機械の回る音が聞こえない大田区の工場街
【仕事がない!】
リーマンショック以降仕事がなくなったということを中小企業経営者の方から時々聞いていました。私は「あーそうですか、大変ですね。」という程度の反応しかしていませんでした。
11月19日午後5時前に大田区矢口を地元とする区会議員の野呂恵子氏の案内で矢口周辺の工場街を歩きました。このあたりの工場は家族経営の小さな工場がほとんどとのことですが、驚いたことにどの工場からも機械の回る音が全く聞こえませんでした。どの会社も仕事がいつ入るかいつ入るかと電話が鳴るのを心待ちにしていますが電話の鳴らない日が続いているとのことです。2人だけでやっているある工場経営者の方に聞きました。そこではたまに仕事が入ることがあるけれど、そんなときは機械を回すのが他の工場の方にかえって気兼ねになるとのことでした。それほどどの工場も仕事がありません。工場の大家さんに会いましたが、今年の1月から家賃も払えない会社が多いとのことでした。大家さんも現状を目のあたりにしているので半分あきらめていて、仕事が来て機械が回る日を一緒に待ってくれている状態でした。
仕事がないことについて私の予想をはるかに超えていて、私も大変ショックを受けました。工場街を歩くときに私も大声を出すのをためらうほどの静寂さでした。
【大田区と工業】
[位置] 東京都の南東部に位置し、東京都23区内では最南部に位置する。東部には羽田空港がある。
[面積] 59.46k㎡(東京23区総面積の9.6%を占める最も大きな区)
[人口] 683,860人(09年10月1日推計。23区の中で世田谷区、練馬区についで3番目に多い)
[人口密度] 11,190人/1平方km(23区で19番目の低人口密度)
[職住近接] 54%が区域内で勤務
[工業] (wikipediaより)
大田区は大森に東京ガスが20世紀初頭に工場を設けて以来、東京都内で最大の工場集積地を形成し、川崎市、横浜市と共に京浜工業地帯の中核をなしている。平成17年工業統計調査(平成17年12月31日現在)によると、区域は4,778の工場、37,641の従業者、761,087百万の製造品出荷額があり、何れも東京23区最大である。部門別では一般機械機器製造業が1,630工場、金属製品製造業が1,014工場と多い。特に大田区は多数の中小企業(平成16年事業所統計調査によると、製造業6,173事業所の内、従業員9名以下が4,883事業所)が事業を行っており、その多くは得意分野に特化している。それらが補完的に相互利用することでひとつの工場として機能している。しかし、近年は生産拠点の海外移転、後継者不在等により工場減少が続いている。このため、大田区では大田区産業プラザの建設、財団法人大田区産業振興協会設立等による中小企業支援を行い、東京都も東京都立産業技術研究センター城南支所、中小企業振興公社城南支社を設置している。
【大田区の中小企業者と弁護士が語る会】
前回のブログで紹介しましたが、19日の午後6時半から矢口文化会館にて野呂恵子氏の司会で中小企業者と弁護士が語る会をもちました。矢口は下丸子、多摩川とともに多摩川沿いに計器やネジなどの精密機械の工場が多く集っている地域です。しかし、最近では閉鎖される工場が多く、その跡地に大きなマンションが建つようになり住・工混在の地域となってきています。
弁護士としては原田敬三氏、脇田康司氏と私の3名が参加しました。中小企業者の方が30名以上が出席し、準備した資料が足りなくなるほどでした。それぞれの経営者から厳しい現実を伺いました。8時半に終了の予定が9時過ぎまで続きました。貸しはがしの問題であれば、まだ私たち弁護士としてサポートできる余地がありますが、発注があるないの問題では弁護士として出る幕がなく無力感を感じました。
【弁護士としてできることは何か】
弁護士としてできることは何だろうと考えてみました。矢口の小さな工場を直撃しているのは派遣切り・期間工切りと全く同じ現象で、大手企業による下請・孫請切りです。しかし、小さいとはいえ独立した企業体であり、労働法上の保護は大手企業一社への専属度がよほど強い場合を除き無理です。
明らかなことは、中小企業切捨ては小泉純一郎内閣以来国の断固とした方針として時の政府が推し進めた結果だということです。日本政府は大企業や富裕層の税負担を著しく軽減し、手厚く保護しました。竹中平蔵金融担当相(当時)は、金融機関に不良債権処理という名目で中小企業からの債権回収(貸しはがし)を徹底的に行わせました。その結果、中堅の中小企業は工場を売り、社屋を売り、最後は自宅までを売らされて、つぎつぎとなぎ倒されていきました。企業経営を続けるかぎり一定の借入金は当然のことですが、竹中氏は過剰な負債と決めつけました。金融機関と相談しながら借り入れをし、返済をしていた中小企業にお上による突然のルール変更が通告されなぎ倒されていきました。本来であれば政府はこの中堅層を守って日本のものづくりを多層に構築するべきでしたが、金融機関保護の名目のもと中堅層の中小企業を切捨てる国策を徹底的に行いました。
私が訪問した家族経営主体の小さな企業は自社工場も自社社屋ももたない企業群なので、もともと民間の金融機関からの借入金もほとんどありません。したがって当時不良債権処理の対象となりませんでした。しかし巨大な大手企業と小さな企業群では鼻から勝負になりません。不況が来ると大手企業は発注をやめ、内製化し、下請けに出していたものを自社でつくることにして発注数を少なくしました。発注する場合も単価は大手企業の意のままです。下請法( 下請代金支払遅延等防止法:参照公正取引委員会ホームページ)がありますが、これに抵触するのは余程の場合です。小さな企業は大手企業にとって派遣労働者や期間工よりももっと安全・確実に切ることのできる景気の調整弁に位置づけられています。
今弁護士としてできることは国策によってつくり出されたこの不公正な実態を世に問うことだろうと思います。中小企業経営者を含むさまざまな人と力をあわせて実態調査をし、世に明らかにすることで、そのためにはマスコミの協力が不可欠です。民主党・社民党・国民新党は三党合意で中小企業の保護をうたっていますが十分ではありません。冒頭でも述べましたが私自身の認識もいい加減なものでした。
学生時代を含めると私は大田区に35年間住んでいることになります。人生の大半は大田区民です。中小企業を守るなんて途轍もないことはできませんが、大田区に縁のある弁護士として私たちにできることから始めていきたいと思います。
【~JR不採用問題&派遣法~ 11.30南部集会の案内】
◆日時 2009年11月30日(月) 午後6時半~8時半
◆場所 大田区消費者生活センター 2階・大集会室 地図
JR蒲田駅東口から大田区役所方面徒歩5分
(区役所から100mほど先)
◆内容 話「今こそJR不採用問題解決・派遣法改正」
清水建夫(鉄建公団訴訟弁護士)
闘争団からの報告
派遣法抜本改正のとりくみ報告
行動提起
◆主催 1047名解雇撤回南部実行委員会
協賛 全国一般労組東京南部
詳細は案内チラシをご参照ください。
→ ■案内:「~JR不採用問題&派遣法~ 11.30南部集会の案内]
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この機会に大田区の工場街のことにも触れたいと思います。ご都合のつく方はご参加ください。
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