技術者が10数人まで減った。
 外国人の技術者はこのまま減り続けるのか。経済産業省は「長い目でみてITの人材不足は解消されない」(情報処理振興課)と否定的な見方を示す。
 根拠は産業の情報化だ。ソフトウェアの大きさはプログラムの行数で測ることができる。車に使われるプログラムは推計で1000万行超。2015年には1億行に増えるという。
 これを支える人材は日本人だけでは足りない。情報サービス産業協会などによると、05年の情報工学系の卒業者は中国が33万人で、日本は2万2千人。この差は人口比では説明できない。中国は国家戦略で教育制度を整えた。インドは24万人だ。
 中国の進学率が高まれば、IT人材はさらに増える。車の例でみたように情報化はもっと進む。IT人材の量と質は産業のインフラと言ってよく、今のままだと日本企業の国際競争力を損ないかねない。
 そこで外国人の活用が必要になる。海外の企業に開発を外注することも多くなるだろう。これも相手は中国が中心になる。
 難点もある。電機メーカーによると、米政府は米国に輸出する企業に、先端技術の開発に共産主義国の人がかかわらないよう求めている。知的財産権の侵害を心配する企業もある。情報産業に詳しい国士舘大学の梅沢隆教授は「システムを発注するとき外国人が関与しないように求めることがある」と話す。

 ただし機密にかかわる高度な仕事は日本人がやればすむという単純な話でもない。「中国やインドは米国の手法を学び、日本よりも即戦力を育てている」(情報サービス産業協会)からだ。企業は「本当はもっと中国人を使いたい」(電機メーカー)というジレンマを抱えている。
 中国は同国でIT製品を販売し、製造する企業に技術情報を開示させる制度を作ることを考えている。もし実現するば技術情報をめぐって日米欧と中国の緊張が高まる。企業の悩みはますます深くなる。
 芝園町の技術者が日本を去るのは仕事がなくなったからだけではない。中国の成長力を考えればその方がいい生活ができると思い始めている。もう日本人が望む通りには優秀な人材はこないかもしれない。
 結局、日本経済の将来を左右するITに若者が十分集まってこないことが問題なのだ。「仕事はきついのに給料は安いというイメージがある」(梅沢教授)。印象を改め、教育制度を充実させるしかない。
 国際競争に勝つには外国人の活用が欠かせない。それは日本も優れた人材を育て、バランスをとれて初めてうまくいく。不況でやみくもに人を集めなくてすむ今だからこそ、考えるべきことが多くある。(編集委員 吉田忠則)

【私の意見】Up63

 日本で働く外国人特に中国人に関する2つの記事を紹介しました。最初の記事は健康管理も十分に行わないで、外国人を研修生という名目でやみくもに働かせた結果、過労死や自殺が増えているという記事です。
  国際研修協力機構や日本経済新聞が公表する位ですから目に余るものがあるのだと思います。研修生や亡くなった研修生に対する法的サポートがどの程度されているのか気になります。私も情報を集めたいと思いますが、何か情報をお持ちの方は教えていただけませんか。
 2つ目はIT技術者は日本人だけで足りず、中国人に頼っているが、中国人は母国に帰って働いた方が将来性があると考え、日本を去る中国人のIT技術者が増えているという記事です。このままでいけばIT製品やIT技術において中国が日本を凌駕する日がやがて来るだろうということです。
 日本は、明治政府の富国強兵政策以来、欧米に追いつき追いこせとしゃにむに走ってきました。その結果これまでは技術や製品の質において日本はアジアで抜きんでていました。しかし、日はいつか沈むと言われるように、日本という国はアジアの中で着実に沈みつつあります。アジアの人々を差別し、冷遇してきた日本人はいつかアジアの人々から厳しいしっぺ返しを受るかもしれません。
 ところで、私たち一人一人の日本人にとり、日本人であろうが外国人であろうが、日本というこの島で生活し、働く人々がみんな公平・平等に労働に対する対価を得、豊かで楽しく生活できる社会をめざせばいいことです。日本人が外国人よりよい生活をする必要は何もありません。日本製品が外国でシェアを増やし、日本企業の売り上げが伸びても外国人が日本人に感謝し、日本人を尊敬してくれることはありえません。日本にいる場合も母国に帰った場合も日本人とともに豊かな生活を享受できたと外国人が実感できたときにはじめて日本人は感謝され、日本人にも好意をもってくれるでしょう。日本人が嫌いだという中国人が多いのは日本人の中国人に対する対応に問題があるからです。
 日本人が日本人の幸福だけを考えて生きる時代はもう終わりました。外国人とともに豊かであたたかい社会を築くことこそが、21世紀に私たち日本人が生きていく唯一の道だと思います。

(追伸)
 このところ新聞もろくに目を通せない毎日が続いていましたが、やっとヤマを越えてきたかなというところです。これからはもう少しまめにブログを更新できると思います。

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2009年4月15日 (水)

労働裁判に登場しない障害のある労働者

【おわび】

 ブログを1週間に1度更新するとお約束していましたが、長い間お休みしてすみませんでした。このところオリジナル記事を書く時間がなかなかとれません。

【労働裁判に登場する障害者と登場しない障害者】

(1) 労働裁判に登場する障害者のほとんどは正規雇用の労働者です。その中でも解雇無効や休職後の復職拒絶による退職扱いを争って労働者としての地位の確認を求める事案に登場するのは中途障害の労働者ばかりです。障害又は疾病によって職務遂行能力の低下を理由として解雇されたり、復職を拒絶されるからです。
(2) それでは、採用時にすでに障害のある労働者は安定した雇用環境の下で働いているのでしょうか。結論は逆で、むしろきわめて不安定で劣悪な雇用形態のもとで働かされています。

【障害者の雇用は5ヵ月連続で増加したが、法的救済を求める障害者増えず】

(1) 厚生労働省は09年3月31日、同年2月中に解雇された障害者は全国で前月比で82人増の計452人になった旨、集計結果を発表しました。景気悪化の影響で、同省は08年10月から障害者を対象とした毎月の解雇数を集計していますが、5ヵ月連続の前月比増となっています。また、08年度に解雇された障害者は累計で2233人で、07年度の計1523人より710人増。07年度の平均(約127人)からみると09年2月は約3.5倍です。
(2) 解雇の急増にもかかわらず障害者から弁護士への労働相談はほとんど増えていません。したがって、労働裁判を求める障害者もほとんど増えていません。その理由は障害者の雇用形態は有期契約(3ヵ月、6ヵ月、1年など)、アルバイト、パートの不安定な雇用形態(非正規雇用)が多いからです。不況を理由とする派遣切りや正規労働者の解雇を目のあたりにみて、多くの障害者は自身が非正規雇用のため労働裁判をあきらめているのが実情です。これについては日本政府の責任が大きいと私は思います。

【厚生労働省が率先して障害者の非正規雇用化を推進】

   厚生労働省は最近のように一般労働者に非正規雇用が増大する前から障害者雇用は非正規(有期)雇用でも障害者雇用促進法上の常用労働者にカウントしてよいとする運用を行ってきました。このため障害者の多くは契約社員か嘱託社員という不安定な低賃金労働で固定化されています。
  労働省職業安定局監修、日本障害者雇用促進協会編「障害者雇用ガイドブック」(平成11年版305頁)は常用労働者につき次のように記述しています。

 [常用労働者]                                                          
     雇用義務の算定の基礎となるのは、『常時雇用される労働者』に限定されますが、『常時雇用される労働者』とは、雇用契約の形式のいかんを問わず、事実上期間の定めなく雇用されているすべての労働者をいい、実体的に判断されるべきものです。                                                   
  具体的には、次のような労働者をいいます。                           
  ① 期間の定めなく雇用される労働者。                                 
  ② 一定の期間(例えば、1ヵ月、6ヵ月等)を定めて雇用される労働者であって、その雇用期間が反復更新され、事実上期間の定めのない労働者と同様の実態にあると認められる労働者。すなわち、過去1年を越える期間について引き続き雇用されている労働者又は雇い入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者。                                          
  ③ 日々雇用される労働者であって、雇用契約が日々更新されて事実上期間の定めのない労働者と同様の実態にあると認められる労働者。すなわち、②の場合と同様に、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている労働者又は雇入れのときから1年を超えて雇用されると見込まれる労働者。

   これは、例えば日雇いであっても「1年を超えて雇用されると見込まれる労働者」であれば企業が1.8%の雇用義務を負う障害者の「常時雇用される労働者」にカウントするという取り扱いです。法の「常時雇用される労働者」というのは正規雇用すなわち①を指していることは明らかです。厚生労働省(労働省)自ら障害者を不利な条件で固定化させるもので、国による障害者差別と言えます。
   厚生労働省は本年2月10日日本経団連に「障害者の解雇数が増加傾向にあるなど、今後厳しい状況になることが懸念される」として雇用の維持や新たな雇い入れの促進、障害者を雇用する事業主や福祉施設での仕事の確保などを申し入れました。しかし、日本経団連にこれを受け入れる姿勢はありません。障害者の解雇の増加は解雇しやすい雇用形態を容認してきた厚生労働省の施策の結果です。
   世界不況を理由とする08年秋以降の派遣切り・期間工切りにあわてた厚生労働省は、障害のない労働者についてこれまでとは逆に非正規雇用の正規化に向けて旗を振るようになりました。障害者についても非正規雇用に固定する施策を直ちに改めるべきでだと思います。

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2009年3月30日 (月)

鉄建公団訴訟高裁判決 組合差別を認定

【一審判決とほぼ同じ】

 3月25日鉄建公団訴訟の控訴審判決がありました。鉄建公団訴訟の控訴審の審理については2008年2月18日付ブログで「高裁、中曽根元総理の労組壊滅政策にメス」という記事で紹介しました。中曽根元総理の考えに忠実に国鉄当局は徹底した組合差別(不当労働行為)を行いましたが、東京高裁第17民事部(裁判長南敏文)はこれにメスを入れるべく、当時の国鉄における労働組合対策の指揮官葛西敬之氏(現JR東海会長)と国労副委員長の嶋田俊男氏の証人尋問を行いました。南裁判長は電通事件(若い電通社員が長時間勤務でうつ病になり自殺した事件)で電通の責任を全面的に認めた裁判官です。原告団も私たち弁護団も今回の判決に期待していました。不当労働行為(組合差別)はきめ細かく認定してくれましたが、結論としては残念ながら控訴審判決は2005年9月15日に言渡された一審判決(東京地裁民事36部)と同様の内容でした。私たちが訴えていた解雇無効は一審判決同様認めず、JRに採用されるとの期待権が侵害されたとして500万円の慰謝料と弁護士費用50万円のみを認めました。一部の原告については請求が全部又は一部棄却されました。弁護士費用は控訴審になって追加請求したため全体として4億1000万円増え一審判決によって回収した25億円余りとあわせ29億円余りが原告団に入金したことになります。
 なお、20年余りにわたり国労側のエース証人であった嶋田敏男さんがつい先日亡くなりました。私は証人尋問を担当し、嶋田さんのお住まいの敦賀市に3度打ち合わせに行きましたが論理的ですばらしい人を失い、さびしい限りです。

【中西判決】

 ところで東京地裁民事19部(裁判長中西茂)は2008年3月13日原告らの請求権は21年の時間の経過のうちに消滅時効が完成し消滅したとして原告の請求をすべて棄却するという判決(以下「中西判決」という)を言渡しました。これについては2008年3月16日付ブログ記事「JRにも旧国鉄にも労働者敗訴の裁判」で触れました。中西判決の後の高裁判決であっただけに原告団の中には「最悪の事態は避けることができた」とほっとした面もありました。東京高裁の南裁判長は最後に「判決を機に1047名問題が早期に解決できることを望みます」と付言しました。
 22年に及んで排除され続けた国鉄労働者と家族の辛苦は大変なものです。解雇無効を認めず500万円の慰謝料のみを認めるというのは被告に甘い判決です。組合差別はとりもなおさず憲法28条違反であり、そのことに踏み込まず、解雇の有効を認めた一連の判決(今回の判決を含む)は原告弁護団としては不当な判決と言わざるを得ません。

【次は最高裁】

 次は最高裁です。2003年12月22日JRの責任を否定した最高裁は旧国鉄とこれを承継した清算事業団(現在は本件被告の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備機構)の責任について次のように明確に述べています。

 「承継法人の職員に採用されず国鉄の職員から事業団の職員の地位に移行した者は、承継法人の職員に採用された者と比較して不利益な立場に置かれることは明らかである。そうすると、仮に国鉄が採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成に当たり組合差別をした場合には、国鉄は、その職員に対し、労働組合法7条1号が禁止する労働組合の組合員であることのゆえをもって不利益な取扱いをしたことになるというべきであり、国鉄、次いで事業団は、その雇用主として同条にいう『使用者』としての責任を免れないものというべきである。」

原告らは今度こそ最高裁に旧国鉄の憲法28条違反行為について正面から向き合うよう求め、旧国鉄の現在の承継人独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備機構に「使用者」としての全責任を負わせる判決を求めていきます。

【マスコミ報道】

マスコミの論調は総じて組合差別を受けた国労組合員に同情的でした。

<3月25日朝日新聞夕刊>

 JR不採用訴訟 二審も組合差別認定 “解雇は有効”一部慰謝料を増額

<3月25日日経新聞夕刊>

 JR不採用訴訟 二審も組合差別認める 地位確認は退ける 慰謝料を増額

<3月25日NHK>

 正午のニュースで同様の内容で報道されました。

<3月26日朝日新聞>

 JR不採用訴訟 国労組合員解雇19年続く闘い 老後見通せぬ暮らし 

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2009年3月23日 (月)

障害者権利条約の批准と国内法の大改正を

【条約の批准と国内法の改正】

 21世紀の重要な人権条約として、障害者の権利条約が2006年12月13日に採択され、2008年5月3日に発効しました。1987年に、障害者差別撤廃条約の策定が国際的に初めて提案されてから、すでに20年以上もの時が過ぎ去っています。日本政府(福田康夫内閣)は、2007年9月28日に条約に署名したものの、まだ批准はしていません。条約は差別の定義をひろげ障害者に合理的配慮をしないことは差別だとしています。合理的配慮とは、労働の場合は例えば車椅子の労働者には車椅子でも移動可能なように職場へのアクセスや職場内移動が可能なように段差をなくすこと、視覚障害者の場合にはパソコンについて音声変換のソフトを提供したり、介助者をつけたりすることです。事業者がこれをしないと差別であるとして、障害者は法的救済を受けることができます。現在、日本政府は条約批准に向け、国内法制を点検中ですが、理念規定の改正だけでお茶を濁す可能性があります。その場合は条約は批准したけれど障害者の権利はあいかわらずあいまいで、事業主の法的義務が明記されない危険があります。

【弱くもろい社会】

 障害は障害者その人に属するのではなく、障害者と環境の間にあります。「社会は、一般的な物理的環境、社会保健事業、教育、労働の機会、それからまたスポーツを含む文化的・社会的生活全体が障害者にとって利用しやすいように整える義務を負っているのである。これは単に障害者のみならず、社会全体にとっても利益となるものである。ある社会がその構成員のいくらかの人々を閉め出すような場合、それは弱くもろい社会なのである。障害者は、その社会の他の者と異なったニーズを持つ特別な集団と考えるべきではなく、その通常の人間的なニーズを充たすのに特別の困難を持つ普通の市民と考えられるべきなのである」(国連総会で採択された「国際障害者年行動計画」より)。効率と管理を優先させ、やっかい者扱いをして障害者を閉め出す社会は、障害者だけでなく、障害をもたない人にとっても息のつまるような社会です。障害者を閉め出し、効率と管理を優先させてきたわが国の社会は、自殺の増加、未来への夢を失っている子供たち等、すっぽりと閉塞感におおわれてしまっています。障害ある人にとっても、障害のない人にとってもこの国は弱くもろい社会となっています。

【これまでの日本政府の対応】

<社会権規約委員会の勧告への対応(2002年)>

 2001年8月国連の経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会(社会権規約委員会)は、「委員会は、締約国(注・日本を指す)が法令における差別的な規定を廃止し、障害者に関連するあらゆる種類の差別を禁止する法律を制定することを勧告する」としました。これは日本に障害者差別禁止法の制定を求めたものです。
 小泉純一郎内閣のもとで、福田康夫国務大臣・官房長官(当時)は、勧告を受けた後の第154回国会衆議院本会議(2002年3月29日)において、「障害者の権利法の必要性についてお尋ねがございました。障害者等に対する不当な差別的取扱いの禁止につきましては、今国会に提出した人権擁護法案で手当てしているところでありますが、さらに、米国のように、障害者に対する雇用やさまざまなサービス提供における差別についての救済措置として、一般企業、事業者の特別の賠償責任等を認める仕組みを我が国に導入することについては、検討すべき課題が多いものと考えております。」旨答弁しています。
 第155回国会参議院共生社会に関する調査会(2002年11月20日)における質問に対し、米田建三内閣府副大臣(当時)は、「障害者差別禁止法の策定の方向付けをすべきではないかというお尋ねかと思いますが、基本的な立場といたしまして、障害者等に対する不当な差別的取り扱いの禁止につきましては今国会で御審議をいただいている人権擁護法案で手当てされているものというふうに考えております。」旨同様の答弁をしています。そして福田があいまいにしていた点については、「障害者差別禁止法の制定を新しい障害者基本計画に具体的に盛り込むということになりますと、幾つかの問題点があるかというふうに考えております。一つは、年齢、差別など他の差別事象とのバランスをどう考えていくのか、また二点目は、一般企業や事業者の理解を得ることが可能なのかどうか、これらの点について熟考さらに重ねませんと、現段階ではいわゆる検討すべき課題が多く、難しいというふうに考えております。」旨立法化をはっきりと否定しました。増田敏男法務省副大臣(当時)も「現在、法務省としては、この問題でなくて人権擁護法案の方に含んでお願いをいたしております。したがって、これを取り上げてこの検討をという形は取っておりません。」同様に法制化を明確に否定しています。
 これら答弁から、障害者差別禁止法制定の世界の流れを黙殺し、その一歩すら踏み出そうとしない日本政府の態度が浮き彫りにされています。

<人権擁護法案について>

 国会答弁でしきりに強調された人権擁護法案というのは、2002年3月小泉内閣が提出し、2003年10月廃案となった法案です。この法案では障害による差別は第2条で、人種差別、性差別等の人権侵害の中の1つのものとして位置づけられているにすぎません。

 第2条 この法律において「人権侵害」とは、不当な差別、虐待その他の人権を侵害する行為をいう。
 3 この法律において「障害」とは、長期にわたり日常生活又は社会生活が相当な制限を受ける程度の身体障害、知的障害又は精神障害をいう。
 5 この法律において「人種等」とは、人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病又は性的志向をいう。

労働に関する部分は次のように法案は定めています。

 第3条 何人も、他人に対し、次に掲げる行為その他の人権侵害をしてはならない。
 不当な差別的扱い
 ハ 事業主としての立場において労働者の採用又は労働条件その他労働関係に関する事項について人種等を理由としてする不当な差別的取り扱い

 人権擁護法案のように単に抽象的規定で「不当な差別的取り扱い」をしてはならないと規定するのみでは、事業主に具体的義務が発生せず、裁判規範となりません。裁判で訴えることができないのです。これでこと足りるというのがこれまでの日本政府の態度でしたが、この基本的姿勢は今のところ変わっていません。
 1980年代に国連を中心に「障害者の完全参加と平等」がうたわれ、日本でも少しずつ障害者のノーマライゼーションが進みつつあるように思いました。ところが、小泉内閣は2005年障害者自立支援法という欺瞞にみちた名称の法律をつくり障害者を奈落の底に突き落とし、歴史の針を30年逆にもどしてしまいました。最近になって与党も野党も障害者自立支援法の見直しを言っていますが、小泉内閣がつくった負を元にもどすことができないのが現状です。

【障害者権利条約の批准とともに国内法の大改正が必要!!】

なぜなら、
・現行国内法では障害者の労働は「権利」として認められていませんし、事業主の合理的配慮義務が法的義務としてどこにも定められていません。
・障害者基本法は、障害者雇用は事業主の経済的負担(負)であるとの考えが基底にあります。
・障害者雇用促進法は、障害者を権利の主体ではなく措置の客体と位置付けています。
・障害者雇用促進法では障害者サポート機器や介助者の申請を障害者自らができない制度になっています。
・厚生労働省は昔から障害者雇用促進法上の障害者雇用は非正規(有期)雇用でも常用労働者にカウントしてよいと事業主に甘い運用をしています。

【障害者権利条約と日本国内法整備の必要性】

<障害者権利条約と障害者基本法、障害者雇用促進法>

① 全く異質
 障害者権利条約(以下「条約」という)と障害者基本法(以下「基本法」という)・障害者雇用促進法(以下「促進法」という)は、障害者の権利についての法律の思想が全く異質のものです。
② 条約・・障害者の権利を明確にうたう。
 [条約27条] 
 「締約国は、障害者が他の者と平等に労働についての権利を有することを認める。」と障害者の権利を明確にしています。また「合理的配慮の否定」は差別だと明確に定義しています(第2条)。
 基本法・促進法 
 「社会連帯の理念に基づき」としている。
  社会連帯の理念というのは裏を返せば、善意・慈悲の世界にとどめるものです。しかも努力義務にしかすぎません。
 [基本法16条2項]
 事業主は、社会連帯の理念に基づき、障害者の雇用に関し、その有する能力を正当に評価し、適切な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない
 [促進法5条]
 すべて事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであって、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない

<障害者の雇用は経済的負担>

 基本法の法思想は障害者雇用は事業主にとり経済的負担であるとの考えに基づいています。これは障害者雇用は事業主にとり負の存在(お荷物)であるという考え方が基底にあり、労働者としての障害者の尊厳を基本的に否定するものです。
 [基本法16条3項]
 国及び地方公共団体は、障害者を雇用する事業主に対して、障害者の雇用のための経済的負担を軽減し、もってその雇用の促進及び継続を図るため、障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の整備等に要する費用の助成その他必要な施策を講じなければならない。

<促進法は事業主を主体とする法律>

 促進法は事業主を主体とする法律で、障害者を権利の主体とする法律ではありません。経済的負担となる障害者雇用について事業主同士の調整を図る法律で、障害者は措置の客体にすぎないという位置づけです。
 促進法の1条(目的)そのものに「措置」という障害者福祉の世界では過去のものとなっている用語が3度も登場します。同条の雇用義務等に基づく雇用の促進も事業主の側から見た促進で、障害者側から見ていません。
 [促進法1条]
 この法律は、身体障害者又は知的障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もって障害者の職業の安定を図ることを目的とする。 

<促進法の納付金制度は事業主間の経済的負担の調整のための制度>

 「障害者雇用ガイドブック」独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構編
                       (平成19年 365頁)
 「障害者雇用納付金制度の趣旨
 障害者を雇用するには、作業施設、設備などの改善、職場環境の整備、特別の雇用管理などが必要とされる場合が多く、健常者の雇用に比べると経済的に負担を伴うことは否定できません。このため雇用義務を誠実に履行している事業主とそうでない事業主とでは、経済的負担に差が生じることとなります。
 障害者を雇用することは、事業主が共同して果たしていくべき責務であるとの社会連帯責任の理念に立って事業主間の障害者の雇用に伴う経済的負担を調整するとともに、障害者を雇用する事業主に対して助成、援助を行うため、事業主の共同拠出による障害者雇用納付金(以下「納付金」という。)制度が設けられています。
 納付金制度は、まず第一に、基準雇用率(以下「雇用率」という。)未達成」
事業主から納付金を徴収し、雇用率を超えて身体障害者、知的障がい者又は精神障害者を雇用する事業主に対して、障がい者雇用調整金(以下「調整金」という。)を支給することにより、事業主間の身体障害者、知的障害者又は精神障害者の雇用に関する事業主の共同連帯責任の円滑な実現を目的とするものです。第二に、障害者の雇入れ又は雇用の継続を図る事業主が、作業施設や作業設備の設置・整備又は継続のための措置などについて一時的に又は継続して多額の費用負担を余儀なくされる場合に、その費用について助成金を支給することにより、障害者の雇用の促進及び雇用の継続を容易にし、もって全体としての障害者の雇用水準を引き上げようとするものです。

<障害者から助成申請ができない>

 促進法によれば助成金は事業主の申請によって給付されるもので、障害者に給付されるものではありません。したがって、障害者が視覚障害者のための音声変換パソコンや介助者を自ら申請することができません。

<厚生労働省は昔から非正規(有期)雇用でも常用労働者にカウントしてよいと事業主に甘い運用>

 厚生労働省は今のように一般労働者に非正規雇用が増大する前から障害者雇用は非正規(有期)雇用でも常用労働者にカウントしてよいとして、甘い運用を行ってきました。このため障害者の多くは契約社員か嘱託社員の不安定で低賃金労働でがまんすることを余儀なくされています。
  労働省職業安定局監修、日本障害者雇用促進協会編「障害者雇用ガイドブック」(平成11年版305頁)は常用労働者につき次のように記載しています。

  「常用労働者
 雇用義務の算定の基礎となるのは、『常時雇用される労働者』に限定されますが、『常時雇用される労働者』とは、雇用契約の形式のいかんを問わず、事実上期間の定めなく雇用されているすべての労働者をいい、実体的に判断されるべきものです。
 具体的には、次のような労働者をいいます。
 ① 期間の定めなく雇用される労働者。
 ② 一定の期間(例えば、1ヵ月、6ヵ月等)を定めて雇用される労働者であって、
その雇用期間が反復更新され、事実上期間の定めのない労働者と同様の実態にあると認められる労働者。すなわち、過去1年を越える期間について引き続き雇用されている労働者又は雇い入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者。
 ③ 日々雇用される労働者であって、雇用契約が日々更新されて事実上期間の定めのない労働者と同様の実態にあると認められる労働者。すなわち、②の場合と同様に、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている労働者又は雇入れのときから1年を超えて雇用されると見込まれる労働者。」

この運用は、日雇いであっても「1年を超えて雇用されると見込まれる労働者」であれば「常用労働者」にカウントしてあげるという取り扱いです。法の「常時雇用される労働者」というのは正規雇用すなわち①を指していることは明らかです。厚生労働省自ら障害者を不利な条件で固定化させるもので、国による障害者差別の固定化と言えます。

【条約の批准だけでは障害者の権利は確保できない】

 日本政府にまかせっきりでは、障害者の権利はいつまでも確立されず、世界の中で遅れている日本の法制度や行政の施策が続きます。黙っていると条約を批准しても有名無実なものになってしまいます。誰でもいつかは障害や疾病をもつ身となります。障害のある人の権利の確立は障害のない人にとっても決して他人事ではありません。

 

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2009年3月 8日 (日)

父の33回忌を終えて

【33回忌】

 3月7日に父の33回忌を終えました。父は1898(明治31年)に生まれ、1977年(昭和55年)に79歳で亡くなりました。33回忌は33年目(亡くなった年を含めて)行う法要です。仏教では亡くなってから33年がたつとどんな人でも無罪放免となり、極楽浄土に行けるとされているそうです。そのため年忌法要は33回忌で弔い上げ(とむらいあげ)とするのが一般的だそうです。私の長兄は1986年に亡くなり、兄嫁や長兄の長男(私の甥)が主宰して兵庫県川西市で執り行ってくれました。私も含めて他のきょうだいは33回忌を忘れるところでしたが、兄嫁がしっかりと気にとめていてくれて、無事法要を終えることができました。これから見ても弔い上げといわれるのがわかります。

【パックスブリタニカ時代の外国航路の船乗り】

 父は高等小学校卒業後、日本郵船株式会社に入社し、外国航路の船乗りになりました。父の船員時代は大英帝国の最盛期でパックス・ブリタニカの時代です。独学で英語を勉強し、船友から「清水は寝言も英語でしゃべっている」とからかわれたそうです。父の口からロンドンの話題はたびたび出ましたが、サンフランシスコやニューヨークの話題はほとんどありませんでした。
 戦前は人もモノも船で運ばれていましたから、横浜と神戸は新しい文化の発信基地として町全体があか抜けていました。今では人は飛行機でやってきますので、港にはコンテナしか運ばれてきません。港町が文化の発信基地の地位を走るのは容易ではなくなっています。父は1944年に妻(私の母)を亡くし、船を降りますが、父の華やかな時代もここで終わります。そして第二次世界大戦を境にパックス・ブリタニカの時代は終わり、パックス・アメリカーナの時代となります。

【姪と甥の成長】

 長兄と兄嫁の間には、娘、娘、息子の3人の子供がいます。長兄が亡くなったときは、25歳、23歳、18歳でしたが、それぞれ今では、4児、2児、4児の親となっています。頼りなくみえた姪や甥が人の親として成長している姿は驚きであり喜びです。片や私たち7人きょうだいは長兄以外は今まで元気に過ごしてきましたが、老化の波が押し寄せてきています。世の常とは言え、世代交代を感じさせてくれた父の33回忌でした。

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2009年2月22日 (日)

障害者にも解雇の嵐 実習訓練さえ中止

         (2月15日 朝日新聞大阪本社版「時時刻刻」 より)

【私の意見】Up63

<私も取材を受けました>

 朝日新聞の2月15日の大阪本社版の時時刻刻の欄に「障害者にも解雇の嵐」という見出しで、かなりの紙面を割いた記事が掲載されました。私も取材を受け、私のコメントが紹介されています。

<常用労働者で有期契約>

 日本では民間企業が障害者を雇用しなければならない割合(法定雇用率)を1.8%と定めています。法律はこの法定雇用率にカウントできる障害をもった労働者は「常用労働者」でなければならないとしています。「常用労働者」を素直に解釈すれば法律は正規労働者としての雇用を求めていることが明らかですが、厚生労働省は一般労働市場で非正規労働がほとんどない時代から、障害者雇用は日々の契約(1日契約)でも1か月契約でもよい、とにかく1年以上雇用することを前提としてさえいればすべて「常用労働者」にカウントするという、企業にきわめてゆるい、やさしい指針を出しました。ですから障害をもって働く人の多くは早くから非正規雇用(有期雇用)です。

<万国の女性労働者立ち上がれ!>

 政府は昨年12月法律を改正し障害者をパート(短時間労働)で雇用した場合は0.5人分の雇用として法定雇用率にカウントするとしました。パートはこれまで主として女性が主婦としての生活との両立のなかで選択した雇用形態でした。これ自体とても低賃金で日本の経済界は女性労働者を搾取し続けていると私は思っています。いつか女性労働者がゼネストをしてくれれば、日本の労使関係はずいぶん変わるのになと時々思います。万国の女性労働者立ち上がれ!そこまで発展しないのは男子(夫)の労働の補完として巧妙に位置づけられているからだろうと思います。

<障害をもって働けるだけマシ>

 さて障害者雇用に話をもどしますが、障害をもった労働者のパート労働は配偶者の労働補完ではありません。国は障害のある労働者が自らの稼ぎで食べていける制度を確立するべきです。ところが今日本政府の進めようとする障害者施策は障害をもった労働者を低収入に固定化するものです。“福祉から労働へ”という考え方に異論はありませんが、これを推進する政府や地方自治体の側に“障害をもって働けるだけマシ”という障害のある人の尊厳を否定する考え方が基底にあるように思えてなりません。

 朝日の記事は一寸長いですが全文紹介します。

【実習訓練さえ中止】

 障害者の雇用が世界的な不況に揺らいでいる。国の調査では昨年末から解雇者が倍増しているが、数字に表れない非正規雇用の「雇い止め」などを含めると、実態ははるかに深刻、との指摘もある。賃金カットや実習受け入れ中止も相次ぐ現場で、社会的自立は担保されるのか。なりふり構わぬ障害者リストラの拡大に、明日への不安が募る。(高島靖賢、山内深沙子、滝川卓史)

 「もう仕事がない。申し訳ないが、今月で辞めて欲しい」。岡山県内の電子部品工場。1月下旬、ここで働いていた知的障害者の男性(38)が事務所に呼ばれ、解雇を言い渡された。
 社員20人ほどの小さな工場で組み立て作業を担当していた。状況が一変したのは昨年11月だ。受注激減で勤務時間が半分になり、月10万円あった手取り収入は半分以下に落ち込んだ。12月には1日3時間勤務に。年明けから仕事は工場の掃除だけになった。
 会社には10年以上勤めた。職場の上下関係がすぐのみ込めないなどコミュニケーションに課題はあったが、覚えた仕事をコツコツとこなしてきた。同僚も障害を理解して優しく接してくれた。月給と障害基礎年金をあわせ、アパートで1人暮らしもできた。
 以前働いていた会社でも解雇された経験がある。失業が1年以上続き、福祉施設の職員がつてを頼りにやっと見つけてくれたのが、この工場だった。
 人生2度目のリストラ。「時間があるから」と本人が申し出て、近所にある就労支援のための作業所で、割りばしの袋詰めなどの軽作業を無償で手伝い始めた。貯金は残り約70万円。当面は年金と失業給付でやりくりするが、給付が切れるまでに職が見つかる保証はない。「家族には頼りたくない。また働ける日は来るのかな」。つい不安を口にした。
 全国206か所にある「障害者就業・生活支援センター」には、解雇や賃金カット、出勤日の激減など苦境に立たされた障害者からの相談が絶えない。
 「1月から時給を748円から600円に下げると言われた」。昨年末、大阪府内のセンターに知的障害のある20代男性から、こんな相談が寄せられた。約2年前からリサイクル工場で働いていた。
 男性の時給額は府の最低賃金。会社側は経営悪化を受け、障害者の最低賃金を減額する特例許可を労基署に申請していた。センターから事情を聴かれると、「彼を雇い続けるための苦渋の決断。給料を下げるしか方法がなかった」と説明したという。
 和歌山県内のセンターには昨年末、就労支援団体から「実習生の受け入れを断られた」との相談があった。障害者とジョブコーチが企業で実習する障害者自立支援法の制度を活用し、メーカーの下請け工場で数人の障害者が実習訓練を受けていた。受け入れ中止の理由は、受注の落ち込み。センターの担当者は「就労への大切なステップなのに・・・」と肩を落とす。
 滋賀県のある養護学校は昨年10月以降、就職活動での体験自習を受け入れていた複数のメーカーから、相次いで受け入れを断られた。今春の就職希望者のうち半数は、まだ就職先が決まっていない。

【氷山の一角にすぎない】

 「働く障害者の弁護団」代表の清水建夫弁護士の話  統計に表れる障害者の解雇数は「氷山の一角にすぎない」。障害者の場合、パートや契約社員など非正規雇用で働く人が圧倒的に多く、契約期間満了による「雇い止め」や、強引に自己都合退職に追い込まれた事例を含めると、状況はより深刻だ。不況が続けば、人件費が高い中高年の障害者をリストラの標的にする恐れが強まるだろう。

【弱い歯止め 届かぬ理念 就業規則 リストラに利用】

 従業員数56人以上の企業は、1.8%(法定雇用率)以上の障害者を雇うことが義務付けられている。だが、08年の障害者雇用率は1.59%。過去最高を更新したとはいえ、達成企業の割合は44.9%と半数以下にとどまる。
 法定雇用率を達成できない企業には、1人につき月5万円の納付が課されるが、低額すぎて解雇や退職勧奨の歯止めにならない、との批判もある。さらに、現時点で納付義務があるのは従業員数301人以上の企業だけで、相当数の中小企業は対象から外れる。
 もう一つ、社会的弱者の解雇のハードルを低くしてしまう課題として挙げられるのが、企業の就業規則だ。
 今なお、多くの会社には「精神または身体の障害により業務に耐えられないと認められたとき」は社員を解雇できる、とする就業規則が残る。
 障害者の人権問題に取り組む弁護士有志でつくる「はたらく障害者の弁護団」によると、業績が悪化するとこの規定を持ち出し、露骨な解雇をしようとする企業があるという。
 本来は解雇を決める前に、障害者が働き続けられるように職場環境を整える「合理的配慮」が企業側に欠かせない。視覚障害者のために音声変換ソフトのパソコンを導入するのは、その一例だ。ただ、こうした理念が十分浸透しているとは言い難い。

【昨年11、12月 急に悪化】

 厚生労働省によると、障害者の雇用状況は急速に悪化している。全国のハローワークに届け出があった昨年10月の障害者の解雇者数は125人で、07年度の月平均(126.9人)と同水準だったが、11月には234人に急増。12月も265人に上った。
 資料が残る00年度以降の解雇者数を見ると、01年度の4017人から減少傾向が続き、07年度は1523人だった。だが、08年度は4月から12月までの合計がすでに1411人に達し、前年度を大きく上回るペースだ。
 障害者を解雇した企業はハローワークに届け出る義務がある。ただ、制度を知らずに無届けで解雇する企業も相当数に上るとみられる。
 同省は「障害者は一度離職すると再就職が非常に困難であり、解雇者の増加は深刻な問題」(障害者雇用対策課)として10日、日本経団連に障害者雇用の確保などを要請した。ハローワークの障害者専門支援員を全国で70人増員したほか、障害者を雇いいれた中小企業への助成金を昨年12月から段階的に拡充するなどの対策を講じているが、効果は不透明だ。
 企業からの下請け作業が運営の柱だった障害者施設を取り巻く状況も厳しい。
 全国社会就労センター協議会は1月から2月にかけて、加盟1543の施設を対象に、景気後退による受注減少などの影響を緊急調査。その結果、回答があった632施設のうち416施設が「目立った影響があった」と答えた。
 職業別では、自動車関連が144で最多。次いでリサイクル関連51、段ボール関連20、印刷関連19の順だった。同協議会は今後、国や地方自治体に障害者の積極採用を含む雇用対策を求めていく方針だ。

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2009年2月10日 (火)

社会参加型のユニオンを作ろう!

【ユニオンが人気】

 最近あちこちでユニオンができています。私もいくつかのユニオンに構成員というより弁護士として参加しています。
 ユニオンは労働組合を横文字(カタカナ)にしたもので中味は同じという見方があります。労働組合というと赤い鉢巻をして“闘争!”というイメージがあり、今の若い人には敬遠されがちです。ユニオンの方がやわらかくてカッコいい。だから労働組合という言葉をやめてユニオンがはやっているというわけです。

【ユニオンは労働組合より広い?】

 辞書でunionを繰ってみました。①結合、連合、併合、合同、団結 ②連合国家、連邦 ③同盟、組合、協会、連合 ④和合 ⑤結婚 ⑥=trade(or labor)union(労働組合) となっていました。なるほどユニオンは労働組合より幅のある広い言葉だと言えます。

【労働組合法上の労働組合】

 名前は○○ユニオンでも○○労働組合でもいいんですが、労働組合法上の労働組合の資格があるかないかは重要です。労働組合法上の労働組合であれば使用者(雇主)と組合として団体交渉ができます。使用者が団交に応じなければ都道府県の労働委員会に団交に応じるように命令してほしいと申立てることができます。労働組合法上の労働組合をつくるのは大変なことではありません。労働組合は1人ではつくれませんが、労働者が2人以上いればつくれます。

【同じ会社の労働者でなくともよい】

 日本の労働組合の主流は企業別組合と言って、同じ企業の労働者だけでつくる組合です。日本の企業別組合は労使協調型で経営者の考えに従うのがほとんどで、そのような組合は1人の労働者が解雇されたり不当な配置転換を受けても組合として本気で取り組んでくれません。
 そこで最近増えているのは、個人加盟の地域ユニオンです。組合員1人1人の勤めている会社は全くバラバラですが、それでも労働組合法上の労働組合です。地域ユニオンがある1人の労働者の勤務条件について団体交渉を求めた場合にその労働者を雇用する経営者は組合との団体交渉を拒否することができません。地域ユニオンはストライキという手段は効果的に使えませんが、団体交渉という点では、労働者が1人で会社とわたりあうよりも、仲間のいる労働組合の方が強力に交渉ができます。解雇や賃金カットや配置転換などが法的におかしいと思われるときは、労働仮処分、労働審判、訴訟などの法的手段を選択することができます。労働組合と弁護士のすみわけができて、最初から弁護士が直談判するよりも、私たち弁護士も大いに助かります。

【労働組合法上の労働者の資格は労働基準法上の労働者の資格よりゆるやか】

 労働基準法上の労働者とは、事業主(雇主)に使用されて賃金の支払を受ける者でなければなりません(同法9条)。ところが労働組合法上の労働者の資格はとてもゆるやかです。
 ・労働者はパート、アルバイト、契約社員、派遣社員でもよい。(これは労働基準法上も同じ)
 ・請負契約、委任契約によって労働に従事する者も、他人に労務を提供し、それに対し報酬を受けている場合はユニオンの構成員となれる。
  例えば、一人親方の大工・左官、水道メーターの委託検針員、放送局と出演契約をしている芸能員など。

【知的障害者ユニオンを作ってみたら?】

 1999年5月知的障害をもつ労働者の会「さくら会」の学習会に講演に呼ばれたとき、私はそのように言いました。さくら会のメンバーは“いいね”“面白そうだね”“やってみようか”とにぎやかにしゃべっていましたが、さくら会の中心メンバーの高坂茂さんが2000年3月勤め先のクリーニング工場の機械に巻き込まれ亡くなり、知的障害者ユニオンは日の目を見ずに今に至っています(2008年3月28日ブログ記事参照

【再び知的障害(者)ユニオンを作ってみたら?】

 私はこの2月11日午後1時から知的障害者の親の方々を前に「障害者権利条約(労働・雇用)にもとづき実効性のある国内法をつくるためには」という題で講演をすることになっています。そこで再び知的障害(者)ユニオンを作ってみたらと提案してみようかと思いました。もっとも当日参加される方々はどんな方かわからないので、ただ今のところ私が頭の中で一方的に考えているだけのことです。私が考えているのは次のようなことです。

 ・組合員は2人以上いればよい。
 ・労働基準法上の労働者でも、そうでなくてもよい。
 ・失業者でもよいし、請負人でも受託者でもよい。
 ・子供も親も広い意味の労働者であれば、親子とも組合員に
  なれる。
 ・親が主婦や自営業者であれば、親は準組合員になればよい。
 ・子供が福祉的就労のときは厳密にいえば労働者といえるか
  どうかという問題があるが、失業している潜在的労働者とみる
  こともできる。いずれにしろそんなことはたいした問題ではない。
 ・大切なのは親と子が一緒になってユニオン(労働組合)をつく
  り、ユニオンとして改善要求をすることである。
 ・改善要求の相手は、知的障害者の使用主のこともある。
  この場合は労働組合法にもとづく団体交渉になる。
 ・国や自治体と交渉し、要求することもできる。この場合は国や
  地方自治体に団交に応じる義務はないが、数が多くなれば応じ
  ないわけにはいかない。
 ・そのようにしてみんなでスクラムを組んで改善を求めていく。
 ・単なる親の会よりも、ユニオンとなればこちらとしても肩の力が
  入るし、先方も正面から受け止めざるを得ない。

・・・と思いをめぐらしていますが、今のところ私の一人芝居です。

【自分の利益を追求しながら社会参加型のユニオンをつくろう!】

 知的障害(者)ユニオンは一つの例ですが、私は自分にとって何が利益になるかとということを基本に据えたうえで、社会参加型のユニオンをつくり、社会の歪んだ部分を正していくのが、これからのあり方ではないかと思います。
 私は7年前にChange Japan!という団体をつくり日本の政治を変えるよう試みましたが、日本の政治の変革はそんなに生やさしいものではないということを悟りました。私はまた、いくつかの市民団体をつくったり参加したりしています。しかし、市民団体とユニオンの違いはユニオンは構成員の経済的利益その他の利益を追求するという具体的な目的をもって集まっています。一方市民団体は社会の全般的問題に目線が移り、個々の利益とのつながりが薄くなりがちです。そのため途中で息切れしてしまいます。
 理念とか理想とかだけではなく、集団の共通の利益は何かということをまず最初に明確にし、その共通の利益に向かってユニオンという旗のもとみんなの力を結集する。このように共通の利益を追求する過程で社会の歪みも是正されていくのではないでしょうか。私たち日本人は、自分の利害を捨てて社会を正すのを美徳と思いがちです。しかし、それは結局のところ長続きしないし社会を正す力ともならない。私は自分の反省をこめて最近このように感じるようになりました。サア!欲をムキ出しにして社会を変えよう!

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